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沙絵が絵を職業に選ばない理由も、わかる
俺もそうだ。写真を撮るのは楽しい
でも、それを職業にしたいとは思わない。
色を映して、閉じ込める楽しさを
知れたのはきっと、沙絵のお蔭だ。
俺こそ、ありがとう。
皆が、でも一番は君がいてくれたからきっと俺は、
こうして、自分の気持ちに気づく事が出来たし
毎日が楽しくて
君と共に過ごせる幸せと、君とともに笑いあっていたいって
そう思えるようになったんだと思う。
[事故だったと、聞いている。
不幸だけど、悲しいかなどこにでもあるような、そんなありふれた交通事故。
そして僕の両親はそれに巻き込まれて亡くなった。
臨月を前にした瀕死の母親のお腹から生まれた僕を、一人遺して。
僕がほかの人より少し身体が弱いのは、そのときまだ生まれるには早かったせいもあるのだろうと、両親の事故について話してくれた親戚のおじさんに、そう言われたことがある。
そして、その事故で亡くなった人は何も僕の両親ばかりではなくて。
同じようにぶつかった車にはもう一組、別の家族が乗っていた。
そして同じように生き残った、子供が一人いた。]
[当時、まだ小学生だった“彼”はあの事故で
家族を亡くしてたった一人生き残った。
そうして、彼は周りの大人たちから責められたらしい。
「お前の親のせいでたくさんの人が死んだのだ」と、
まだ幼い彼にそう言葉を投げつけた。
その“彼”を責めた大人たちの中には、自分の祖父母たちもいたのだという]
[その話を最初に聞いたときは、正直なところ、とても驚いた。
祖父も祖母も、自分にとってはとても優しい人たちで。
彼らが誰かを理不尽になじる姿なんて全く想像もできなかったから。
だけど。
毎年、自分の誕生日におめでとうと笑顔で言ってくれる彼らが、僕の知らないところで悲しんでいることを僕は知っている。
僕の生まれたその日が、大切な『家族』にとって、
大事な人たちを亡くした日なのだということを僕は知っている。
そしてそれを、彼らがどんなに悲しんでいるのかも。
自分たちよりもずっと小さな男の子に、
理不尽な怒りや悲しみをぶつけずにいられないくらい
とてもとても深い苦しさであることも。]
……?頼み?
[そして頼まれた事には、破顔して一つ頷いて]
俺で良ければ喜んで。
[告げれば、ぎゅっとその手を握りしめて*]
[“彼”について調べて、そうして今は作家として本を出していると知ったのは中学の頃。
SNSのコミュやブログを持っていることを知って、少し悩んだけれどメールを送って。それから、“彼”と交流を持つようになった。
彼に対して思う気持ちはいろいろあるけれど、少なくとも恨んだり憎んだりといったことは全然ない。
両親が死んだのも、自分がこんな身体に生まれついたのも確かにその事故のせいではあるけれど、それは決して“彼”のせいではないから。
むしろ、祖父母や近しい家族に支えられて今まで安穏と生きてきた自分なんかより、家族を失ってひとりぼっちで生きてきた彼のほうがよっぽど大変だったのではないかと思う]
…あ。
[家に帰って、PCを開くとちょうど彼からメールが届いていた。
そこには「最近仕事でも私生活でも少しばたついていたけれど、先日やっと落ち着いた」と書かれていた。
その報告にホッとすると同時に、そこに綴られた『家族ができた』という報告に、一瞬目を見開いてから]
この学校を卒業しても――近くて遠い未来もずっと
沙絵と一緒にいたい。
君が好きだよ、誰よりも。
[人が見ていないならそのまま
見られそうなら手でその愛しい顔隠してしまって
俺の彦星様――君の唇そっと奪ってしまおうか*]
…よかった。
[心からの思いだった。
もう彼はひとりぼっちではないんだ、と。
早速メールを開くともらったメールの返信を送る。
いただいたメールについてと、今日読んだ新刊についての感想と、それから]
『僕も、好きな人ができました。
あなたのように大切にできているかは、正直わかりません。
だけど、あなたと同じくらい相手に幸せになってほしいと思っています』
[しばらく悩んで推敲した文章をそのままメールで送る。
少しだけ、ほっとしたような、心にささっていた重荷が降りたような、
なんとも言えない不思議な気持ちを感じながら息を吐いて天井を見上げた*]
― 10月12日 ―
あ、柚奈さんおはよう。
[朝、教室にやってくるといつものようにお弁当を受け取る。
ありがとうとこれまたいつものようにお礼を言ってから]
えっと、よかったらこれ。
[そう言って差し出したのは、透明な包みに入れられた
夜の空を思わせる藍色と蒼のグラデーションに星のラメと金色のパーツが封じ込められたペンダント。
https://static.minne.com/produ...]
/*
沙絵ちゃんはれんじつありがとう。
灰にはあんまり残ってないけどひゃーひゃーかわいいよぉぉおって
箱前で酷い百面相してました、すき。
今日、無事に16歳を迎えられたので。
誕生日って、いつも誰かにお祝いしてもらってたけれど。
でも、誕生日っていうのは生まれてきたことを周りの人たちに感謝する日でもあるんだって、最近読んだ本に書いてあったから。
お世話になっているのは、他の皆にも同じなんだけどね。
でも、最初にそう伝えたいなって思ったのは柚奈さんだったから。
[だから。]
受け取ってもらえると、嬉しいです。
[彼女の手に自分の両の手を添えてペンダントを手渡した**]
俺はおばさんが大体用意してくれてますね…
[割りと拘らない方です、と]
想像したり察して戴くというのは有り難いですがそれが当然だと思ったらいけないと思います。
はい。嘆いても変わらない過去を憂うよりは、今ある幸せの方を俺は見て、歩きたいです。
とは言え……希美が誕生日=母の命日なので。
将来そこを気にしないでいられるように、は今の俺や父にかかってますよね。
[ちょっと責任重大なんです、と肩竦め。
そう言うことで彼女が落ち込んだり気にしたりしないように、育ってくれると良いのですがと、遊ぶ妹の姿を見詰めて]
急いては事をし損じる、急がば回れって言います。
とは言え俺の方も言葉が少なくて、下手ですから……何か言いたいことがあったら言って戴ければ、と。
例えば、彩莉さんが俺にどうして欲しいのか。
[想像はついてもはっきりとはわからない。
見当外れだったらと思えば大胆なことも出来ず。
彼女の思いが自分にどう向かっているか、未だくみ取れないままだと言ったら鈍すぎると呆れられるかも知れない]
/*
わああ、照れますね。
発言返そうかなと思いましたが、時間切れですし。
これが最後の方が私は好きなので。
[ごろごろ]
エピがまだありますが、千秋さんここまでお付き合い、本当にありがとうございました。大好きです。
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