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がきんちょ がどこかにいっちゃったみたい。
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少年は旅人の記憶をたどっている]
のこってるのは、かわいくないよ 幽、双子な狼のほうの 幽さん、双子な狼のほうの ましゅさん、ましょうじゃないよ ましゅ、個性が欲しい ウエティ、あったかコーラ大好き シノン、飛び込め ユーノ、マスケラード仮面 そらたか、スッチー snowfox、黒百合姫 ああむ、くみちょう るる、伊達マスク 龍全、ちょこれーと ミミ、湯上がり ケニー、魔性ではなく魔族 人師、生まれ変わった がる、睡眠不足 anno蓮華、変態包帯 せんちゅの18にんだよ。
●
今までの事を思い出してみた。
私は孤児院に来た。
何故か何度も現れた兄さんや少女化した母や国家認定陰陽師化した母やこんな所にあるはずが無いだろうマクドナル○の事は全部夢だったということで記憶の中から消却しても良いだろう。
あの双子…ホットコーラを酷い飲み物などと言っていた時点で普通ではないと思っていたが…そしてあの処刑台…手首らしきもの…真っ赤に染まった床…思い出しただけでもゾッとしてきた。
とにかく、これ以上、こんな恐ろしい所にいるのはごめんだ。
早く家に帰って、温かいコーラを飲みながら、「剣八×愛染」本を読んでゆっくりしたい。
私はこの孤児院から脱出するべく、部屋を後にした。
しかし…入り口は何処なのだろうか。
■
「あは。過去の挑戦者たちはわずか数分でリタイアしてたね。
いや、一人だけ惜しいところまでいったんだけど結局ダメ。
――――貴方が抱いている人形のことだけどね…くすくす。
…それじゃあそろそろゲームスタート。
君がこの部屋からの脱出者1号になれるよう願ってるよ。
グッドラーック。
…くすくす。」
――――ブツンッ
反応を返す間もなく、モニターは切れた。今のはなんだったんだ。
さてどうする…?むやみに動くと罠がありそうで怖い。
私はぬいぐるみをぎゅっと握り締めつつどうしようか考えていた。
■
しかし、いつまでもこうしている訳にはいかない。
私は立ち上がると、まずは部屋を隅々まで調べ始めた。
一面に書かれた赤い文字を、一つひとつ読む。
何かの手がかりになる言葉があるかも知れない。
暫く読んでいて気付いたのだが、書かれていた文字には、どうやら法則性はないようだ。
助けて、死にたくない、と言ったメッセージ性のあるものから、そんな装備で大丈夫か?といったような訳のわからないもの、あるいは魚、苔、と言った名詞。
大量の文字を読むのに疲れたので、休憩を取る事にした。
その間の手慰みとして、まだ一面しか読めていないが、読んだ部分までの壁の文字を並んでいたように記述しておく事にする。
■
太陽 雲 鳥 ほしい かしつけ
つき ばつ
死にたくない 出して
生`
罪 いけにえ
許して
どうして
たすけて
そんな装備で大丈夫か?
むだ いちばん
地図 とが いいのを しみず
くさ 岩 鯉 魚魚 たのむ
出られない 鰻けいたい 苔
開かない いけ 権利
■
記述していて気付いた。
下の方に、やけに水関連の言葉が多い。
それに、「地図」と書かれた文字はやけに新しく見える。
地図の切れ端を取り出し、裏返して見る。
「おまえさん、このまえ」
この文字の意味が、ようやく理解できた。
そうか、そういう事なのか。
私は「いけ」と書かれた辺りの壁を、そっと押してみた。
動いた!隠し扉があったのだ!
●
入り口を探して歩き出したはいいが、出鱈目に走ってきたせいだろうか?
ここが孤児院のどこらへんなのかも把握できていない。
白い壁に手をついて、少し足を休める。
壁にべっとりと付いた赤い手形が警鐘を鳴らしている。
少しでも、一歩でも。あの子供達から遠くへと。
●
「うふふふふ、出口なんてないんだから」
幻聴か、現実か、私を嘲笑う声が聞こえる。
落ち着こう。闇雲に歩いてもダメだ。
そうだ、壁を伝っていけばいつかはたどり着くはずだ。
部屋をしらみ潰しにしていく事にした。
■
「おめでとう。早かったねぇ?
でも、ゴールはまだ先だよ?」
隠し扉が現れると、再びあの声が聞こえてきた。
と、同時に、ゴゴゴゴ…と地響きのような音も聞こえてくる。
大量の水が室内に、流れ込みだした。
「さあ、早く逃げないとおぼれ死ぬよっ!!
あっはははははははははははは!!!」
■
水はあっという間に部屋を浸食していく。
みるみる水かさが増えていく。
「くっ…!」
呆然とする間もなく、私は最大の危機に気がついた。
隠し扉は、回転扉式だったのだ。
一瞬にして水圧で扉は重くなり、その一瞬後には私が押す力と拮抗するようになった。
「どうすれば…このままじゃ…!」
必死になって身体ごとぶつかるように扉を押し続けたが、少しだけ押開けたスキマが段々と閉まっていく。
水はどんどん流れ込み、扉はどんどん重くなり―――
■
これまでか、と思われた、その時――…
びくともしなかった、あの、赤い扉が、開いた。
開かれた扉から溜まっていた水が溢れ出し、
その勢いに自分も少し流されてしまう。
少し水を飲んでしまったらしい。咳き込みながら顔を上げると、
そこには一人の旅人のような風貌をした人物がいた。
●
扉には
『この扉を開くとたらいが落ちます。』
と書かれた紙が貼ってあった。
ならば開けるときに頭上を注意すればいいのだろう。ふふん。
そんなことを考えながら、少し重い扉に手を掛けると
勢いよく扉が開き、室内から大量の水が溢れ出る。
「うわっ」
やられた。
タライというのはミスリードだったらしい。
流されそうになりながらも、なんとか扉にしがみ付いてやり過ごした。
そしてあらかた水が引いた…と思ったとき、足元にびしょ濡れのストレンジャー…が?
「お前は何者だ…ここで何をしている?」
この孤児院に入って以来、人に出会うと碌なことがなかったため、懐の拳銃にそっと手を忍ばせながら問うた。
■
「それはこっちの台詞だ・・・。ごほっ、ごほっ・・・。」
咳き込みながらその旅人をにらむ。
目の前の旅人は私の止めをさしに来た・・・?
それとも・・・?
●
「よけいなことを…」
しばらくにらみ合う私とその人との間に響く少年の声。
「どうしよう…」
少年はそう呟いたのを最後に声は聞こえなくなった。
私は再度、その人の方を見た。
「今の…声は…」
■
警戒しながら目の前の旅人と対峙していると、再び、あの声が。
『よけいなことを…』
『どうしよう…』
「今の…声は…」
旅人がこちらを見て、問う。
私は少し戸惑いながらも、小さくふるふる、と首を横に振った。
わからない。でも、この声は、
今までにも建物の至る所で耳にしている…。
もしかしてこれが、孤児院のどこかに居るという悪魔なのだろうか?
私は、旅人に、老人やウサギのぬいぐるみから聞いたことをかいつまんで話した。
■
「・・・全くわからない。落ち着いて話せ」
相手に理解してもらえるようにゆっくり喋っているつもりだったが、理性を若干失いながら話していたようだ。考えたら無理もないことではないだろうか。老人が獣に変わって望みを託され、喋るウサギのぬいぐるみと出会い、部屋に閉じ込められ溺死しそうになるなんて、昨日の私がどう予想できようか。
少し冷静さを取り戻して前の旅人らしき人物を目視する。拳銃は相変わらず私に向けたままだが、若干混乱したような顔つきをしてる。息は荒い。
顔面も服装も赤いペンキのような何かで真っ赤に濡れているのは、皮肉にも私が閉じ込められた部屋と照応しているようであった。
そこで私は思い至る。
「あなたも・・・招かれし人物なんでしょうね。私のように」
●
目の前にいる旅人の言っている事が全く理解できなかった。
ただ、自分がこの孤児院に来てから経験した事を思えば、嘘を言っているとも思えない。
私もこの旅人が言うように「招かれし人物」なのだろうか。
私は目の前にいる旅人に、この孤児院に来て経験した事の全てをミュージカル風にアレンジして説明した。
●
部屋の中は暗くて、そこにいる者の顔は見えない
部屋に入ろうとしたとき、扉が急にバタンと音を立てて勢いよくしまった
ガチャガチャ
ガチャガチャ
ダメだ、開けられない
ドンドンドン
誰か中にいるのか?
ドンドンドンドンドンドン
私は扉の向こうにいるであろう人物に話し掛けた
「あ、ありのまま今まで起こったことを話すぜ!」とばかりに、
旅人はここに来てから今まで体験したことをミュージカル風に
話して聞かせてくれた。
何を言っているのかよくわからなかったが、たぶん本人も何が
あったのかよくわかっていないのではないだろうか。
きっとそうに違いない。うんうん。
私は、以前旅の行商人から教えてもらった「許容の心」を胸に
目の前の旅人が話してくれたことを全て受け入れることにした。
なので今、旅人が私をバックに隠し扉をどんどん叩いていることも
きっとこの孤児院で経験した不可思議な出来事の一つなの
だろうと受け入れている。
あんなにも扉を叩いて手が痛くならないのかとか、そんなことを
ぼんやりと考えながら、ひとしきり扉を叩き終わるのを待って、
私はこの旅人に声をかけることにした。
●
私が持てる全身全霊の力を駆使して、今まで経験してきた事を説明していて、ふと思った。
この旅人の名前は何なのだろうか。
何か名前を言えない理由があるのかもしれない。
だが、この先、一緒に行動するに当たって、名前がわからないとなると色々と不便だろう。
それなら、お互いにCNで呼び合うのはどうだろうか。
「お互いに呼び名が無いと不便だろうから、CNをつけようと思う。私のCNは[かわいくないよ 幽]、君のCNは[がきんちょ]だ。」
●
「どうしました?」
やった!向こう側に人がいる!
おーい!助けてクレヨンしんちゃん!
「さむっ……」
扉の向こうの人物は立ち去ったようだ
おいィ!?悪かった!ちょっと気分が高揚しただけなんだ!
開けてくれー!
●
叫び続けていたらどうやら開けてくれたようだ。
部屋の横にあった洗面台で私は顔と手を洗った。
赤い水があの狂気を想起させる。
そして目の前のがきんちょ氏と話し始めた。
どうやらこの孤児院には秘密があるらしい。
やはり鍵を握るのはあの双子?
私たちはお互いの無事を祈り、二手に分かれ探索を続けることにした。
●
「あれ、殺し合わないのかい?」
探索中、確かにそう聞こえた。
あの双子の声だ、間違いない。
双子は私たちに殺し合いをさせたかったのか。
とにかく今は空腹だ、すこしは何か食べないと……。
そんなことを考えながら探索を続けていると「お菓子の部屋」と書かれていたドアを見つけた。
私は、開けるべきか暫く考えた。
●
お菓子の部屋か……
確かに腹は減っている、しかしここで安易にスイパラに入ってもいいのだろうか?
それにどうせならばもっとガッツリ食べたい気分である
お菓子の部屋があるなら焼肉の部屋があってもおかしくない
私は他の食べ物が置いてある部屋を探すことにした
●
暫く進んでいくと、3つの扉があった。
扉には、「ホットコーラの部屋」、「ペプシ塩スイカの部屋」、「バーチェルサバンナシマウマの部屋」と書かれてあった。
さて、どの部屋に入ろうか。
●
暫く進んでいくと、3つの扉があった。
扉には、「焼肉の部屋」、「真:ホットコーラの部屋」、「[かわいくないよ 幽]の部屋」と書かれてあった。
さて、どの部屋に入ろうか。
●
どの部屋に入ろうか・・・
そう考えながら「焼肉の部屋」のドアに手をかけている自分を見て、私は迷っているふりをしていたのだと気付いた
腹が減った・・・
●
「がたがた言わんとさっさと入らんかい!」
謎の関西弁の人物に首根っこを掴まれて、4つ目の扉である「お菓子の部屋」の中に投げ込まれて、おまけに鍵をかけられた。
一体、あの人物は何だったんだろうか。
何故か怒っていたし…この孤児院には謎が多すぎる。
お菓子の部屋なのに何故か「ホイコーロー」があった。
さて、どうしよう。
●
私はテーブルに置いてあったホイコーローにむしゃぶりついた。う、うまい!うますぎる!
探索の空腹と孤児院の熱気の中で1か月ぶりのホイコーロー、染み込んできやがる…体に
ホイコーローの為なら強盗だって…
むしゃもぐぺちゃくちゃ…げーっぷ
■
薄暗い部屋の中には、数々の音楽家の肖像画が並べられている。
まるで、私を睨んでいるような感じである。
と、その瞬間。
扉が勝手に閉まった。
あわてて扉を開けようとするが、動かない。
やっぱり罠だったのだ・・・。
はて、黒板のところにスポットライトが当てられている・・・。
そこには何かの機械らしきものが照らされている。
●
お腹一杯になった私の目の前に、先程とは違った看板があるのを見つけた。
「食べる物を食べたんだから、散策を再開しましょう。あと、強盗駄目、絶対!」
…さて、どうしようか。
■
機械らしきものに近づくと、そこには楽器らしきものが置かれている。
みたところどれも手入れが行き届いており、どれもすぐに使えそうである。
人の気配がほとんどないというのに、一体誰が使うのだろうか?
不気味である。
■
黒板のほうをみると何か書かれている。
『俺の魂を揺さぶる音楽を聞かせてみせろっ!』
どうやらその誰かに認められないとここから出られないらしい。
■
しかし、困った。
私は音楽の心得など全くないし、
ここにある楽器のようなものの使い方さえも危うい。
さて、どうしたものか…。
だが、以前立ち寄ったとある村で、楽師が言っていた。
『音楽は心だ』と。
技術や巧拙など関係ない、己の魂をありったけぶつければ、
それは素晴らしい音楽になるのだと。
私は、すう、はぁ。と一つ大きく深呼吸をして、
手近にあった、片手で持てるくらいの大きさの楽器を手に取った。
●
散策を再開しようにも、鍵をかけられてしまったしな・・・・・・脱出しよう。
今ここにあるのは
椅子の脚・シラスの髪の毛・トイレットペーパー
さて、どうしたものか。
●
椅子の足でドアを叩いてみたが、びくともせず、シラスの髪の毛で鍵を開けれるわけでもなく、トイレットペーパーは何の役にも立たない。
やはり自分にはこれしかない、と懐から拳銃を取り出し、ドアの鍵をぶち壊して、無事、「お菓子の部屋」から脱出する事ができた。
無事に部屋から出る事ができ、暫く散策を続けていると、また奇妙な扉を見つけた。
今度の扉には何も書かれてはいない。
部屋の中に入るべきか…さて、どうしよう。
●
迷っていても仕方がない、私は部屋に入ることにした。
私が部屋に入った瞬間、ガチャリとドアの鍵がかかる音がした。
部屋にはまた例の看板があり、そこには「拳銃禁止、力技禁止、頭を使いましょう」と書かれていた。
今、ここにあるのは、椅子の脚・シラスの髪の毛、トイレットペーパー、<双子な狼のほうの 幽さん>の人形。
さて、どうしよう。
●
部屋をよくみると壁が新しい部分がある
私がそこを調べてみるとガラガラと壁が崩れ落ちた
「ここは…」
どうやら武器庫らしい
銃器から爆薬、ロケットランチャーまで揃っている
「表向きは孤児院……だが裏の顔はこういう事か」
なるほど、子供がいる所ならばこのような物騒な物も簡単に世間の目から隠すことができる
地下組織にはもってこいの施設である
とりあえず拳銃の弾倉を補充すると、ついでにAK-47アサルトライフルを持っていくことにした
何かほかに役に立つ物はないだろうか…
●
物色した結果、幽さん人形とサバイバルナイフも1つ持っていくことにした。この禍々しい人形はどこかで使う気がする。バイオハザード的に
爆薬はさすがにこの狭い場所では使いづらいので渋々諦めることに
そしてこの張り紙
「拳銃禁止、力技禁止、頭を使いましょう」
どうやら拳銃は使えないようだ」
「となるとこれしかないな…食らえ!」
私はアサルトライフルをドアに向かって全弾発射する
ガガガガガガッ
フルオートの凄まじい破壊力によりドアがハチの巣になってドアごと吹っ飛んだ。ヒュー!
空になった弾倉をその場に打ち捨てると意気揚々と散策を開始した
●
歩いていたら、突如、タライが落ちてきた。
私は寸前の所で幽さん人形を盾にして、ダメージを負わずにすんだ。
タライの裏に何やら書かれている。
「貴方にはもう謎解き要素は期待しません」
よくわからないが、もうややこしい謎解きは無いようだ、やったね。
●
「・・・・・・今度はこの部屋か」
扉には「?」一文字
いや、下に張り紙がしてある。
「拳銃を使うべからず。ライフルを使うべからず。ロケット弾等々使うべからず。良識的に行動するように」
■
遠い昔…私が子供だったころ触れたことのある楽器。
この楽器の名は…たんばりんだったかな。
たしかリズムよく叩いたり、振ったりするものだったはず。
…
迷っていても仕方がないとりあえずやってみるか。
私はすう、はぁ。ともう一度深呼吸をして、
…パンッ!!
と力強く1回叩いてみた。
…
…
周りに変化は……特に、ない。
●
もう私に恐れるものは無い。
こんな時の為にこれを持ってきたんだ。
私は幽さん人形で力の限り、扉を叩きまくり、扉をぶち壊した。
幽さん人形は頭から出血しているが、絆創膏でも貼っておけば良いだろう。
私はさらに奥へと進んで行った。
●
進んだ先にはさらに扉があった。
ドアノブの上に4桁のダイアル錠が取り付けられている。
そして、ちょうど目線の高さに例のごとく紙が張ってあった。
『天文台 = 445
重力 = 92
銀河 = 148
宇宙船 = ? 』
銃器の類いは使うなとのお達し、
幽さん人形は先の破壊活動で気の毒な有様なので使わないでおくことにする。
恐らく、?の部分に当てはまる数字が鍵になっているのだろう。
さて・・・、どう解いたものだろうか。
■
しばらくすると何処からともなく声が響く
「うーん、まだまだだな・・・。やりなおし!
ああ、それからあんまり酷いとお仕置きだかんね。」
天井にスポットライトが当たる。
そこにはなんと・・・たらいである。
またしても・・・たらいである。
どうすればいいんだ・・・、と頭を抱える。
●
私を馬鹿にしているのか。
私は手に持っていた幽さん人形に聞いてみた。
「おい、答えを教えろ」
・・・。
人形からは返事は無い。
役に立たない人形だ。
仕方が無いので、自分で考えることにした。
●
しばし黙考した後、
文字を見つめていたところで閃いた。
「画数、か。」
ダイアル錠を「6811」にセットすると、カチリと音がした!
他愛も無い。
私も力技だけじゃないんだぞってところを少しは見せられただろうか。誰に…?
上機嫌で扉を開くと、上からタライが降ってきた。…
「ちえーっ、絶対解けないと思ったのに。」
どこからか子供の声がした。
■
こうなったらヤケだ。思いっきりやってやろう。
シャカシャカシャカシャカ
パンパンパン!
「ヘイ!カモン!」
私は手首のスナップを最大限に利用してタンバリンを叩いた。
音楽はロックだ。魂で奏でれば伝わるはず。
・・・
『くすくす。ださいねー。それ、かっこいいとでもおもってるの?
まあ、面白かったからいいよ。合格にしてあげる。
でも、たらいは落とさせてもらうね。』
そのとき、壁がゴゴゴと音を立てて崩れ、隠し扉が姿を現した。
だが、同時にたらいが頭上に落ちてきたため、私はその扉の先へ進むことなく意識を失った。
■
私の意識が戻るのには、それなりに時間がかかった。
起き上がると頭がいたい。くらくらする。
…
私はなんで気絶していたんだっけ。
そうだ、…もう何度目か分からないタライが落ちてきたんだ。
もしかしてすべての扉にタライが仕掛けてあるのかもしれない。
次の扉からは頭上にも用心しないといけないな。
ぼー。とそんなことを考えてふと扉の方を見ると…
だんだん……ゆっくりと閉まっていっていた。
いけない!急がなければ!
私は慌てて鞄と、何故かたんばりんを持って扉へ向かって走った。
■
スライディングしながら閉まりかける扉に滑り込む。
ちりり、と肘や膝に熱い痛みを感じたが、この程度、なんてことはない。
――…バッタン。
隠し扉は、丁度滑り込んだ私の後ろで閉ざされた。
扉が閉じてしまえば、一筋の光も差し込まない暗闇が広がっていた。
部屋なのか、通路なのか、広いのか、狭いのか。
それすらもわからない。
いや、
もしかしたら、すぐ目の前に何か居る可能性すらあるかもしれない。
私は、おそるおそる手を宙に漂わせた。
■
手を伸ばすと、何かが私の指先に触れた。
ひやり、とするその感触に思わず手をひっこめた。
なんだろう、つるつるしていて、それでいてどこか水っぽい・・・
私はおそるおそるもう一度手を伸ばしそれが何か確認しようとした。
片手で持てるくらいの大きさで、四角くて、弾力がある・・・
もしかして、と思い口に含んでみる。
こんにゃくだ!
●
逃げながら、先程出会った旅人(CN:がきんちょ)のことを思い出した。
がきんちょにあの双子を倒して貰おう。
最悪、がきんちょを囮にすれば良いか。
我ながら名案だ、と自画自賛しつつ、がきんちょと合流する事にした。
あっちの方からがきんちょの匂いがする。
私はがきんちょの匂いを辿ることにした。
■
口に含んだものを飲み込むと予想は確信に変わった。
なんでこんなところにこんにゃくが…
どんな場所なんだ、ここは…。
こんにゃくといえばお化け屋敷だとは思っているが、
孤児院にお化け屋敷などそうあるものではないだろう。
周りの様子が気になる…非常に気になる。
どうしたら確かめられるだろうか。
…
私はペンライトの存在を思い出すまで、
しばらく真っ暗の中手探りであたりを探索していた。
このときは暗くてよく分からなかったが、
時折、何かが私の手に触れていたような気もするような…。
■
そうだ、勉強机の中で見つけたペンライト。
懐からペンライトを取り出し、辺りを照らしてみた。
こんにゃくがぶら下がっていた糸、
周りは石壁で、奥へと通路が繋がっているようだ。
壁に手をつきながら、慎重に前へ前へ歩みを進める。
ペンライトだと、
僅かな空間しか照らし出すことが出来ないのがもどかしかった…
●
がきんちょ氏の臭いを辿っていくと、「音楽室」と書かれた部屋の前に辿り着いた。
「んー・・・?」
よく見ると、扉の下に血の痕のようなものが付いている。
「まさか・・・」
心配になった私は
■
こんな場所にくるのなら、常日頃からもう少し明るいライトを持ち歩いておけば良かったかもしれない。次回の旅に活かそう。
そんなことを少し考えながら、
私はペンライトの僅かな光を頼りに少しずつ前に進んでいった。
…
どのくらい歩いたかわからないが、
私は数メートル先のあたりのキラッと光るものに気がついた。
おそらく私は、それの正体を早く確かめたいと思っていたのだろう。
焦ってしまい、よろけて壁に強く手をついてしまった。
…
左手に柔らかいぬめっとした感覚。
もしかして壁が凹んでる…?
少し怖いが、光を当てて確かめてみようか―――
■
意を決して、左手にライトを当ててみた。
思わず、ひっ、と喉の奥から声が漏れた。
そこにあったのは、巨大な生物の 舌 だった。
理解した途端に、ばっと手をひっこめた。
ばくん、と同時に巨大な生物も口を閉じる。
●
さて、がきんちょと合流しようか。
馬鹿正直に扉から普通に入ったりすると、罠にかかるかもしれないし、遠回りになる。
私は面倒なのは嫌いだ。
がきんちょのいる方向に一直線に向かう。
邪魔する壁はロケットランチャー時々幽さん人形で殴り壊すと言った荒業で、最短距離での合流を目指した。
がきんちょ、死ぬんじゃないぞ。
双子を倒して、無事に私が孤児院を出るまでは生きてくれ。
その後はどうでも良いが。
■
次の瞬間巨大な生物と目があった気がした。
この威圧感…は今までで一番だったかもしれない。
…し、失礼しま!!失礼しました!!
私は壁に手をつかないように注意しながら、奥の扉まで走った。
さっき見たのもを忘れるために全力で走っていた。
…
…やっと着いたらしい。ここが出口への扉だといいな。
と考えながら扉をペンライトで照らし、私は愕然とした。
扉に鍵がかかっている…
もしやあの時光っていたのが……鍵だったのか?
■
鍵がなければ、扉はあけられない。まさか…私はあの鍵を取りに戻らねばならないというのだろうか…!
あの得体の知れぬ生物の隙をかいくぐって…?
暗闇の中、私はタンバリンを盾のように構えたまま、絶望的な気持ちになった。
こんにゃくが頬をぺちゃぺちゃと叩く。
と、そのとき。
遠くでもの凄い音がした。
まるで常識のない誰かが、鍵がなければ壊せばいいと言わんばかりにロケットランチャーでもぶっ放しているような…いや、私は気でも狂ったのか?そんなはずはない…
どうすればいいんだ…!!
●
色々と破壊しながら進んでいく。
幽さん人形はその度にボロボロになっている気もしないでも無いが、問題無い。
何かかっこよくなった気もするし。
あとでがきんちょに直させよう。
そうして進んでいくと、何やら巨大な生物が目の前にいることに気がついた。
あ、あれは…美味しそうだな(じゅるり)
お腹も空いたし、ご飯には丁度良いな。
私はサバイバルナイフと幽さん人形の二刀流乱舞で、巨大生物を切り刻んで、焼いて食べた。
私に任せたら全部こんな感じになるぞ、と誰に言ってるのかわからない独り言を言いつつ、ご飯をもきゅもきゅした。
■
こんにゃくを投げて、あの生物が食べている隙にとりに行く事も考えたがこんな大きさでは無駄なんだろうな・・・。
もしくは、お酒で酔わせて、その隙にとも思案しているうちに・・・。
もう一人の旅人、幽さんがぺろりと食してしまった。
もう、あいつ一人でいいんじゃないかなあと思った瞬間であった。
●
「化け物のコーラ煮」を食べていると、呆然とこちらを見ている囮一号もといがきんちょを見つけた。
「やあ、がきんちょ君、双子の倒し方、もしくは孤児院の出口は見つかったかい?」
・・・反応が無い・・・何やらぶつぶつと言っているが・・・そうか、わかったぞ。
「さてはお腹が空いてるんだな、今さっき新鮮な巨大肉が手に入ったので、コーラで煮込み美味しい頂いてる所なんだが、がきんちょ君も食べるかい?」
爽やかな笑顔で食事に誘ってみた。
■
手近なこんにゃくをもぎり、妙にしょっぱい気持ちになりつつかじった。得体の知れぬ肉を貪る旅人に近寄る。
あと数mであいつに声をかけて礼を言おう、というときに、例のきらきらしたものが落ちているのを見つけた。
もしかしたらあの扉の鍵で、もう無意味なものなのかもしれないけど、いちおう拾っておくか。
そう思って、何かきらきらしたものに近づく。
●
…おかしい、何故こちらに来ない。
化け物コーラ煮を食べながら、なかなかこちらに来ないがきんちょ君を見て、鋭いキレ者な私は、はっと気がついた。
あ、あいつ…まさか、もう脱出ルートを入手済みなのでは…しかも、それは一人用で、私を見捨てるつもりだった…とか。
最低だ、友達を見捨てるとか人として終わっている、そうだよな、幽ちゃん人形(ボロボロ)
何とかして、がきんちょ君から脱出ルートを聞き出さなくては…がきんちょ君は強いから大丈夫だが、非力な乙女の私とか、こんな所に残されたら、巨大生物に食べられて終わってしまう。
どうしよう、と考えていたら、何やら鍵のような物を見つけた。
何の鍵だ、一応貰っておくか、とひょいと手に取り、ポケットにしまっておいた。
■
そのきらきらした物は鍵であった。
よくみると
『職員室』
のタグがつけられている。
とするとあの向こうの扉の先には職員室になってるだろうか?
■
CN幽も鍵を拾っていたような気がしたが、
あちらのは怪物を倒した時にドロップした鍵なのか。
…
目的の鍵をポケットにしまっていると、
CN幽が私を食事に誘っている声がする。
私は少し迷いつつも。
「お気遣いありがとうございます。大変ありがたいのですが、
先ほどこんにゃくで食事をしたばかりでして…。
どんなお味がするんですか?」
…
先ほどの経験を思い出すとどうにも食べる気になれず、
丁重にお断りしておいた。
本当にどんな味がするのだろう…。
■
「あの、危ないところを助けてくれて、ありがとうございます。…え?あ、いやその、ほんとにコーラ煮は結構です、今何だか胸がいっぱいで…」
脱出経路や双子の正体について何かわかっていないか聴こうとしたところ、相手の表情が優れないことに気がついた。
何か言いたげな目…もしやこれは…口直しにこんにゃくがほしいのか?
「あの…こんにゃく、食べます?」
●
どうやって聞き出したものか…私としてはあんな恐ろしい双子は相手にしたくないので、さっさと脱出→孤児院ごと吹き飛ばすコンボで終わりにしたいのだが。
ここは私だけ脱出→孤児院爆破→がきんちょ君は強いから大丈夫だった作戦がベストだと思うんだ。
巨大生物コーラ煮の味とかを聞かれたが、美味いに決まっている。コーラで煮込めば何でも美味い。今はそんな事を話している場合じゃないだろう。流石、脱出ルートを確保しているだけあって余裕だな、汚い、がきんちょ、汚い。
もう面倒だからストレートにお願いしよう。
「がきんちょ君、こんな所に非力な女の子を置いていくとか…酷くない、酷いよね、酷いよな。だから、一緒にここからでようよ。」
●
私は女の子だ、性別:女性だ、誰に言ってるかわからないが言っておこう。
こんな小柄でか弱い女の子、見たらすぐにわかるだろう(ぶつぶつ)
■
幽さんの申し出に
「そうですね、ここから一緒に行くのほうがいいかもしれません。
私もまだ脱出経路がわからないのです。
そういえば、先ほどここで職員室の鍵を拾いました。
もしかするとあの双子を何とかできるヒント、もしくは脱出経路が分かるかもしれません。なんとなくですが・・・。」
●
何か、私の事を今まで「男扱い」するとか、失礼な人達がいるような気がした。
しかもその人達は凄く驚いている。
最低だ、こんなか弱い乙女を男扱いとか…ショックで寝込みそうだ。
誰に言ってるかわからない独り言をぶつぶつと言い続ける私であった。
幽ちゃん人形、酷いよね(ボロボロ)
●
「まだ脱出ルートが見つけてない…だと」
嘘だ、一人で脱出する気だ、がきんちょ君は乙女を放置して自分だけ助かれば良いとか最低な人間だったのか。
しかし…嘘を言っている目では無いな…何かに怯えている感じはするが…相手はあの双子だから仕方がないか。
今の所は信じてやろう。ただし、嘘だとわかったら、生きている事を後悔したくなるような目に合わせてやろう。
「鍵なら私も拾った。どうやら巨大生物(故)が食べていたようだ。何処の鍵かはわからないが…良ければ預かっていてくれないか」
私は鍵をがきんちょ君に預けることにした。
大事な鍵なら双子が取り返しにくるかもしれない。
もしそうなら、「鍵を持っているのはあいつです」作戦が使えるしな、私はキレ者だ、脳筋とかではない(きりっ)
■
鍵を渡されたので、ありがたく受け取った。
いいのかな、と思いつつも、まあこの人なら開かない扉があっても鍵に頼ることはしないのかもしれないと納得した。
きっと自分と私の力量差を鑑みて、この鍵を預けてくれたのだろう。優しい人だ。
「とりあえず『職員室』、一緒に行ってみませんか?向こうに扉があるんです。なにかあるような気もするし」
扉があった方を指し示して、とりあえず誘ってみた。
●
何故か私が変態扱いされている気がするが、どうみても「かっこいい」だろう。
失礼だよね、幽ちゃん人形(早く直して)
何やら職員室に行こうと誘われた。
まぁいいか、行きたい所は無いし。
「わかった、その職員室とやらに行ってみることにしよう。ただし、私は見ての通り、か弱い乙女なので、男のがきんちょ君は私を守るように。あと、この幽ちゃん人形を直してやってくれ。きちんと直さないと、幽ちゃん人形と同じ状態にしちゃうぞ(てへっ)」
決まった、がきんちょ君、これで私に惚れたな。
ますます私を守ろうと思うだろう、頑張って私を守れよ、がきんちょ君。
●
独り言も尽きて、共鳴も尽きかけてる人に言いたい放題とか酷いよね、幽ちゃん人形(修理中だよ)
あと、私はかっこいい幽さんだよ。
CNだけど、もう幽さんでいいよ。
誰に言ってるかわからない独り言を連発する私だった。
■
CN幽さんは職員室へ向かうことを快諾してくれたので、
行動を共にすることにした。
どうやら、手にしている人形を修理したいそうだ。
脱出経路や双子退治のついでに、修理道具も探しておこう。
再び通路の奥の扉へ向かい、「職員室」とプレートの付いた鍵を鍵穴へ差し込むと、カチャリ、と軽い音がしてノブが回った。
そこに居たのは…
■
そこに居たのは五体の樵。男の外見をしたのが四体と女の外見をしたのが一体。口にはテープが×印で貼られてあり、それぞれ顔は無表情であるのにもかかわらずどこか苦痛を訴えているように思えた。樵には紐で通してある板が首にかけられており、左から「文学」「数学」「化学」「歴史」「一般教養」と書かれている。その後ろにあるのは小型のモーターといったものだろうか。
バタンと扉が閉まる。駆け寄ってみるが扉は内側から開かなかった。
隣から幽さんがダルそうに言う。
「がきんちょは馬鹿だなあ。なんで同じミスを何度もするんだ。自分で入りたいといったんだから責任を持ってか弱い乙女を守るようにね(にっこり)」
・・・しかしこの樵たちもやはり元は人間だったのだろうか。
急にあの悪魔の子供達の声が頭上から聞こえてきた。
「くすくす・・・テストの時間だよ?」
「五つ問題を出すから」
「当ててね?」
「外すごとに樵は粉々」
「君たちは人殺しになる」
「ふふ・・・愉快でしょ?」
「あはははは」
「まずは『文学』から行くね」
■
すると、樵の背後の小型モニターに、ぱっと問題が映し出された。
『銀河鉄道の夜、伊豆の踊子、砂の女、八つ墓村
それぞれの文学作品の著者を答えよ。』
私は、ぐ、と言葉に詰まってしまった。
有名な作品ならば名前くらいは聞いたことがあるが、
そこまで文学に精通しているわけでもなく。
『外すごとに樵は粉々』『人殺しになる』
子供たちの声を反芻すれば、つまり、
この人形のような樵は生きた人間なのだろうか…。
ぎりっ、と奥歯を噛み締めた。
傍らのCN幽さんはどうだろうか、とちらりと様子を窺ってみたり。
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