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[部屋から文庫本を持ってきて、読んでいたら夜だった。
どうしよう、夕飯は作りに行かなくてはいけない気がするけれど。
ちら、と城を見た。相変わらず起きる気配がない。
仕方がないので、一度下へ。予定通り大根おろしを使うメニューなので、
夕飯のメニューは和風に葱たっぷりの梅みぞれスパゲティと、牛のたたきに千草卵。
それから先日のアサリが今日は潮汁になって登場。
宇留間には申し訳ないが、流石に自分がその場所にいないので
今回はホットミルクは出せそうにない。
病人組には野菜と解した鮭を入れた粥と、幾らか果物も。
やはり先に知奈と御手洗の部屋を先に回ってみたが、相変わらず城は三年寝太郎状態だった]
[さらに一口。]
海鮮の風味が、素晴らしい。
野菜の味も、しっかりついている。
これは、味付けは、塩だけではないな。
食べやすく、家庭的な味だ。
[もぐもぐ。]
自分自身のこと、で?
よっしー。アンタ、気持ちの整理をつけなきゃなんない、過去でもあるの?
[足をぶらつかせたまま、西野の顔を眺めた。]
今回のこと、アタシは被害者なんかじゃないよ。
むしろ絶好のチャンスだと、思ってる。
[最後の質問に、ぴょん、とビリヤード台から飛び降りる。]
アタシはね、親の言うとおりの人生なんて、歩んでやんないんだ。
心から好きな男の子が出来たら、ありのままのアタシを、受け止めて欲しいって、そう、思う。
[片付けのため色々と動きつつ、ガルシアの声が耳に届いた。
味を確かめるよう何度か頷きながら、色々と語っている]
パエリア、好きなの?
[珍しく、ガルシアが饒舌だった。
人間、好きな食べ物を食べれば、舌も良く回るものだ。
まあ、口にものを入れたまま喋ると、杏は怒るのだが]
そうなのか。
[少し驚く。]
旨い。
ありがとう。
[かくり、と二越と碓氷に頭を下げる。]
俺は…スペイン、の、出身でな。
こちらへ来てからも、よく食べる。
と言うより、こちらに来てから、好物になった。
日本風の味付けのものも、同じように、好きだ。
[ふ……、と。山田へシニカルに笑った。その顔は微妙に引きつっていた]
やはり男子狙いか、山田!
いや、たしかにこの島の外にはいるだろう。そういう趣味の男もな。あるいはこの島の中にもいるかもしれない。僕はそういった恋に偏見はない。僕が直接関わるんでなければ、だ。
だが、だが、だが、だ。お前は根本的なところで勘違いしている。
[ビッ、と人差し指を突きつけた]
いいか山田。
この島は、男女で恋愛して初めて真っ当に出られるんだ。つまり、君は女子と恋愛しなければならない。
[食器を洗いながら、カルロスの話を聞いて]
へぇ、カルロス君ってスペインの血が混ざってるんだ。
美味しいなら、良かった。
[褒め言葉には弱い。]
作ったのは殆ど二越さんだけどね。
……よっしー。
[指を突きつけられた。そして言われた。言われた。言われた。大事なので三回書いた。]
ねえ。
[急に改まった表情をした。真剣な瞳で、西野をド真正面から見つめる。]
アンタは、口、堅い?
約束、守れる?
[ほえ。スペインの出身だったのか。ガルシアの新情報、ひとつ獲得。
スペインといえば、あと、なんだろう。
お隣さんのポルトガルは、日本料理と結構、縁が深いけど。
イベリコ豚にチュロス、あとはシェリーくらいだろうか。お酒はNGだけど。
そういえば、スペインはヨーロッパでは珍しく、お米を食べる国だとか。
あとはリゾットのイタリアだっけ。北欧でも、クリスマスに甘いお米を食べるらしいけど]
故郷の味、ってわけだね。
杏ちゃん、知ってたのかな?
[メニューを決めた杏の心は、さて、はて]
…うむ、旨い。
ハンバーグも、サラダも、全部旨い。
[少々パエリア以外のメニューがおざなりになってしまったが、もちろん本当においしいと思っている。]
毎日、すまんな。
[改めて先ほどキッチンにいたメンバーにかくり、と頭を下げる。特に双海には頭が上がらない。
彼女にはシャチの恩もあった。]
俺も、たまねぎのみじん切り…などなら、手伝えるのだが、料理そのものは、あまり経験がない。
[うなだれる。
やれることを探してやっていこう、と思う。]
…む。スペインの血が、か。
いや、むしろ、そう言うよりも、日本の血が、混じっていたと言う方が、近いだろう。
祖父が、日本人、だったらしい。
会ったことは、ないが。
[真正面からの、真剣な瞳。真剣な声。
山田からここまでのものを感じたのは初めてだった。
正直、少し怖じ気づいた]
口が堅いかと、約束は守れるか、か。
[怖じ気づきはしたが……それでも、拒絶するという選択はなかった]
ダイヤより。そして、アイギスの盾より。でいいか?
……うん。
[いいか、と聞かれ小さく頷く。心臓がバクバクしてきた。
西野は本当に信頼できるのか。今更ながらに頭の中がぐるぐる渦巻く。
それでも。
帰ってきた言葉を、信じようと思った。]
アタシ……さ。
信じてくれる?
ほんとは男の子じゃ、ないんだ。
故郷の味かぁ。
でもパエリアって家庭でも味違いそうだね。
本当、美味しいなら良かった。
経験なんてなくっても大丈夫よ。
みじん切りが出来るなら充分だと思うな。
何か手伝うって言えば、双海さんきっと喜ぶよ。
スペインは16歳でワインやビールは飲めるんじゃなかったっけ。蒸留酒だと18歳だっけ19歳だっけ。
とかそんな感じだったはず。
まあワイン文化のはず。
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