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[服を引っ張られる感触に、沈みかけていた意識が浮上する。>>95]
…………、だ、れ?
[寝ぼけている。
忘れてしまったわけではない。
ゆっくりと瞬きを繰り返しても、鉛色の空みたいにどんよりした眼差しにも晴れ間はささず。
目の前の人物を誰か認識できぬまま、言葉を紡ぐ]
ゆかでねちゃ、だめ……。
[ふらり、と立ち上がり、奥の方へと歩き出す。
結果的にはソファの前にテーブルのあるところまで辿り着くことができたのだが、
揺すぶられでもして意識がはっきりしない限り足取りは覚束無く、
ナデージュの案内を必要としただろう。
糸が切れたようにソファに倒れこんで、今度こそちゃんとした眠りにつく]
― 森の入り口付近 ―
悪い、待たせた。
……飴に狂いに転向なんてしねーよ。
人望も、あるわけじゃない。
[待ち合わせの相手は、既に其処にいた。
待たせたらしい様子に謝り、共に来たセルマとエステルの話、というよりもセルマのエステルについての話の二度目を聞きながら、森へと視線を向けた。
相変わらず人気を寄せ付けない空間に、飴の棒を面倒臭げに揺らした。]
[眠る様子は穏やかそのもの。
うなされてせっかくかけられた毛布を落としてしまった、――なんてこともなく]
……。
[閉ざされた瞳の間から、
涙が一筋流れて、頬を濡らす**]
― 森 ―
[かつて道と呼ばれていた名残を歩む。
速度は、普通に歩くよりも確実に遅い。
空気の質が、村の中とは違う。
一言で言うならば、濃い。
それは、単純に自然に囲まれているからなのだろうか、それ以上の理由があるのか。
灰は異様に育ち生い茂る木の枝葉があらかた受け止めてくれているが、それ故に中は薄暗い。
すぐ傍に"大物"の気配が無さそうなのは救いだ。
獣に意識させてしまうだろう火も煙も無い棒つきキャンディを咥えたまま、カインは共に歩むパースを見た。]
─回想─
[こくり。
酒場でセルマ>>53に頷く。
両手で包み、しゅわしゅわ泡が立ち昇るサイダーを少しずつ飲んだ。
泡と同じように何時しか中身は無くなって、 ことり コップを置いた。]
…………。
雪も、こんな風………?
[森の入口に着くまでの間>>54に落とした言の葉はひとひら。
森の入口に着けば、セルマがパースと話をし始め、エステルはセルマを見上げた。
丁度、セルマが悪戯っぽい笑顔を浮かべたところ。
パース>>46が身を屈めて、その後ろで尻尾が揺れてる。
エステルは恐がりはしなかったが、セルマの後ろに重なるようにパースを見上げる。]
…………………。
[遠い?違う、そう遠くない昔に何処かで聞いたような言葉。
でも、誰が落とした言の葉なのかは思い出せなくて。
パースがキャスケットを直す仕草に既視感だけを憶えただけ。]
んー……。
口伝の手紙の内容、だよ。
あれだけだったんだ。荷物とともに託されたのは。
手紙というより、合い言葉のようなものだろうか。
はっきり言って、重要とは思えないね。だからこそ託されたのだろうし。
って、仲間は言ってたよ。
[そう言うと、ひと呼吸置いてから]
時効だ、時効!
それにエステルの事情の方が重要だと感じたんだ!
[守秘義務を破ったことに、若干の罪の意識を抱きつつ、ぶーたれた。]
[やがてカインとパースは森の奥へ向かい歩き始めた。
エステルは二人を見送りながら胸に片手をあてる。
鬱蒼とした森の景色に何かを重ね合わせるように、二人の姿が見えなくなるまで見続けていた。]
ふうん……
変わった”手紙”だな。
いや、聞いて悪かった。
[時効だと言い不機嫌そうにするパースに軽く笑って謝って。
手紙の中の”エステル”が、あの娘とイコールかは判らない。
別れ際に横目で見た彼女は、祈りのような姿勢をしていた。
カインにはその意味も判らない。]
……さて。
[道の名残が途絶えたところまでやってきた。
何かが争った跡なのか、木がなぎ倒されて道のあった場所をふさぎ、かつ発育した緑色ではない植物が行く手を阻んでいる。
ギャアァッ、とその障害物の向こうに、鳴き声のようなものが聞こえた。]
越える?迂回する?
って言っても迂回する道も良く判らないけど。
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