情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[30]
[31]
[32]
[33]
[34]
[35]
[36]
[37]
[38]
[39]
[40]
[41]
[42]
[43]
[44]
[45]
[46]
[47]
[48]
[49]
[50]
[51]
[52]
[53]
[54]
[55]
[56]
[57]
[58]
[59]
[60]
[61]
[62]
[63]
[64]
[65]
[66]
[67]
[68]
[69]
[70]
[71]
[72]
[73]
[74]
[75]
[76]
[77]
[78]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
―青木総合病院/最上階―
[去来するのは、澪と過ごした穏やかな時間。
見舞う人は、彼女くらいの人しかいなかった。
聞かされる彼女の生活の話だけが、見る夢に彩を与えてくれる。
時折、夢を見ながら微笑を浮かべたりもしたが
今は――上手く笑う事も、表情を落とす事も出来ない。
代わりに、自分では拭えない涙が頬を伝うだけだ。]
[大学に遺してきた絵は、もう処分されてしまっただろうか。
同級だった皆は、もう社会に歩み始めている頃だろう。
思い描く姿はいつも靄に隠れて、追う事も叶わない。
いつしか――考える事をやめて
光の注ぎ込む窓を瞳で追った。
雲は遠く、空は青く。夢より夢のような光景に映った。]
―――、…………
[今日は冷えるな、と呟きました。]
…………………。
[それ以上を去来する事は、ありませんでした。
風が、風だけが、優しく部屋の澱みを入れ替えます。]
―青木総合病院/最上階―
――ヤツカ、ヤツカッ!!
[乱暴に扉を開け放つ。
背後の廊下から、「病院内は走らないでくださいー」と
ナースの注意が飛んでくる]
間に合った、間に合ったぞ、あたしは……っ、
[興奮気味に、寝台に駆け寄る。
目蓋が開くまで、その痩せ衰えた肩を揺すった。
いざ当人を目の前にすると、
数百人の前で講演する時以上に、
頭が真っ白になって説明が出てこない]
ちゃんと、親友との約束を果たせる。
癒して、みせるから。
どんなに時間がかかっても、必ず…・…、
その足で、元のように外が歩けるように。
多分、それまでにヤツカも並大抵でない
努力と忍耐が必要だけれど。
[握り返すこともできない手を取り、優しく摩る。
白い手は骨張って固まり、少し乾燥していた。
その体温は、彼女に伝わることはないと知りながら。
潤む喉を励まし、矢継ぎ早に説明を続ける。
新薬の効果は個人差がある上、
未だ人への投与は数例しか実績がなく、
様々な副作用と危険を孕んでいること。
それでも、完成を待っていては手遅れになること。
他ならぬ親友を実証例にせねばならぬことへの悔い。
嫌なら投薬治療を拒否してくれと、
数枚に渡る同意書を彼女の目線の先に、掲げた]
[誰かが名を呼ぶ声がした。……ような気がする。
返事をしようとしても、目開こうとしても儘ならず
意識の浮上より先に、声が彼女の正体を察させた。]
………。
…、
[みお、と。その二語が小さくつむがれる。
今日はどんな話を? と訊ねる前に――澪は
遠い日の誓いを口にした。]
…………。
[澪がやってくると、時の針も彼方へ消え去ってしまったようだ。
停滞した白い世界も、彼女の出現によって駈けずり回る。
それが、大きく過去へさかのぼるのは、初めての出来事。
藍田八束は、彼女の説明を微動だにせず聞いた。
繊細な表情を作る事も、頷く事も出来はしなかったが
それでも最後に、唯一の友人は形を示す。]
………。…、
[未来の希望を紡ぐには、筋以外のモノが衰えていた。
過去に描いた展望は、脳裏に去来しては消えて行く。
風にかき乱されるだけの真っ白な現在に
彼女は過去と未来の両方を携えて、そこにいた。]
―――。
[病院を走ると危ないよ、と藍田八束は紡ごうとした。
どんな表情も浮かばない儘に、一つの顔を表そうとした。
――幾らもがいても、
凝った時間は、破れてくれそうにはなかったけれど
辛うじて動く首を、ゆっくりと、横に振った。]
……み、……
…………お………
………は―――。
――――や、……
…く………そ……く
………………………を
………は………た……
………………して
く……………
………………
……れ
…………て……
………………いる。
……………いやだ
……なんて…………いうもの……か。
[表情は、相変わらず頑張ってはくれない。
代わりに、自分では止められない涙が、伝って落ちた。]
[きっと、彼女が見舞いに来なかったなら
今頃ここには、人の気配は無かっただろう。
停滞する時間に呑み込まれて、狭間へ消えていたに違いない。
体を治すのは、彼女の薬でも
時間の切り離された場所から、
会話する事で護り、連れ出してくれたのは――。]
…………。
[――今なら違った絵が描けそうだと、藍田八束は想った。]
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[11]
[12]
[13]
[14]
[15]
[16]
[17]
[18]
[19]
[20]
[21]
[22]
[23]
[24]
[25]
[26]
[27]
[28]
[29]
[30]
[31]
[32]
[33]
[34]
[35]
[36]
[37]
[38]
[39]
[40]
[41]
[42]
[43]
[44]
[45]
[46]
[47]
[48]
[49]
[50]
[51]
[52]
[53]
[54]
[55]
[56]
[57]
[58]
[59]
[60]
[61]
[62]
[63]
[64]
[65]
[66]
[67]
[68]
[69]
[70]
[71]
[72]
[73]
[74]
[75]
[76]
[77]
[78]
[メモ(自己紹介)記入/メモ履歴/自己紹介] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 7日目 エピローグ 終了 / 最新