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― スターライナー内 ―
[併走する列車を眺めながらベッドで休み、目が覚めた。
とてもいい夢を見た気がした。なんの効果だろうか。(>>4:507)
しかし起きた瞬間、夢の記憶は掻き消えてしまった。
ぼーっとしながら星の生まれる星の駅への到着アナウンスを静かに聞く。(>>#7)]
…準備しなくちゃ。
[スーツケースを整理する。この後に必要なものはほとんどない。
必要ないものは申し訳ないが部屋に置いていってしまう。
でも、博士にもらった青い石とへびのびっくり箱、ようせいの粉は隅の方にきれいに収めた。
そんな準備をしているうちに、スターライナーは駅に到着した。
窓の外から賑やかなホームの喧騒が聞こえてくるようだ。]
あ、壺。
[ワンピースと帽子をかぶり、もはや手放せなくなった老眼鏡をかけて部屋を見回したところでスッチーの壺が床に転がっているのに気がついた。]
返しに行かなくちゃだね。
そうだ、残雪、一緒に行こう。
[部屋の隅でまるくなっていた残雪が、め〜、と鳴いて立ち上がった。
壺と小さなスーツケースを残雪の上に持ちあげて、最後に自分がちょこんと背に乗る。
長いことありがとう、と部屋をもう一度眺めた後、切符で扉を閉め、残雪と一緒にサロンの乗降口の方に向かっていった。]
― スターライナー内 ―
[スッチーはどこにいただろうか。見つけて声をかけた。]
スッチー。
壺、ありがとう、本当に楽しかった!
わたし、ここで乗り換えなんだ。
[お礼を言ってスッチーに壺を手渡した。]
でね、何度もお願いなんだけど、このひつじ、残雪っていってね、この列車に残すんだけど、たまにスッチーの壺から出てきたり壺の中にいたりすると思う。
そうしたらね、こいつ案外寂しがりやだから相手してくれると嬉しいな。
[残雪の頭の横に浮きながら手を合わせてお願いした。
残雪はふん、と同意するように鼻を鳴らした。]
[ハンスが鏡に触れる>>46と、その背に黒い黒い、深い闇のような色をした烏が覆い被さっていた。]
――っ!
[一瞬、恐怖に足が竦むも、すぐ後に生まれたのは、熱い熱い憎悪に近いもの。
どうして、どうして彼が、こんなものを背負わねばならないのか。
心に浮かんだどろりとした感情を押し隠して、微笑みを浮かべる。]
お月様はふたり仲良し?
[震える指先>>47を包み込むように手を伸ばす。
拒まれなければ、優しく柔らかく、そっと触れただろう。
泡のように浮かび上がってきた記憶を、そのまま声に乗せた。]
[震える指先が暖かい手に触れる。]
・・・・・・・・・・・・
お前は、誰だ?
(君は)(誰?)
[烏は虚ろな眼窩をメルヴィへ向けた。]
・・・
[ちりりと指先が痛むようだった。]
あなたには渡さないわ。
(私? 私はメルよ。)
[ハンスの向こうに佇む烏>>52に向かって、通る声で思いをぶつける。
低く、強く、揺るぎない声で。]
……。
[触れた指先が熱い。燃えるようだった。]
星……そうね。
私たちの最期によく似ているんだもの。
[鏡の向こうの幼い姿が、シンクロするように口を開く。]
わたしはね、さいごは蛍のような、星のような光になって、体がきえてしまうの。
触れたかった
この、手に
[蛍があった]
探しているものは、
見つからないし手に入れられない。
僕も何時か、
・・・消えてしまうんだ。
心が・・・
[片手の指を広げ、自分の胸元を掴む。
痛みも苦痛も何も籠っていない仕草だった。]
じゃあ、ふたりでお願いしよう?
[触れた手を、優しく包み込む。
まるでそこに本物の蛍がいるかのようにそっと。
無感情な表情に負けないように、にっこりと微笑んだ。]
私も願うわ。
ふたりでひとつ、お願いをしましょう。
そうすれば、大丈夫。
[疑問の言葉>>59に力強く答えを差し出す。
神でも星でもなく、目の前の彼を信じていた。]
叶うわ。
私の体が消えてしまっても、願いは共にあるから。
[ふわり。蛍の光のように微笑んだ。]
……!
[体が傾く>>60のを見ると、慌てて支えようと手を伸ばす。]
[とさり]
[メルヴィに体を寄りかからせた。]
・・・消えないで
>>35>>4:327
[イリュージョン装置が視界に入った。
まだナッツは投影を受け付けていたろうか。]
― 少し前・壺内 ―
[投影は、街の夜景から深い緑の森と村の風景になった。(>>34)
マルセーが散らす雪の結晶のようなものが、森と綺麗なコントラストになり、思わず歓声を上げる。
と、なにかもの言いたげに装置を見つめる男性と、その男性を支えるメルヴィが目に入った。(>>63)]
…どっか、写す?
[とそちらに声をかけた。]
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