698 あず村Ⅲ
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【墓】 青木さん（弱）
…っ。
み、見るな。
[顔を上げられ、慌てて涙を拭おうとする。
だが、触手に遮られて上手く動かない。]
……、
[想う事が言葉に換えられない。
例えば澪と約束した事。
例えば、屋上で口付けをした事。
去来する想い出は短いけれど、灰色ではなかった。]
……
[死にたくないと、告げればきっと楽になるのだろう。
それでも火浦は、言葉の通り待ち続けるのだ。
彼はその間、一人なのだろうか？ とそんな事を考えた。]
【墓】 青木さん（弱）
…………。
待つのは、だめだ。ゆるさない。
待つというのは、止まるということだ。
立ち止まるなんて、ゆるさない。
………火浦は、火浦の時間を生きてくれ。
[
もし私がもう一度、時計の針を進められたなら
……………きっと、追いつくから。
私の席の心配なんて、しなくていいから。
火浦は、火浦の愛したい時に、愛したい人を愛してくれ。
火浦が、火浦らしく生きている時間を想像できるなら
きっと、私はがんばれる。
【墓】 青木さん（弱）
[ふと表情を落とし、火浦に、自分から軽い口付けを返す。]
これで、貸し借りなし、だ。
……だから、ずっと待っている、なんて
そんな悲しい事を言わないでくれ。
[涙は拭えないままだけれど、上手く笑うことが出来た。だろう。]
【赤】 火浦 真
……わかったよ。それじゃ待たねぇ。
お前が止まるなって言うなら、歩いていくさ。
[でも、と。
目尻に光る涙をそっと唇で拭うようにして]
迎えに"来る"のは構わねぇだろ。
俺の時間、俺の歩みだ。
どう進もうと、俺の自由だからな。
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