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案内人 ユーグ は、古書蒐集家 アルマン に退去の力を使った。
夜が明けると、古書蒐集家 アルマン の姿が宮殿から消えていた。
《★占》 古書蒐集家 アルマンは 人間 のようだ。
果たしてここは現実なのか、はたまた夢の中なのだろうか。
宝玉煌めく魔神の宮殿は確たる存在感を備えてあなたの眼前にあり、薄暗いアルマンの書斎は既に地平に没する太陽ほどにあなたの心から遠い。
いずれが夢であるなら、それはどちらか。
本を読むあなたか。
魔宮にたたずむあなたか。
ただ一つ言えることは、どちらにせよあなたの心は紛れもなくこの物語の中にあるということである――
現在宮殿に残っているのは、黒い外套の ザファル、不滅隊隊長 スィフリア、薬売り レヴィーカ、案内人 ユーグ、帝王の妻 エルハーム、魔神 ヒエムス、魔神 アウルム、吟遊詩人 コーネリアス、錬金術師 ヒジャービルの9名。
― 回想:広間 ―
[貌をあげれば汗で鳩羽色の前髪は張り付く。
虹彩も瞳孔も縦長の、白目の多い爬虫類じみた瞳。
チン、と音を立てて刃を仕舞った後、露になった其れらが隠れるようにターバンを引き降ろすも、濡れた髪はそれらを隠す事は、出来ない。
少しふたりからは距離を取った侭だが、視力がよければそれは簡単に見えてしまうことだろう。
レヴィーカ>>1:271に言われた綺麗、との言葉に、その目の上の眉らしき盛り上がりが中央へと寄り、小さく首を傾けた。
彼女の言った「も」については、聞こえたか聞こえぬか触れぬ様子。]
我が国では、武人は舞う。
舞えぬ武人はおらぬ。
[呟きの語尾が小さくなるのは、ふたりが会話を始めたから。
二歩、下がり息を整えた所、アウルムの言葉>>1:287が降り落ちて
また小さく首を、傾けた。]
ふむ。
あわよくば二人とも誘い出せればと思いましたたが、
岩戸は閉まりぱなしだったようで。
――まだまだ足りませんね。
[>>1:308続く言葉には、ふむ、と頷いてから
チラとレヴィーカの方へと視線を流して目を細めるのは
彼女が今居合わせる事に対して、不満を告げるものでは無さそうで]
水要らずも良さそうです。
ただ…私は彼女のように美しくないので、
色のついた、趣向は難しそうですが
[位の高い者に仕えるが故の冗談を言いながら、手袋を嵌めた手は耳元へ。
耳上から始まり、鼻の上を通る布が、はらり、地に落ちる――]
[鳩羽色の下、虹彩の長い目のさらに下
低い鼻の肌は彩度低く 頬に浮かぶ何枚かの鱗は孔雀石色
横に長く裂けた口を縁取る、乾いた土のような唇。]
一言で言えば、或る「人間」、またそれを取り巻く色々の時間の巻き戻りを望んでいます。
[硬そうなそれが動き、紡ぐ声はくぐもらず良く通る。
瞳はじっと魔神を見詰め瞬きは――しない*]
―自室―
[偽りの夜明け前。
絡みついたままの花の香りに浮かされるように
額に汗が滲んで――目が覚めた。
飾られている月下香。
使い魔は何を思うたか。
ザファルは眉を寄せると、その花に手を伸ばし
しかし触れることなくきつく握り締めた。]
― 現在:浴場 ―
[町のものとは到底違う、ハンマーム(浴場)。
色とりどりの絵が焼き付けられたタイルのアーチ、
中央には噴水が置かれ奥には湯煙の上がる浴槽がある部屋への扉。
町中とは違い、美しい召使達が脇に控えている。
白の武人は朝の早い時間にその場に居た。
召使に何もさせず身を浸すのは水風呂――思い出すは、昨日の舞の後の事。]
…―我が願い、
[小さな呟き
彩度の低い手に嵌まる指輪は、ただ、光を反射するだけ。]
[身を清めた後、変わらず白を纏い極力肌は風に触れぬよう。
腰に曲刃を携えた侭、食堂へと向かった。
料理は何時だって、準備されている。]
魔神殿は、空腹を感じたりするものなのかな…
[良く煮込まれ薫りを漂わせる豆を口に運びながら
ふと呟いた言葉は、指輪が拾うや否や。]
─朝・中庭─
[起きて身嗜みを整え、食事も碌にせず中庭に出た]
問いの答えは無い、か。
元より期待はしていなかったが、少し残念ではあるな。
[機嫌を損ねてもおかしくはない問い。それが解っていても聞いてみたかった問い。中庭を歩きながら、自嘲の笑みを漏らす。
太陽が無くとも日中の明るさを保つ周囲。アガールの布に阻まれ瞳に感じる眩しさは少ないが、噴水の水や葉雫の反射は目につく。少しばかり歩き回った後、噴水から少し離れた場所に聳える木の根元に腰を下ろした]
この眼に映るうちに、書き留めておかねば。
[この宮殿のこと、魔神のこと。この地で見、触れたもののこと。荷から手帳のようなものを取り出すと、一つ一つ丁寧に書き込んで行った。傍らにはいつの間にか現れた果物の籠を持つ召使。時折、空腹を満たすために果実を口に運びながらも、書き記す手は止めなかった]
―朝・青と白の塔の上―
ふふっ。
ふふふっ。
[赤い鸚鵡の姿から、人間のような姿に戻ったミッシェルは、太陽の無い空を見上げて笑っていた。]
「楽しいかい?」
「楽しいよ。」
[緋色の使い魔のように、唇から漏れるふたつの言葉が、絡み合って会話する。もっとも、イーヴのように男女の声が代わる代わる出てくるわけではなく、中性的な声がふたつ重なるのみなのだが――]
「真っ黒の人のコト、どう思った?」
「とってもいいニオイがするよ。」
「でも、まだまだだね。まだ美味しそうじゃないよ。」
「だいじょぶだよ。これからもっと美味しそうになるよ。」
「なんで?」
「人間の欲望は、果実みたいなものなのさ。熟してあまーくなるんだ。」
[ぱたぱたと足を動かし、鼻歌交じりに言葉を紡ぐ。]
「もしあのヒトの願いが叶うなら、ホントにホントに、あのヒト死ぬのかな?」
「そんなの、ボクにはわかんないよう。」
「ねぇ、『死ぬ』って何だろうね?」
「それも分からないよう。でも、きっと大変なコト――」
―夜・広間―
[ 布を取り払ったスフィリアの素顔、それを直視して尚うっすらと笑み――煌めく双つの黄金には驚きも好奇心も、何も浮かびはしない。]
その或る「人間」とは、お前の主のことかな?
[ やはり声は笑いを含む。**]
― 食堂 ―
[昨夜、魔神は自身の姿にも全く興味を示す様子が無かったことに対して、白の武人は何か言ったりはしなかった。
只、問い>>10に対して首を横に振っただけ。]
「もっと古い人間で、ございます。」
[低く告げ深く敬礼を向けて場を去った事を思い出した風。
手袋の内にある指輪に、手袋を嵌めたままの手指で触れ、鳩羽色の内側で瞑目の気配。
食事を終えても、白の武人は長い間その場に座って居た。]
―客室―
[月下香の花を見るときに浮かぶ複雑な眸の色は
朝日の光に透けることもない。]
―― …… 、 くそ …ッ
[結局花に触れることのなかった手で、
左の額に落ちかかる前髪を握り締めた。
僅かに傷が覗く。
白銀の魔神の言葉。
紅い鸚鵡の羽ばたき。
翠の麗人の肯定。
遠い記憶。
花の香り]
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