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[うつら、うつら。薬のせいか疲れのせいか、眠気はすぐにやってきた。
車輪の音を聞きながら、見るのはもちろん狼の夢。
一度目は十歳の時。街へと向かうサーカスは砂漠のキャラバンと合流し、砂漠の中で朽ち果てた。
座長がけしかけた猛獣の喉笛を一瞬で食い千切り、爪の一撫でで座長を二つに裂いた狼に、恐怖と、畏敬と、美しさと……ないまぜになった感情を抱いたのが、はじまり。
人が恋と呼ぶものを、尊敬と呼ぶものを、信仰と呼ぶものを。
自分が抱いているとするならば、それはあの気高い姿に。]
[シュテファンの背中に手をあて。震える温かい肩をゆする]
おぃ、何があったんだ!
[ゆるゆると手があがり、奥を指差す。目をこらして見れば…何かが居た]
っ!? この臭いは…。
[思わず口元を抑える。血の、臭いが]
……待ってくれ。何だってんだ…。
俺は見たくない、見たくないぞ……っ!
っっ!
灯りを持ってくる!!
[シュテファンを置き去りにし、灯りを求めて食堂車へ向かった]
[大きな声が聞こえて、目が覚めてしまいました。
寝ぼけまなこでふわふわ部屋の外へ様子を見に行きます。
人が集まって来ていたので後ろからこそこそ覗き込もうとしました。]
[もし。シュテファンの悲鳴を聞きつけて人が食堂車に集まれば。灯りを探しているユーリーから、ラビの死体が機関室で見つかった…と知らされるだろう**]
>>19
[小さな悲鳴、それは、やっぱりどちらかというと女性っぽくも感じたが…。
掴んだ肩も、どちらかというと…。]
ああ、本当にすまん。
ちょっと診てやろうかと思ったんだが……。
ええと……。
[そして、言葉に詰まった挙句、
ここで、不躾に聞くのもなんだと思い……。]
まぁ、今日はゆっくり休むこった。
[明日でいいかと判断して、そう告げると、部屋から出て行く…。]
ほー。優雅な列車の旅とは行かないけど、こーいうのも味があっていいな。
[あれこれと飾り付けるよりも、こざっぱりと簡素が好ましい。何事もそうだ。
自分の言葉に余計な装飾が多いことは二の次に、満足そうに頷く。老朽化した列車である上、今居る此処は然程良い部屋でもなさそうだったが、不思議と落ち着けるようだった。
ベッド脇に腰掛けて窓の外を眺める。]
…………、占い師、ねえ。
[面倒臭そうに何事か呟いて、トランクを開く。
几帳面に畳まれたシャツの間、探し物よりも先に目に入ったのは、紋章の刻まれた懐中時計。]
…………っ。
[眉間の皺が深くなる。
瀟洒な施されたそれを握り、壁に投げ付けた]
[瞬間、
ガタン!予想以上に大きな音が響き、思わず顔が引き攣る。]
―――へ?
もしかして俺、今何か壊し…
確かに八つ当たり的に投げたけど、やっべー…弁償する金なんざねーぞ。
[投げた方向を恐る恐る見れば、懐中時計は元のままの形で転がっていた。
刻印には相変わらず嫌そうに顔を顰めつつも、金を指先でなぞり故障していないかどうかを確かめる。]
お前、投げた位で壊れんなよな…
べ、べつに壊れても罪悪感覚えたりしねぇけどな!
無けりゃ無いで不便なんだよ。
[勝手な呟きが届いたのか、果たして時計には傷一つなく、弁償を恐れた車内の家具にも異常は見られなかった訳なのだが]
それじゃ、今の音は一体何だってんだ……
………ああ、
そうだった、君は整体師、なのだったな。
気持ちはありがたく思うが、それならそうと言ってほしい。
……驚いた。
[心底からの言葉と吐息が零れる、
何か言い淀まれたようなことには、さすがに気づいたけれど]
ああ、君も休むといい。
……私も、大分疲れた。おやすみ。
[去る背を見送って、そのままぽふりと寝台の上に倒れこんだ]
……!
[悲鳴を聞けば飛び起きる。走る。]
ほんとに? ほんとに?
[うっすらと漂う血の臭い。どんどん濃くなるにつれ、高鳴る鼓動と期待を抑えきれない。
足が速いとは言えない青年を、途中何人かが追い抜いただろうか。やがて機関室にたどり着けば、そこにあったのは……]
狼様、居るんだ……!!
[歓声はかろうじて飲み込んだけれど、喜びの表情は隠しきれない。脳内を埋め尽くす幸福感。止まらない高揚感。]
……あれ?
[どれくらいそうしていただろう。不意に、ずきりと傷が痛んだ。走ったせいにしてはタイミングのおかしい痛みに、胸を押さえる。]
あ……れ……?
[ずきずきと、痛みは止まらない。
……まるで、彼に"祝福"を与えた狼が、仕えるべき主を間違えた狂人を責めるように。**]
[収まらぬ動悸に肩を抱いて、身を丸める]
……別にどうということは、ない のだけれど。
[ぽつり呟けば、少しだけ、横になるつもりで、
硬く冷たい寝台の上に身を投げ出し、マフラーを外す。
あったはずのものがない首筋の感覚にいまだ慣れない。]
………、
[そっと、手を首筋にやる。
狭い客室内は息苦しいと思うのに、とても落ち着く。
その事実に落胆しながら、重い目蓋を一度閉ざして――途切れる意識
やがて悲鳴が聞こえれば、
幾分ぼうっとしたまま扉からそっと顔を覗かせた**]
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