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――あ――がっ―くぅ―……!
『アストラル』、コン……トロール、 オー…プン――
[みしりみしりと悲鳴を上げる機体を、無理矢理にバンクさせて左下に抜けようと、操縦桿を倒しペダルを蹴る
。その放たれたビームのほぼ真横を抜けるが、それでも幾許か遅かったようで右翼が半分に近く、消し飛んだ。
それでも置き土産のようにアストラルを『アンギャルド』付近に炸裂させて。]
――このっ、言う事、聞けっ!飛べっ!
[暴れる機体を、力ずくで抑えて飛ばす。それももう限界に近い。
それでも尚、バンクした機体を上方宙返りで高度を戻す機動、シャンデルでもう一度同高度まで引き起こしす]
全駆動回路リミットオフ、スクランブルドライブ。
核から駆動タービンまで、過駆動励起。
全速全開、オーバーブースト!
『ミストラル』左翼に集中過剰展開!
[核が、全てを搾り出すような駆動で悲鳴を上げる。
機体も同じ、空中分解寸前だろう。
それでも、持てる火力の全てを以って、機体は翔ける。行跡を橙に染めて。
きっと、これで最後だ。けれど自分がダメでも、まだリトルアースが、ニーナが居る。
せめて、何か後に繋がなければ、今まで飛ばしてきた意味が無いし、飛んできた理由も無くなってしまう。]
― リラックスルーム ―
『時にじいさん、ナサニエルが堕ちるところは見たか?』
何だって?
[思い出したかのようなゴードンの問い。]
『その様子じゃまだ知らないみたいだな。ほらよ。』
[言ってゴードンは、モニタ上にそのシーンをプレイバックさせる。]
こいつは……例のシステムにやられたのか?
[ナサニエルが堕ちる直前、紅い光に包まれている場面だ。]
『俺が堕ちた以上、今年こそは奴の優勝かと思ったんだが……まあいい。
それよりもこっちだ。』
[視点が移される。
同時刻、ナサニエルよりは弱いが、同質の光を纏った騎士の姿。]
「これは……やられたというよりも――」
[撃墜時の様子を、視点を変えて何度も再生する。
いつの間にかイノウエ研究員やRedWOLFメンバーも集っていた。]
待て、ドラゴン注目でもう一度。
[リプレイ。
エキシビジョンで舞っていた竜が、そのダンスを止め堕ちていく。]
『この直前から Silvern はアンギャルドの援護に入っています。攻撃対象は、ウィルアトゥワ。』
[技術スタッフが補足する。]
状況からは、コレクターの方が仕掛けたように見えるな。
『じいさんも、奴がやったと思うかい?』
[ゴードンの問いに、しかし]
あくまでそう見えるだけだ。
だが、ゴードンは……コレクターらしくない飛び方だとは思わんか?
[ピットアウトから墜落までの、Silvernの機動。]
[数多くの強豪が参加するこの大会、共闘は珍しい行為ではない。しかし]
優勝よりも、アンギャルドを護る方を優先している。
少なくとも俺にはそう見えるね。
“早く”
[中央空域に向けて飛ぶ、その機体を声が急かす。中央空域では、たった今シャノンが戦っているのだ。移動なんかに時間をかけている暇はない。急げ]
“早―速くはやく―は――速―はやく―く”
[その思考に、空白が混ざる。気体のダメージこそ抑えることはできたが、エネルギーの損耗が激しすぎる。
それでも別にかまわない。ただ、なすべきこと、自分のなしたいことを果たすまで体と機体が持てばいい]
[視線の先を走る赤い閃光]
[ばつんっ。と。そのとき、何かが繋がった。旧い旧い記憶。そうだ。あのとき。じぶんは。
物言わぬただの力で、何も思わず、ただ壊すことしか知らず、そして。
破壊の果てに、あの赤い光と出遭って、初めて恐怖を知ったんだ。形を成さない自分、壊されることはないと思っていた自分を“破壊”しえる、あの、赤い光に。
怖いはずだ。恐ろしいはずだ。自分は一度、あの光に負けたのだから。
けれど、今は]
お お お お !
[声を張り上げ、雑念を振り払う。そうだ、もう、過去の記憶なんか雑念に過ぎない。もう、怖くなんてなかった。
あのころの自分とは、もう、違うんだから。
自分にはフヅキがいる。ウィリアムっていう友だちもできたし、シャノンだって戦友だ。
この地球に来てからでさえ、多くのことを知った。
それさえあれば、赤い光くらい、怖くない。
今はただ、決着をつけ、そして勝つ。そのために]
フヅキ、力を―――!!
[今、戦場へ]
−会場・治療室にて−
敗れた以上、私は間違っていた、という事だな……。
約束は果たすしかない。
[怪我が治りきっていたかどうかはわからないが、荷物をまとめ準備をし治療室を出ていく]
[後に、治療室で綺麗にたたまれた彼の服が見つかるのと同時に、会場内で人目を避けるかのように歩く人物が現れるのであった。]
コレクターの奴が何を考えて、何をやったのかは分からん。
だが、ひとつの要因になっているのは確かなようだ。
これは、奴に問い質した方がいいかもしれんな。
そういうわけで、ちょっくら治療室まで出撃してくる。
貴重な話、感謝するぜ。
[ダグラスは、リラックスルームから立ち去る。
そして、研究員も――]
ああ、イノウエ君は外しといてくれ。
「え?」
パイロット同士の方が話しやすかろう。
それに奴とはゴードン経由でしか顔を合わせたことがないし、話がややこしくなる。
「分かりました……サボらないでくださいよ?」
うっせえ。
お前さんこそアンギャルドから目を離さず観戦してろ。
[と、招待パスを研究員に渡し、その場で解散した。]
[今まで、それこそ50年以上もBFを生き甲斐にしてきた者が、いきなりそれが無くなればどうすれば良いかに戸惑ってしまう]
あんな事をしてこのままBFに乗り続けるのも裏切りではあるし、これで降りても何か言われるのは想像に難くはない。
あの事への報いとしては……これで十分だろうな。
――大会本部・治療室前(>>+70のつづき)――
[考えてもしかたがないことだ。
コアの停止を引き起こしたものが何であれ、その存在はいずれは葬られると考えられる。表に上がるかどうかまでは分からないが。
つまり、自らの機体がコア停止にさらされることなんて、この先きっとない。はずだ。
だから少女が、自らの機体に「少女を見守る何か」が在るのかないのか、確かめることもできない。はずだ。というかそもそもそんなことどうやって確かめればいいんだ。
――しかし、一つの考えが消えるそばから新たな考えが浮かぶ。
それはまだ、少女の中で形を成さないけれど]
そうか……大切なもの、なんですね。
[不思議そうに少女を見つめているロジャーからかごを受け取った後、シャーロットの言葉(>>+71)にうなずく。
何を言っているのかは正確には聞き取れなかったけれど、大切なものであることは伝わったので、聞き返すことはしなかった]
何が空を飛ぼうと笑いはしませんよ、私は。
飛ぼうとする気持ちさえあれば飛べるんですから。
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