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[ ――…… ぽつ
ぽつ ぽつ ]
[突然、辺り一帯に天気雨が降り注ぐ。
……降り始めの、雨の匂い《ペトリコール》。]
[通常ならすぐに止むような、気にかけるまでもない小雨。
しかし、その雨粒が大地に浸み込んだ瞬間。
人質を抱えた売人の背後の地面から、音もなく、数えきれないほどの草花が芽吹いた。]
[カラスノエンドウ、ヤブガラシ、他にもさまざま。
影を纏って少し黒ずんだ植物たちが、驚異的な速さで成長し、みるみるうちに売人の足に、背に、腕に絡みついて、動きを封じる。]
今です! 人質の確保をっ!
[二人に聞こえるように、そう叫んだ**]
[全力移動と同時に拳銃を抜き、売人の頭を銃のグリップ部分でぶん殴った。
たぶん相手からすれば瞬時に移動してきたように見えただろう。
その運動エネルギーに加えて銃の重みも加算させた衝撃は、売人を無力化するには十分だったと思う。
ただ、利き手じゃないから死んでない。たぶん、きっと。*]
─ 倉庫内→外へ ─
[更なる男の拳が襲い掛かることを覚悟する。
俺の能力は広範囲に及ぶがその反面、こうやって近づかれると力を奮えないのが欠点だった。
が、密売人は客が確保された事を知ると追撃を加える事をせず、踵を返し出入口とは反対方向に走り出す。>>74
気を引き続けようと考えていたが、状況を適切に判断し、
逃走を選ぶあたり、周りが見えないほど馬鹿じゃ無い
という事か。]
クソッ、逃がすか!
[だが男が逃走した方向は、全くの予想外。
他にも出入口があるかは確かめるべきだったのに、
すっかり抜けていた。これは完全な凡ミスだ。
だからと言ってここで、男を逃がす訳にはいかない。]
― 外 ―
[ 人質を取り、これで逃げきれる、と思った時だった。 ]
……?!?!
[ ざわっと足下がうごめいた。 ]
な、なんだこりゃぁ?!?!
[ 絡みつく草を足で蹴りつけようとして、完全に気を取られたその時……。 ]
ぐがっ……?!?!
[ 側頭に衝撃を感じて、人質から手が離れ、た。 ]
紫來くん……!
[ さすがにこれには三谷も驚いた。
植物はおそらくまだ姿を見せていないエージェントの物。<ヘルマウス>をぶんなぐった少女がメインアタッカー。
あと一人くらいは居るかな……という予測はしていたが、それが紫來だとまでは思わなかった。 ]
俺、こいつに無理矢理脅されて、販売しろって言われたんだ。
けど、俺があんな話したせいで、紫來くんまで危ない目にあったらいけないと思って……それで。
[ 用意していた嘘を平然と吐く。 ]
[ 実際のところは、紫來にはもう一段階強力な薬を売りつけさせようとしたところだったけれど。
紫來がUGN関係者だということも、彼らの動きがこれだけ速いとも予想外だった。 ]
(――これだから、人間は面白い)
[ ほくそ笑む内心は隠して。 ]
……俺は大丈夫。
紫來くんって……、もしかして高校生探偵とか刑事とかいうやつ??
えっと、こっちの人も?
[ <ペトリコール>が足止めし、最も機動力に優れた<アキンボ・バタフライ>が最速で打撃を加え、<ライトニングアービター>が確保する。
3人の息の合った連携で、人質という最悪の状況は即座に脱する事が出来た。
ほ、と息をつく。 ]
エネミー沈黙。
状況クリア。
あ、いや、男がさっきまでなかった紙袋を持っているね?
この状況で持ち出そうとするなら、よほど大事なものだろう。
ただ、逆に爆発物とかだと危ないから、注意して確保してくれる?
女性2人は救急搬送の手続きが済んだから、3分後に来る救急車に乗せて。
病院に行く前にこちらによって記憶処置をするから。
人質だった男の子は……どうしようかな。
高校生探偵……うん、まあそんな所かな
結構、かっこいいだろ?
[今日ここでどんなやり取りをしたとしても、
明日には都合の悪い記憶はすべて完全に消去される。
自分の身に起きたことを思い出せなくなる事象は、
実の両親や、いつ力を獲得したかすら思い出せない
己と重なって。
もやもやとした気持ちを抱かないわけではない。]
そう、彼女は橘さん。俺の先輩みたいな感じかな。
可愛いだろ?
[>>97三谷の内心など、気が付かないまま。
俺は束の間の会話を楽しむように、話を合わせる。
実際、今まであまり話したこ事がなかった彼との会話は
新鮮に感じられた。**]
[紫來くんと三谷くんの話を黙って聞いていた。こっちの人と言われて>>97
それに説明をする紫來くんの言葉に一瞬固まるが>>101]
紫來くんの仕事仲間の橘です。
私がちょっとだけ早く始めたから先輩といえば先輩だけど……同い年だよ。
[気を取り直して笑顔で自己紹介。
にしても、しれっと何を言っているのだこのイケメンは。という顔で紫來くんをちらりと見て。]
三谷くん、だっけ?
脅されたって言ってたけど、その経緯とか事務所に来て詳しく聞かせてほしいんだけど、いいかな。
[自然に誘導してるつもり。もし断られてたら“眠って”もらうしかないかと考えていた。三谷くんの返答次第ではちょっと手荒な真似をしないといけないが、できればそれはしたくない気持ちで、聞いてみた。*]
[ 当面の危機は去ったとみて、ほっと力を抜く。
そして、病院ヘ向かった2人へ連絡を送った。 ]
こちら処理班。
倉庫組の方はあらかたカタがついたよ。
結論から言うとクロだった。例の売人は確保できた。
現地にいた一般人はこちらで救助・記憶処理予定。
[ と、端的に事情をまとめた文章を付け足して。 ]
<光速の配達人>、<部外者>そっちの首尾はどう?
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