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……静かにそびえ立つ古城。
そこは、百年前に惨劇が繰り広げられた舞台。
歳経た建築物の持つ威容。
訪れた者は、その雰囲気をどのように受け止めるだろうか。
しかし、誰も思わぬだろう。
灯火すら焚かれぬ、暗い地下の一室。
むき出しの地面の奥深く、納められている棺があるなどとは―――。
紅い月は、未だひっそりと身を隠す。
それが、悪魔と共に姿を現す事、まだ誰も知る由もなく。
1人目、城の主 ジェーン がやってきました。
城の主 ジェーンは、村人 を希望しました。
―城内・一階エントランス―
[エントランスに掲げられている見取り図を見上げるは、城の主。
地下から屋根裏まで、城内部の詳細が描かれている洋紙は、描かれてからの年月を教えてくれるよう。]
私の城がドラキュラ城ですって?
本当にそうなら、面白いですわね。
きっと、刺激的な夜を過ごせることと思いますわよ?
ほほほ。
[口元に手を当てた後、耳朶に下げられた大きなイヤリングを、しなやかとは言い難い指先で軽く弾く。
紫色の髪が揺れた。]
[半年前にこの城を購入した時から耳に入る、近辺での噂話。
―――その城は、かつてドラキュラ城だったというもの。
その噂を耳にしても、女主人は畏怖を抱くことは無い。
むしろ、興味を持って噂話に耳を傾けたのだった。]
そろそろ、皆様いらっしゃる頃かしらね。
今宵は楽しいパーティーにしたいですわ。
あら、貴女。いいところに。
私はドレスを選んでいますから、皆様がお見えになられれば、お部屋までご案内を。
大事なお客様ですから、粗相のないようにお願いしますね。
[使用人にそう言いつけると、女主人は二階の自室へと向かった。*]
親愛なる―――様。
ご機嫌麗しくありますでしょうか。
このたび、由緒ある古城にて、その歴史を語らいながらの
パーティを催したいと思う次第です。
交通については、迎えを出させていただきますので、
ご心配なさらずに。
ご参加いただけることを、そして再会を
心より楽しみにいたしております。
ジェーン・パイルシュミット
この招待状が送られたのは、一ヶ月前のこと。
かつて、古城で血の惨劇が繰り広げられたことを知らぬ資産家は、先立った夫の遺産で古城を買い付け、知人を集めてパーティを催そうと考えたのだった。
一人、また一人と城を訪れる者たち。
跳ね橋を渡り、扉にて呼び鈴を鳴らせば、二十を幾つか過ぎたくらいの年頃と見える、女の使用人が皆を迎えるだろう。
「ようこそ、パイルシュミット城へ。
長旅でお疲れになられましたでしょう。
パーティは十九時からですので、
それまではごゆっくりお過ごし下さい。
お部屋にご案内いたします。」
皆は、使用人に導かれるままに部屋へと向かう。
一歩一歩、死が近づいている事など、知らないままに。
New Moon
――*開宴*――
2人目、代理人 キャロル がやってきました。
代理人 キャロルは、人狼 を希望しました。
―古城前―
[峡谷沿いを歩き、次に山道をゆく。
まだ薄っすらと雪が残っている道でも、ハイヒールは気にすることなく踏み出される。
どれだけ歩いただろうか。
枝々の間から覗き始める古城。一度足は止まり、再び進む。
そして。
視界が開け、雪残らぬ道―――跳ね橋を渡り、
呼び鈴を鳴らす前に、もう一度古城を見上げた。]
……へぇ。
[剥がれた塗装や割れ目は、城の歳月を物語っているよう。
そびえる塔は美しく、城全体は重厚な雰囲気を漂わせている。
けれど、漏らした感想はそれだけ。]
[呼び鈴を鳴らす指は細く。
右の薬指に光るルビーは、その白さを引き立たせている。
軋む音と共に扉が開かれれば、女の使用人に軽く頭を下げた。]
この度はお招き頂き、ありがとうございます。
……と言いましても、私はオードリーさんの代理人ですが。
えぇ、体調を壊しまして。
突然のキャンセルはご迷惑が掛かるとのことで……
[コートのポケットから招待状を取り出し、使用人に見せる。
封筒には、オードリーの名が記されていた。]
申し送れました。
私、キャロライナ・ミルネスと申します。
[軽く自己紹介を済ませると、促されるままに、蝋燭が灯る薄暗い城内に足を踏み入れた。]
―一階・エントランス―
これは、見取り図ですか…?
[コツ、と足を止めて、壁に掲げられている見取り図を見上げる。
透明な額には、背後の蝋燭がゆらりと揺れている。
吸い込まれるように白藍の瞳を向けていると、使用人の声。]
お部屋にも……そうですか。
では、迷わずに済みますね。
[吸い込まれていた理由は違うのだが。
使用人に小さく笑みを向けて、促されるまま部屋へと。
案内された部屋は、四階だった。]
十九時ですね。分かりました。
お言葉に甘えて、寛がせて頂きます。
―→四階・自室―
3人目、若当主 ラッセル がやってきました。
若当主 ラッセルは、人狼 を希望しました。
―パイルシュミット城前―
[馬車の扉が開き、外套を纏ったやや長身の若い男が降りてきた。
ややあって、目の前の少し屋根に雪の残った古城を仰ぎ]
はっはぁ、
[続くどこかから化け物でも出てきそうな城だ、という言葉はなんとか飲みこんだ。
一雨降りそうだったので足早に跳ね橋を渡り、急な階段を登りながらも]
なんで俺がこんな会合に出なきゃいけないんだろう。
距離があるから来るだけでも疲れるし、特に利益がある訳でもない。
正直勘弁してほしいんだがな…………おおっと。
[遠い目をしてぼやくうち、うっかり階段を踏み外しそうになって現実に引き戻された。]
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