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俺……な。
恋愛とか、そういうのすげー、嫌いだったんだ。
恋愛結婚した産みの親は、俺捨てちまうし、恋愛できずに一緒になった親は、俺を育ててくれるし、別にそこはいいんだけどさ。ちょっと変わってるけど親とは仲良いしな。
[その点について、負の感情なんてない]
ただ、じゃあ恋ってなんなんだ?って思ってたんだよな。
きっと、硬くて、どす黒いものにしか、なんねーんじゃねえかなってさ。
[パートナーなんて違う形でもいいだろ。そんな醒めた思考でいた。実験するぐらいの気持ちでいたといっても間違いではないのだろう]
でもな、ここで色んな人と会って――恵奈乃とあって、一緒にいて、喋って、ちょっと変わった。
なんていうか、余計わからなくなった。
そういった元から考えてたこととか、そういう価値観も全部壊して、亡くして、ひっくるめて、ただ求めてしまうような……
[一つ一つを区切るようにして囁いていって、それからそっと抱き寄せていた手を離す]
こっから先は、名前を書いてからにしようか。じれったくて、もどかしい気持ちのまま…な。
[汚れも独白も全部吐き出した自分は勝手だ。
隠しててもよかった。だがそうでもして名前を書かないと、彼女の想いに応えれる気がしなかった。
おかげで、彼女の勝手を受け止める気持ちはある。そっと立ち上がり、手を伸べた。心変わりなく、手を伸ばしてくれることを願って*]
神主さんにそんなこと頼んじゃだめでしょ。
まったくもー。
[手を一度揺らして。
人混みの中、視線を向ける誰にも、どの屋台にも、意識を逸らすことなく、ただ神社の境内を目指して歩く。
ふたり分の下駄の音が。
からころ、からころ、鳴り響く。
速くなる心臓の音と呼応しているようだった。
知らず知らず、少しずつ早足になる。
そして、辿り着いた。
ここがゴールでスタートだ。]
[おみくじの紙に、ペン先を滑らす。
実は万年筆をわざわざ家から持ってきていたのだ。
青色のインクで描く。
特別な人の名を。
特別になりたい人の名を。
これから先、
もっと、近く、傍に在りたい人の名を。
丁寧に折りたたんだ紙を胸元に当てる。
そうして、傍らにいるであろう彼を見上げた。]
航くん、
――これ、あそこの枝に結びたいの。
[自分では届かない高さ、
ちょうど彼の目線にある場所を示したろう。
さぁ、彼は、どうしてくれるか。*]
…………。
[自分の境遇と比較すれば、彼のはまさに出口のない迷宮のようで。
どうにか抜け出ようとしたら、それが我欲として現れ出て来るのかな――なんて思ったけれど、正確なところは見抜けそうもない。
自分の恋心には完成形がある――けれど彼はそれを視たくないものとしている。
それでいてこうして想ってくれているのだ、じれったくももどかしくもあって当然だ。]
うん。
じゃあ、行こっか。
[彼のその部分に触れるには、もっと未来へ行かなければいけないだろう。
この未来がどこへ続いているのかは視えないけれど――でも、間違っていないことだけは確かだ。
ベンチから立ち上がった彼の手を取って、共に歩むことを喜んでくれることを願って。]
― 社務所 ―
[おみくじを引けば*13半凶*だった。
名前を書いてくくるものに良し悪しはたぶん関係ないはず……だから大吉でも凶でも気にする必要はないのだが、どうせなら景気の良いものを引きたいのは人のサガか。]
…………。
[ペンを借り、机に向かう。
想う人の名前を心籠めて――自分の今までとこれからの境となったひとの名前を。
自分の魂を包んでくれる、そのたった数文字を。]
[いかにも自分らしいおみくじを折りたたんで。]
書けた……行きましょ。
[彼は書いてくれただろうか。連れ立って伝説の樹へ。
そこには既に訪れた他の想い人たちの痕跡が無数にあって。
このなかには自分の友達のも含まれているかもしれない……えこ贔屓になっていいからみんなの想いが届きますように――]
ん……っ。
[できるだけ背伸びして、高い位置に結ぶ――天国により近いところに。
もしかしたら快斗の補助があったかもしれない。
自分のおみくじと彼のおみくじが、絡み合って解けないように結んだ。
想いは直接でって約束したけれど――こういう願い事ならしてもいいよね?]
委員長 須合恵奈乃は、望月快斗 を能力(アタック)の対象に選びました。
神に仕える身なら、そのくらいの願いは聞いてもらってもいいだろーよ。
人の世くらいどうにかしてくれよ。
[揺れる手>>389を、見送って。
人ごみの中、たとえ誰がいたとしても、その視界に収めているものは、たった一人の姿だけで。
そのひとが目指すところに、一緒に。
からんからんと、少し小股で歩く足音が、境内に響く。
それはまるで、時を告げる鐘の音のようで……だから、こころのざわめきを、鎮めるにはちょうど良かった。
これが最後まで鳴り響けば、きっと。
この手のぬくもりの意味は、変わる。どうなるかは、ともかく。
望むように、変わればいいと。
必至に願ったのは、たとえ誰に何をいわれても取り消すつもりはない。]
[おみくじの内容は、目に入らなかった。
―――いや、見た気はする。気がするだけだ。
とてもじゃないが、それを覚える容量がない。]
りょーかい。
[ミコトから差し出された、それを、受け取って。
ずるいことを、口から吐き出した。]
ところでよ。
これに、名前かいてくれね?
[引いたおみくじの、真っ白な裏面。
それをぴらりと示して見せて。]
一緒に結ぶから。---ああ。
ミコトの名前以外、みたくもないから。
[さぁ。彼女はどうするんだろうな?*]
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