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[身を起こすとバックのふたが開き、ヘイズレクの姿が目に入った。
自分が発した昨夜の問いかけと、彼の反応を思い出し、しばし物思いにふける。]
ぼんやりしている場合じゃねぇな。
もう一度、妹尾のくれたメモに目を通しておくか。
[そうつぶやいて、バックの中のメモをくわえると、外へと這い出した。]
――昨晩/2F 廃墟ビル街――
………広いな。
[空虚の街。朽ちたコンクリートジャングルを見上げて呟く。
忍神町の一角。柊の家のある森林公園や教会、川など付近一帯を含めたのと同等くらいはあるだろうか。全く如何なる術を持って造られたのか、大掛かりなものである。]
ふむ。
[遠くで魔力のぶつかりあう気配を感じ、柊と顔を見合わせる。幸いなことに戦闘区域とは離れた場所にやってこれたようだ。戦闘はほどなくして終わったのか、それらしき気配はすぐに落ち着いた。様子を見に行きたくもあったがまずはと鉄ノミと金槌を取り出した。]
脆いな。
[崩れた落ちたビルのひとつに寄り、その壁に触れる。コンクリートは大理石と比べあまりにも質が悪く、自分が「石の声」と呼んでいるものが聞こえるようには思えなかった。]
贅沢をいうものでも、ないか。
[柊には、安全な場所で休んでいるよう言ってある。危険かも知れないがここで夜を明かそうと思ったからだ。
柱状に残されたビルの残骸にノミを当て、金槌を振るう。これまでに二度ほど彫刻を試みているが生前とは比べられぬほどその速度は速い。コンクリートの柱は瞬く間に削り彫られ、武器を振るう古代の戦士の姿へと変わっていく。]
こんなものか。
[自身の腕前を確認するように頷く。出来に納得はしたが満足はしていないのか、また別の柱を探すとノミを振るう。カツンカツンという音が夜の廃墟に響き続ける。]
[何体の兵士像を彫った後だろうか。]
――よし、そろそろいいだろう。
[本番だといって一度ぐるんと右腕を振り回す。ひときわ大きく形を残していた柱に彫ろうとしているのは、先日に刃を合わせた槍を持った英雄の姿だった。]
重く、頑丈で、逞しく。
[粗忽なコンクリートの中より、自分の見立てたギリシアの英雄の筋肉を彫り出していく。がっしりと、どっしりと、半裸で槍を振り上げる英雄像が形を現していく。それは粗いコンクリートにも関わらず血が流れているのかという脈動感のある肌を描き出した。
――が、自分の見たとおりに彫り上がりつつある彫刻に対し首を振る。]
…違うな。
[実際に槍を振るったあの英雄の動きは到底この筋肉から発せられるものではないと。彫り上げ創り上げた部分に更にノミを当て削りを入れる。あの筋肉はもっとしなやかで、強かで、荒ぶったものだとより魂を込めて金槌を振るった。]
[そうして出来上がった像は、トロイアの英雄の姿にどれだけ近づいただろうか。]
やはり、一度全裸になってもらわねばな。
[まだ満足はいかぬと真顔で呟いたのは、視界の隅に太陽が昇り始めた頃だった。
柊はちゃんと休めただろうか。こんな廃墟で一晩を明かすと提案した事を申し訳なく思いつつ、眠る主の横に腰を下ろした。**]
アーチャー ミケランジェロが「時間を進める」を選択しました。
あ!
ランサー彫る際にトロイアの伝承について思いを馳せる描写入れるの忘れてた!!!
…寝坊して慌てて書くのって駄目だな。
―南ブロック・ホテル―
うん、何だ?辰?
このランサーのマスターが気になるのか?
……そんな、ごまかされても、俺ってお前の一部なんですけど。
無駄だって、どうして解んないかなあ。
自信家で尊大で根源を目指す魔術師かあ。
まさに、魔術師の中の魔術師。
ザ・魔術師って感じだ。
おそらく体だって健康体だろ、これは。
辰の憧れる魔術師像ってこう言うのだもんな。
[遺伝なのか、あるいは呪いなのかわからないが、羽鐘の家に生まれた者には、病弱さがつきまとってきた。
よって研究する魔術の全てが、寿命の維持や不自由な体の補完にあてられる。
そのため、根源の探求といった、純粋な魔術研究からは離れがちなのだ。]
確か俺も、病弱さと無縁な金属に個人の意識や記憶と共に魔術刻印を植えつけるって研究から生まれたんだっけっか。
無茶するよなあ。
[ともあれ、そちらは失敗に終わり、金属と個人の意識を接続する方法だけが残った。
個人が死ねば、金属の意識もまた消えるため、家系の維持と言う点では意味を成さない。]
まあ、失敗から生まれたものでも使いようはあるってとこ見せてやるよ。
[パピーはそう言って、*胸を張った。*]
― 1F北・オフィス街(ホテル屋上) ―
[――陽が昇れど、街が目を覚まし始めるのは遅かった。
それは俯瞰していても気付かない程の、僅かな誤差。
しかして確実に、『彼ら』が夢より戻る時刻は遅くなっている。]
リリンのサーヴァント。アーチャー。
魅了のサーヴァント。束ねし者。
[呟くごとに、邂逅した区画の方角に視線を移す。
教会区が在る西区。
公園がある南区。
豪勢なホテルが佇む中央区。
最後に空を見上げて、ランサーは腕を組んだ。]
[昨夜からアルフレートはよく眠っていた。
魔術の行使、宝具の使用――多くの負担が積み重なったのだろうか。
起こすことはせず、ランサーはただ静かに屋上で見張りについている。]
……………………ふむ。
未だアサシンらしき者と邂逅していないのは気になるが。
[聖杯戦争。それは七騎の英霊を繰る魔術師の戦い。
対して、ランサーが出会った英霊は4体。自身を入れ5体。
見張りとして立つランサーが警戒すべきは、払暁奇襲のような奇手を取る可能性のある暗殺者に他ならない。――が、リリンのサーヴァントはアサシンと呼ぶには聊か堂々としており、アーチャーは多少の疑問の余地は残るがアーチャーであり、魅了のサーヴァントは潜むとするには華やかであり、束ねし者は騎士である。]
[昨夜からアルフレートはよく眠っていた。
魔術の行使、宝具の使用。多くの負担が積み重なったのだろうか。
ランサーは起こさず、静かに屋上で見張りについている。]
……………………ふむ。
未だアサシンらしき者と邂逅していないのは気になるが。
[聖杯戦争。それは七騎の英霊を繰る魔術師の戦い。
対して、ランサーが出会った英霊は4体。自身を入れ5体。
見張りとして立つランサーが警戒すべきは、払暁奇襲のような奇手を取る可能性のある暗殺者に他ならない。――が、リリンのサーヴァントはアサシンと呼ぶには聊か堂々としており、アーチャーは多少の疑問の余地は残るがアーチャーであり、魅了のサーヴァントは潜むとするには華やかであり、束ねし者は騎士である。]
――――よし。分からん。
クラスだの真名だのと悩んでも仕方あるまい。
向かってくる者を刺せば良い話だ。
[ランサーは思考を放棄し、覇気の薄い景色を*眺め始めた。*]
ランサー ディオメデスが「時間を進める」を選択しました。
―夜更け:廃墟よりの撤退―
[ランスロを護衛に廃墟より戻りて後、
「仔猫はお気に召しましたか?」
という吟遊詩人の問いに、主は妖しく微笑んだ。
空間の断裂、面の展開。仔猫の爪とぎとは侮れない――とのこと。興が乗ればヤってしまっても愉しそう、なんて、不穏な唇。
さりとて夜も深い。
吟遊詩人の宝具のひとつ、
その真名を解放した故に魔力の消費も大きく、
主は食事もそこそこに回復を優先して眠りにつくことになる。
クレティアンもまた休息せねばならない。
編みあげた騎士が受けたダメージは語り部にそのまま伝わるのだから。主が休んだ後密やかにわき腹の傷を撫で、漸く痛みに眉を寄せていた。]
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