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[村に戻って来たら、何だかやたら無愛想なお兄さんがこっちをじっと見てた。気まずくなって目をそらしていると、手を引かれてお兄さんの家に連れて行かれた]
……………?
[温かい部屋の中、ソファに座らされて暫く待っていると、テーブルの上に小さなカップがとん、と置かれた。初めて見る飲み物だった。そっと口をつけてみると、火傷しそうなほど熱くて、ふうふう吹きながら飲んだ。
…甘くて美味しかった。どうやらココア、というらしかった。その日から、イヴァンの好物はココアになった]
[ココアに満足した妖魔のイヴァンは、そろそろ森に帰ろうかと思った。
森に帰ったら、他の皆にもあの飲み物のことを教えてあげよう。そんな風にわくわくしながら]
『――――――イヴァン』
[急ぎ足で駆けていると、細い声で呼びとめられる。振り返ると、其処には可愛らしい女の子がいた。
…泣いていた]
え、ど、どーしたの!?
[慌てて彼女の元へと寄り、慰めようとしてみるけれど。どうしてその子が泣いているのか、妖魔のイヴァンには分からない。
その子はイヴァンの頭に巻かれた包帯にぺたぺた触りながら、『心配したんだから』と言っていた]
ぼ、僕の所為で泣いてるの?
あぁ、えっと、…どうしよう。どうしよう。
[よく分からないけど、このままではいけない気がした。うろたえながら辺りを見渡していると、足を滑らせて素っ転んだ]
――――…痛た…。
[雪に埋もれながら、頭をかく。女の子を慰めなくちゃいけないのに、こんなことしてる場合じゃない!
恐る恐る、顔を上げれば]
『もう、イヴァンってば、…なにやってるの。 ふふ』
[何故かその子は、泣きながら笑っていた。
元々可愛かったけど、ふわりと笑う姿は、さっきよりもずっと可愛らしかった]
……………………。
[だから、もっと、笑ってくれると良いなと思った]
……………。
[それが、妖魔の初恋]
[「彼」が「イヴァン」の姿を借りて、村に留まることになった*理由*]
― 食堂 ―
(まだ皆いたのか)
[階段を降り、夜も遅いこの時間になっても、食堂に残っている面々を見れば最初に浮かんだのはその感想だった]
[もし昼の提案などに対して改めて聞かれれば「皆で決めてくれ」という姿勢は崩さず]
どういう事になろうとも責任は取る。
[その為に自分がここにいるのだと言わんばかりに]
ここで起きた事全てに於いて、
生存者が表に出すのに不都合な事全ては、
後で俺の命令だったと証言してくれてもいい。
だから村人である皆が、ここにいる皆で対処を決めてくれ。
(別にこのまま何もせず、人狼と共に滅びようとも皆が選ぶのなら俺は気にしない)
[そこまでは口には出さなかったが]
俺は腹が減ったが、夜食は必要か?
もし良ければ、手伝ってくれ。
[代わりにそんなことを口に出していた]
人狼からすれば、物を壊すのも、人を……。
[その先を口には出来ない。
けれど、聞いた人がいれば、何を言いたいのかは予想できるだろう]
難しいわね。
考えてるだけじゃ、何も変わらないって解かってるのに……。
[知識が、行動の足を引っ張る。
良くある事だ。
今の自分は、まさにその状況――]
でも、考えないと。
[考え無しでは、居られない状況だ。
自分にとっても、それは同じ]
イライダさんはいろいろ知ってるから、頼りにしてるんだから。
[その言葉に何の力も無いことはわかっていたけれど。
力強く頷いてみせた]
[ロランが食堂に姿を現して、夜食を作ると言うから]
イライダさん、食べません?
元気出して、襲われたら、フライパンでひっぱたいてやりましょう。
[みんなも。と、言って、野球のバットでも振る仕草。
空元気でも、出ればいいと。
だから無理に食べろとは言う気はない。
それから、ロランに]
責任、とらないと駄目なのかな。
[あまりに責任と繰り返すから。
伺うような上目遣いで訪ねた**]
……ロランさんの言う対処、は
誰か一人を選べって事よね…。
[気が重いからか、そこから先に思考が進まない]
出来るだけの事は、しようと思ってるんだけど、ね。
[そしてロランと一緒に厨房に入る。
何を作るのかは、ロラン任せ、だったけど]
[イライダとナタリーの会話は夢うつつに聞いたように思うけれど、自らが占い師であるとは未だ確証を持っては告げられず、口にすることはない]
…イライダさんは、なぜ研究をしようと思ったんですか。
[食事の準備が整ったなら、起こされる。
軽く食事を口にしながら、たずねるのは研究の内容ではなく、彼女自身のこと。
もしも、そう、確証さえもてたなら、彼女は人狼の牙の前に身をさらそうとも自らの見た真実を告げるだろう。
それはきっと、明日のこと――。
静かに思い出話に耳を傾けたなら、自室へと戻るだろう]
―食堂→オリガの部屋―
………ロランさんだって、村人だよ。
[繰り返されるロランの言葉に、少しだけ違和感を覚えて。窓から視線を外し、首を傾げながら彼にそう告げた]
僕、オリガの様子を見てくるね。
[人狼への対処も気にかかったけれど。でも、それ以上に気になるのは少女の様子だった。
夜食を作りに行く面々へ頭を下げ、自分は使用人の少女の部屋へと]
―明日の明け方近く:自室→イヴァンの部屋の前―
[調子が悪いこともあってか部屋に戻ったならストンと意識を失うように眠りにつく。
夢に見たのはイヴァン―否、妖魔の姿]
そんな…。
[思い出されるのは昨日のイヴァンの常とは違った様子。
時間帯も考慮することなく、イヴァンの部屋へと向かう]
…イヴァン!?
[彼はどんな様子でいたのか、なんだかそのときのことは曖昧で…]
[ああ、今までとなにが違ったというのだろう…彼が人ではないと知ったことが?
見えぬはずの彼女の目がその瞬間だけ視力を取り戻す。
――最後にみた彼の表情は寂しげだったのか満足げだったのか、彼女の目に焼き付いて、再び光は失われる。
床に座り込んだ、彼女を取り残して――。
この一幕を今はまだ誰も知らない]
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