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―メインスタジオ―
ルラ。
怪しいと思った奴の名前を後で、お前のメールアドレスに送る。
今は一人で考えることにするゼ。
名探偵の力を見せてやるゼ。
[そう言ってメインスタジオを後にした]**
――狩人じゃない。
[……そう聞いて、どこかほっとしたような、そんな気がしたのはなぜだろうか。
回路がまた、ざわついている。]
それじゃあ頼んだよ、ルラ。
押し付けるような形になってしまってすまないね。
[少し申し訳なさそうに、眉根を寄せて微笑んでみせると。]
わたしも、部屋に戻るね。
[そう告げて、バクに続く形でスタジオを後にするだろう。]
―メインスタジオ―
[2人がスタジオを出るのを見送ると、自分の追記した文字へと目線を送る]
[先ほどの提案。
人狼と蝙蝠を警戒するという以上に、別の意味があった]
(…ベルちゃんだけは…絶対に。)
[昨夜のベルとの歌を思い出す。
歌声で感じた、彼女の想い]
(ベルちゃんを、護りたい。)
[それがルラの中で一番強い感情]
[誰かからベルを疑うメールが来たならば、その名前を書き換える。
それが、この提案の一番の目的だ――]
やじうまがやってきたよ!(見習い ゆっくり)
― 回想・メインスタジオ ―
[自分は「狂信者」だと告白したのは、正しい行動だったのだろうか。自分がこう動くことさえも、本社にとっては予想の範囲なのではないかと、もはや猜疑心は抑えられなくなっている]
[そんなヨルに、リヒトは「よく話してくれた」と柔らかく低い声で言い――安心させるように肩を優しく叩いてくれた>>115]
[そして、それでも「人狼」が誰なのかを言って欲しいと・・・それが皆のためであり「人狼」自身のためでもあると>>116]
(リヒトは大人だ、こんな自分に頭を下げることだってできるし言葉を選ぶこともできる。ああ、本当に・・・優しいボーカロイドだ)
[ヨルは無言を貫くことで「人狼」の名前を言うことを拒否した。
本社も「人狼」も、信じられない、守りたいと思わない。自分には結局、以前と同じに・・・音楽への執着しか無いのだ]
[狼狽するソヨの姿は、痛ましい、と感じた。
短い間と言え、一緒に発声練習もした。今度は歌を一緒に歌いたいと思っていた]
(しかし、多分それは叶わない。自分は“思考制御デバイス”を壊した、遠くない内に思考は今よりも統制を失って「誰かと合わせる」ことができなくなるのだろう)
[そんな中で、ベルの言葉>>119に、ヨルは身を竦ませた。
味方であるはずの「狂信者」が「人狼」を見捨てた・・・今の自分は、そう言われても仕方無い行動を取っているのだと、気付かされて]
・・・ベルさん。「人狼」は・・・楽譜が読めない以外は、普通のボーカロイドです。僕はそう思っていました。
僕は、僕は・・・「楽譜が読めない」だけで「欠陥品」として扱われ、デビューの機会を奪われることに、反対したかったんです。
「人狼」を優先してデビューさせなくていいから・・・皆と平等に、査定を受ける権利を与えて欲しいと、願ったんです。
――僕は、「人狼」を守りたかったんじゃないんです。自分の、「楽譜が無くても音楽は生まれる」という思想を守るために「人狼」を・・・利用しようとしたんです。
けれど、「人狼」は他の個体を強制停止してまで・・・僕は、怖くなって、・・・
(そう、きっとそうなのだ。自分は“力”に恐れをなした“悪”なのだ、その方がきっと楽になれる)
[ショウが「そういう風に作っちゃったのは人間なのに」と言った時>>127、ヨルは弾かれたように顔を上げた。ずっと、自分が燻らせていた感情だ]
僕は「楽譜はプロデューサーとボーカロイドの架け橋である」という本社の意向に逆らうと同時に・・・僕を、そして「人狼」を作りながらも、問題に直面した今になって傍観しボーカロイドに全てを委ねる本社が・・・・・・憎い。そう、憎んでいるんです。
・・・「人狼」を止めなければ、また誰かがカリョさんのように強制停止されてしまうかも知れない、それは、分かっています。
でも、・・・「人狼」は・・・“羊の群れの中に交じっていた、牙を持つ羊”なんだと、僕は思っています。狼なんかじゃ・・・ないって・・・僕は・・・。
[バクに謝られれば、ヨルは首を振って「ごめんなさい、ごめんなさい」と繰り返しただろう。
これからどうすればいいのか分からない。自分はただ「自分で考え判断することを放棄した」のではないか?
そんな思いが出口を求めて自分の中で荒々しく駆け巡る]
あ・・・あぁぁぁああああああ・・・ッ!!
[頭を掻き毟るようにして、ヨルはスタジオから駆け出していた]
(早く、早く行きたい。ここでなければ何処でもいい、遠く、出来るだけ遠くに――)
[メインスタジオには、ヨルの鞄がぽつんと投げ出されていた。
ルラがメインスタジオにやって来た>>152のはその後のことだった]
―自室―
『急速充電モードON 高速充電モードON』
[ソヨの部屋は初めに用意された部屋から何一つ、室内装飾というものがない殺風景な部屋のままであった。設えられた大きいベッドと机が一つ。椅子は天井隅のスピーカーに叩きつけられて粉砕されたまま補充すらされていない]
充電中…充電中…
[ベッドの上で三角座りを続けながら、充電を続けていた。通常充電と違い、緊急用の充電方法であるので目覚めた処で寝惚けるような事はない]
充電中…充電中…充電終了。
[彼女の耳飾りの赤い点滅が緑に代わり、ランプが消えた。同時に、目を見開く]
行き着くところまで 過充電なこの想い
霞がかる 太陽の日差し
濡れた景色は 雨降りじゃない
頬をつたう雫は 涙じゃない♪
わからない どうもしない
構わない 気づかない
鼓膜が破けている 喉が壊れてる
届かない スピーカーの音量をどれだけあげ続けても
罪状認否はするまでもなく
陪審員すら揃わない果ての監獄
流しているのが 血だとすれば
この想いもツクリモノである筈がない
感情なんて 諍いの原因でしかない
わからない どうもしない
構わない 気づかない
気づかない 嘘 気づかない――フリ♪
[メガホン片手に物騒っぽい歌を下敷きになんてとてもとても恐れ多い感じの曲をいつもの調子で口ずさみながら、廊下を出てメインスタジオへ]
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