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[もし成美が聞いたら、怒り狂って墓から這い出て来そうなことを口に出して笑う。]
なあ、成美。
言葉にしなくても、伝わることってあるんだぜ――。
[だから俺は手紙を最後まで開けなかった。
開ける必要もなかった。と思っていたんだ。
今となっては、形見みたいなもんだから、ちょーっと惜しい。
ほんのちょっとだけな。]
[きっと魂は、人と人との絆、繋がりの中に宿るんだろう。
そうやって、ただの電気信号である心を、互いにバックアップを取りながら、未来へと運んでゆくんだ。
きっとな。]
んー。旅にでも出るかねぇ。
長い旅に。
たまにゃ、羽を伸ばしたっていいだろ?
[なんて言いながら、しょっちゅう旅行に行ってるのは内緒な。
いつも帰らないつもりで旅に出るのに、結局はここに戻って来ちまうんだから、不思議だよな。
俺は、煙草の火を消して携帯灰皿に仕舞い混むと、そそくさと家路についた。**]
―カフェ―
[自ら死を選ぶほどの狂気。
想像する事すら難しい。
首を振って、ため息一つ。]
……え?
[ちょっと?だいぶ、めんくらってしまった。]
そんな!そんな事ないっすよ。
龍さんは龍さんっす。
最初に会った時からずっと。
嫌いなんて思った事ないっす。
辛かったのに、大変だったのに、
沢山気遣ってくれたっすね。
嬉しかったっすよ?
そうっす、ね。
[この場にいない花さんの顔が浮かんだ。
あの人にはきっと、もっと辛い記憶がいっぱいある。]
嫌な事を忘れられるってのは、いい事っす。
[優しい。龍さんも悩んだみたいだけれど、
確かに自分でもしっくりこない。
少し考えてみる。]
うーん、欲張りなんす。たぶん。
本当にみなさんによくしてもらったっす。
さっき言った通り、龍さんにも、っすよ?
楽しい思い出があったから、とっときたいっす。
もひとつ欲張ると、
これからもずっと会えたりしたらうれしいっすね。
[にんまり。
龍さんに笑いかけてみる。]
花さんのお見舞いにも行きたいっす。
龍さんがよければっすけど。
[ねぇ、と皆にも首かしげてみせた*]
[高田くんや椎堂さんの変顔にくすくすと笑って返しつつ。
高田くんのマスコット的な動きにもチズルはとても楽しそうだった。]
[一方で、その後の龍くんの話は神妙に聴いて。
事情を把握できて、分かった……気がしつつも。]
(そんな生物がいるなんて……。)
[驚きとともに、それが真実なのだろうと思う。
チズルが見たあの化け物は、やはり現実のものなのだろう。
人が知ってはならない、神話生物への一端へと触れた記憶。事件が隠されたことも含めて理解は出来た、ような気がする。
聴いているうちに少し表情が硬くなってしまったかもしれない。]
...あのさ、...僕と...
...ともだちに なって、 ...くれる...?
[恥ずかしそうに、口にして。
龍の手は、どうされていただろう。]
[バンクくんへと眼を落して、チズルはもふもふしつつ。
知られざる生き物はまだ沢山いるのかもしれない。]
(この子は、もしかすると……。)
[なんて、首をかしげるバンクくんを見つめて抱きしめて。
この子は、すごく賢い気がする。
みんなを見守って、狂気の存在から守ってくれたような。
でも結局、この子はなんて動物なんだろう?
チズルの中でずっとそれは不思議に思えていて。
もしかすると、知られざる生物は悪い生物だけではないのかもしれない。そして、――。
ふと、寂しくなる。けれど。
考え事をしていたからか、誰かに話しかけられた気がして。]
あ。
……いえ、なんでもないんです。
[バンクくんの鼻でか写真を見て、チズルは微笑んでから。]
梨亜さん。
実は、一つお願いがあるのですが――。
[みんなとバンクくんで写った一枚の写真を頼み、そしてそれを思い出の一枚としてとっておくつもりで――。**]
―カフェ―
[世間からは2つの事件が消えてしまったけれど、
それを誰かが忘れない限り、それは失われてしまった訳ではない。
ひとりぼっちの少年には友達ができたり、
それぞれの人生に少しだけ変化がもたらされたのだけれど―
里音にも少しだけ変わったことがひとつだけあった。それは]
チズルさん。
[解散する前に、そっとチズルへと声をかける。]
この間はありがとうございました。
今度会うことがあれば、里音って呼んでくれませんか?
…いや、風間、でも、いいんですけど。
[あの日以来、リーノ、と自分からは名乗らなくなった。
それはほんの些細な心境の変化ではあったけれど。**]
[俺は、封筒に小さなナイフを宛がったが、その時、]
――南野、成美、様。
[宛先の名前が目に入る。
少し悩んで、結局は開封しないことにした。
中に入っている手紙が、たとえ俺に向けたものだったとしても、これは成美から正式に依頼されたもんだ。
プロの便利屋が、他人宛の手紙を勝手に覗き見するかっつーの。
それに、
開けたら、お前から受けたこの依頼も、終わりだろ?
俺は、新品のトラベルバッグに、手紙を放り込むと、心なしか軽い足取りで、事務所兼倉庫兼住居を後にした。**]
[解散する前。チズルは身を守ってくれたお礼を言おうと、あの大学生を探そうとして――。
しかし、その当人から声がかかって。逆にお礼を言われて、チズルはぺこりと頭を下げてから。]
いえ、こちらこそ身を挺して守って頂いて。
お礼を言うのはこちらの方です。
今度、お礼にどこかにお食事でも如何ですか?
[そうして、里音と呼んでほしいと言われれば。]
はい、里音さん!
[はにかみながら、チズルは頷いた。**]
人に取り憑き、人を襲わせる奇妙な虫、か。
本当にそんなのがいるのね…
私たちも一歩まちがえば……。
[地球上にいる生物と思えぬ虫の様子は]
[俊子の部屋で読んだ]
[シュジャイという惑星の生き物を、ちらと連想させたか]
[でも、何の確証もないからね…]
[大体の事情を聴けば、思っていたより大掛かりで]
[恐ろしい事件に巻き込まれていたのだと、実感したようで]
[とにかく、みんな無事でよかった…と溜息をついた]
[山根忠彦、山根俊子 、松本孝三 ]
[大月まこと、伊達徹雄、南田成美、真神花]
[そして、共に命がけで恐ろしいロッジから脱出した仲間達]
[君は、数瞬だけグラスの奥の瞳を伏せて]
[墓名碑、或いは祈りの連珠代わりか]
[今までの人生で幾度もそうしてきたように]
[この事件に関わった人達の名を、心に刻む]
[ 言葉なき死者の生を、けして忘れぬように]
[生ある者達の、これからの幸いを願うように]
[いつか花さんのお見舞いに、と首を傾ぐ純君に、君も頷き]
[純君と龍が、ともだちに…と語り合うのを横目に]
[チズルから、写真を頼まれれば>>119]
ええ、いいわよ。
それは素敵なアイデアね。
[君は頷き、チズルの提案を皆に伝える]
[同意してくれた人には]
[バンク君も含め、一枚に収まるよう寄って貰ったか]
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