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―回想 自宅→宿―
[宿に泊まると言っても、荷物はそう多くは無く。
簡単な着替えと、それから―――彫り掛けの木細工を鞄に詰めると、自宅を後にする]
あっ。
[途中、宿へ向かうフィグネリアと道が同じになった]
…………………。こんばんは。
[僅かな空白の間の後、静かな声で挨拶だけを述べ。小さく頭を下げると、そのまま駆けて宿まで向かった**]
[ぎゃあ。]
[ぎゃあ。]
[ぎゃあ。]
[鴉の声に、目が覚めた。]
―朝・自宅―
[ゆっくりと起き上がり。]
[一旦、元に戻る。]
[……………………]
[しばらく天井を見上げて、もう一度。]
…………げ。
[窓の外の景色に、思わず声をあげ。]
[軽くコートを羽織ると、外へ。]
[屍体に鴉が群がることは、ままある。]
[が、鴉が屍体で群がるのは、珍しい。]
[ちらり、と辺りを見回した。]
[濃い靄。]
[よく見えない。]
まだ、あれあんのか?
ウォトカに生姜を漬けた酒。
あればそれも持ってきてくれ。
まずこれでいいか。
[そう言ってウォトカを生で呑み始めた..勿論何も食べずに。]
― 井戸/早朝 ―
[吐く息がことさら白い。
井戸の縁に手をついて。
深い、暗い、底を覗き込む]
……。
[薄く、目を閉じて、呟きを落とす。
いつもの、日課]
さて、行かなくちゃ。
[言って、ふと首を傾げた。
そう言えば、昨日もそんなことを言った気がした]
まあいいか。
[悩んだのは、ほんの数瞬。
なんとなく宿の方角へと歩き出した]
―宿 回想(夕方〜深夜)―
[その日の夜は、久しぶりに宿で食事をとった。窓を揺らす冷たい風が嘘みたいに、夕食の席は温かな空気が流れていたと思う。
イライダさんとも久しぶりによく話をした。頭はあまり良くないと自負しているので、難しい話は理解できなかったと思うけれど。森や湖の話が出るなら、多分、子供みたいに目を輝かせながら興味深そうに聞いていた。
ちなみに水車小屋の前にいたのを彼女に見られていたことには、まったく気づいていなかったらしい]
それじゃ、お休みなさい。
[あまり遅くなる前に、割り当てられた部屋へと向かう。
作り掛けの細工と木堀ナイフを取り出して]
――――――……よろこんで、くれるかな。
[一人、少しだけ笑って。
その日は夜が更けるまで、木を彫る小さな音が部屋に響いていた]
―宿 1日目―
ふわぁ。
[眠そうな目を擦りながら、一階へと降りてくる。
揚々と酒を飲む男の姿が一番に目にとまった]
おっちゃん、随分派手にやってるなぁ。
[豪快にストーブへ足を投げ出す姿に、ニイと笑い。
猟師の彼と、樵の父。森で生活を立てる彼らは、親交があったようだ]
僕は朝ご飯をください。……え、もうお昼だって?
[寝ぼけた顔でずれたことを言えば、訂正する誰かの声が挟まれるか。誤魔化すように頭をかくと、席に付いた]
[しばらく、じっとそれを見つめたあと。]
[5・6本ほど持って、家の中に入る。]
[暖炉に薪を放り込むと。]
[ふと、思い出し。]
[ポケットに入ったままの、ぐちゃぐちゃの封を切ってみる。]
[ざらっと目を通し。]
[それから。]
[ライターの火を灯すと、暖炉に放り込んだ。]
―使用人部屋―
[胸の奥を、つんとした痛みが襲った。
――多分、それは、身体の調子の悪さからきたものでは、なくて。
両親を失った後のくすんだ世界の中で、唯一と言ってもいいくらいの光があったこと。
それを、久し振りに思い出したから、だろう]
[ゆっくりと給仕服に着替えると、使用人室を出る]
おはようございまーす。
[精一杯の明るい声を、その場に響かせる]
『――/――.――――。
早朝から靄がかかっている。
例年に比べ濃い為、そのうち濃霧になるやも。』
[研究日誌に、まずそれだけを書き込む]
………
他の事は、ここに居ちゃわからないわね。
[日誌にお手製の栞を挟み、ミニデスクから離れる。
ベッドに腰掛けて、編み上げブーツの紐を締めなおした]
[下にある食堂へと降りて朝食を取った後もその場に居れば。
釣りを終えたドラガノフがやってくる。
来たと同時にオリガへと酒を注文するのを聞けば]
ふふ
ドラガノフさんは、相変わらずね。
[オリガと二人で顔を見合わせて、笑ったかもしれない]
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