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[首を捻りながら
雪の上 籠の中のものへ、手を伸ばす
中には、スコーンとりんごのにおいのジャム
いつ作ったんだろう
そもそも死者の自分に、お菓子なんて作れたっけと
首を傾ぐものの]
[ジャムを塗って さくりと口に入れれば
やはりそれは、自分の作ったものの味]
[けれど、ジャムだけは――――]
不思議ね、リューバ
あなたのりんごと、違う味なのに
すごく懐かしくて、しあわせな味
[さくり さいごの一切れを口に入れれば
まっしろの空を見上げる
――今彼女も同じ空を見ているのだろうか]
[おねえちゃんと一緒に居られたこと
わたしは しあわせだよ
それは、夢の中の彼女へ
伝える事ができただろうか
おねえちゃんは――
わたしといて、しあわせだった?]
[少女の問いに同調するように、花も揺れる]
[もうひとつあった、ゼラニウムの花言葉は、
君ありて、――――**]
[ 喉の奥から変な音がした、と思ったら肺腑が燃えるように熱い。
せり上がるマグマが地面に跳ねた。]
な…………!
[ 声は出ない。
傾ぐ身体。
そうして思い出す。自分が戦場に居た事を――――――]
[ では、今まで見ていたのは。
撫でて来た子どもら。
慕ってきた幼い獣たち。
懐かしい顔。
挑んできた焦茶。
それを心配したちいさな女の子の願い。
――――夢か。
死ぬ間際、痛みを忘れる為の脳内麻薬が見せた幻。]
[ ヒューヒューと喉が鳴る。
視界はこんなに紅いのに、距離が遠いからか死にかけだからか、声は届かない。
知らず伸ばした右手は「お揃い」のようにあかく。]
[音もなく降り続ける大粒の雪の結晶は、
あたたかな光に煌めいて
まるで光の花が散るよう。]
――みんなが幸せでいられると、いいな。
[ちいさな手のひらに舞い降りた白が、風に飛んでゆく。
門をこえて、水車をこえて、森をこえて
どこまでも、どこまでも。]
これが奇跡の光なら
みんなの道を照らしてくれますように。
[ふわりと揺れる黒のフレア。
進む足は、教会のなかへと。]
[――――ばたん。]
[そっと、扉が閉じる。**]
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