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我等の新世界のために――
スペンサー少尉。それ以上動かない方がいい。
生きてこそ、為せることがあるだろう。
僕の腕前が悪いことに賭けるのもまた、適切とはいえない。
[ユージーンの動きに察して、キャロルが動かぬよう制す。]
[それは一瞬。
――理解する。
―――きっと、理解していた。]
[黒の男へ銃を向け。]
……知らんな。
[リッターへはただそう返す。]
[どさり。倒れた小さな身体に目をやると、じわりと血が拡がっていった。]
……すぐに命を落とす。
だから、苦しむな。
知らん、か。それでもいいさ。ルーサーの命はルーサーが世話をする。
そうだろう?
[リッタとキャロルの声が交錯する中瞬き]
我は我の為す事があるので、
オマエにも謝れぬな。
[コートの裾を翻しキャロルへと振り返る]
ひとつ伝えておこうか、
オマエはイイ女だよ。
[遠く銃を構えるキャロルを視界に捉え
迷う事無く指にかかる引き金を引いた]
――パァン…
[引き鉄を引くのは同時だったろうか。
どちらが速かっただろう。
弾丸の行方を見ることなく、
キャロルは、紅い華を――真っ赤な華を散らせながら、
そのまま崩れ落ちた。]
……ふ、
……………ばかも……の……が。
[結上げた髪が解けて、地面に広がった。
蒼い瞳は最期に何を見たか。
*血が、口紅のように唇を彩っている*]
[傍らでリッタがニーナにかけている言葉
向けられた弾丸は頬を掠めていったのか]
言い忘れたが、
[倒れるキャロルの黄金色の髪が闇に舞う
前髪の奥で細めた黒の双眸は其れを捉え]
――莫迦はお互い様だ。
[騒然としている周囲をぐるりと見回して]
ルーサー、少佐を保護して一旦離脱しよう。
頭を失ったとは言えこの数の相手は面倒だ。
[ニーナに語り掛けるリッタを眺め瞬き]
未だ終わってない、
想い出に縋るよりオマエは前を向け!
〔事の首尾を見届けるのへは、そう時間はかからなかった。
未だ硝煙を纏う相棒へと、軍帽を浮かせて合図を送り――〕
…お疲れさまでした、ユージーン…
ええ、速やかな離脱を。
今度こそ、内偵者が用意を整えている頃でありましょう。
〔声音には疲れが滲む。床へ散った血痕と、
うら若き娘らの屍に溜息をつき…リッターに
爪牙を振り払われると、最早必要のない其れを解く〕
…お好きになさい。
信頼できる相棒を救って戴いたので、お救いしたまでです。
…此方の上官の名に於いて、貴方の市民権と財産は
必ずや保証されるでありましょう。
――併し、二度と軍籍に入れるとは思わないことですね。
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