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ああ、そろそろ潮時かな。
[周りの声がうるさくなっていた。かぐやの魅了で集まった人が、少し離れてざわりとしている。
話を切って立ち上がったリリン達を見送り]
聖杯戦争を続ける以上、又どこかで会うだろうけどね。
大変かな? そうでもないよ。
[彼らが去ってから、周りの声はよりいっそう大きくなった。なだれ込んできそうな人垣に左の掌を数回握っては開き]
少しだけ、静かに。
[唱えるのは言霊。簡単な祈り。魔力を乗せたそれは容易に集った者達を沈静化させる。
要は眠らせるのだが]
行こう、さくら。
[レジで暗示からは離れていた店員へ支払いを済ませて*外へ出た*]
―???―
こ、ここは何処だ。
頭が痛い……。
[車に乗り込んで移動を始めたはずだった。
其処までは何も不思議ではなかったが、
雲行きが怪しくなったのは道中で警察に追われた所からだった。]
予想以上に疲れていたようだな。
情けない事この上ない。
それで、貴様あの後無茶はしていないのだろうな?
この街での活動に支障はまさかあるまいな?
[気絶していた自身の失態を棚に上げての質問だった。]
/*
足利尊氏とかディオメデスとか
ミケランジェロとか
みんなの歴史をwikiで調べて読んでたら寝ていたし気をつけるべき……おはようございます……
―南ブロック―
だから、そんな怒るなよ!辰ぅ!
[片翼の青年が天に広がる地表へと消えた後、歩み始めたヘイズレクの耳に、パピーの声が飛び込んでくる。
バックにさえぎられているせいか、周りを歩く人々には気づかれない。]
辰を見捨てたわけじゃねぇって!
いいか、聖杯を破壊するか否かを決断する時って、どういう時よ?
俺たちが勝ち抜いて、目の前に聖杯が出た時だろ?
でも、その時アサシンたちは、高確率でいないわけだ。
ってことは、俺たちの好きにしても怒る奴はいないって事じゃん。
なのに、聖杯出るまで協力はしてくれるんだぜ?
……「そんな子に育てた覚えはありません」って、辰の心にその考えがよぎったから、俺がこうしてるんだけど……。
よぎったからと言って、本心と言うわけじゃないってのは、まあそうなんだけどさあ。
[本来ならばこれは、個人の心の中で行われる、ささやかな葛藤なのかもしれない。
もしそうだったならば、辰と良識によってあっという間に打ち消され、葛藤した認識すら薄い可能性があった。
しかしパピーの存在によって、それは否応無く表に出てしまう。]
それにさ、片翼って強そうじゃないか?
「ひ弱」とか言ってたが、ありゃ、天使的な何かだろ。
……え、イカロスだったらどうする、だって?
イカロスって、羽根作って落ちたって伝承のか……。
よ、弱そう!
[パピーは、あの青年がイカロスでない事を祈った。]
/*シェムハザだと思って勢いで書いたが、実はイカロスの可能性もあるのかな。
非参加だけど、昔のfate村にいたような。
もし、そうだったのなら申し訳ない。
― ??? ―
少年は槍を振るっていた。
風が通り抜ける草原。遠く見える土色の街並み。
いずれにも気を割かず、ただ槍を振るい続けていた。
――天上にて見守る女は、彼が槍を取った理由を知っていた。
一心不乱に振るい続けるは死した父がため。――復讐がため。
ただ怨み一つで槍を握り、今日に到るまで片時も離さなかった。
師はなく。友はなく。
彼方に故郷の景色を置いたまま、少しずつその心を焼いていく。
少年は、輝き放つ具足の気配に気付かない。
女は、ついぞ声をかけぬまま、その草原を後にした。
――少年が復讐の暗雲より抜け出したのは、齢十五の頃。
父親の戦死の報より槍を取ってから、十一年後のことだった。
― ??? ―
「ディオメデスよ。本当に行ってしまうのか」
城門に向けられた、傷と土埃にまみれた鎧の背中。彼を引き留めるようにステネロスは声をかけた。ディオメデスと呼ばれた鎧の男は、振り返り、魂を映したかのような静かな瞳で、ステネロスを見つめた。
「どの道、アフロディーテが許さんだろう。あの女の執念深さはまさしく蛇のそれだ。民を説得し、妻を許し、留まり続けることが出来たとしても、別の不幸が民と貴君らを襲うだろう。……それは看過できない」
ステネロスはなおも食い下がる。首を横に振り、ディオメデスの肩に手を置いて、淡々と見える瞳の奥を覗き込むように睨みを返す。
「私は、俺は、そんなことを聞いているんじゃない。俺とてエピノゴイの一人だ。アイギアレウスの遺言とてある。そして何より、お前の境遇とてよく知っている。ディオメデス、お前はどうしたいのかと、残りたいのではないのかと聞いているのだ」
ディオメデスは、肩に置かれた手を握り、ゆっくりと引き剥がす。視線は、ステネロスの後ろ、厚き城壁が囲う石のいろをした都市を見ていた。
「俺はこの街で、お前という友と出会うことが出来た。アイギアレイアという妻と出会い、家族を持つこともできた。……この街に拾われてより、幸福であると感じぬ時はどこにも無かったと言えるだろう」
鎧の男は、最後にもう一度、ステネロスを見た。その表情は、城塞の都市でのみ見せた、柔らかい笑みを浮かべていた。
「感謝している。……さらばだ、我が友よ。もう彼女に、俺の声は届かない。アイギアレイアを見守ってやってくれ。いつ如何なる時も、お前達との時間は忘れはしない」
――そうして、ステネロスの前から、土にまみれた鎧は去っていった。一度も振り返ることはなく、歩みを止めることもなく。カリュドンの山を目指して、独り長い旅に出かけていった。
― 軽トラックの中 ―
目覚められましたか、マスター。
支障はありませぬ。
[ランサーは、軽トラックのハンドルを握りながら答えた。]
そうですな。
強いて言えば、この国の軍隊に追われたり、キャスターと遭遇した――といったところでしょうか。後、このチャリオットで記念像のようなものを破壊しました。
[――一路、地図を頼りに軽トラックは*道を走る。*]
―1F 西ブロック アーチャー拠点近く―
[そう、余談のような話だ。
吟遊詩人と彫刻の女の一行は、
赤い閃光を照りつかせながらけたたましく走り抜けていく鉄の車の一団にひと時目を奪われた。]
……なにやら騒がしいですな。
自警団ですか。
狼藉者でも追い立てているので?
[器物破損。スピード違反。
かの槍の英霊がその先に居るとは
思ってもみない事であったという**]
支障がないだと、記念像を壊して軍隊に追われる真似をしておいてよく言う。
[其処まで聞くと従者の様子を見つめる。
そして眼を瞑り自身の魔力量を確認する。]
しかし、キャスターに会ってきたとは如何なる事だ。
貴様の様子等からするに戦闘は起きておらぬな。
いったい何をしてきた。
まさか、談笑して終わりなどとは言うまいな。
[従者の様子や自身の魔力量に大きな減少が無い事。
二つの様子から戦闘が起きていない事は間違いない。
談笑ですんでいたならまだしも重大な事態が起きている可能性があった。]
…………。
[ランサーは思考する。ここで「イエスマアム」などと言えばアルフレートは無用な心配をするだろう。だが目的は休暇である。心労は良くない。ならば、真実を織り混ぜつつ答を出す必要があるだろう。図書館での出来事、マイルドな身のこなしのキャスターとの会話、現在の状況――――]
――――キャスターが貴君の尻を見ていましたので、離脱を致しました。
[図書館とは反対の地区に当たる大学まで辿り着いた頃には、既に陽も*沈みかけていた*。]
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