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[城門から、明るい声>>83が響く。遊牧民の姿をした快活な女性。
すぐ側に、塔を見上げて立っている>>77青年の姿。上品で洗練された人が多い中で、どこか重苦しい身なり。
そして、彼の左足に纏わり付く“よくないモノ”]
こんばんは、お兄さん。
[リディヤはにこりと笑ってベルナルトに近付く。ナタリーが側に居れば、彼女にも微笑みかける]
お兄さん、ニンゲンを殺したんだねえ。
哀しみと恨みが、左足を握っているよ。
[つう…と指し示すのは、ベルナルトの左足]
ほら、真っ白で血塗れの手が、お兄さんを憎んでいるよ?
[足の怪我に、何が見えているのか。狂ったリディヤの幻覚なのかもしれない。
くすり、と少女は笑うと、ポケットからヒイラギの葉を1枚。先程池の側に植えられていた樹より拝借したもの。
次の瞬間、それはベルナルトの左の靴の中へ。
そのままぱっと身を翻し、城内へと走り去った]
―礼拝堂―
[捕らえた小鳥の為の鳥籠は礼拝堂。
吸血鬼狩りを生業とする者とその弟子が城を訪れたのは
およそ一年ほど前の事だったように記憶している。
眷属であった者の半数がその狩人と弟子によって屠られた。
ことのほか目を掛けていた存在さえも奪われて城主が怒らぬ筈ない。
小鳥は捕らえ血を与え人の身には持て余すだろう快楽へと堕ちる。
哀歌を謡う娘>>91の背後へと音無く現れた城主は
冷たい指先を娘の咽喉元へと宛がい]
あれは呼んでも助けには来ないよ。
――…だから、もっと深い場所に堕ちてしまうと好い。
[娘の耳朶で誘う聲は中性的で蠱惑な香りが漂う]
[天井から伸びる布に絡め取られた儘の娘に其処から逃げる術は無い。
礼拝堂の入り口は閉じられてはいるが鍵はかかっておらず
来訪者が望めばその扉を開くであろう]
キミには言い忘れていたね。
宴を始めることにしたんだ。
[ふと思い出したように紡ぎながら娘の細い首筋を指の腹で撫でた]
キミの師匠は来ないだろうけど……
他の者がキミを助けに来るかも、ね。
[囁けば娘の首筋にそっと顔を埋める。
人より幾分低い温度しか持たぬ城主は
未だあたたかな娘の肌にぬめる舌を這わせて]
何が起こるか、愉しみなこと――…
[娘の内に燻る熱りを更に焦らせば愉しげにくちびるを歪めた**]
何というえろさ。
ボクには真似出来ないね。
ゆっくり正座で見物でした。
中身はあの人ではない事は確定したみたい。
もっとえろくなるはずだから。
ど・ど・ど・どーしよーかなー♪
れ・れ・れ・れーてぃんぐしーん♪
―― 部屋<回想> ――
卑屈になる必要なんて……なかった…
[ベットに横たわり、微睡みながら男は思う]
招待状さえ……こなければ…
[男の周りではあの城の宴に行くことは死を意味することは有名だった。
これまでに何人もの貿易商仲間がこの宴に呼ばれ、
誰一人帰ってくるものはなかった。そのためこの城への招待状は『死の招待状』として恐れられているのだ。]
だからこそ……
[この城の主は一番裕福な貿易商とのみ取引をしたがった。
そのため、男は注意深く、決して目立たず、尚且つ様々な手段を講じて大きくなっていったのだ。
裕福になりすぎては目をつけられる。
そのため、時には海賊に多額の賄賂を渡すことも厭わなかった。
それは貿易をスムーズに行うための手段でもあったのだが―]
[だが5年ほど前だろうか…貿易商仲間で男がもっとも信頼を寄せていた者が
『死の招待状』を受け取ったのだ。
彼は男に自分の財産を預かってほしいこと、そしてもし戻ってこれたら、1割でもいいから戻してほしいと…頼んできた。
男は快諾した。もとより、本当に帰ってきたら、全部返すつもりで―]
―…っ!!!
[しかしやはり、彼は戻ってこなかった。結果男が一番裕福な貿易商となり、この城とも取引をするようになったのだ。
もちろん今まで通り狡猾に目立たなくする方法もある。
しかし、男はそれを選ばなかった。信頼を寄せていた仲間、彼にとっては親友とも呼べる人間の命を奪った主がどのような者か知りたかった。
そして、彼の命を奪った『宴』がどのようなものかも―]
[そして、その日は来た。周りにはさも自分などふさわしくないと謙遜ぶってみせていたが、実はこの日を待っていたのだ。
招待状を受け取ると男は早々に信頼できる仲間に財産を託した。あの日、彼が男に告げた言葉と同じ言葉と共に。]
あいつは―どんな最後を迎えたのか…
[男は微睡みから深い眠りに落ちていった**]
フィグネリア・エーリン。
[名を覚えるつもりはなかったが。
視線を肖像画に向けたまま、愛想の良いとすら言える声で答える]
私はアナスタシアよ。お嬢さん。
アナスタシア・ニコラエヴナ。
[招かれてきた客ならば、また何度も逢う事になるだろうか]
[階下――玄関のある一階の広間を抜け、会議室やサロンを覗く。
終始、気怠げにぬばたまの眸を伏せながら、足取りには迷いなく]
……あら。
[先ほど挨拶を交わしたばかりのフィグネリアも一階を廻るなら、またすぐに鉢合わせてくすりと笑う。
楽器が整頓されて並べられた一室、どうやら音楽を饗するための小ホール、と僅かに惹かれた興味に眉を上げ、足を踏み入れた]
――рояль《ピアノ》ね。
[入り口付近の竪琴へ触れた手をすぐに離し、一番奥に置かれたピアノへ。
躊躇いもなく椅子に座ると、鍵盤の上に指を広げた]
――ポ――ン――
[ハンマーが弦を叩く軽い音が一音、音楽室に響きすぐに消えた]
いいわ。懐かしい。
[調律を確かめるように、指を滑らせて和音を奏でていく。メロディーのない柔らかな音]
いいわ…懐かしい。
[連弾が出来なくなって、ピアノには触らなくなった。
いつか兄と並んで弾いた曲を、細く口ずさむ]
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