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…………はあ
[ジェスロはモクジュの村を発ってから何度目かの溜息をつく。その理由を知る木工職人は苦笑し、その原因である鍛冶師の青年は馬車内に石でラインを引いていた]
「ジェスロ、お前こっからこっち来るなよ?お前がそっからはみ出したら俺出ちゃいけないもん出ちゃうからな」
[念の為と計測してみたところ、強い水属性の魔素溜まりに長時間使っていた為か、ジェスロの属性は強い水を示していた]
「昔ぐらいだったらまだ頑張れるけど、今のは無理!計器ぶっ壊れそうな勢いで針ふれたし!!」
[壁材に隠れる姿は小動物を彷彿とさせたかもしれない]
フレイメア相手にするなら好都合じゃんか……
[そう声をかけても態度を硬化させたままの旧友に、ジェスロはほとほと困りはて、頭を掻くのだった]
[“昔ぐらいだったら”鍛冶師の青年の言葉にもある通り、今の体質になる前のジェスロの魔素は、突然変異か先祖がえりか、火山という強い火属性の環境に生まれながら強い水の色を持っていた。
反属性を持って産まれた為に環境に対応しきれず、村一番の虚弱体質であった彼が、如何にして今の体質になったのか――…
それは彼が、魔素吸収型危険種フレイメアによる魔素喰らいを受けた事が発端となる]
―酒場―
[ヴェルと別れてから向かった先で、また昨日のように「豆茶のような」火薬をオーダーする。
そんな中で、張り紙に記された依頼を眺め――そのうちのひとつが目に留まる]
失せ物探し?
[探し物は木の箱という。
落とした心当たりだという場所、それは丁度、昨夜通り掛かった道だった。
――ぱちり、瞬いて]
あぁ。
忘れていた。そういえば僕はあの箱のことを、
……まさかこの依頼の品、これのことか。
[ウエストポーチから出した木箱を手のひらに乗せ、しげしげと眺めた]
[依頼内容そのものの他に、引っかかったこともあった。それは依頼主のフルネーム。
もう一枚張り出されている依頼内容も、同じ名前で届けられていたものだった。其処には聞き覚えのある名前も記されてあった――護衛依頼だ]
………かの御仁、今は冷静に話ができる状態なのかね。
まぁ、とりあえず届け出ておこう。
水中呼吸薬……は僕には必要ないものだが。
割れ谷へ討伐隊が組まれる折には、或いは薬の一つとして携えても良いやもな。
[酒場のカウンターに、失せ物探しの依頼品であると思しきものを見つけた旨を話し、木箱を手渡した。
直接依頼主に会って届ける、という行動は取らなかった。
一先ずは、依頼人が結果を確認するのを待つことになる]
しかし。
何処にでも、心配性の兄というものは居るものだね。
まぁ、心配性という点は、僕に言える台詞ではないやもしれぬが――。
[彼の「可愛い妹」の行方については、敢えて、何も言伝することは*なかった*]
せっかくだから、機巧使い ロッテ は 探究者 エドワーズ に投票するぜ!
[...は残った品物で商売を続ける。ヌァヴェルとヘロイーズから薬草を見ながら。
すると酒場から戻ってきたエルバンが突然何か言い出した。]
「アブラハムさん!私はこの依頼を受けたいです。」
[何と泥棒確保を挑んできたのだ。悩む...にエルバンは…]
「泥棒ごときに負ける様じゃ、冒険者として失格になります。
このまま誰かに任せたらいつまでも冒険者になれません。今一度…お願いしたいのです。」
[「何か悪い物を食べたのか?」と思いつつ、...は…]
この依頼、別に誰が引き受けても良い。例え誰であろうとな…。他の依頼でもそうじゃよ!
では、報酬は………である。引き受けるかね?
[エルバンは首を縦に振る。そして*見送った*]
どうやらエルバンは勇気を持ったそうじゃが…やっぱり持ってない気もするのう…。
−西の荒野の結構行った先のバラク開拓村のちょっと手前の駅屋と言う名の掘っ立て小屋−
タウン・ナリヤの近況がぃ?
そぉなぁ…
[物々交換の合間に、世間話のように互いの情報を交換する。
なにやら魔素がらみの怪しげな積荷が町に入り、ひと悶着あったらしいこと。
ナリヤの漁師が北の割れ谷で襲われる事件があったこと。
南の樹海で、未知の危険種らしき鳥と、その鳥が関係しているらしい奇妙な現象が、黒い湖で起こっているらしいこと。などなど。
そこそこにきな臭い事件もあったが、相手の反応は、なんだいつものことかと暢気なものだ。流石に筋金入りの開拓民は年季が違う。
オノンが知る限りのタウン・ナリヤの情報と引き換えに、オノンが問うたのは]
こごらにゃ危険種って出んのがぃ?
[付近の危険種の、傾向と分布。
その情報から、これから向かう先。泥と山の中の道なき道の道中で出会うかもしれない危険に、なんとなく想像を巡らせておく。
とはいえ来たばかりの大陸だし、見も知らない土地だ。
見ず知らずの土地で予想を裏切られることなど、いくらでもあった。だから、結局のところは出たとこ勝負の成り行き任せ。
依頼の内容が【調査】であれば、守るものは己の身一つ。気楽なものだ]
おぉ、あんがどなぃ
これもオマケでつげとぐがらよ
馬っこがへそ曲げたとぎにでも食わせでやんなぁ
[話を切り上げ、腰を浮かせる行商人に手渡したのは、馬が好んで食すマゴノカイナと呼ばれる根菜だ。
種を問わず草食動物に真っ先に食われてしまうため、どこにでも生える草であるのに見つけることができるのは割りと幸運な部類に入る。
タウン・ナリヤを拠点に、旧大陸の物資を開拓村に送り届けて回るこの行商人の情報は、その草を渡してもおつりが来るだけ有益な情報だった。と、思う]
したら気付けの草ば置いてぐがらよ、余っちまったら駅屋に置いてってぐれな
ま〜、誰か使うべよぉ
[どのみち、眠気覚ましも酔い覚ましも自分には無縁の代物だ。
物々交換のネタになるかと思って、種を採りがてら葉の方も多少集めておいたが、少しばかり採りすぎたかもしれない。
ついでにと、化膿止めやら咳止めやらの草やら、あれもこれも、と、少々かさばる草葉の類を駅屋においていく。
ここから先は人の通らぬ道なき道だ。物々交換の当てもないなら、余分な荷物は置いていくに限る]
そんじゃぁ、オレはこれで
いい旅になるといいべな
[お互いに。笑みを残して、駅屋を発った]
―― 昔話
[たたら部の村では16歳になれば成人と認められ、火山での立ち回りを覚えさせられる。だが、よく体調を崩し伏せる事が多かったジェスロは16歳になっても、火山へ行く事を許されなかった。
そんな彼を不憫に思ったのか仲間外れと感じたのか、彼のたった一人の友人である鍛冶師見習いは、彼を火山に連れて行ってやる為に、大人達に内緒で魔素吸収に関する知識と、火山に出る危険種の活動期を頭に叩き込んだ。
そして決行の日、魔素吸収の印を掘った魔法銀の護符をジェスロに渡し首から下げさせる。よっぽど護符の出来がよかったのだろう、ジェスロが体調を崩す事も鍛冶師の少年が影響される事もなく、二人で火山を登る事が出来た。
行動していたのが彼ら二人のみであったなら、危険種は現れず、事故も起きず、二人は無事に帰路に着く事が出来たのだが――…]
―ジェスロの自宅前―
[いつ帰ってこれるか分からない状態で、まったくなんの挨拶もしないというのも何だ。あれから数日かけて必要な薬は作り上げ、そろそろ出かけるという段階になって、やっとここを訪れる]
(でも、ほら、出かけてるかも、だし)
[こそこそと。ノックをしてみる。本来なら家人に聞かせるためにするノックであるはずなのに、家人に聞かれるのを避けるような、小さな音。しばらくそのまま様子を伺う]
……。
(いな、い?)
[小さく首を傾げる。時間も冒険者であるジェスロが出かけていてもおかしくない昼間だ。いないものは仕方がないと、それだけ顔を合わせない条件を揃えた癖に、いないことを寂しく思いながら家の前を離れようとした]
――きぃ
[微かに聞こえた音。不思議に思って振り返ると、先程はきっちりと閉まっていた扉がほんの僅かに開いている]
……ジェスロ、さん?
[いるのだろうか。それにしては、普段の彼らしくない。そろり、と近寄ってみるけれど、扉の向こうからは何の音も聞こえてはこない]
…?
[微かに開いた扉の隙間から、小さな紙片が差し出された]
え、と…私、が受け取っていいの、かな…
[自信なさげに聞いてみるが、小さな神は依然としてそこにある。ダメなら引っ込むだろうとそれを抜き出すと、扉の隙間がそっと音もなく閉じた]
………???
[一体なんなのだろう。訳が分からないながら、手の中に残った小さな紙――カード?を見た]
『家のものはしばらく留守にします。御用がありましたら、後日に願えますでしょうか。 “屋根裏の怪盗”』
……。
[それを見たヴェルの顔は、心底不思議そうなものだった]
−回想・酒場にて−
そぉなぁ…必要経費っつっでもよ、ほれ、これから行くとごってあんま人のたくさんいねぇとごだべ?
[開拓村よりも、旅の道中の冒険者や行商人と取引する機会の方が多くなるだろう。
そういった場所では、貨幣通貨よりも物々交換の方が何かと便利で確実なことが多い。
それそのものだけでは使い道がない硬貨よりも、即座に使い道のある現物の方が好まれるためだ]
ま、そっちの話は後でいいべよ
ブツでも話でも、言い値で売るがらよ
[経費がどれほどのものか分かるわけでなし、何より物珍しげな場所と種の情報が十分すぎる報酬になっていることもあり、エドワーズからの報酬の申し出>>*4は、暢気に曖昧にはぐらかせた]
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