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ねぇ、また黙って見てるだけなの?
[耳元で囁きかける。
それはサンドラにしか聞こえないほどの小さな声。]
生き残るためには、それが一番賢明かも。
でも、ベルナルトさんの持っている銃、
もう弾が入ってないのよ。
このままだと、彼、死ぬかもね。
…どうする?*
…まぁ、自分が喰われると分かっちゃ、嫌がらねぇ奴はいないよな。
抵抗した奴、観念した奴は居たが……自ら身を捧げる奴は………まぁ、正確には身を捧げてまで止めようとした奴は、お前が初めてだったんだよ。
エーテル。
血を見せたら駄目だ。
傷口から淡いピンク色の肉を見せたら駄目だ。
益々、獣の俺が出て来てしまう。
……だが、まぁ、それでもと思っちまったのは何故だろうな
[ナタリーの小さな悲鳴に反応して耳をぴくり]
………もぅ弾入ってねーだろ。
ベルナルトも、気付かねぇ程てんぱってるのか?
ありゃもう立派な『鈍器』だよ…
…祈りみたいなもんだ。
お前みたいに頭が良くねえ、色んなモンを割り切れるほど長く生きてもねえ。
言葉にするとしないでは、大違いなんだよ。
それに地獄に行ってからじゃ、何考えてたか伝える術がないだろ。
[シャノアールの言葉は何一つ否定せず、肩を竦めた。
しかし、意味を与えてやらなくもないと言わんばかりの言葉にだけは眉が跳ねる。]
何だそりゃ、憐れみか?
俺は人から施しを受けるのは、何より嫌いなんだ。
[ほら、もう一つシャノアールを殺す理由が出来ただろう。
言い聞かせるよう、胸の漣に溶かし込んで行く。
殺せるはずだ、迷わず殺せと。]
[羊の中から出てきた鋏に、ほんの少しの困惑が浮かぶ。
少女と鋏、それに羊が、命の掛かった場には余りに不釣合いで、更なる迷いを生む。
が、工作用と言えど、命を奪うつもりで使えば十分凶器になるだろう。見誤るな、あれはシャノアールだ。]
………殺して良いのかと。
他に方法はねえのかって。
お前の事は見て見ぬフリしてでも、残りの生を取り戻せればって、
ああ、迷ってる。迷ってるさ!
[じりじりと間合いが詰まる。
余り近づかれると、リーチの長さが逆に不利。
喉の奥が引き絞られ、小さく鳴った。]
でもな。
聞いてりゃ、お前はお遊びが過ぎるぜ。
人の人生を弄ぶしか愉しみがねえんなら、そろそろ隠居のし時だ――!!
[指に力が籠る。
照準ぎりぎりで、銃爪を弾く。]
[―――銃身は、光を放たない。*]
[ふぁあ、と背伸び]
………というか。
上手いよな……
躾られた?
ははっ、他ん所もしてくんね?
[返事は待たず、狼の姿になる。ミハイルの黒狼よりもやや小さかった。寝そべり、サーシャに背を向けた**]
ほら、こうすりゃ俺の顔なんて……気にせずに済むだろ?
ダニール。
まぁ、あんたは嫌がってたし、俺も古傷をぐりぐりえぐってた気もするが。
つかの間の「親子」ってのも、悪くはなかったぜ?
俺に親なんて…父親なんて居なかったし。
…母親と一緒に喰っちまったからな…
……やれやれ。
[特に何かを云う訳でも無く。引き金を引くのと同時に飛び掛かり、その胸へとハサミを振り下ろした。明確な殺意と経験に裏打ちされたそれは、何者の邪魔も無ければ躰へと突き立てられるだろう。少女に迷いは無い。そんなモノが在っては―――此処まで来られなかったからだ。]
[...は困惑と混乱の極みにいた。目の前のことをどのように理解していいのか分からなかったのだ。
自分に少女を託した男は、明確な殺意をもって少女に対峙をしている。
男を見る、少女の冷ややかな視線を見て、男が本当に守りたかったものをようやく察した。]
あたしは…どうすればいい…?
[心のままに動くこと、それこそ生きる証かもしれない。
それなら、彼を止めるのはお門違いだろう。
迷いながら、ただ、呆けたように見守っていたら、肩を誰かに触れられ、我ながら大きくびくりと震えた。]
[ナタリーが告げる事実を、頭の中で咀嚼する暇など事態は与えてはくれない。
ただ、目の前で、鋏の銀色の光を見た瞬間に、...は走り出していた。]
やめてっ!!
[安全な止め方なんて知らない。ただ必死の捨て身でカチューシャに体当たりをして切っ先を反らす。
ハサミがその拍子に肩口に触れて燃えるように熱かったが、流れ落ちた血液が自分だけのものかどうかはわからない。]
ははは…。
カチューシャは軽いね。ウエイトの差は伊達ではないだろ。
早くダイエットしなきゃいけないって思ってたけど、役に立ったかな。
[軽口をたたいて痛みを紛らわそうとした]
……っち。
[距離を取り、進路を妨害するように椅子を蹴飛ばす。そしてテーブルナイフを二本まとめて掴みながら、前方車両へと消えて行った。]
最後は、ハイド・アンド・シークと洒落込もうか?
ちゃんと百、数えてくれよ―――。
[そんな声を残して。]
別に、こうなる気はしていたから。
良いけれどな。
引き金を二度引いたのなら、弾はもう無い。それは知っていたさ。
そして―――お前がサンドラを止めない処か、唆す事さえやってみるで在ろう事も。解っていたさ。
だから何も、問題は無い。死体がもう少し、増えるだけだよ。全く、お前は……良い同業者になりそうだ。
[滲む瞳を伏せた濃い睫毛が隠す、
朱に染まる目尻、触れられる心地よさに多分少しは照れていた]
何の割合だ。
聞こえてない。
……再度の発言を要求したい。
[男の肩に小さく首を預けてぽつり。
もっとも問う言葉が聞こえていたら、
双方の合意が伴うのは初めてだろう、ときっぱり告げていたに違いない]
[生者を見やる、
膠着していた事態は、弾切れの銃で動いた。
傍観者と評論家は、ようやく舞台に上がったらしい]
……しかし、隠居のしどき、とは、
なかなかうまいことを言う。
[口端にわずかな笑みが浮かんだ]
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