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カロラ は シャロ に投票した。
ベニ は シャロ に投票した。
クノー は シャロ に投票した。
ニイナ は シャロ に投票した。
ミナ は シャロ に投票した。
シャロ は ニイナ に投票した。
ウル は シャロ に投票した。
シャロ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、ニイナ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、カロラ、ベニ、クノー、ミナ、ウル の 5 名。
『皆様、ご乗車ありがとうございます。
まもなく、青い森の三角標に到着いたします。
停車後、すぐに発車しますのでお降りの方はお急ぎください』
[くぐもったアナウンスが流れ、やがて、列車はしずかに停車する。
停車場の近くには青く茂った林が広がり、その真ん中には高い高い三角標が立っているのが見えた。木々の間からは鉄琴の音色に混じって何ともいえないきれいな音が、風に乗って流れ来る。
列車を降りた者たちに安らぎを与え、少し離れたところで輝くベガへと導くかのように]
『次は、終着駅、サウザンクロス。サウザンクロス。
まもなく発車致します。閉まる扉にご注意ください』
[列車は再び走り出す。名前もない、小さな停車場は通過して。
勇ましい射手に、巨大な魚、蛇の近くで寄り添う双子、そして、赤く燃える蠍――。
ひとつ、ひとつ、窓の外を流れていくそれらの先にある、南の十字架を目指す]
[ふ、とほんの一瞬、目元を曇らせる]
……元気かな。
[それは、シャロに宛てたものではなく、置いてきてしまった、同じくらいの年格好だった
――妹への**]
[あの日、『ウル』が事故に巻き込まれたと真っ青な顔で妹が告げてきた。
自分のいる病院に向かう途中でのことだった]
「どうしよう、どうして…!」
[そう言って泣き縋る妹の身体が震えていたことも覚えてる。
けど、あのとき自分は何もしてやれなかった。
あの頃にはもう、僕の身体は殆ど動けなくなっていたから]
[物心ついたときから、僕は身体が弱かった。
よく体調を崩しては、病院を出たり入ったりを繰り返す日々。
両親は僕に殆どかかりっきりで…気がつけば、妹は親戚の家に預けられることが多くなっていた。
あの頃の、僕を見る妹の目は忘れていない。
羨望とか嫉妬とか、そういう、自分に向けられるはずだったものを奪ったものに対する眼差し]
[――そんな僕らの関係が変わったのは、隣の家にあいつが越してきてからで]
[僕と同じ年の、癖のある赤い髪をした少年は僕と同じ『ウル』という名前だった。
名前がきっかけで僕らは少しずつ親しくなり、そのうち、そこに妹も一緒に混じるようになった]
(……あの頃は、楽しかったな)
[快活で明るくて、僕と正反対の『ウル』に妹もよく懐いていた。
あの数年間は、本当に楽しかった]
[それから少しずつ、僕の病気は進行していった。
学校には結局小学校と、中学校の入学式に少しだけ。
制服にはほんの数回袖を通しただけで、結局彼らと一緒に学校に通うことはできなかった]
[――少しずつ、少しずつ。
日を追うごとに自分にできることが少なくなっていく。
一昨日できていたことが昨日にはできなくなり、
昨日できていたことが、今日はできなくなる。
気がつけば、そんなことが日常になっていった。
そんななかでもあいつはよく見舞いに来てくれて。
妹も、そんなあいつと一緒にいるときはよく笑っていた]
[――あいつが事故に巻き込まれたあの日は、妹の誕生日だった]
[それから数日が経っても、あいつが目を開けることはなかった]
[自分のせいだと、そう責める妹に何もしてやれなくて。
僕はただ、違うよ、と目で訴えることくらいしかできなかった。
“発作”を起こしたのは、そんなある夜のことだった]
[何も見えない、どんなに目を凝らしても一向に視点が像を結ばない真っ暗な闇の中。
ただ、自分の呼吸音だけが、よく聞こえていた。
遠くで誰かの声が聞こえるような気もしたけれど、よく聞き取れない]
[―――ああ、これが最期なのかな、と。
ぼんやりした思考の中で考えた。
不思議と苦しいとか、そういう気持ちは起こらなくて。
……暗闇の中で、ただ、思ったのはあいつと妹のこと]
[今までずっと、兄らしいことは何もしてあげられなかった]
[奪われるだけの人生だと思ってきた。
自分と同じ年の子が当たり前のように持っているものをただ奪われていくだけの人生なのだと。
だけど僕はそれ以上に妹から、本来彼女が与えられるはずのものを奪ってきた。
両親の関心や愛情、あの子が普通の女の子として友達や他の誰かと過ごす時間。
そういうものを、ずっと長い間、彼女から奪って生きてきた]
(……だから)
[――どうかこれ以上、あの子から何かを奪わないで。
あいつをあの子の許に連れ戻してあげられるのなら、この命なんて惜しくはないから。…だから。
ただただ、そう祈った]
[グラスに注がれたサイダーは気泡が弾け、ストローで喉へと流せば弾けた気泡が喉を刺激する。
まだ、走り回って遊んでた頃、おうちの近くのお祭りで買ってもらったラムネ。
中のビー玉が欲しくて堪らなかった。
お祭りで会ったのは、仲良くしてた女の子。そして、元気な男の子。
公園でも一緒に遊んだ、二人の子。
でも次の記憶は、……白い部屋。
なのに、あの子たちにはもう一度どこかで会った気がして。]
[頭を小さく振ると、クノーの手をくい、と引く。]
ねぇ、クノー。
その鞄、何が入ってるの?
[常に鞄を持ち歩くクノーの、その鞄が少しだけ気になって、不意に尋ねる。**]
[『ベニ!ベニ!?』
時折、ベニのことを呼ぶ声が頭に響いてくる。
その声はどこか懐かしいような…でも誰かはわからなくて。
声の主を探して周りを見回すけれど、姿は見えず。
不思議に感じながらも、その度に頭を小さく振ると、再びクノーの顔を見上げ、話に耳を傾ける。**]
……さっきの話の続きになるけど。
ボクが、ベニよりももう少し大きくなった頃。
兄が……兄さんが、亡くなってね。
[あの日、無機質な黒服が差し出した書面も、こんな簡素な物だったろうか。]
その知らせが来ると同時に、父の使いが来たんだ。
跡継ぎが死んだからクノーを引き取る、支度をさせるように。
……って、ね。
[自分を手放すまいと最後まで食って掛かった母親は、一枚の書面を突き付けられ、黙りこんだ。
……その書面が何だったのかは、結局、解らずじまい。]
ボクは、“父の”子供になった。
……産みの母と別れて、父の元で暮らして、死んだ兄の遺した物をそのまま受け継いで。
そうして。父親の奥さんを、“お母さん”と呼ぶようになったんだ。
[その日から、自分の生活は一変した。
金銭に不自由の無い生活、恵まれた学習環境、家柄も心も豊かな友人たち。
…………それに、“優しい”養母。
穏やかな人だった、とは、思う。
ただ。時折、死んだ兄と自分とを比べては、酷く冷たい瞳をして。
そのくせ、何か物言いたげに言葉を紡ぎかけては、ため息を吐く。
……その、繰返し。]
…………でも。
あまりにも環境が変わりすぎて、馴染む事が出来なくてね。
……なるべく、独りで居るように、迷惑を掛けないように、って。
いつも、隅の方で過ごしていた。
ずっと、何年も……。
[何時からだろう。
星を見上げることを、止めたのは。
人と目を合わせることを、厭うようになったのは。]
そんな、ある日。
産みの母が入院したと、手紙が来たんだ。
……ほら。その手紙が、そうだよ。
[そうだ、思い出してきた。
人の目を隠すよう紙の束に紛れ込まされた手紙を見つけたのは、偶然だった。]
父の屋敷の皆は、母の話をするのを快く思わなかったから……こっそり支度をして、会いに行こうとして。
[深夜の屋敷。
踊り場からすり抜けて、夜闇に隠れて飛び出して。少しだけ顔を見て、戻ってから幾らでも叱られようと。
……そのつもりだった。]
――――……父の奥さんに、見つかったんだ。
[頼りない電灯の元で見た養母の表情は。
死人の如く、色の無い物だった*]
……そうしたら、“あの人”は。
ボクの肩をつかんで、母を……産みの母の事を、酷く罵ったんだ。
[『二度とお前に会わない約束で、金まで渡したのに』『これだから泥棒女は』と。
髪を振り乱して叫ぶ女の姿は、暗い屋敷の中、懐中電灯に照らされ酷く恐ろしくて。]
…………だから、ボクは。
つい、言ってしまったんだ。
『本当は、貴方が兄を殺したんだろう?』
……って。
[穏やかな人だった。
けれども、酷く神経質で、心の脆い人だった。
……そんな事を言えばどうなるかなど、解っていたのに。]
――――……酷く取り乱した“あの人”は、其処に階段がある事にも気付かない様子だった。
大きな屋敷なのに、階段は酷く急でね。
落ちたら、只では済まないだろうと。
[そう、そして。]
…………そう気付いた瞬間、“あの人”の体が揺らいで。
ボクは、咄嗟に彼女を引き戻していたんだ。
[揺らぐのは自らの体。
月明かりと電灯が照らす、見開かれた養母の瞳。
浮遊感は束の間。段を転がる衝撃と共に、脳裏が白く染まって…………]
――――……気付いたら、此処に居た。
[……全てを思い出すと共に、>>#0流れるアナウンス。
停車も発車も、微かな衝撃を伴って。
>>#1続く声にふと、胸元の固い感覚に気付き、取り出す。]
…………ねぇ。
ベニは、どうして此処に来たの?
……勿論、言いたくなければそれでも良いんだけど……
[出てきたのは、乗車券。
刻まれた文字に、ああ、と。予感は、確信へと変わる。]
次の駅は、サウザンクロス……南十字星。
さっき見た白鳥から、随分と、遠くまで来たみたいだね。ボクの居た街からも見えない、ずっとずっと遠く。
[何となく、なのか。それとも、そうであって欲しいと願うからなのか。
ベニが此処に来るのは、早すぎる気がして。]
ボクは、次の駅で降りるんだ。
ベニも次で降りるなら、もっとお話したい事、沢山あったけど。
……そうじゃないなら。そこで、お別れだね。
[苦笑と共に、ベニに切符を見せる。
募る寂しさよりも。ベニの行く先が同じ駅ではない事を、願いながら。]
……うん、そうだね。
[ここにいる理由を問われ、一度目を閉じる。
ひとつ、ふたつ、静かに息をついて。
――…再び目を開けた時には、波ひとつない水面のように深く、穏やかな色を湛えていただろう]
それを話す前に、ひとついいかな。
僕の母さんはね、僕がまだ小さい頃に病気で亡くなっていて。
それからしばらくして、親父はお母さんと再婚したんだ。その時に連れていた女の子が、妹。
お母さんが独り身になった理由は聞いていないけれど、妹はとても人見知りが激しくてね。
……ああ、僕に懐くのにも、ひどく時間がかかったっけ。
[ぽつりぽつりと、思い出すように言葉を紡いでいく。
懐かしそうに、目を細めながら]
それから数年が経って、あれは、いつかの夏祭りの日。
僕は、妹を連れて縁日に向かっていたんだ。
――お祭りの喧騒が近づいてきた頃、
妹が突然立ち止まって、小さな声で告げてきたんだ。
『好きだ』って。
だけど、僕は妹は妹としか見ていなかったし、それにまだ小学生だったし。
その気持ちに応えることは、――…出来なかった。
[一度、言葉を切って、眉間に皺が寄る]
僕は何も言えなかった。
気まずい沈黙が流れて、そして、たぶん、駄目だって察したんだろうね。僕を押しのけるようにして脇をすり抜け、妹が走り出したんだ。
――その日は、前の日の大雨で川が増水していて、酷く濁り、うねっていた。
慌てて追いかけたけど、間に合わなくて……
土手から足を滑らせた妹は、川に落ちて濁流に飲まれた。
気づいたら、僕はその後を追って飛び込んでいた。
黒い波の間を、妹の小さな手が浮き沈みしているのが見えた。
僕は必死でその手を追いかけて、漸くその手を掴んだ時には、だいぶ下流に流されていたと思う。
お祭りのお囃子も聞こえなくなっていて、聞こえるのは、川の流れる音ばかり。
妹を岸に上げて――
僕は、自分から、その手を離した。
妹の叫び声が、一瞬で遠くなって
濁流にのまれた僕が最後に見たのは、満天の星の間を流れる、しろいしろい、天の川。
[ゆるく、穏やかな顔で微笑んで。カロラはミナを見た。
彼はどんな顔をして聞いていただろうか]
『ベニ!頑張って!起きて!ベニ!』
[再び頭に響く、自分を呼ぶ声。]
(…そうだ、これ、ママの声だ。)
[ママの声…そう認識すると、記憶は溢れるように蘇った。*]
[カロラの話をただ静かに聞く。時間が経って冷えたコーヒーのマグカップを無意味に手で包んでいた。
彼がここへ来た理由を話せば、戸惑うように眉根を寄せて]
…ここは、死んだ人が来る場所なの?
君は…。
[―望んでここへ来たの?
その言葉は飲みこんで。乗りこんで、話を聞いて、分かっていたけど振り払っていた事実が目の前に迫る。
問いかける唇が、震えていた]
[クノーから乗車券を受け取り>>39、思い出したことを紡ぐ。]
…ちっちゃい頃はね、ベニも元気に走り回ってたんだよ。
おうちは神社で、…おうちのお手伝いの時にはいつもこの格好で。
近くに小さい公園があって、そこで遊んでる仲良しの子もいたの。
公園からは中学校が見えて、その中学校の制服がすごいお姉さんっぽくて、お友達と一緒に中学校に通うの、楽しみにしてた。
まだ幼稚園にも入ってなかったのに。
でも、幼稚園に入る前の、夏祭りのすぐ後、身体が起こせなくなって、そのまま入院しちゃった。
お友達と通う予定の幼稚園の制服も、ベッドから眺めただけで一度も着られなかった。
ベッドの傍に置かれたピカピカのランドセルも、一度も背負わないまま。
幼稚園も小学校もいつかは通えると思ってた。
苦しいのを我慢して頑張れば、通えると信じてたの。
でもベニの身体はそれだけじゃ良くならなかった。
白い部屋に入った時から、もう何年もベッドに横になったまま。
背中を起こせる角度も、どんどん低くなっていってて。
それで、最後のチャンスって言われて。
1年後の中学校には通えるようにって、怖い「手術」も受けるって言ったんだ。
手術の日、眩い光の下で、数を数えてたらふわっとして、真っ白になって。
…気が付いたら、ベニは制服姿でおうちの近くの中学校にいた。
[一息に喋りきると、ボストンバッグを開ける。
中から出てきたのは…可愛らしいブラウスと、プリーツスカート。]
…これが入ってたんだ。これ着て、中学校にいたの。
[手に取った制服は、不思議なことに着替える行為なく着用できた。]
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