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[世界が、凍る。
町全体が。存在するすべてのものが。
そう、力でさえも、凍りつき。
世界が止まる。]
[……否。]
[運命を変える、4人だけは凍らずそのままに。
それが、世界の意志。
世界が運命を委ねた、4人の勇者。]
[世界は、止まっただけ。
やがて刻がきたれば、氷は溶け。
すべてはもとどおりになるだろう。]
[はらり。]
[青い薔薇が、散る。]
[水面に浮かぶ、青い花びら。]
[青薔薇の姿は忽然と消え去り。]
[しかしその生命の鼓動は消え失せてはいないのだと。]
[瞳と同じ輝きの石から知ることができるだろう。]**
―箱舟・玉座の間―
[箱舟が不気味な振動を始め、根を張っている魔法の花も瞬間動きを止めた]
――グラジオラス、花達が消えた。それも一瞬で…。
[振動は尚も続いている、内部に居るグラジオラスにはまさか一瞬で1つの地域が消えた事など分からなかったが、流石に花の王には感じ取られたようだ。]
花の王、どういう事だ。
外で何が起こっている!?
――何が、と…言われても。
この船が光ったと思ったら町の一部分が丸々消え去っていたとしか…うん、くりぬかれたように。花達がそう言っている。
…こちらの花も動きを止めた。何か他に吸い上げるものを見つけたような、そんな止まり方だったが。
何れにせよ、箱舟の暴走を止められたわけではないようだ。
全く…それならばこちらに来ようとせずに他へ行けというに、余程我々の魔力の方が良いみたいだな。
贅沢者めが。
[いつものように「このたわけ」と言わないのは、相手が自分と同じ植物だからなのかも知れなかった]
シャルロット、役目とやらが何なのかは分からんが急いだ方が良い。
未だこの箱舟は力に満ち溢れている、花達をどうにかそちらの力に向けて抑えておくからその間にお前達は成すべき事を済ませて来い。
[ユーリがこちらに任せると言えば、チラとシャルロットの方を見て首飾りの辺りを指して微笑んだ]
青娘、そちらもシャルロットを頼む。また後でな。
後…ジャス便、花達は轢くなよ。
[いつものような注意を吐いて皆を見送る。
ああ、ユーリの笑顔がほんの一瞬だけ見えたような。その残像が残ったような>>91]
さて…この暴走をどう止める、ドンファン?
[未だこの場に向けて根を進める花達を宥め、他方へと向けようとするのに力を使いながら問う]
――――ッ
[飛び込んで。見えたのは。色のない、牢獄。
いつか手を伸ばそうとして。届かなかった場所。そして]
……ぁ…ぅ……ァ……ゅ…ぅ…?
[その、中心には。ゆーの。ユーリエッタの姿が、あって。
その、姿に。ずっとずっと望んでいたその人の姿に。
あまりに、たくさんの。言葉が。想いが。絡まりあって。もつれて。繋ぎとめるように、体を、思考を、硬直させる]
[その目の前で、シャルロットとユーリエッタが言葉を交わし。崩れた牢獄は、光に包まれて。
ふたたび戻ってきた、ジンロウ町の真ん中で。
ゆーは、行ってほしいと、自分に、告げた]
[その言葉に。力なく、ふるふると、首を横に降りかかる。いやだいやだいやだいやだいやだ! その言葉だけが頭の中を駆け巡る。
やっと、会えたのに。ずっとずっと会いたかったのに。まだ、わたしは]
……っ
[けれど。ユーリエッタの瞳は。言葉は。真っ直ぐに、響いて。
ぐっと歯の奥をかみ締めて、顔を上げる。
そうだった。自分は、この子に勇者って呼んでもらえる限り。勇者でいようって、決めたんだ。なら。ここで、わがままに駄々なんてこねていていいわけがない。
ゆーがここでできることをするっていうなら。自分も、できることをする。
大事な人のところに、すぐにも戻りたい気持ちは、自分にだって、痛いほど。よく。分かるのだから]
…うん…わたしも。
だいすきだよ。ゆー。
[抱きしめてくれる大事な人を。大好きな人を。
ぎゅぅっと強く。抱きしめ返して。いつまでもそうしていたい誘惑を、振り切って]
…お願いできますか…ってーのはちょっと違うかな。
[シャルロットの、願いに、答えて。
ここに来る前、かけたゴーグルを、直しながら。
ぎゅっと奥歯を、かみ締めながら。
にぃっと作ったのは、形だけでも繕った、余裕満々の笑み]
ウチはジャスティス急便。そんなときは、配達一件お願いします、だよ。
[言って。ぽんと、シャルロットの頭に、手を置いて。彼女をジャス天号へと導いて]
まかせて。
…うん。また。
[急いで、と。だいじょうぶだと。また会おうと。告げる言葉に。頷いて。返すのは、ほんの短い言葉]
ンじゃあ、あなたの町の…うンにゃ、あなたの世界のジャスティス急便、あなたの大事な想いもまとめてしっかりきっちりお届けします!!
[自分を奮い立たせるように、大きく声を張り上げて。シャルロットを乗せたジャス天号は、振り返ることなく、真っ直ぐに。
ふたたび、空に浮かぶ箱舟へと]
―NOAH 玉座の間―
まいど。
安心して、ぐらじー。花は轢いてないよ。それと…ジャスティス急便のお届けものです。
あ、受領証は要らないからね。
[凍りついていく世界に同調する速度で。玉座の間へと、たどり着く。
シャルロットをその場に下ろし。
グラジオラスの元へと向かうのを、見守り、確かめて]
[その場にいたドンファンに、じ、と、視線を向ける。
まだ、何か手を打たないと大変なことに>>89、なんて手をこまねいていたとしたら。その顔にタイヤめり込ませてやる。
…もちろん、何かを決めた様子なら、そんなことはしない、けれど。
ぐいっと襟首を掴み、引っ張り下げて、背が高すぎる彼と強引に目線を合わす]
いい?ドンファンくん。よく聞いて。
この舟を処分すんのに、ただぶん殴って。飛ばして。消せばいい、なんてことはないってのは、もう分かってもらえたよね?
[それが。さっき、散々確かめようとして。回りくどいやり方を取った挙句、伝え切れなかったこと]
それじゃあ、飛ばされた人たちは。みんなは。帰って来れないかもしれない。
飛ばしたのはドンファンくんじゃなくあの機械だから。
あの機械を利用できないと、会えないままになるかもしれない。
[と。それが、箱舟を破壊しながら、玉座の間だけを標的から外した理由]
それに。
…これは、わたしも甘く見すぎてたけど。
この舟の力は、強すぎる。
舟をそのまま飛ばしたんじゃあ、飛ばした先が壊される。
まさか、それでいい…なんて、言わないよね?
[彼だって、彼なりの正義を背負った人間なんだから]
つまり、こういうこと。
舟は、どうにかしなきゃいけない。
舟に飛ばされた人たちも、連れ戻さなきゃいけない。
それから、舟にもうこれ以上なにかを壊させちゃいけない。
…でも、その方法は。
[最初は、暴走したジェネレーターを使って。生じた歪みに自分が飛び込んで、向こうにいる人たちをすぐに連れ戻して。そして、暴走が破壊に移る前に、ジェネレーターを宇宙へと投げ捨てる…つもりだった。
たとえ自分の命に代えてでも。
けれど。
その見通しさえ、甘かった。アニュエラが埋め、グラジオラスが張り巡らせてくれた制御さえ跳ね除け、既に破壊を始めたジェネレーターは。もう、自分の手に負えるものではなくなっていたし。
いま、こうして、ゆーが。世界が、凍らせてくれていなければ。そもそも、ここにこうしていることだって、できなくなっていたかもしれない]
…方法は。
もう、君の力に頼るしか、残ってない。
だから、ドンファンくん。考えて。
君の力は、君にしか使えない。どれだけ制御できるかだって、君次第。
[だから。考えなしに力を振るうだけの彼には、任せられない、と。一度は切り捨てようとしたのだけど]
成功するまで挑戦できるようなチャンスは残ってない。
こうやって凍ってるのだって、いつまで保つか分からない。
その状況を、君に頼るしかないんだよ、ドンファンくん。
[すぐ目の前にまで持ってきた顔をじっと見つめて。告げる]
…君は、愚者になるって、ゆーと約束した…って、言ってたよね。
[不意にこぼれたのは、唐突な問い]
なら、今、ここで。ほんの短い間だけでいい。
ここを乗り切るまでだけでもかまわないから。
いまだけは。勇者に…英雄になるって、わたしと、約束して。おねがい。
[じっと、瞳を見つめて。告げて]
…それでもまだ分かんないっていうんなら。
今すぐ何十発だってぶん殴ってやる。
[物騒なことを言って。突き飛ばすように、掴んだ襟首を離す]
もちろん、ただでなんて言わないよ。
――――ほら。
[言葉を口にしながら。ジャスティス急便のロゴが入った帽子を、おもむろに外して。その中から、ばさりと長い髪が、こぼれ出る]
これ。勇者装備。
なんとびっくり世界も認めたお墨付き。
ほい。
[その帽子を。ぼふっと強引に、彼の頭にかぶせて]
それ被ってる間に、ジャスティス急便の社名に恥じる行いをしたら、あ と で 必ずぶっ飛ばす。
[…まぁ。正直なところ。人にとやかく言えるようなこと、自分だってできてないんだが。それはいまは内緒だ]
…じゃあ。ここは、任せたから。
わたしにできること、ここには、もう、ないし。
[告げながら。グラジオラスとシャルロットにもどうするか、聞きながら]
…わたしにできるジャスティスは、ここまで。
だから、もう、行かないと。
[ジャス天号のスタンドを、上げて。ぽんぽんといたわるように、そのハンドルを軽く叩く]
ごめんね、ジャス天号。
ほんのちょっとだけ。ジャスティスでもなんでもない、わたしのわがままに付き合って。
[言葉とともに。ペダルへと足をかけて]
じゃあね。
がんばんなよヒーロー!
[最後にドンファンに告げたのは。奇しくも彼と最初に会ったときと、よく似た言葉。
その一言を残して。凍りついた世界に、一陣の風が吹いた]
―凍るジンロウ町―
[すべてが静止したそこを。髪をなびかせ、疾り抜ける。加速は止まることなく、時さえ追い越そうとするように。ただ、だいじなひとのもとへ、駆けつけるために。]
…ゆー。
[勇者であり続けるっていう約束も、したけれど。それとは別に、もうひとつ]
[こんどは。こんどこそ、ずっとついてるって、いったんだ]
ゆーり…
[風に乗り、風を超えて、風を突き破り。ジャス天号は、ジンロウ町の中心街へ]
[あとでまたあおうなんて、まってなんかいられない]
ユーリエッタぁああああああ!!
[あとでじゃない。いま。すぐに]
[はらりと散る、あおいはなを、掴もうと、するように]
[そこにはもういない、けれど、胸元に、たしかに感じるあたたかさを頼りに]
[だいじな、だいすきな、ずっとずっとさがしていたひとのなを、よびながら]
[カンナギは、そこに、手を伸ばした]
― 回想・噴水前 ―
「ウチはジャスティス急便。そんなときは、配達一件お願いします、だよ。」(>>124)
えへへ、そうでした。
んじゃ、世界のジャスティス急便様。
ユーリエッタ=ル=ダルク様からのご依頼で、自ら役目を果たしたこの赤薔薇の配達をお願いします。
依頼主は、ユーリエッタさんなのでお代と領収書は、「ユーリエッタ様」でお願いしますね。
[そういって、悪戯っぽく二人へ微笑み、ジャス天号へ。]
― 玉座の間 ―
[いつもの1.61倍(当社比)のスピードでジャス天号は天を駆ける。
あっという間に玉座の間に到着]
お勤めご苦労様でした。(ぺこり)
あ、ちゃんと領収書を依頼主さんにお届けしてもらうところまでが、お勤めでした。
[カンナギに頭を下げると、慌ててグラジオラスの元へ駆け寄る。]
ただいまぁ!
[とびっきりの笑顔でグラジオラスに飛びつくのであった。]
―回想・玉座の間―
悪いがもう一度説明しなおしてくれ。
もっと解り易い例えで、だ。
[ユーリ達が去った後、玉座の間では静かな戦闘が2つ繰り広げられていた。
1つは箱舟中に咲いた魔法の花が自分達の居る所を避けて他所へと魔力を吸い上げるように宥める事。
もうひとつは…]
だから。
もう一度その次元じぇねなんとかの仕組みをだな…
[以後どうして行くのかの説明を聞いていたが理解の範疇を完全に越えていた為、ドンファンに何度も同じ説明をさせていた]
結局どうするのだ、壊すのか?止めるのか?それとも我々で扱えるように制御するのか?
しかし壊す・止めるにしても真下には町があり人々が居て…花達が生きている。安易な手段では全てを巻き込む事になるぞ。
[暗に、此処ではない場所へ行こうと言っているようなもの]
―回想・玉座の間―
…正直、この花達を抑えていられるのもそう長くはないのでな。本当に箱舟中に魔力が溢れ出ているというのに何故此処を…
[チラ、とジェネレーターのある方へを振り向いた]
なるほどな。
全く、魔力だけでは飽き足らずいじげんの力も欲するとは…グルメな花になったものだ。
どうせなら中立亭のカレーを食えば良いのに…
[中立亭の名を出した時、ほんの少し懐かしげに目を細めた。残ったアリアや皆は無事だろうか、と。]
―回想終了―
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