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【回想・朝・田んぼ】
ザリガニって害虫扱いなんだって。稲を食い荒らしたり、あぜに穴を開けて決壊させたりするから。
おいしいんだもん、みんなもっと釣ればいいのにね。
食べるときはね、おかあさんはね、二、三日泥抜きしてからって言うの。
あ、泥抜きって、水につけて放置しておくのね。そのほうがザリガニの中の泥が出るし臭みも消えるからって。でもそうすると、水っぽくなって味が落ちてしまうの。
おとうさんは断然、そのまま派。私もそのまま派。
食べるところ少ないけれど、味はまるっきりエビだしおいしいのよ。
紫籐くんは、何だか納得がいかない顔をしていたけれど。
なぜかなぁ?
[久しぶりで楽しいのか、一人で色々と取り留めなく喋っている。
やがて日も傾きかけて、釣果の確認。雛は100ほど釣ったらしい]
【回想・夕方・田んぼ→公民館】
[ふと見たバケツの中では、恐ろしい勢いでザリガニがひしめき合っていた。長峰あたりが見たら失神どころの騒ぎではないかもしれない…。
雛はちょっと困った顔をして]
調子に乗って釣りすぎちゃった…。
さすがにこれは持って帰るのも大変ね。でもまた放すわけにもいかないし。
[うーんと悩んでいたら、田んぼの持ち主の人が現れた。ザリガニ駆除を喜んでくれて、半分引き取ってくれた上にいくつかの花火をくれた]
わわ、ありがとうございます!
[高い花火を買ってしまったのであまり数がなかったのが心残りだったのだけど、これでもっと楽しめる。数えてみたら37本あった]
これ、みよ子さんに塩茹でにしてもらおうね。
[道具を片付けると、ぎっしりとザリガニの入ったバケツをふらつきながら運んだ。今晩の食卓には、真っ赤に茹で上がったザリガニが上るだろう]
ザリガニ100匹とか、激しすぎて卒倒する勢いですね!
中の人は元・野生児なので全然平気ですが、小百合は基本、家っ子かつ本の虫なので、生き物苦手です。
【夕方・公民館前】
[昨日借りたタオルや着替えを持って、川の上流にあるおばあちゃんの家に行ってきました。
紫藤君が自転車で持っていってくれると申し出てくれたんだけど…借りたのは自分だからと、言い張って聞きません。
結局、紫藤君と北斗君にも協力してもらって、3人で借りたものを返し、お礼を言ってきました。溺れた子が無事だったことも伝えて。]
…ふう。またごちそうになっちゃった。
[おばあちゃんはカステラを出してくれて、食べきれなかった分は、「お友達とお食べ」と持たせてくれました。]
花火大会のことを話したら、家にあった花火までくれちゃったし…お礼しなきゃ…あれ?お礼に行ったはずなのに…?
[臨海学校から帰った後にでも、お礼のお手紙を送ろうかな。そんなことを考えながら、公民館前を掃き掃除。]
【夕方・公民館前】
[大量のザリガニをバケツに入れて帰ってきてみると、玄関前で長峰が掃除をしていた。思わず越川と顔を合わせる]
…どうしよう、これ、見られたらまた…。
[裏の勝手口に回ろうかな、なんて考えて]
【公民館前→厨房】
[掃き掃除を終え、お夕飯の仕度を手伝おうと厨房に来たところで、置かれた缶に気付きます。]
あれはっ…!藤本先輩のデザート…!!
[どんなデザートが入っているんでしょう。すごく気になりますが、時計は無情にも、お夕飯が近いことを知らせます。]
うう…今食べたらお夕飯が…がまんしよ…
[泣く泣く、お夕飯の仕度に取りかかります。さあ、今日のお夕飯は何でしょうか?]
勝手口に回ると、厨房から出てきた小百合とばったり鉢合わせ。
びっくりした拍子にバケツが揺れ、ザリガニがぴょーんと小百合の顔に…という流れですね、分かります。
…分かるかー!
そうだったー!今日はザリガニの塩茹でがメインディッシュになるのだったー!
お夕飯の手伝いに行ったらザリガニわらわらで、また楽しいことになりそうですね。
【夕方・公民館内】
[小百合と健二の3人で着替えやタオルを返しに行った。
貸してくれたのはやさしそうなおばあさんで、カステラをご馳走してくれたうえに、帰りには花火も持たされた。]
カステラ美味しかったあ。
いいひとだね、おばあちゃん。
お礼?お礼のお礼で、お礼して……終わらないみたい。
[あはは、と小百合の言葉に笑った。]
[公民館に戻ると、残った掃除を片付けてから厨房へ。そろそろみよ子が夕食の準備に取り掛かるだろう。それを手伝うつもりだ。]
【→厨房】
【玄関前→勝手口】
[そっとその場を離れて裏の勝手口に周り、厨房へと。みよ子に大量のザリガニを見せると、目を輝かせて一番大きななべを取り出し]
「ほらここに入れな。まずは水洗いして泥を洗い流したら、酒につけて臭みを抜くから」
[後はみよ子におまかせして、雛たちは解散することに]
【回想 正午すぎ・船の上】
ああ、それか。
タライ持って行きたいって言ってたのに、忘れちゃったら大変だもんね。
[礼を言う梨子ににこりとする]
うん、大丈夫ならいいんだけど。
タライ……うん、そうだね。
[そして、船の運転を禁止されてふくれる梨子に、くすりと苦笑いするのだった]
[梨子の矢継ぎ早な質問に、マイペースに答えていく]
んー。そこまで大変じゃないかな。
みんな協力してくれるから、他の子とやってる事大して変わらないし。
…
兄弟かぁ。ぼくはいないからよくわからないけど。
そうだね。ここの生徒はみんなしっかりしてるよ。
梨子さんくらいが年相応なんじゃないの?
…
如月くんは、やっぱりおうちでいろんな人と触れ合うからじゃないかな?
ぼくは面倒見いいのかな……みんなが仲良くやっていけるように、って思ってるだけなんだけど。
桃子さんのことはよくわかんないなぁ。ミステリアスな子だよね。
…
弟か。確かにそんな感じだね。
クロか……最近会ってないなぁ。
…
塾? あるよ。
今回は先生に頼んで、特別にお休みもらってきたんだ。
[そんな風なやりとりをする内、いつの間にか寝ている梨子に、備え付けの毛布を掛ける。
寝言で連呼される名前に、恥ずかしいようなくすぐったいような気分になるのだった]
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