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『嬉しい。』
『言っちゃって良いのか、迷ってたんだ。』
『部活、今日は終わったけどまだ学校いる?』
『いるなら、一緒に帰ろ。』
[風音のためなら、って言葉を反芻しちゃって。顔が赤くなるのを感じているけれど。
恥ずかしいなって思うのより、キミと一緒に帰りたいって思う気持ちの方が、強いんだ*]
── 2度目の春 ──
[二人で迎える二度目の春。
約束通りあなたと桜並木を散歩したの。
11月のあの日歩いた桜並木は満開の桜が彩っていて
花筏の川面は一面のピンク色だった。
私の胸を彩る鍵も。
私の腕を彩るピンクも。
全部全部溶け合って。ピンク色の世界を二人で、あなたにピッタリ寄り添って歩いたんだ。]
綺麗だね。
……ありがとう。
[なんのことだかあなたには分からないかもしれない。
でもね……伝えたかったんだ。
ありがとうって。*]
『えー。(羽で泣き真似するインコのスタンプ)』
『喜ばないわけないでしょ!』
[でも、「予定埋まったからね」と父さんに釘は刺しておこうと決意した]
『今屋上。部活は今日は終わりー』
『雲が綺麗だよ。』
[ここに来る、といわれればきっとそのまま寝転がって空を見上げて。
どこかで待ち合わせになれば、おっとり刀で向かおうと*]
― 桜ノ雨 ―
[高校二度目の春。
一度目は独りで。桜舞う中、色なんか瞳に写すこともなかった。
二度目は二人で。桜舞う中、瞳に映るのは桜をの桃を映した貴女の笑顔。
ずっとずっと、二人でいたいと歩いたあの川辺は、花の雨に染まって。
一面を覆う桃と薄紅の中で、愛里ちゃんの体温と笑顔だけが、映えて見えたんだ。]
お礼をいうのは僕なんだけどなー?
ありがとう。
[にっこり笑って、寄り添ってくれる恋人に言葉を返す。
お礼を言いたいことが多すぎるんだ。これまでも、いまも、これからも*]
[あなたが私に微笑んでくれるから。
ありがとうって返してくれるから。
眦を細めてあなたを見詰めて、組んだ腕をぎゅって抱き締めた。
あの春の日に、私を見付けてくれてありがとう。
少しだけ遅れたけど、私もあなたを、見付けたよ?]
お腹空かない?
公園でお弁当、食べよっか。
[石組みの少し小高い公園は、花見客もいたけれど。
地元の小さい公園だから、スペースは十分にあったの。
子ども達が駆けまわって遊んでる。
うららかな春の日に、約束通り、お弁当を作ってきたよ。*]
[愛里ちゃんが抱きしめてくれるから。
愛里ちゃんのそばにいさせてくれるから。
見つめる瞳を見返して、そっと額に口づけた。
あれから一年。
無色の世界の中で、たった一人見惚れたひとが、隣にいてくれて。
本当に、ありがとう。]
お腹空いた。空いてなくても今空いた。
食べよ、愛里ちゃんのご飯美味しくて好き。
[目を細めて、愛里ちゃんの笑顔を見つめて。
少し離れた小さな公園だからか、人気もまばらな中。
小さなベンチに並んで座ろうか。
ラフに巻いたストールが汚れないように、もう一度首元に巻き直してからね*]
[桃君と並んでベンチに座って。
あなたの仕草に目を細めるの。
ハラハラと舞い散る桜は公園にもたくさん植えられていて。
ベンチの上も桜の枝が覆って居た。]
へへっ。今日はね。から揚げと玉子焼きと、ポテトサラダです!彩はブロッコリーとミニトマト!!
から揚げ大好物だから、お母さんと一緒の間に覚えておきたかったの。
2度揚げしてるから、火はちゃんと通ってると思うよ?
おにぎりと、ラップサンドもあるから、いっぱい食べてね。
[そう言って微笑みかけて。]
[入学した時は作れなかった揚げ物。
一つお箸でとると差し出した。]
はい。あーん。
[零れないように手を添えて。
当然のようにあなたにから揚げを差し出すの。*]
[愛里ちゃんがバッグからお弁当を取り出すのを、にこにこの笑顔で見つめてたんだ。
その横顔を見てるのが好き。そのしぐさを見てるのが好き。
僕のためになにかしてくれてるのを見ると、それだけで惚れ直す。
舞い散る桜は綺麗だったけれど、そんな花吹雪なんかより、愛里ちゃんのほうが、ずっと、綺麗だ。
少なくとも、僕にとってはね。]
やった、大好き。
愛里ちゃんの卵焼きもポテトサラダも大好きだし、唐揚げもうれしいなあー。
来年もまた食べられるってことだもんね。
[差し出された唐揚げに、あーんって。
もちろん、喜んでかぶりつくんだ。
うれしい、すっごくうれしい。*]
[から揚げを食べてくれる桃君を目を細めてじっと見詰めて。
美味しいかなってドキドキするの。
私も一個つまんじゃおうかしら。]
来年も……、高校卒業してからもね。
食べられるようにって。
思ったんだぁ。
桃君もね、好きな物あったら教えて?
好き嫌い無いって、何でも美味しそうに食べてくれるの嬉しいけど。
せっかくだから、桃君の好物も覚えたいんだもん。
[あなたの髪に桜の花びらが舞い散って。
そっと髪にふれると、花びらがハラハラと零れ落ちた。*]
[近い未来も、さらに時を重ねてからも
傍にいる君にボクの頬が緩まぬことはないだろう
それはボクがいつか私になっても
君への呼び方が一鷹、から旦那様、に変わっても
或いは――子供が生まれたら。おとうさん、に変わっても
でも今は。15歳と16歳のボクたちは
遠い未来の事に思いをはせつつ、今この時を愛し合う
熱を交換し合い、愛を交わらせ
互いを求める心の、ままに――暫くは
それが一時続いた後に、名残惜しく唇離し
見つめあう視線が絡みあった時であった]
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