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― →海岸線 ―
[手に下げたバケツの中には、
ぴちぴちと跳ねるニジマスや、岩魚。
バケツを片手に川沿いを下っていけば、
やがて海の見える場所へと開ける]
おや…… リヴリアぁ?
[遠目に見えた二人組の後ろ姿に、大きく声を掛けた。
43回追いかけた背中だ。背中を見れば分かる。
その隣を歩く鈴の髪飾りをつけた姿は、
誰だかひと目では判らなかった]
[近づくと、それは寝転がっている(?)ダハールだと知れる。
顔を上げたダハールに、少女はいつものように愛想よく挨拶をした]
ダハールちゃんだったんだあ。こんにちはー。
……ほえ? 木につくお花?
[唐突な質問にぱちぱちと瞬きをする。
お花畑が、ひたすらだだっぴろい草原であることの理由。
それは単純に、少女が春に咲く花がよくわからないから。それだけの理由だった。
腕組みをして、うーんと少女は考える。
やがて、ぽんと手を打った]
木に咲く花……ああ、桜!
お花見、素敵だねえ。
さくらんぼが食べられたら、いいよねえ。
ダハールちゃん、一緒にお花見、しよっかあ?
[少女が微笑むそこには、いつの間にか当たり前のように、一本の桜の木が満開の花を咲かせている。
花吹雪が舞う中を、少女は楽しげに笑った]
……終末、近い、かも
ねーさん、言ってたし……
巻き込まれたら……多分、死ぬ。心、が
[空気が違う。その言葉に、
先程あった姉の言葉、思い出す。]
シン、と、少し、話したんだけど
……すごい、興味と、実行力、だよ。
実験、と言ってたっけかな。
海水で、豆腐、作ってるんだ……
いつかは、皆に振る舞いもしてみたいとも。
あの子の親御さん過保護、何だっけ?
ちゃんと、話し合って……
彼女に、無理が、ない、範囲で
その興味を生かしてあげたら……ここ、よりもっと、
沢山、実験できそう、だしさ……
海が珍しいのかい?
[幾度となく海を見つめるローザに、そんな言葉をかけて歩く。
よもや実際の海を珍しがるとは思ってはいないけれど。
そうやって頭に浮かんだ言葉をを掛けて回る。
“知りたい”とそう言って、
少女は私と共にセカイを巡る。
“知りたい”と思うのは私とて同じだ。
知るためにセカイを巡るのだから。
その“知りたい”
その裏の見えない思いは同じ“知りたい”なのだろうか?
違う“知りたい”なのだろうか?]
ハルの子は、花のセカイ
星狩りの子は 星のセカイ
おひさまの子は 太陽のセカイ
潮騒の子は 海のセカイ
いろんなセカイ……
[どれひとつ同じセカイはない
セカイも違う 人も違う。
同じでなければわからない。
だから旅するようにセカイを巡る
言葉を 表情を 身体を巡り
私の知らないあなたを探る旅を続ける]
……終末?
[姉、というと彼と対を成す道化師。
夢の中でも道化の姿をしている彼女は、
何処か底知れない――世界を俯瞰しているような
そんな立ち居振る舞いをする人物だが]
心が死ぬ、ね。
あの世界は心で描かれている世界。
心が死ねば確かに、それは世界の終わりにもなるのでしょうね。
[もし少女達の心が外的に潰されるなら、
その前に少しでも戻るつもりのある者は連れて来なければならない]
……杞憂であれば、良いけれど。
[まだ転調の僅か後。
確証めいた事は言えなかった]
[瞬きする様子を、下から見上げ頷いた。
なお、中身は少年だが外見10歳程度の少女のスカートを
覗き見る趣味はない。]
――――わぉ
[やはり、と言う感想と同時に理解できても感情は驚く。
草原の花畑に樹齢、何年だろうか?
桜が聳え立ったのだから。
淡い花びらが舞い仕切る。
その花々は地面に柔らかな木漏れ日を作り。]
………お花見、いいね。いい、お花見日和だ
シンのところのパンでも一つ貰ってくればよかったよ
[頷きながら、照る日を避けるように
桜の根元へと草原を這って
……この桜は、いつまでも散りきらないのだろうか?
そんなことを、花吹雪の中思う]
んー?
[こてり、3者の会話に首を傾げる。
話題となっていたシンのカルテに手を伸ばす]
ああ…そうね。
眠ってしまってからしばらくも、ずっと手元においていたし。
適応…、ね。
……ご両親が、お話し合いに応じてくれればいいのだけれど。
どうかしら。
[連絡先が書かれた行を指でなぞり、むーん、と悩みこんだ]
……そういう、事。
[シンの現実での姿を思い浮かべようとする。
確か病弱で――こちらに来た切欠そのものは判らないが。
いつ頃からこの世界にいたのか、
最も古株に当たる自分でもよく判らない少女だったか]
……居場所は、知ってる。
会いに行ってみるわ。
[当たり前のように花を咲かせる桜の木。
少女の中に、"たった今存在するようになった"という認識はない。
既に少女の中で、存在して当たり前のものとなっている。
だから、驚くダハールに、にこにこと笑ったまま首を傾げた]
シンちゃん?
ふうん。
[少女はシンという女の子に、会ったことがない。
己の領域を離れない者同士、今までそんな機会はなかった。
海辺に住んでいる、ということだけは聞き知っている。
だから少女は無関心をつらぬく。
海は、嫌いだ]
[シャルロッテの声を聞きながら]
……核心的なところが何か。
眠っている理由は本人にしか解らないから。
どうにせよ、少し探りは入れなければ。
ならないでしょうね……。
[いつの間にか体は横になっていた。
目を閉じたまま少しだけ頭を抑える]
やあおひさまの子。
[振り返れば見知った少女の姿。こちらのセカイの歳は近いはずなのに、まったく異なる小麦色の肌。
快活な髪
手に持ったバケツを覗き込めば、川魚の群れ群れが淡水にキラリと輝いた]
今日はお魚かい? ふふ、海のお魚は良く目にするけれど、川のお魚はちょっと珍しいねぇ。焼いて食べるのかな?
ローザ、すぐにかくれんぼはいけないなぁ。
かくれんぼはちゃんと挨拶してからだよ。
[自らの後ろに隠れるローザの背をとんっと押して、ミズキの前へ進めようとする]
どうだろう……杞憂……で、見過ごして
後悔、するぐらいなら……
[枕に顔をうずめる。
後悔するぐらいなら……
…………
口をつぐんだ後、意識がしばらく途切れた。
その頃、あちらでは、
桜吹雪を見上げたところで。]
…………入院、しているん、だから
目覚めたあと、
無理のない、範囲で 色々
やらせちゃ、え……
[シャルロッテ先生をそそのかす。
必殺事後承諾。
患者の意思を優先しました。
を言って、寝台でにやり、笑う]
[暖かなそよ風が吹くたびに、桜の木は花びらを舞わせる。
けれど、決して散りきってしまうことはない。
永遠に満開の花を咲かせながら、ひらひらと花びらを舞わせ続ける。
それは、とても美しくて。
とても幻想的で。
とても不気味な光景かも、しれない]
……おなか、空かせていきな。
おいしーぞー
[等とも寝ぼけた声が口にした。]
ロリコン先生が姉と
今、向かってたはずー
[呼吸が傍目にも普通に見えるくらいになってから。
もそもそと両手をついて起き上がる]
――そら、が。
[落ちてきそうだ。
なんて脈絡の無い事を思う。
そして恐らく事実でもないのだと思う。
ただ、1人の少女を送り出した時。
翼に感じた、重さ]
――……。
[翼を引き摺り、歩き出す。
誰かに会わなければ、そんな気持ちで]
どうにせよ。
あちらの事を感じない事には。
どの道……私が、動くのは……。
あちら、側……だし……。
[すぅっと声が小さくなっていく。
微妙な沈黙も、その後のやり取りも。
聞いていたけれど、何も言わない――]
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