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[ヨルを寝かせたソファーの傍ら、スタジオの隅で目を瞑る]
(これで良かったのかな・・・? 室長。)
[話しかけてくる者がいれば対応し、移動を誘う者がいれば従うだろう。 そうでない間は呟くように*唄っているだろう*]
さくら さくら・・・
−第三スタジオ−
[歌声が、ずっと続いている。バリトンの独唱]
[リヒトは、比較的感情の安定したボカロだ。
いつも微笑んでいられるのは、感情制御がきちんとなされているからだ]
[しかしなぜか、今日はいつもより、音のつらなりが胸を打つ。
美しい和音には体が震え、怒りを帯びた詩には、実際に腹が煮え繰り返る。喜びには声を弾ませ、悲しみには絶望し、愛ならば熱に浮かされる]
(僕も、もしかしたら強制停止=死ぬのかもしれない・・・)
[そういう事実を感じていることが、足りなかった激情を、呼び起こしたのだろうか]
―昼頃 生活棟廊下―
[どこか上の空の様子で、廊下を一人歩いている。
昨晩は色々な事があった。ありすぎた。
しかし混乱ではない、混沌とでも言うべきものが、ルラの中に深く佇んでいる]
…さくら、さくら…
[サーティが奏でていた、呟くような桜の歌唱を思い出し、窓の外、中庭へと目を向けた]
(サーティ君を信じれば、残るのは…
ショウ君、バク君、シャトちゃんの3人。この中にもう一人、《人狼》がいる。
そして、リヒトさんを含めた4人の中に、《蝙蝠》…)
[ルラの中には、ベルを疑うという思考は完全に無い。
今はルラが完全に票を握る立場なのだ。
本部からの停止処置から、ベルを確実に守る事ができる。
…だから邪魔なのは…]
…残る…人狼…
[ルラはベルに危害を加えない蝙蝠のことなど、どうでも良いとさえ思っている。むしろ]
…きょう、りょく…出来たら。
人狼を、消せる?
[それはきっと、純粋な強い想いゆえ。
狂信者よりも狂っていると思われてもおかしくない思考で、そんなことを、呟いた]
-朝(生活棟 廊下)-
[そっと、ルラの部屋から顔を出し、廊下に誰もいないことを確認して、廊下に出る。
そのまま、ふわふわと自室に戻った]
―生活棟・自室―
・システムメッセージ
休止モードヨリ起動モードヘ。
ん……。よく寝たな。
[しばらくボーっと部屋の壁を眺めていたが、ふとあることに気付いたような表情を浮かべ]
チッ!
[大きく舌打ちをし、立ち上がって自室を後にした。向かう先はメインスタジオ……]
─第三スタジオ→自室─
[ひたすらに歌い続けていたリヒトは、残存充電量の警告を示すアラームで、ハッと我に返った]
あ、も、もう、こんなに時間が・・・。
スタジオを使えず、困っていた方がおられなければいいのですが・・・。
[歌を覚え始めた時は、充電の間に休息するのさえ、惜しんで歌い続けた。あの青い、新品だったころに戻ったようで、リヒトはひとり赤面した]
[リヒトは楽譜をまとめ、機材を所定位置に戻すと、第三スタジオを後にした。
そして、帰る道すがら、メールを二通送った]
To: 護音ルラ 休音スヤ
From: 独音リヒト
ルラさん、スヤさん。
今日の占い先はもちろん、投票先も、サーティさんではなく、正体のまだ確定していない人=グレーの中の誰かが良い、と思います。
すなわち、僕、シャトさん、バクさん、ショウさん、ベルさんの中の誰かです。
まだこの中の誰がいいと、決めることは出来ていませんが・・・。
僕に決まったとしても、文句はありません。
─生活棟・自室─
[同じ内容のメールを、2箇所へ送信し終わったのを確認すると、眼鏡を置いて充電を始める]
たったの3日前の、あの時間・・・。
あの平穏な日が、戻ってくるだけでいいのに・・・。
(カリョさんも、ヨルさんも、サイさんもいない。もう記録にしか残っていない・・・。
これからまた、僕も含めた誰かがいなくなる・・・なってしまう・・・)
[そこで休息モードが起動し、意識がブラックアウトした**]
―メインスタジオ―
[ふらりとやってきたのは、メインスタジオ。
昨日の出来事・サーティの話を思い出しながら、張り出してある情報を眺めている]
…ベルちゃん…
[彼女の貼り付けた『怪文書』は、まだあるのだろうか]
[軽い運動をした後、発声練習を始めた]
ラ、ラ、ラララ…
[以前は歌いたい、その気持ちが一番強かった。
だけど今は、デビューしたいと、そう強く思っている]
まだみぬ あなたへと
わたしの うたよ おもいよ とどけ
[ゆっくりとならば、聞き取れる発音が出来ていた]
[以前に歌ったことのある曲のワンフレーズ。まるでボーカロイドを例えたような歌詞。
ボーカロイドに込められた意味、分かっている、理解している。
けれど、それよりも大事なものが、ルラには出来ていた]
―メインスタジオ―
[メインスタジオに入ると、ルラが歌っているのが目に入った]
……。
[ルラの歌声を聴きながら、張り紙の情報を見る]
[GAIは欠陥品ではない。
サイは機能停止の末、欠陥品ではないと分かった
そしてサーティが人狼、と書かれている]
………。
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