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[村の中を歩く。静まり返り、誰の声も聞こえない。
虚無感。一体いつぶりだろうか、こんなに寂しさを感じたのは――。]
さむい、ですね。
[心が、寒い。
そんな事を呟き村を歩きだす。誰かが声をかければ、それに応じるだろう]
[フードを落とすと、雪の様な灰がはらはらと床に落ちました。
前に見たときよりも、ずっと痩せてしまったマスターが、此方に気付きます。
私は小さくお辞儀をしました。
この酒場で歌う事がなくなってからも、マスターはとてもよくしてくれます。
お仕事がなくなった私に、お店の残ったものだとかをわけてくれます。
食料だってだんだんと減っているのでしょう。
けれどマスターは、嫌な顔一つせず、わたしに食べ物を分けてくれるのでした。
調理場へ消えたマスターの背を見やりながら、ぐるりと店内を見回します。
以前はもっと、もっと活気があったお店なのに、やはり、静かです。
わたしはカウンターの一番端の椅子に腰かけて、小さくなりながらマスターを待ちました。]
[私はお婆ちゃんと2人暮らしでした。
私のお婆ちゃんも占星術師でした。
お婆ちゃんはある日、隣村に出かけてくると言いました。
ところがお婆ちゃんは夜になっても帰ってきませんでした。
お婆ちゃんが人狼のせいで死んだなら
私は、絶対に人狼を許さない。]
[かつて小さいながらも荘厳な面持ちを保っていた教会は、
今は無残に荒れ果てていた。
掃除はかかさず行われ整然としているが、
割れた窓ガラスも崩れた壁も、もはや直す手立てがないのだ]
どうか、彼らに安らかな眠りを。
[教会の裏手には、簡易の墓地が作られていた。
世界の綻びが進むにつれ、
身寄りのない子供が村へ避難してくる機会も増えた。
孤児たちを引き取り世話をしていたが、
彼らは既に病を拗らせていることが大半で、
多くが直ぐに命を落とすこととなった]
…どうか。
[男は祈ることしかできない。無力な、人間だ]
[昔は、歌う事が大好きでした。
歌う事ができるのならば、他に何もいらないと、そう思っていました。
ですが今では、そんな歌すらもが忌わしくて仕方ありません。
ケープの合わせ目を、ぎゅっと握りしめます。
握りしめる私の指も、随分と細くなってしまった様に思います。
気のせいだと、いいのですが。
そんな不安げな私の思考を掻き消す様に、けたたましい音が調理場の方から響きました。
何枚ものお皿が割れたような。
鍋が床に落ちたような。
そんな、騒がしい音でした。]
[男にとって、このアパートメントの小さな窓は、外界とを繋ぐ数少ない手段の一つであった。
ほんの少し前までは、子どもが駆け抜け、物売りが声を張り上げ、パフォーマーが日銭を稼ぐこともあったこの通り。あまりの騒がしさに木戸を閉めきったこともあったそれは、今は雨雪ならぬ死灰を防ぐ手段となりはててしまった。
今はほら、あの晴れやかな風景とは似ても似つかぬ。まるでゴーストか、夢遊病患者のような女が独りさすらう始末>>14だ。
呟かれた言葉に感じいるように自分の身体をさする]
……寒いかな。
いや、空がこんなに灰色だから。
こんなに静かだから――
[ぶつぶつと自問する。外出をしばしば怠っている身体は鈍感だ。
感覚への共感のプロセスを確認していく有様はどこか、奇人と呼んで過言ではなかった]
11人目、研究者 トロイ がやってきました。
研究者 トロイは、おまかせ を希望しました。
…何なんだろうな。コイツは。
[灰を詰め込んだ小瓶を片手に、男はぽつりと愚痴を吐く。
…小瓶を持たない左の袖は、ひらりひらりと揺れている。]
…なんなんだろうな。俺は…
[カウンターから立ち上がり、調理場の方へと歩み寄ります。
右手に竃、左手には食器の棚。
挟まれているようにできた通路の真ん中で、マスターは倒れていました。]
………!
[咄嗟に駆け寄りますが、こういった場合、あまり身体を揺すらない方がいいと、誰かが言っていた様に思います。
ですが、わたしには医療の知識はありません。
倒れたマスターの顔の前でひらひらと手などを振ってみますが、反応はありませんでした。
慌てて駆け出し、薄暗い空の下へ出ると辺りを見回します。
誰か、他に人がいれば良いのですが。]
[翼よりも低い高度を、屋根伝いに飛び跳ねる。
ひとまずの目的地は、薬屋。
自作煙草の材料の調達だ。
隠し味にこの辺りでは栽培されない種類の葉を混ぜるのが、カインの拘り。
店の在庫は減っているのだろうとは、この異変の中に容易に想像が付いた。
だから、二つ目の目的地は酒場。
掲示板に張り紙を出している、今日は集まりの日だ。
"有志求む。共に魔獣の蠢く森を越える方法を探そう。"
一人では到底不可能な森を越える術。
腕の立つ誰かと共に、煙草の葉の調達が目的だ。
他の誰かが、何を目的にこの誘いに乗ってくるかは判らない。
或いは誰も見向きもしない可能性もあったけれど**]
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