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[レオが、優しい笑顔で、ねこにゃに手を広げる。
それは、ごく自然で、そうあるべき光景に見えて。
そこまで見た時点で、自分はここにいるべきではないと感じ、そっとその場から立ち去った。]
[かつかつと歩き、二階の仮眠室へ。
誰もいないことを確認し、滑り込む。扉を閉め、孤独が身を包むと、足から力が抜けてへたりこんだ。]
…これで、いい。これでいいんだ、これ、で…。
[自分に言い聞かせるように呟くが、抑えきれない激情が、涙となって視界を満たした。]
…あきらめなくちゃ、いけない、のに…。
ちゃんと、祝福しなきゃ、いけない、のに…!
[割って入ってはいけないと、封じていた感情が一斉に蘇る。ぼたぼたと、涙が溢れる。
いくら悟ったような言葉を吐いても、未熟者の感情は、易々と理性を凌駕した。
はじめての恋、はじめての喪失。激情を制御できず、心が振り回される。拭っても拭っても、涙は流れる。
荒れ狂う嵐に、掛けたはずの心の鍵が外れる音が、聞こえた気がした。]
…レ、オ。
[謝罪の言葉>>26に首を横に振る。痛くなんかなかった。レオがつらそうな顔をしていることの方が、ずっとずっと痛かった]
……おにーさん。
ほんとに、ほんとに、何もありませんにゃ?
[レオの胸に顔を埋めたまま、尋ねる。とても、そうは見えないのだけれど]
それとも。
ねこにゃは、おにーさんの力には、にゃれませんにゃ?
…レオ…。
[名前を呼ぶ。息が出来なくなりそうだ。]
…レオ。
わたしは、あなたが、好きでした。好きです、好きでした…すき、です…。
[言うべきではないと封じた言葉が、しゃくりあげる唇から、零れ落ちた。
この部屋の闇に聞かせるだけならば、赦されるだろうか。荒れる心の片隅でそう思い、そうであってほしいと、祈る。]
…すき、だから…どうか、しあ、しあわせに…。
[震える唇で、祈りの言葉を繰り返す。心が落ち着きますようにと。
もう少し泣けば、きっと、落ち着くことができるだろう。
今度こそ、封じなければいけない。
二人の前で、穏やかに笑えるようになるまで。だから今だけは、もう少し泣いていよう。そう思い、暫し、涙を流し続けた…。]
[四角い箱を口に咥え、息を吹く。
音が鳴――らない。
もう、それはただの鉄の塊であって、楽器ではない]
(ソモソモ、ボクは見セ掛けデスカラ)
[震える手からガラクタは滑り落ち、床に硬い音を鳴らした]
ハは…HA。
[一階では旅の終着点を見つけた男と、純粋な感情のまま奇跡を受けた少女らが、明るい照明の中、過ごしている]
(コレデイイノデスよ)
[壊れた楽器である自分には、そもそも感情が無い。意識がない。意志が、心が、気持ちがなにもない。嘗て叩いて壊した彼の░▓▒▓█▓░░▓▒は、癇癪と共に...を投げ捨てた]
(憧レてイタノデショウ)
[人間を、生き物を。
前を目指し、先を歩み、切り拓いていく全ての存在を。
一組のカップルの傍で奏で続けたのは、意地であったのかも知れない]
(キット適ウカら――)
[適う夢の側にいたかった。
関わりたかった。触れていたかった。
ゴミとして、不用とされたこの身が、何か――できないかと。
だからこそ、男の側で...]
サヨウなラ、オゲンキデ。
[それは
叩く事でしかもう、音の出ないハーモニカの夢。
酷く愚かで、
悩ましい――適わない恋の音色。
人知れずカシャンと砕けて、*...は消えていった。*]
[瞳に映ったねこの答えを聞く前に…静かに自身の唇をねこの唇に重ね合わせた。僅かな時間だったが、それはとても長い時間のように感じた。]
ごめんな。
急に…
[申し訳なさそうに男はねこに言った]
[ぴくり、と耳が動く。ねこにゃの耳は猫の耳。レオに聞こえた音を、聞き逃すはずもなく。何も言わないけれど、眉を寄せる。
どこか苦しそうなレオ。かすかに聞こえるセドリックの声。何か関係があるのだろうか。
猫には何もわからない]
……おにーさん。
[何度尋ねても、明確な答えは返ってはこない。そのことに少し顔を曇らせつつも、顔を上げられれば素直に従って、じいっとレオを見つめ返した]
!?
[不意に唇が重なると、真っ赤になりつつも目を閉じて。
申し訳なさそうに謝られると、首を横に振った]
謝っちゃ、駄目ですにゃ。
[赤い顔のまま、めっと睨むけれど、やがてためらいがちに口を開く]
おにーさん。
おにーさんは、幸せですにゃ?
おにーさんが幸せにゃら、ねこにゃはそれでいいんですにゃ。
おにーさんが幸せじゃにゃいと、ねこにゃは笑えにゃいんですにゃ。
[不安にさせた、と言われて>>37首を振る。そんなことはなんでもなかった。レオが笑ってくれるなら]
おにーさんが笑ってくれるにゃら。
ねこにゃは……一緒にいたいですにゃ。
[抱きしめられれば、今度は素直にしがみつく。ぎゅうっと腕に力をこめた]
ねこにゃも、おにーさんのこと、大好きですから。
泣かにゃいでくださいにゃ。
笑ってくださいにゃ。
[笑みを浮かべて、首こてり。悲しい涙ではないとわかっているから、不安な気持ちにはならないけれど]
ずーっと一緒にいるって、いっぱいいいっぱい笑って、楽しい毎日を送るって、約束しましたにゃ?
[ねこにゃは、ただの猫。
夢はいつか覚める。魔法はいつか解ける。
だけど、それでも、今は奇跡を信じたい]
ねこにゃ、お姫様じゃにゃいですけど。
ただの、長靴を履いた猫ですけど。
こんにゃねこにゃを選んでくれて……ありがとう、ございますにゃ。
[そっと目を閉じて、レオの胸にもう一度頬を寄せた]
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