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消えてしまう 占われた ぼくは
ぼくが いなくなる 妖魔は 占い師に 殺される
でも人狼を みつけ ないと だから だけど
………… …こわ い 。
[そうして遂に、相手のことも完全に分からなくなった。
急に彼を見上げたかと思うとびくりと肩を竦め、逃げるように走り去って行った]
だから、もう、「イヴァン」でいる必要は無いんだ。
「イヴァン」はお終い。
[最後に彼女の瞳に映った青年の顔は、一見無感情で
――けれど、やはり何処か寂しげな眼差しだった]
それじゃあね。さようなら。
[でも、それも一瞬のこと]
[さよならを合図に、さらさらと、彼の身体は砂になって崩れ落ちて行く。身体と一緒に、「イヴァン」が「想い」が「思い出」が、全て消え去っていく]
[涙は何時しか枯れて。女はよろり立ち上がる]
……ごめん。
今は付いて行けない。
悲しみが大きすぎて、頭が何も受けつけちゃくれないんだ。
悪いけれど……先に休ませて貰うよ。
[そう謂って食堂を出たのはいつのころだったか。
気分悪そうに口元を覆い、泣き腫らした紅い眸のまま、
女は自室に戻り、鍵を掛けた]
[ゆらり。]
[紫煙が揺らめく。]
―宿の一室―
[背にコートを掛けた椅子。]
[それに腰掛け。]
[なにもしない。]
[食事を摂る、という行為も、あまり好きではなかった。]
[大人数であれば、なおさら。]
………っ。
く、……ふふ……っ。
[錠を下ろした部屋の中、漏れ出る声は嗚咽とも嘲笑とも区別がつかぬ。
ただその唇は弧を描き、端正な顔は愉悦に歪んで]
[人の理屈など、女にはどうでもよかった。
ただこの飢えを満たせるか、否か。
胎の子の為にも、食事を欠かすことはできない。
ロランや皆の話を聞き流しながら、
<<サーシャ>>の味はどんなものだろうかと想像し、唇を舐めた]
――――
[煙草を灰皿に置いて。立ち上がる。]
[声が、聞こえた。]
[確かに。]
[聞き間違えようのない、声。]
[扉を開ければ、そこには。]
……イヴァン。
[頼りなく、伸ばされた手を。]
[掴む。]
お前。どうし……
[目の前の彼は。]
[言葉を並べ続ける。]
[それは。]
[かたちのないものに、よく似て。]
[全身を、怖気が走った。]
――っ、イヴァ……!
[掴んだ手を振り解き、彼は走り去る。]
[追おうとしたが。]
[足が、動かない。]
[あいつは、死ぬ。]
[それだけは、ひどく冷静に。]
[理解できた。]
[みえないなにかに、阻まれたのか。]
[それとも、最期を迎える瞬間を、この目で見たくなかったのか。]
[おそらく、両方。]
……あ、や。まんじゃ…… 、ねえよ。
[死は。]
[何者にも、平等に。訪れる。]
[こうなることは、はじめから。]
[わかっていたはず。]
[だけど。]
[部屋に入り、扉を閉める。]
[震える、右手で。]
[かちり。]
[時を刻む音は、止まず。]
[ハンカチを巻かれた左手で。おさえる。]
[――はやすぎる、だろうが。]
[扉に寄り掛かり、瞼を閉じて。]
[最期に聞いた言葉を、頭の中で。]
[繰り返す。]
――うらないしに。
殺される。
[静かに、瞼を、開いた。]
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[扉に寄り掛かり、瞼を閉じて。]
[最後に聞いた言葉を、頭の中で。]
[繰り返す。]
――うらないしに。
殺される。
[静かに、瞼を、開いた。]
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