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[ラボでの作業を続けていた。ほぼ徹夜の作業。サ=フラ=ワーの死の報が届き、初めて手を止めた]
そう…。
[キィ=キョウから事前に、もうだめらしいと聞いていたので、その事実には驚きはしなかったが、これで全員が感染している可能性の方が高くなった…。そのことに愕然とはしていた]
[必死の表情で、キーボードの上で指を躍らせる。
ウィルスの特定は、ほぼできた。
母星系では元来あった害など持たないはずのそれが、強すぎる宇宙線により、突然変異を起こしたものだと。
シ=オンの遺してくれたプログラムがそれを告げる。]
[しかし、現実はさらに彼らを酷い仕打ちを用意していた]
…うそ…。
[シュミレーションの結果は最悪だった。宇宙線の被爆量とウィルスの突然変異の可能性の高さ。全てが予想の範囲を超えていた。前任者が無事帰還できたのが不思議なくらいである]
じゃあ、ここにいても、KK-102にいても、結局は同じ結論ってこと…?
[その頃、キィ=キョウも同じ結論に達しいるとは、まだ気がついていない]
[シュミレーションの結果を携え、サ=フラ=ワーの安置が終わったであろう、キィ=キョウの元へ、重い足取りで向かう]
[医務室のインターフォンを鳴らし、入室する]
キィ=キョウ、シュミレーションの結果が出たわ。
あなたの予想通りよ…。
[大量の資料を見せる]
…………。
[女は集中しすぎて、来客に気づかない。
目の前に、資料を置かれ。
ようやく、顔を上げて――]
…………ローズ。
[資料が示すものは、自分の解析結果とほぼ同じで。
さほど驚きもせずに、それらに目を通して行く]
こちらでも、先程同じ結論に至ったわ。
[キーボードをカタカタと叩いて]
これを、見て。
[PCに映る、拡大されたウィルス群。
それらが突然変異を起こす様を見せて]
この。ウィルスが……ス=ティンたちを……。
[振り返ったキィ=キョウを見て、思わず涙がこぼれた]
こんな時に、誰の役にも立たないなんて…。
どうして、キチェスなんかに生まれてきたんだろう…。
[やがて大量の涙になり、キィ=キョウの膝元に崩れる
この基地に来て初めて流した涙かも知れない。
ずっと我慢してきたのが、最後に行き止まりに到達した感覚だった]
なんのために此処に来たのか、もうわかんなくなっちゃった。
何故、わたしは、キチェスなの?
何もできないのに…。
キチェスでも、
キチェスじゃなくても。
私は、貴女と云う存在がいるから、
未だ、自分を保っていられるの……。
[大粒の涙をこぼす目元に唇を寄せて、拭い]
貴女が好き――
ずっとずっと、すき、よ。
キィ=キョウ…。
[キィ=キョウをしっかと抱きしめた]
キィ=キョウは、逝っちゃいや、絶対、逝っちゃいやー。
[駄々っ子がするように、いやいやをしながら]
キチェスだからって、何かをしなくちゃいけないの……?
[ゆっくり髪を撫でながら]
私は……なにもしてくれなくてもいい。
悪戯好きで、奔放で。
でも本当は傷つきやすい繊細な、
――…人間のあなたが、すき。
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