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「参加者の皆さん、いよいよ「大会」開始です!
機体に搭乗して下さい!」
大会会場内に、アナウンスが流れる。
それに伴い観客達も移動を始め、BigFireの機体同士の戦いがよく見える場所が更に埋まってゆく。
天空には、色とりどりの花々の弾幕が降り注ぎ、
本物の花びらのシャワーのように、美しくバトルフィールドを飾った。
ファンファーレが鳴り響く――――。
「それでは……開始です!!!」
どうやらこの中には、村人が3名、占い師が1名、霊能者が1名、狂人が1名、狩人が1名、共鳴者が2名、智狼が2名いるようだ。
いっちょやるか!!!
[真紅の機体に乗り込み、計器を全起動。オールグリーン。
にやりと不敵な笑みを浮かべ、拳を打ち鳴らした。
操縦桿を握る。
真紅の機体は巨大な三つ爪の武器を一振りし、格納庫の扉を切り裂くとゴォンと飛び立った。
青空に現れる、赤。
後光のように背負う円形の曼荼羅型弾幕兵装。
近接武器は、三つのエネルギーの筋を残し構えられ、
多層式の弾幕兵装は展開され、完全な臨戦態勢に入った。]
[視界の隅、動力メーターの表示がじわじわと上がっていく。
遠く聞こえる歓声と、花吹雪のような色とりどりの光。
ファンファーレの合図と共に、ペダルを深く踏み込む。]
白川重機株式会社、開発部稼働試験課所属、
真嶋 ススム、参りますッ!!
[ぐん、と体にかかるG。
青白い光と共に、機体は風になる。]
――格納庫・シュウ機体ブース――
[老兄弟に押し込まれるようにしてコクピットに乗り込み、外部接続で開いたウィンドウとステータス表示に目をやった。同時に聞こえてくるのはいかめしい声]
『ふン。重力環境と大気組成のセッティングは済んでたか。
まずまずだ――が、戦闘空域の予測がなってねぇ。おい!』
『もう送ってるぞ。
シュウ、そっちにやったクラスタを展開しろ。今回の参加機のデータとパイロット名、それに戦闘スタイル予想を組み込む』
……う、うん。
でも、お爺さん達、なんで――行くなって言ってたのに。
[指示通り、仮設AIへと情報を展開しながら少女は尋ねた。
ややあって、静かな調子の声が返ってくる]
『……シュウ。
話してやらなきゃなんなかった事が、オメェにはある。オメェだって、それを探しに地球くんだりまでやって来たんだろ?』
『俺達の昔の汚点でもあるからな。
できれば隠しておきたかったんだが。
……だが、シュウが知りたいなら、教えてやるしかないって話になってな』
[ウェイン兄弟の言葉には、真摯な響きがあった。
それを感じ取って、コクピットの中で少女はこくりと頷く]
……うん。
何かあたしの知らない事があるんだろうって、それは思ってた。でも、それがお爺さん達にも関わってたの? どうして?
『――今はまだ、話してやるだけの時間はねェ。
無事に戻ってこい、シュウ。そうしたら、教えてやるから』
『いいな、無事にだぞ。無理はするんじゃない。
俺達に言えるのは、それくらいだ――じゃあ、行ってこい』
――わかった。じゃあ、また後で、お爺さん達。
[答えて唇を結び、BigFireへと起動コマンドを飛ばす。
少女の左手首に埋め込まれた銀色の球体が、シャボン玉の表面のような虹色の色彩を帯びた]
――『アンギャルド』、発進。
[屋根が完全に展開された格納庫から、黒騎士が浮上していく]
[ドシュゥ…]
[そんな機動音を引きながら、赤い影が空へと舞い上がる。それは、前回の覇者、ゴードンの期待が出撃した姿であり、つまりは本戦の開始を告げる合図でもあった]
…フヅキ、全弾幕兵装並行展開!
出力調整、60,60,60!
ハイリミテッドコード・ミルキーウェイ!!
[追うように、ふわりと舞い上がった青い球体が、三点の光輪へ同時に光を点す]
…コメット!
[赤い機体に追従するように、機体が急加速する]
フルムーン!
[左手に点した光球が、その出力によって期待に縦軸の回転を与え、螺旋を描く。そして]
スターダスト!
[右手から放たれる星型の弾幕が、螺旋の機動によって全方位にばら撒かれた]
…カササギスターロード!!
[戦闘空域を埋め尽くさんばかりの勢いで星屑を撒き散らしながら、青い機体が光の道筋を残して空へと昇っていった]
―― 空 ――
『Herio!』
[マリアの喉が大きく震えて、開始の合図。
私は大きく大地を蹴ると、両の翼を広げて高く舞い上がった]
[ばさり] [ばさり]
[有機的な風切り音は、少しの間。
すぐに、上昇気流を捉えると天高くポジションを取る]
[ガチャリとマリアは倶利伽羅不動ガンの劇鉄を起こした]
『……来た。ニーナの初撃』
[忠告されていたそれ。
先ほど追い込まれた星たちが再び空を彩った]
[せっかくの共闘宣言、使わせてもらう。
ニーナへの回線はスリープで待機させ、大きく体を旋回させて体勢を取った。姿勢が安定するまで少しかかる]
[バイザーの中、オートモードにされたマリアの表情は笑みを浮かべている]
−回想・格納庫での出来事−
シャーロット・ブルーメンか。君にふさわしい、いい名前だね。
初参加でも気負うことは無いさ。まずはこの大会に慣れ、そして結果はともかくとして楽しむことが大事だ。
私が何度も何度も挑戦しては敗れているゴードン。彼も、BFの大会を実に楽しんでいる一人だ。
彼も、そして私も初参加の時期はあった。
君もいずれは、私やゴードンのようなBF乗りになれるかもれしれない。
[何度も大会に参加している中で、初参加だと言われていた者が優秀な成績を残すことも見ていた。そしてその者は、全てが大会前の並々ならぬ努力とBFへの強い思いを持っていた。
シャーロットの目からもそれを感じ取ることが出来たようだ]
シャーロット、空で君と良い勝負が出来る事を願っているよ。
[しどろもどろな様子があったのは、初参加で他のパイロットに中々話しかけづらい状況であったからだろうか。それすらも微笑ましく思える]
ただいま、スネイルネン。
さぁ、行きましょう?あの青い、空へ。
[ヘッドセットを身に付け、操縦席へ身を横たえた。
地に対して平行ではなく、少しだけ沈み込むように角度を調整して両手をパネルに添える]
マリンブルー・スネイル…行きます!!
[両手の指が何らかをパネルに描く。
機体の足部分からやはり青い色のヒレのような羽がいくつも現れ、その身を浮かばせた。
青い蝸牛は、空を目指す]
――上空・南西エリア――
[バックステップの様な姿勢で浮上する『アンギャルド』。
一旦は様子見をしようとした処に、前下方からの弾幕がロック表示される。ニーナの機体から放たれた星型の弾]
大丈夫、あれなら掃える。
[チリチリと、背筋を粟立つような感覚が這い上がっていく。
戦いの緊張。恐怖と興奮。アドレナリンを始めとする脳内物質が分泌される。少女はちろりと唇を舐めた]
――『自在剣』、BladeSing.
[片手剣の形状で構成されたフィールドを右手に、自機の射線上にあたる弾体を切り払う。直接狙ったものではない、けれど広範囲にばらまかれた弾の群れ。少女はコクピット内部で軽く息を吐いた]
でも、あんまり見てる暇、ないみたいね。
あそこも――もう、始まってるようだし。
[そう見やったのは彼女よりも更に上方、中央エリアの高空。ゴードンの搭乗する機体『RedWolf』を撃墜する栄光を争って、何十機ものBigFireが弾幕を飛び交わせていた]
―戦闘空域上限高度―
…忠告はいたしましたので、上手く対処してくださったはずであります…
[と。一息の間にはるか下方に過ぎ去った有象無象の機体の群れが、星型弾幕の中を右往左往する様子を眼下に見下ろしながら、ぽつりと呟く。コード・ミルキーウェイは見た目に派手だが、その実ばら撒き弾を撒いているだけなので、回避にしろ、防御にしろ、相応の腕を持ってさえいれば対処は簡単だろう。
それでも、ばら撒くだけだからこそその弾幕は防御するにせよ回避するにせよ、相応の動きを相手に要求するものであり…つまりは足止めだった]
フヅキ、リミテッドコード・ファストスター…
[続けざまに指示を出し、目的の機体を眼下に探す。
フヅキの補助ですぐに見つけられたその赤い機体は、悠然と余裕を感じさせる動きで、一つも被弾することなく星型弾をかいくぐっていく]
−BF、「Silvern」内−
今回の大会は……今まで以上に面白そうな顔ぶれが揃っているな。実に胸が熱くなる。
[今まで出会った者達の姿が胸を去来する。ニーナ、ロジャー、クロノ、シャーロット。そして、あの黒い男、GRAVEのユージーンに、ニーナと空で戦いを繰り広げていた「MiddanEden」の機体を操る者。
最後に、前回の覇者であり、何よりも負けたくなく超えるべきである存在ゴードン。]
面白い。実に面白いよ。
彼らと戦い、そして彼らに勝利するのは。
[シートベルトを締め、緑色で羽のついた特殊なヘルメットを被り、Silvernの椅子に座る]
Silvern、出撃だ。
[機体のレバーを引くとみるみるうちにSilvernは空のフィールドへと駆け上がっていく]
―回想・格納庫―
第七コロニー公社、…なるほど。
[ぶん、と同時に手首の端末から彼女の登録情報並びに登録機体、リトルアースのホログラムが本部データベースより引き出され表示される。
ふむふむ、と一人納得を見せる、自身はそこまで外宇宙の企業やら何やらに詳しいわけでもなく、ちっとも怪しむ素振りは無いだろう。
今現在心が向けられているのは、BF以外には無い。]
……えーっと、私の所属……ですか?
おっちゃんに機体見て貰ってのプライベート参加だから……あれ?どうなってるんだろ。
おっちゃんの修理工場名義での登録かな?
――――ごめんなさい、ちょっと判らないです。
所属は置くとして、機体はサンダーエースって奴で、登録名はOld replicaでシャノンってなってる筈です。
まあ機体は向こうにあるオレンジ色の奴だから、良かったら見てってね。
[自分の事なのに判らないとはこれ如何に。登録情報を見れば修理工場名義での出場となっているだろうか。
またもしどろもどろにならない内に、機体と登録名を教えて、ついでに指を機体のほうに指す、その先には様々な機体の間に一際ハデなオレンジと黒のツートンカラーが見えるはず。]
フヅキ、照準を頼むであります。
[告げれば、右手の制御がフヅキによる精密制御に移行する。リミテッドコードの指示により、スターダストと位置を交換したコメット。
スターダストが、姿勢制御のためにちらちらと威力のない光弾を撒き散らして、微細な制動を行う。
精密な照準をつけるための、予備動作…そのうちに、手空きとなったパイロットが、機体に登録されていた通信回線を開く]
…30秒後。高高度から目標に狙撃を行います。
撃墜はできないまでも、隙は作れると思いますので、どうぞ追撃を。
[告げて。まず標的とすべき目下一番の強敵の打倒に向けて、協力を要請する。そのまましばし、地上の様子をじっとその目で追う。
そこでは赤い機体は弾幕を抜けた機体と交戦を始めていて…その戦闘機動を受け、フヅキが誤差を修正していく]
[前回の王者、ゴードンの赤が空へと駆け上がっていく]
さて、行くかね。
[指数が上昇傾向になっているのを感じる。
なるほど、プレッシャーとかだろうな。そう思いつつ、男は空を目指す。
スラスターを半分だけ起動させて、一定の距離を保ちながら、その烏羽の翼は飛び立った]
さて、問題はない。次の行動に移る。
[やっきになってゴードンを目指す者も多い中、ゆっくりとしたペースで与えられたものをこなす]
ブラスター、稼動。
[後方に向けたブラスターが火を吹く。
まだ上昇しかかっていないいくつかの機体を落ちない程度に焼き尽くす]
48%、54%、よし。
[ブラックボックスの稼動を示す指数がさらに上がるのを確認すると、男はゴードンへと距離を縮めようとする]
[程なくして、フヅキが照準の最終調整を終え…準備は整った]
…ルシファア!
[天に弓引く宵の明星の名を持つそのコードを受け、一筋の光条が、上空から赤い機体を狙って撃ち降ろされた。
…その一撃は、おそらく手傷を与えることはできただろう。
上手くすれば、弾幕兵装の一つももぎ取ることができたかもしれない。けれど、きっと、それまでだ。
撃ち落すには足りず、そしてそれならば更なる追撃をしなくてはならない。
できたばかりの仲間に連絡を入れておきはしたけれど、だからといって頼りきりになるわけにも行かず…
ここまで好きにやった分も合わせて、サポートに入りに行かねば。
…そう、思うのだけど…]
ちょっと。ほんのちょっとだけ時間を…!!
うくっ…うぅう…
[ここに来るまでぐるんぐるんこれ以上ないほど回ったせいで、酔った]
[とまぁ、一言二言は交わしただろうか。
開始も迫っているだろうし、そろそろ戻ろうかと思っていれば。
黒で上下ぱっつんな男の人が、先程少女が部品を撒く原因となったビニール入りの焼きそばか何かを、ぐちと踏み潰して、あろう事が邪魔だと。その上自分のだから文句言うなとの捨て台詞まで。]
―――あんた、ちょっと避けるぐらいの頭は無いの!?
しかも捨てたのに俺のだですって?所有権を主張するなら最後まで責任持ってゴミ箱に捨てなさいよね、バカなの!?
[失礼されて何かかちんと来たのか、男の背中に向けて少々声を荒立てる。効能の程は知らないし、何か言い返されるかも知れないが、そんな事はどうでも良いと。
戻ってくる気配も無しなので、仕方無しとちゃんとゴミ箱に入るまでを見届けて。]
……もう、何なのあr―――ちょっと通信です!
……あー。おっちゃん?ゴメンゴメン今すぐ向かうからー。
――失礼、ちょっと最終確認しろだそうです。時間も無いので失礼します、また上で!
[と、途中で呼び出しのコール。ぱっとニーナに頭を下げると、小走りで自分のブースの方に向かった。]
[空へと向かう間に思い出したのは、出発前に出逢ったナサニエルとの会話だった>>11]
大会に慣れて、結果はともかくとして楽しむ事…
そんな事を言ってもらったのは…初めて。ね、スネイルネン?精一杯、やりましょう。1つ1つの事を、悔いの残らないように!
[ナサニエルの言葉が、...の気持ちを良い方向に向けて行く。いつもの不安気な表情は其処にはもう無かった。
戦闘空域の上方からの星型の弾が降り注いで来る>>15のを確認したが、笑顔は崩れない]
大丈夫よ、スネイルネン…雨を呼びましょう。
Rainy day、『強い雨の日』
[パネルに素早く、くぃと弧を描く。マリンブルー・スネイルの背の渦を巻いた外周部分が開き、短いレーザーが連射され、星型の弾を撃つ。多少は外すだろうが頭部を短く収納する事で回避して行くだろう]
ほう、綺麗だな。
屑も屑なりに、散る時には綺麗になるのかね。
[まっさきに打ち上げられた、花火、もとい星型の弾幕。
まばらに空を埋め尽くすが、男は避けようともしなかった]
被弾確認、装甲値94%
当たった箇所は、ほんの一部か。
この程度なら、避ける必要はないな。
[機体に異常がない事を確認すると、男は進路を東側に取る]
さて、挨拶くらいはさせてもらおうか。
ヴォルレイ、シュート。
[中ほどの位置から、狼の耳を狙うように、光を収束させていく。
その光の流れは、無数の弾となりて、一直線に向かっていく。
光の河を思い起こさせるような弾幕が、チャンピオンの頭を狙った**]
――上空・南西エリア→中央エリア――
[グン、と凄まじいGが発生する。
視界が赤く染まり、同時に機体各部のスラスターから発せられたエネルギーが光の軌跡を描いた。接近に気づいたのだろう、数機のBigFireがこちらに砲口を照準した]
ふふ、見えてる、よ!
下へ潜って、2時方向2機にレーザーロック。
11時方向の3機をその次!
[背面の『響洞膜』が左右へと展開、柔軟な動きで目標を捕捉する。紫色の光線が発射され、電光と共に撃墜した]
さて、っと、次は?
−戦闘空域−
[他の者のBFも続々と飛び立っている。まず探すは……前回の覇者である男、ゴードンの機体]
あそこか。
[ゴードンの機体位置は発見したものの、近づこうとはしない。ゴードンの機体を狙うものは多いが、ゴードンは優れたパイロットであり、下手にゴードンの機体を狙いに行くと逆に返り討ちに遭いかねないし、他の機体に巻き込まれ不測の事態が起こる可能性もある]
それに私も不名誉なあだ名であるが、シルバーコレクターだ。私を狙ってゴードンにと考える輩も多いだろう。
なぁ、そこの機体。
[既に自分を狙う機体があるのに気が付いたらしい。そして、即座に装甲を起動させるスイッチを押す。狙っていたのは今まで会話を交わしたり、姿を見た事のある機体とは違う機体]
まずゴードンに行かず私に向かった事に敬意を示すよ。……だが、気が付いていなかったか?私が既に準備をしていたことに。
[ナサニエルのつけているヘッドセット経由で、対象機のパイロットのえ、という声がナサニエルに届いただろうか。
次の瞬間、炎が対象機に迫り、それを避け切れずに墜ちていく
ナサニエルを狙っていた、あるいはナサニエルを狙っていた機体を狙っていた機体は炎を避けようとして、次の炎へとぶつかって撃墜される]
私にこうして撃墜される、という事はゴードン相手でも厳しいだろう。次回の大会で会う時こそは、強くなっている事を期待する。
[それは、中層の北東側空域での話。
目標とするゴードンは、高層の北側空域にて戦闘を繰り広げている]**
―回想・自ブース―
へいおっちゃん差し入れコーヒー!
『おう、って時間ねーからさっさと乗りやがれ嬢ちゃん』
あいよ!
[ポケットに入れていたコーヒー缶を投げ渡すと、その勢いでサンダーエースのコクピットに着替えは後回しと乗り込む、アナログとデジタルが混在するような二昔ほどレトロなデザインのコクピットが、しっくり馴染む様で心地よい、ぎゅ、と操縦桿を握る手にも力が入る]
『おおよその仕様は変えて無い、ただスラスターやらバイパスギヤか何か細々を強化品に替えてあるだけだ。
よし、細部メーター類を確認しつつ起動させてやれ。』
[核を待機から起動へ、変換機への回路を繋ぐ、ぱちりぱちりと何時もの手順でスイッチをOffからOnへ。
計器類の数値は、首を絞めるように規定の数値を指し示す。
何も、問題は無い。]
『よーしよし、いい子だ。』
[起動手順の最後に、今では殆ど生態認証に変わり消えてしまった『鍵』を廻す。
その時ばかりは、何時もより重かったその行為が、何よりも機体に何かを生み出させるようで。
小さく細い高周波数の音が、一気に高らかに歌い上げるように。]
『問題無し、流石俺の整備した機体だ。
時間も押してる、早く着替えて来な。』
[おもちゃ箱をひっくり返したような様々な色の弾幕の雨あられ。
鋼の白鳥はその中を掻い潜って飛翔、追ってきたものか、背後で避け切れず爆散する気配が幾つか。]
この程度は小手調べ。抜けられぬようでは敵わないな。
[目指すは王者たる赤き狼、天上からの流星に怯んだ隙へと飛び込む。]
斬月・上弦っ!!
[青白く輝く白鋼の翼。急上昇しながら逆袈裟に、赤い機体を掠める光子刃。
だが、わずかに浅い。]
くっ!!
[急角度に旋回して離脱。コンマ一秒前の残像が、いつかのように三本の三日月に切り裂かれた。]
おっと。
ゴードンの奴、さすがはで好きなあいつらしい。
早速見せられそうな中央のど真ん中に降りてきたか……。
[ゴードン機の様子を見て呟いた**]
[身を翻したタイミングで、間髪入れず走る光の河。
それは偶然か必然か、まるで連携していたかのように黒翼の鴉が放ったもの。
素早く体制を立て直し、撒き散らす光弾は桜吹雪。]
――中央エリア/高空――
[通常の約二倍以上に伸ばした『自在剣』を構え、ゴードン機への照準機会を窺う。ラインが空けばすぐさま突撃できるように、仮設AIへと戦術要請。機体速度は低速。と、その時――]
『ようこそ、諸君。俺の空へ!
今回の歓迎はこんなものなのか?
いいぜ、さあ、どこからでも掛かってこい!!』
[前回チャンピオン機にだけ搭載された、全域強制通信が発信された。不敵な表情で笑う男の顔が、球体スクリーンの一部を占拠する。地上でも同様に、ゴードンの顔と声は盛大に演出されているのだろう]
――地上――
[観客席では一斉に大きな歓声が上がる。空中のスクリーンには彼の経歴と機体データ、そして現在の状況がそれぞれ表示され――実況アナウンサーが悲鳴を上げた]
『さあ挑発に答えるように、おおっと、上空からの一撃――!』
[超高空に陣取った青い機体の姿が、また別の映像スクリーンでアップになった。空域を俯瞰するようなアングル。絞り込まれた強烈な光条が、ゴードンの赤い機体を直撃する]
『さあっ、これはどうだ!?』
―回想・格納庫・テイクオフ直前―
[着替えた姿は、機体と同じ様に2色のカラーリング。市販品だが、ナノチューブで編まれたそれの強度は折り紙付。
2度3度、確認するように操縦桿を動かして、ペダルを踏み込む。同調して核の駆動音が小さく聞こえる。]
『――さて、そろそろ開始だ。
俺が出来る事は全てやった心算だ、後は嬢ちゃん次第って奴だナ。』
[おっちゃんがくく、と低い声で愉快そうに笑う。
それも、良くある一幕。]
うん、大丈夫、心配要らない。
『ま、何時もの様に飛んで来な。』
――判ったよ。おっちゃん。
[流石に、緊張が強い、様々な競技やレースには出てきたが。一大イベント出場は、殆ど始めての様な物なのだから。何も考えるまいとヘッドギアを被る。]
『負けねぇよ、俺が組んだ機体がよ――』
最大戦速、SRF0050後期型 サンダーエース。
――発進、します!
[今この瞬間は、華やかなファンファーレも、高らかなアナウンスも聞こえない。
ただただ、機体の駆動音のみの世界――]
GO A HEAD !!
[鮮やかな橙色の機体が、矢の様に上空に、飛び出した。]
――中央エリア/高空>>23――
[真紅の機体の背面に浮かんだ曼荼羅が、回転を始めると共に輝きを増していく。ゴードンが両腕を広げ、彼の機も同じ動作。両拳を前面で合わせると、その前方に直径3mほどの黄金色をした光球が生まれた]
『勇気があるなら受けてみろ!
曼荼羅型ソッキオから全力供給、“ノウマクサマン弾”!』
[他機の密集した部分を探すようにぐるりと見回し、ゴードンは東側から襲い来る密集弾に気づく。機体を捻り、その先にある黒い全翼機へと両拳を開いた]
『いいぜぇっ、こいつで掻き消してやる!
力比べだっっ!!』
[ゴードンの声と共に、二つの光の流れが空中で*激突した*]
― 格納庫 ―
[全競技者機が出払い、格納庫はすっかり閑散としてしまった。]
[敗れた(そして生還した)機体を迎えるために、まだいくらかの作業は行われてはいたが、それもすぐに完了してしまうだろう。]
あー、見送る、ってのは慣れねえな。
なんだこの気分は。
[焦燥か、寂しさか、それらしい言葉を探してみる。]
[が、捉え所のない感情はロックオンを許さない。]
帰還してもすぐ再出撃だったからな。
基地に残していった奴らは、いつもどんな気分で待ってたんだろうねえ。
[もやもやを撃ち落とそうとでも言うのか、オメガは歳を感じさせない身のこなしでコックピットに乗り移った。]
― 格納庫・Firebird機内 ―
観戦サービス、こちら観戦者BF。コールサインはオメガ。
全域レーダーとのデータリンクを要請する。
<<こちら観戦サービスセントラル。ただいま認証中。>>
<<データリンクを承認しました。ご利用ありがとうございます。>>
[レーダーモニタに、外部観戦者向けに公開されている全域レーダーが映し出される。
同時に、多目的メインモニタに場内の中継映像も表示される。]
ひゅう、さすがに多いな。
上も下もBFだらけだ。
あの作戦ほどじゃないが、弾幕は微塵も負けてねえ。
[あの作戦――先刻シミュレータで体験した空戦――を引き合いにその様子を見守る。]
さて……この戦いの英雄は一体誰だ?
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