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>>199 ザムくん
コーヒーなんて飲んでるから余計眠れないんだよ。
[ なんて、冗談っぽく言ってから。
――ぱしゃ。
軽く、水を蹴りあげて。]
……好きな人に、ずっと……傍にいなくても、ずっと想って、もらえるのは。とても、嬉しい、と思う。
[ ぽつり、ぽつりと。
普段よりも小さく紡がれる声は、波の音に負けそうになるけれど。
近くにいるザムエルまでは、風に乗って届くだろうか。]
でも。
好きな人が、ずっと、自分のことで、悩んでるのは……辛い、と思う。
[ 星空を見上げる。こみあげるなにかを、落とさないように。見られたりしないように。]
難しい、ね。想ってて、ほしいよ。きっと。でも、でも…。
[ なんて言えばいいんだろう。
なんて言うことができるんだろう。
言葉が、続かない。]
[自分の足元を見て]
無理だぞ。
……俺。
[ゆっくりと……だけど、きっぱりと]
誰か、他のヤツ探せ。
な。
[今まで一度も言わなかった言葉を、言っただろう]
[ 名前を、略さずに呼ばれて、振り返る。]
…ん?
[ 絡まない視線。
自然と、輝くピアスへと、視線は行く。
続く言葉。
――ああ、やっぱり。]
ザムくん、察しがいいんだもん。困っちゃう。
[ 常のように、笑顔を。浮かべようと。]
でも。
[ だけど。それは形にならなくて。]
ごめんね。
[ せめて、泣きそうな顔には、なってなければと。]
…ごめん。
[ 願う。]
今だけな。
[ぎゅっと、抱きしめる]
[数度、波が揺れた後に]
[彼女を離すと ………一人で、誰も居ない家に戻るのだろう**]
……私は実にバカだな。
[視線を地面に落とすと、開けたままだったワイシャツのボタンをきっちり留め、ネクタイを締め直す。
ふわりと花の香りが立った]
[そうして、携帯を取り出す]
『to:シモン君
「シモン」に会って話したいことがある。
明日の昼でも、夜でもいい。都合のいい時間を教えてほしい。
……このことは内密に。』
[送信]
や、養わなくちゃいけないほど悪くな――
[ 言葉の途中で手を取られて。
気付いた時には。
ザムエルの腕の中にいて。
――今だけな。
降ってきた言葉は。
ひどく残酷なものだったかも、しれないけれど。
それでも。]
[ 波が数度、音を立てる。
それは、まるで一瞬のように。
温もりは、離れて。
振り返ることなく去って行く背中を、ただ、ぼんやりと、見つめる。]
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