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[『ドラガノフ』が絶命して半日もすれば。
その傷だらけの身体を黒い影が覆い。
後に残るのは―――。
長い黒髪の"見知らぬ誰か"だろう。**]
……満足なんて、もう一生できねえよ。
これで、満足出来るんなら、お前らと一緒じゃねーか……。
[激昂は去り、吹雪いた後のように心の表面が静かに荒れていた。泣きそうだったが涙は出ない。穏やかな支部での幸せな少年期の終わりを、遅ればせながら悟った。
ぽつりと語りかけ、あっさりと絶命したソレを見る。膝をついて虚ろな視線を合わせ、いっそ慈しむように赤の溢れる傷口をなぞらえる。まだあたたかい。血の色と死だけが等しいんだな、死んでいった皆はあんなに冷たかったのに。
再び武器を手に取るのに、ひどく時間がかかった。
ひっそりと、ナイフの刃を左手で握りしめて痛みを刻む。全てが終わるまで、凍ってしまわずにいられるだろうか、と小さく背を震わせた]
……哂わないでよ…っ。
[最期まで哂いながら逝った獣の傍ら。
片膝をついて瞳を閉じ]
……カーク。…アデル、カタリナ、ラヴィ…。
ユーリエ、アルフレッド、カシム、ミーネ…
[イライダにとって、神のような存在である、
9年前の北の国の小さな村での、
人狼騒動の犠牲となった孤児たちの名を呟く]
…シュテファン、アナスタシア、ミレイユ、
テレーズ、フィグネリア、リー・リー…
ごめんなさい…っ。ごめんなさいね…。
大丈夫、必ず仇はとるわ…
……生き残って、ごめんなさい…ごめんなさいね…。
[枯れることのない哀しみと悔恨の雫が零れる。
薄れることのない滾るような憎悪に任せて、ぎりと唇をきつく噛む
薄皮が破れ滴りかけた血雫を、
小さな赤い舌でなぞる様に舐めとれば。
馴染んでしまった血の味に、胸奥が疼くように痛むのを堪え、
暁色の瞳をぎゅっと固くつむった]
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