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……………………… ???
[沈黙。
人によっては可愛らしいと形容するかもしれないひげ面のカエルと
全くもって愛想の欠片もない男が、黙って見つめ合った。]
[感じるのは、呼ぶ気配。
此方へと、引っ張る気配。]
[その手を払おうとすればカエルは一度身を引くが、
数歩歩いて振り向けば、ついてきていた。]
………………
[さらに、見つめ合い。
先に諦めたのは、男のほうだった。]
(わかった。行かなきゃいけないなら、行くから。)
[素直に受け入れているのは、信心深い親の教えのせいか、
この不思議な環境のせいなのか。
アレは妖精だと気づいてしまった。
それでもすぐには従わないのは、いつの間にか自身に灯った光のため。]
…… ネーリャ。
[光を見つめて、瞼の裏に浮かんだ女の愛称。
名前すら滅多に呼ばない男の声がそれを紡いだとき、
桃色の欠片はひとつ、溶けるように消えた。
女のもとへ、届くだろうか。]
『なあ。お前、彼女にはもう……………してんの?』
[お節介な服飾仕事の仲介者。
男が女と近しくなったことに驚き、おめでとうと言ってくれた男が、
(男にとって)この間持ちかけてきた問い掛けだった。
年齢的に、『行き遅れ』とも言われかねない女を気遣ったらしい。
全くもって無頓着な男にやっぱりとため息をつきながら、
はっきりしとけ、と尻を蹴飛ばすようにして、急かしてきた。]
[どうやって、などと仕事の合間に考えていた。
気がつけば、教会の壁にもたれていたのだが。]
泣きたい時に、泣いたらいいのよ
笑う子は、笑わせておいたらいいの
……笑う子だって、きっと本当は
泣き虫さんなんだから ね
[あれ、ナタリーちゃんって今、このひと言った?
でも調理場に居たナタリーは男の子だったような]
[懐からハンカチを取り出して少年の目元を
柔らかく拭う]
ううん
いってらっしゃい、ラビさん
あ、そうだ
イライダさんって、わかる?
その人が、アップルパイ作ってくれてるから
食べてきたらいいんじゃないかな
たぶん、ホールにあると思う
[そう告げて、少年がその場を辞すなら
小さく手を振って見送って]
[ホールの場所を知らないと言われたら示すだろう]
[悩むようにぶつぶつとぼやいて、
はやく、とついてくるひげ面カエルに背を向ける。
家へ通ってきていた、あのお節介な娘あたりなら
聞けたかもしれないが、とても今更だった。
それでもこの光は、そのために此処にあるのだろう、
と思ってから気がついてみれば、欠片の一つも、
傍にいたはずのフィグネリアの姿もなく。]
……………………。
[お前のせいじゃないだろうな、とカエルを睨んでも、
反応はないというか、妖精の視線はどうやら男に釘付けらしい。
ちっとも嬉しくない。
再度背を向け、歩き始める。]
一度もなった事がないのか、忘れちまったのか――……
そんなんで喰事出来てたのか、オマエら。
[ 瞑目する。
――深呼吸、のち、獣。
服は霧散し、そこには黒銀の毛並を持つ大きな肉食獣が現れた。]
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