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>>134
その、白藍色の扉が……?
[半信半疑。
とりあえずそっと数ミリドアを開けてみると、カフェのカウンター席のようなものが、見えた]
――!
[驚きのあまりばたん、とドアを閉めて、「こっち側」のカウンター席と見比べて]
……んー。これは、当たりっぽい。
[それからもう一度、眼鏡のお兄さんを見ると]
ねえ、眼鏡のお兄さんも、あたし達と一緒にこの扉の向こうに行かない?
……んっと、その、お花見に。
―― 幾年か昔の店内 ――
[カウンター内の人物は、血濡れの客の乱入と、黒いずきんの少女のやり取りを睥睨していた。
またおかしな奴が来た。
喉が渇いたと言っている、と悲鳴のように言われても注文されずに何かを提供するような柔軟さはまだ無く、
ここは本当にそんな客が多すぎる、と軽く頭を振って]
メニューあるだろ、メニュー。
[苛立たしげに、手に持ったグラスを指で弾いた]
注文しないなら……花見でも何でも行くんならさっさと行って。そうじゃないなら注文の前にそこいら中につけた血のあとを、掃除。
それからお客さん
[と、マーシャを指し]
花見に行くなら先に代金。
[カウンター内の人物は、不機嫌そうに*言った。*]
……当たってた?
よかっ……、た。
[勢いよく扉を閉めた>>136女性に、幽かな笑顔で微笑む。
この店にある無数の扉のほとんど全てが、どういうわけか「時空の扉」らしいことを男は察する。これほど多数の時空間に繋がっているなんて、一体どういう場所なんだとぼんやりと思いながら。
女性の誘いにはゆるく首を振った]
花……、見。
素敵な誘いだけど……。
まだ……、この時空でやらなければならない、ことが。
[霞のかかる意識の中で、ひとつ思い出したこと。
それはこの時空においてしか出来ない、大事なこと]
[立ち上がり掛けた所で声を掛けられ、振り返る。
カウンター内で不機嫌そうに佇む黄色い瞳の女性――いや、男性? その姿>>137を認め、残念そうに微笑んだ]
注文……。すごく心惹かれるんだけど、
生憎この時空の貨幣を持ち合わせていない、な。
[それにあまり、時間が無い。
店員らしき人物には「片付けを」と叱られるが、今はもう一つ片付けなければならないことがある。それは男にしか出来ないこと。
――『彼』の、弔い。]
ごめん……、ね。
やらなければならないことを思い出した、から。
後で、必ず……。
[咎められようとも、ふらふらと立ち上がる]
[2人組が入店した時と同じ、萱草◆色の扉に手を掛けた]
――――また、来ます。
[眼鏡の下、儚い微笑みのみ残して男は扉をくぐる。
望まれざる客が店を再び訪れるのは、そう遠くない*未来*]
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