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次の日の朝、前回の王者 ゴードン が無残な姿で発見された。
前回の王者ゴードンの墜落。
観客の間から、歓声と落胆のどよめきが沸き起こった。
天空を制するのは、誰か。どの機体か。
観客の注目は、空をゆく機体達に向けられた。
現在の生存者は、兎人 クロノ、夢幻の竜騎士 マリア、黒詰 ユージーン、課長代理 マシマ、少年 ロジャー、記憶喪失 シュウ、シルバーコレクター ナサニエル・ウエクサ、赤貧宇宙人 ニーナ、青の娘 シャーロット、改造好き シャノン の 10 名。
[ゴードン機が墜落していく]
馬鹿な……。
ゴードンはこんなに早く墜落するような奴ではないと思っていたのに。
[頭によぎるのは、先程の漆黒の騎士。
圧倒的な存在感と、そして底知れぬ何か]
ゴードンを落としたのは……あれ、か。
[前回王者のゴードンがいなくなった、という事は必然的に自分が王者の位置に行きやすいという事になる。それはつまり、自分が狙われるのと同意になる。
シルバーコレクターでも安泰ではないのだ。]
面白い。やってやろうじゃないか。
[不敵な笑みを浮かべつつ。
そして、ゴードン墜落の様子に何となく違和感を覚えている部分もあった]
……やけに抵抗があっさりだったな。
[前の大会でもあれ以上の攻撃は受けていたと思う。にも関わらず、今回に限って落ちたのが不思議だった]
まぁ良い。
どこからでもかかってくるが良いさ。
[そう口にし、再び操縦かんを引いて戦いの舞台へ**]
[加熱した機体に浴びせられる冷却ガス。
コックピットの風防を大きく開けられて、漸く呼吸が出来た。]
…き、つ……。
[機内から引き摺り下ろされて、バイタルチェックを受けながら身を冷やす。
差し出されたイオン飲料を口にしながら、機体の応急整備が終わるのを待つ。]
―― 戦闘空域/西エリア/中高度 ――
[ゴードンの末路など知った事ではない。
今、中央エリアに集中しているのは、エース機級機体が多い。
ここから、通称"第二波"と呼ばれる、初心者の壁がまた始まるのだ。各機が、四方八方に散り始める。]
次は奴らか。
[クロノは、戦闘空域外の観客席に目を向ける事なく戦闘空域内を眺めた。――と、]
あのクソガキか。
あんなに慌ててどこへ行く?
[クロノの口元に笑みが浮かんだ。鈍足のメテログラフトは、8つ環のうち、4つを起動させた状態でリトルアースの後を追う。]
[赤い機体に起こった異変には何も気付かず、アルトキュムラスの様子を伺っていた。
この時、互いに兵装を停止させていたのは…良くなかった]
……!!
[メテログラフトから放たれた光>>1:188に気付いた時咄嗟に起こした行動は、アルトキュムラスへの体当たり。
兵装でどうにかしよう、だとか考える余裕は全く無くとにかく少しでも赤い機体から離れるべきだと考えた結果だった]
――各機ピット――
[膝をついた漆黒の騎士から、少女が降り立つ。表情には懸念の色。先程マシマに送った質問信号には返事は無かった。
無論、戦闘中のことだ。反応する余裕も意志も無いことは十二分に考えられた。だが――]
……だいじょうぶ、かな。マシマさん。
[近寄ってきたウェイン兄弟の声も耳に入らない様子で、空を見上げて呟いた]
――各機ピット――
[たちまちの内に少女はほっとした様子に替わり、クルー証を付けた二人の老メカニックとのやり取りに移る]
――うん、やれそう。あの最後の、見てた?
あれ、良いタイミングだったでしょう?
他の機体まで巻き込むかと、思っちゃったけど。
[頭をぐりぐりと撫でられながら、兄の方へ答える。機体の損傷を確認していた弟が戻ってきて、問題ないと告げた]
――良かった、じゃあ、少し、時間あるかな?
――各機ピット――
『ん……まあ、行ってこい。今降りてきた、白川ンとこのブースだろ? 但し、さっきみたいな失礼の無いようにな』
[そう言って、ウェイン兄弟は少女が駆けて行くのを見送った。
後ろ姿が見えなくなったところで、兄弟の一方が口を開いた]
『まだ、言わないのか。兄貴。
あんなに乗りこなしてるんだ。いずれ気づくぞ。もしかすると』
『ああ。思い出しちまうかも、知れねえな……けど、よ。
この真っ最中に伝える訳にもいくまい。混乱させるだけだ』
[レーダーから光点フリップが一つ消失する、チャンピオンの被撃墜。
それを視界に捉える事は無く飛び去ると、警告類も形を潜めた。]
――っぷはぁ!
な、何あれ。
[赤い光かレーザー光の事か。無我夢中で呟いた言葉は誰にも届かない。
兎も角、これて一つの山場を越えた訳で、...にとってはある意味今からが本番とも言える。
俗に言われる『第二波』、それを切り抜けなければ其れまでなのだから。]
……さて、気を引き締めないと。
[操縦桿を握る手、ペダルを踏み込む足にも力が入る。]
『それはそうだが……』
『俺達に出来るのは、シュウがもし思い出した時、受けいれてやる事。それとメンテナンス、それしかねぇ。後はあいつ次第だから、な』
[老兄弟の会話をよそに、少女は白川重機のピットエリアへと移動した]
……お忙しいところ、すみませーん。
マシマさん、さっきの、大丈夫……でした?
ロジャーくん、ロジャーくん…!
すみません、大丈夫ですか!?
[大型の為速度は大した事は無いが、重みはある。アルトキュムラスにダメージが入っていないか…それだけが気に掛かり、慌ててロジャーへと呼びかけた。
何事もなければ、リトルアースを追うメテログラフトを追いたそうにしながらも、一時離れて立て直しながら赤い機体について何かを話しているかも知れない。**]
―― ピット ――
[私はピットに転がるように舞い降りる。
途端、待機していた小人たちがわらわらと私に寄ってきて、被弾した箇所に新しい鱗や再生ジェルを追加していく。私は彼らに差し出されたジェリー・ビーンズのような甘い補給材を喉の奥に転がり落とした]
[私の身体によじ登り、マリアに"酒"に象らせた経口の活性薬を補給していた小人を、マリアの焦点を結び始めた瞳がとらえる]
『……ねえ。コアが破壊されたら、どうなるの?』
「だいじょぶだよだいじょぶだよ。
しみゅれーしょんの結果じゃ、外部からのしょーげきじゃ総攻撃くらっても体当たりくらっても壊れないよ」
『それでも、壊れたら?』
「知ってるはずだよマリア=カリラ。
だいじょぶだいじょぶ、最初に戻るだけで死にゃしない」
[私たちが見せる不安と恐怖は、他のバイオノイドに通じない。翼の根元をジェルで補強されると、私たちはすぐに空域に送り返された。時間にして4〜5分のこと]
―― 北西高空 ――
(死にはしない、か)
『簡単に言ってくれる。全ての感覚と身体を奪われれば、たとえ脳は生きていても魂は死んでしまうのに。
ううん。脳が生きているから魂は死んでしまうのに』
[マリアはきっと姿勢を伸ばして、第二派に身構えた。
生き残った機体を1つ1つねめつける]
『ニーナ、聞こえる?
気をつけて。キングの落ち際、何か変』
[コマドリ―― 赤い狼殺したの、だれだろか。
私は大きく羽ばたいて、舞い上がった。
友人に警告の通信を送ろうとして、その機体が不審な軌道をしていることに気が付く]
『……ニーナ? 平気?』
[まっすぐ、逃げるようにどこかへ。
その軌道が自分の恐怖と重なる気がして、私は思わず彼女の地球を思わせる機体を追いかけた**]
― 観客席 ―
[ダグラスは、買い込んだ食料をテーブルに広げてくつろいでいた。
一般席と大差があるわけでもないが、ゲスト席はそこそこの広さが確保されている。]
何やってるんだ! ケツにつかれちまってるぞ!
……ああ! また1機やられた!
まったく、最近のパイロット共はドッグファイトってモンを知らねえ。
弾幕に頼りきった戦術じゃ"第二波"は切り抜けられないぞ。
[すっかりうるさい老軍曹と化しています。]
それにしても早めに焼きそば買っときゃよかったぜ。
格納庫に充満してたあの香り!
見にいったときにゃもう、店じまいしてやがったもんなぁ。
[そのとき、上空に動きがあった。]
「見ろ! ゴードンが堕ちるぞ!!」
[騒ぐ観客に釣られ、フィールド最中央の紅い機体に目を向ける。]
[それは光の白刃が消える瞬間だったろうか。]
[一瞬の沈黙の後、思い出したように注ぎ込まれる追撃の嵐。]
[狼王の体躯は、為す術もなく堕ちていった。]
流石にああも攻撃を集中されちゃ、英雄とてひとたまりもないわな。
だが――
[ゴードンは、機体ど真ん中に攻撃を受けていた。]
あれほどの高出力、ゴードンが捉えられないはずがない。
あいつ、何かヘマやらかしたのか?
(それとも――)
[急ピッチで進む緊急メンテの中、テンションを保ったまま少しでも身体を休めようと目を閉じようとして、
聞こえた心配そうな声にシートから身を起こす。]
…シュウちゃん?
[気にするなと、ひらり片手を振りつつも、向ける表情は少し困ったような顔。]
そんなこと気にしてたら、勝てないよ?
空の上では、僕らも敵同士だ。
どちらかが落ちなけりゃ優勝出来ない。
そのくらいわからないなら、リタイアした方がいい。
[各部の冷却と整備が終わる。
整備士達の下がれとの声と共に、パチリと閉じられる風防。
まっすぐ空を見据えて、白鳥は飛び立つ。*]
―南空域最上層―
なっ なにっ なにがっ …っ
[とまった。とめられた。おちた。 おちて きえた ?
よく、分からない。考えようとする理性を体の奥底から湧き上がる恐怖が押さえ込む。こわい。にげよう。逃げないと。]
!!ッ…
[けれど、逃げるにも限度がある。ここは大会の戦闘空域。どこまでも広がっているように見える空だって有限だ。
それでもなお逃げ道を探そうとさまよった視界が、滝のように流れる文字の羅列を写す。
それは機体の損害状況で、周囲の警戒報告で、パイロットへの安否確認で…つまりは、混乱し、憔悴しきってなお、フヅキが自分を助けてくれている言葉であって、心配の言葉だった。
そうだ。逃げるわけには、行かない。なら、戦わなくては]
…だれと?誰が…いえ、分からないなら探すしか…
フヅキ、使用可能なネットワークすべてにアクセスを!検索は自分が…!!
[叫ぶようにして、機体に、端末に手を伸ばす。その手が、腕が、青く文様を描くように発光している様子を、今は見るものもいない。
視界にフヅキの警告が羅列される。全力でここまで逃げてきたからといって、安全な場所であるわけではないのだ。
それでも、ネットワークを“こじ開ける”手は止めない。
…多少落ち着いたとはいえ、まだ混乱していることに変わりはなかった]
ッ…やはり即座にと言うわけには…一人一人調べるしか…?
嗚呼、そういえば自分にも知ることのできたアドレスが一つだけ…まずはそこから…
[ぶつぶつと呟きながら、ネットワーク上の情報を“掻き分ける”。大した判断もせずに、登録されていたゆうじんのアドレスへとアクセスして…そのとき、聞こえた]
『……ニーナ? 平気?』
[気遣うような、ともだちの、声]
っっっ!!
ぁぅ…ぁ…自分は…小官は…
[冷水を浴びせられたように、ようやく思考に冷静さが戻った。自分は、今、なにをしていた?
こうして声をかけてくれた友人を調べて…それは、友達を疑うことに、ほかならず…
…自己嫌悪と後悔で意味もなく喚き出したい気持ちに駆られながら、それでも一度アクセスした“手”は止まらない。
拾い集めることのできるすべての情報をかき集め、一つの情報として“感触”を確かめる。
強引な接触は力ずくで、多すぎる情報は大雑把な感覚となって伝わってきた。そこに、垣間見た情報は…
それら一連の処理を無理やりになし終えた自分に、ふたたび吐き気を催すような自己嫌悪が湧き上がる]
マリア…さん…ウィリーさん…自分は…
[泣き出しそうな声で、通信に答えた。どうしよう。謝らないと。でも、どう謝ったらいいのか分からない。
途方に暮れた瞳に、真鍮色の球体が映った]
…今は…今は、まだ…
かち…のこらないと…
[誰に言うでもなくただ呆然と呟き、その言葉にすがりつくようにして意識を強引に戦いへ振り向ける。
今にも崩れ落ちそうな気持ちを警戒で押し隠して、目前の敵機を睨みつけた]
[ちら、と隣の様子を窺う。
アルトキュムラスは、どう頑張っても、マリンブルー・スネイルの盾にはなれそうになかった。]
…、わかった。
けど、おれ必ず避けるから!!!
シャーロットも、気をつけて!
[くん、と加速した。
弾幕と爆発に飲み込まれそうな赤い機体へ向かって―――]
―東空域、下層―
[堕ちる。赤い機体が落ちてゆく。
ピットアウトし、機体の中からそれを確認した。
しかし、なにやらおかしい。あの声がしない。
男は試しに、同時期にピットアウトした機体の後ろに付き]
ブラスター、リミッター解除。堕ちろ。
[一つの機体を撃破する。
やはり、声はした。BFの声のようなものが]
やはり気のせいではないみたいだ。
ブラックボックスから聞こえるこの音、いや声は
[つまりそれは、ゴードンの機体が何らかの異常があったという事だ。
GRAVEの専用回線を開く]
チーフ、ゴードンの機体が堕ちる前。
何かなかったか。
[「黒ピチも気付いた?、よくわかったわねー。どうやら堕ちる前に赤い光がゴードンを襲ったみたい。その後ゴードンの通信も途絶えたそうよ。核とBFを切り離すような光線かしら、・・・」状況を教えてもらうが、その後もブツブツと言っているので、通信を切った]
さて、話はこれくらいにして。
やるか? そこのガキ。
[オープンチャンネルに切り替え
同空域に現れた不規則な形をしたBF、アルトキュムラスへと向かっていく。
あの変則的な動きを全て捉えられないが、近づくのは難なく行ける]
―― 南エリア/最上層/戦闘空域制限バリア手前 ――
[隅に逃げ込んだリトルアース。
その機体を前に、天球儀の姿をしたメテログラフトは停空。
南エリアの丁度中頃から、もう少し制限バリア側に寄った所だろうか。丁度、リトルアースと特殊フィールドバリアの角に当たる部分を直線で結んだ位置だ。
音もなく停止し、クロノは笑いながら話しかけた。]
≪クククッ
クソガキ、慌てた様子でどうした?
怖いか?
大会前の態度はどうした?
ピィピィ泣いて命乞いでもするか?≫
[メテログラフトから、リトルアースへ向けて通信。
ラガリアの刺塵。現在その形状は紡錘型四つの形状。ピンク色の光を先端に溜めている。>>1:110
稼動するのは、天球儀の8つ環は―――全て。]
―― 南エリア/最上層/戦闘空域制限バリア手前 ――
[ぽつ、ぽつ、ぽつ、ぽつ…
天球儀の環の外側に、染みのように水玉型の光が現れる。
それは見る見るうちに膨れ上がる。]
≪くたばれ、クソガキ。≫
[カ・エディーリの歯車により発生した光弾を全弾発射。青白い尾を描くシンプルだが数の多く細い光弾。それは、大多数がリトルアースへ向かう。
同時に、ラガリアの刺塵・紡錘形態より4条のレーザーが放たれる。それは、直接的にはリトルアースを狙わない。
角度としては、メテログラフトを中心に見て全て外側に20〜45度開いた角度だった。
何かを待ち受けるかのように、8つ環は稼動し続けている。]
――各機ピット――
[少女をに返されたマシマの言葉。口調こそ柔らかくはあったが、戦場に対峙する者の常を説くその内容は厳しい。しゅんとうなだれて、整備士の声に機体から離れる]
う……ん、そう、だけど。
でも、じゃあ、……。
[何を言いたいのか、自分でもはっきりしないまま、発進していくマシマの機を見送った。サポート業務に移るクルー達。ここにはもう、少女が居るべきではなかった]
―― 南空域最上層 ――
[マリアの視界がまっすぐに空を駆けるリトルアースと、その後を追う天球儀をとらえた]
(……追われているのか)
[2つの球体の軌跡を水晶の瞳で計算しながら、マリアは巨大なランチャーと一体化した左腕を目の前に掲げた]
『……キングが堕ちた直後が、第二波、ね。
倶利伽羅不動 ―― eorh ――』
[ヘラジカのルーンがくるくると私達の周囲を舞い、いくつもの輪を持つ天球儀へとランダムなホーミング軌道を保って漂いだした]
[ニーナの泣きそうな声が、クローズド回線に乗る]
[私の情報が探られたことなど知らない。
……マリア=カリラの情報もウィルアトゥワの情報も、パンクするほどに乱舞しているのだろうが、それは全てゆめまぼろし]
[ニーナが大会関係のアクセスログにダイブしたのなら、きっと分かってしまう。MiddanEdenが機密にしていること]
[マリア=カリラはウィルアトゥワの装備品の1つであり、"搭乗者"としては登録されていないこと。BFに搭乗者が必須のこの大会において搭乗者登録されている人物のIDは、MiddanEden内のホスピスに10数年前から入院している筈の、植物状態から回復していない筈の地球人男性だということ]
『ニーナ、頑張って』
[マリアの喉をナノマシンが動かし、明るい声が相手を励ます]
『私たちがやられそうになったら逃げちゃうからね』
[ラガリアの刺塵より放たれたレーザーの1つを私はかいくぐりながら言った。マリアは避けたレーザーの軌跡を目で追って、ぱちぱちと瞬きをしながら予想軌道を計算する]
――コクピット内――
[老兄弟からコンタクト。開かれたウィンドウに、それぞれの顔が映る]
『いいか、シュウ。こっからが本番だ』
『ゴードンを落としたからって、油断するな。ベテラン機はまだ、幾らでも残ってる。残存機の情報を更新してある、確認しろ』
[機体情報の確認と共に、更新されたデータをチェック。残りはおよそ4,50機というところだろうか]
『エース級と呼べるのは、その中の約1/3って所だな。
二位常連のナサニエル。白川のテストパイロット、マシマ。
GRAVEのユージーン。他には――』
『Camelot社の『ペンドラゴン』と『ランスロット』の二機。
こいつらはお前と同じく人型の機体、赤と緑の騎士だ。
コンビネーションに注意しろ』
『特殊なタイプだと『ウィルアトゥワ』に『ファフニール』。
それに、ラントの機体。『メテログラフト』。そのへんだな』
――うん、わかった。じゃあ、行ってくるね。
『ああ――行ってこい。
危ないと思ったら、いつでも戻ってこいよ』
『さっきみたいな隙の大きい技はあまり使うな。小刻みな機動を重視するんだ』
[それぞれの言葉に頷き、『アンギャルド』を*発進させた*]
―上空・FlashTaker機内―
[前回王者であるゴードンに向けて放たれる攻撃を、
広がる弾幕を見上げるようにして収めながら、赤い機体の行方を追う。
大会の第1波を越えられずに落下していくBFもファインダーには押さえているが、
その時点で落ちるようなBFは、技術的な面でも扱いは低い。
それよりは序盤の大一番を押さえる方を選んだわけだ。]
墜ちるのか、しのぐのか―?
[飛び交う弾幕へ向ける視線は二つ。カメラのレンズと、自身の瞳。
なるべく多くの攻撃が写るように引き気味に画角を決め、後はオートのまま。
自身は照準を見ながら自機の操作をし、楽しそうに笑んでいた。]
ん、んっ?
なんや?!
[赤い機体が動きを止めたのはその後のことだ。
思わず身を乗り出すようにしながら、前回王者へとズームする。
墜ちてゆく赤は鉤爪を伸ばすように、下へと。
一瞬だけ映った王者―ゴードンの表情はどうだったのだろう。]
な……。
[まさか、と思った。
いずれは、とわかってはいたがあまりにも早すぎる墜落だった。
しばらく呆然と、ぽかりと空いたように思える空間を見ていた。]
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