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次の日の朝、ライダー が無残な姿で発見された。
玖珂 諒一 は立ち去りました。
−川津教会−
ぱん、と弾ける音がした。
漆塗りの器のうちを彩る螺鈿の花は七つ。
夜光貝の美しく柔らかな虹色は三つ。
黒真珠に嵌め変えられたかのような深黒が二つ。
昨日とは違う、別のひとつが黒ずんだ赤を帯びて輝きを失った。
だから、黒ずんだ赤の花は二つ。
それが、この聖盃戦争における澱みと清め、犠牲を表したものだと
気づくものは教会の女以外にあったのか───さて。
現在の生存者は、渡辺 あゆ、フェリシア、アーチャー II.Mehmet、クリスティーナ 鳳、セイバー ゲオルギウス、アンネリーゼ ヤーネフェルト、キャスター ソロモン、鳥野 偽一、アサシン イスカリオテのユダ、ビンセント バンゴッホ、バーサーカー 茨木 の 11 名。
―南区/ラウラ工房・居間―
[街の中心部で、男性の遺体が発見されたらしい。
再びの朝を迎えた時間。
小鳥とニュースキャスターの声を聴きながら
メフメトは書架を漁っていた。]
ふむ。…片方は覚えが無いな。
[最初のニュースは、南区の商店街での火災。
重軽傷者多数の、「戦渦」だった。
死者の数は、聞き逃した為どれほどであったかは判然としない。
けが人の搬送、延焼の食い止め――映像は流れるも
メフメトがそちらを向く事は、ついぞ無かった。]
[そして現在、中央部で発見された男性の遺体を報せている。
凶器は不明。
心臓部を鋭利な長物のようなもので破られていた。
人ごみの中であったが、目撃者はおらず。
通り魔の犯行か、商店街の破壊と何か関係性があるのか
一夜にして巻き起こった死と災いについて――。]
――ふ。
[血と破壊と炎を撒き散らした皇帝は、笑ったように見えた。
遺体の顔写真と名前を見るまでもなく、
電源を切るボタンを押し、ニュースの続きを引き千切った。]
なるほど。貴様は。
[アサシンか、とまでは、思念に乗らず。
されど、タイミングの良すぎるニュースの事態。
皇帝は己の知識欲を埋め、薄く笑っていた。]
[書架から本を引きずり出し、ぞんざいに頁を捲る。
生まれた風圧で頬を撫でられた。
通り過ぎる分には意味のない文字の羅列。
端が黄ばんだ、大層な由来があるらしい古書。]
これでも無いようであるな。
……歴史ある工房、とか言っていたから
或いはと想ったが――やはり息吹が異なるか。
[息をつき、書を戻す。
続きを探すことなく、皇帝は果樹園へと向かった。]
―朝:東区廃墟―
[ソファに身を沈めているユダは、まだ眼を閉じていた。
帰還して後、
幾らか話し合いを持つこともあった。
廃墟でありながら
その実そうではない場所に、
情報は如何程入るのか。
新聞か、
ラジオか、
或いは携帯に配信されるニュースでか。
方法はさておき、外部からの情報で初めてあの魔術師の青年の名を知ることになるだろう。]
こう
携帯の云々に目が行くのは職業病ですよn(
おはようございましあ。
20世紀末は、まだ携帯に
カメラもiモード(インターネット)サービスも
むしろ液晶に色も付いていない時代でござr(
確かプリケーもないので悩ましい。
…スカイメールが始まった頃だから、
スカイメロディとか着メロの概念が出てきたころかなー。
―東区・廃墟/朝―
[偽一は少し広めの部屋で、テレビを見つめていた。
どうやら今流れているニュースは、ユダが手を下した事件のようだ。
義父が関わり、そして偽一が手伝った仕事でも、こういう形で人の名を知る事が過去にはあった。
そう言った仕事から足を洗う前を思い出し、複雑な気分になる。
偽一自身が、親子の情など無く、義父はただ、自分のコピーを作りたいだけなのだと悟ったのは、いつだっただろうか。
あるいは、自分が始めて人を殺め、義父の張り付いたような笑顔を見た時だったかもしれない。]
[現場を離れる際
南のほうが騒がしかった。
迂回して遠目に見たそこは
まるで戦の後。
否。
実際に、あったのだ。戦が。
知っている。]
−中区 新興住宅街/1日目夜−
[教会でのやり取りを終え、拠点に帰るべく歩みだす。]
んフー、しかし歩いて帰るのも面倒ですね。
先ほどの少女が乗っていたような二輪車もいいですが、やはりアタシは車の方が好きです。
またそこら辺で調達しますか。
[手近なガレージを物色して、適当なサイズの車を見つけた。
手首から先だけを触手に変化させて鍵穴に侵入させると、難なくロックを解除する。]
これでよし、と。
今度は大切に乗ってあげますからね、んフ。
[濃紺のヴァンデンプラ・プリンセスに乗り込むと、杉林地区に向けて静かに発進させた。]
[戦の爪あと。焔。焔の渦。
この澱みから受けるもう一人の気配。]
…そちらは 派手にやったようだな
[皇帝と名乗る
彼の仕業に相違あるまい。]
今日のニュースが、僕の名を報じてる……なんて状況も当然あったのだろうな。
[偽一は、テレビから目を放し、テーブルの上に置いたショルダーホルスターを見つめた。]
[クガ・リョウイチ
情報を映す箱――テレビの音が
そんな響きを耳に届けたとき、
ユダはゆっくりと眼を開けた。
視線を動かす。]
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