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帰宅部 テレサ は バスケ部 アヤメ に投票した。
演劇部・新米 ヒカリ は 料理研究部 ほのか に投票した。
声楽部員 マレーネ は 料理研究部 ほのか に投票した。
バスケ部 アヤメ は 声楽部員 マレーネ に投票した。
弓道部 ミユキ は 帰宅部 テレサ に投票した。
園芸部 ラヴィニア は 風紀委員 プルネラ に投票した。
料理研究部 ほのか は 声楽部員 マレーネ に投票した。
風紀委員 プルネラ は 音楽部 セリナ に投票した。
音楽部 セリナ は 料理研究部 ほのか に投票した。
生徒会 ユリウス は 料理研究部 ほのか に投票した。
料理研究部 ほのか は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、風紀委員 プルネラ が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、帰宅部 テレサ、演劇部・新米 ヒカリ、声楽部員 マレーネ、バスケ部 アヤメ、弓道部 ミユキ、園芸部 ラヴィニア、音楽部 セリナ、生徒会 ユリウス の 8 名。
『君が私を嫌うはずがないから、
私は君を嫌うはずがないさ。』
[自分の部屋の中で、ひとり。セリナはそんな言葉を思い出していた。
今度は間違いなく、鍵をしっかりとかけて、閉じこもる。]
私は、君を、嫌うはずが、ないさ……。
[唇に乗せて、呟いてみる。ぽとりと涙が零れ落ちた。]
もう、ユリウスさまは、結果をご覧になったかしら…。
ふふ、ふ、ふふ……。
[自嘲気味に笑う。
今にも、あの特徴のある足音が、聞こえてくるような気がした。
涙はひたすらに流れ、視界は果てなく*歪んでいった。*]
[...は貼りだされた投票先の結果をみて、ほのかが退寮したことを知った。]
昨日最後まで投票先で悩んでいたのがほのかとアヤメの二人。
悩んだ結果、アヤメの周囲と関わりがほのかに比べて少ないのは男だとバレるのを恐れたからだと思い、最後の判断でアヤメに票を入れた。
そして退寮したのはほのかだった。
談話室に男に襲われずにラヴィニアが無事でいることに深く安心をし、自分もまた襲われなかったことに安堵した。
寮内放送――
「みな心苦しい決断をしてくれてありがとう。投票の結果、高等部のほのかさんが一時退寮の手続きを取る事になりました。
そして悲しい知らせがもう一つあります。高等部のプルネラさんがどうやら襲われたもようです。
このような事を繰り返すわけにはいきません。あなた方の中に進入している男を見つけ出し、一刻も早く平和な女子寮を取り戻りましょう。
今日も投票をお願いします」
[...は投票先の掲示を見て、頭がぐらぐらしていた。
まずはほのかが退寮していることに驚いた。自分も疑っていたが、投票はしていなかったのに……。
さらに驚いたのは。
ミユキさまがテレサさまに投票している。
どちらも固く信じている存在なのに。何故……。彼女の頭の中は、疑問で埋められていた。]
ラヴィニアさんが無事でほんとうに良かった。。。
テレサ、今日もしカスミさんに続いてラヴィニアさんまでいなくなったら。。。ってすごい不安だったけど。ほんとうに無事でよかった。
でも、でも、プルネラさんが襲われちゃったなんて。。。セリナさんは。。。セリナさんは。。。
[...声を失って立ち尽くしているラヴィニアを元気つけられるようにと軽く抱擁し、プルネラが襲われたショックで談話室を後にした。]
プルネラさんが襲われた、ですって?じゃあ、セリナは――?
いえ、それよりも。
私がテレサに投票・・・何かの間違いでしょう?だって、私。「今日は投票してない」よ?正確に言えば、投票を忘れてたの。
昨日の昼頃から夜にかけてはラヴィとずっと一緒だったし、朝からは談話室で話して・・・それに、ついさっきまで居眠りしちゃってた。
誰かに、偽造されたとしか・・・。
[靴音は無かった。
不気味なくらい、落ち着いていた。
表情も無かった。
落ち着きすぎていた。]
[「セリナ」の部屋の扉がノックされる。]
セリナ。
これを開けろ。
[少し経って、涙が零れたことに気付く。]
……ごめんなさいまし、と、取り乱して。
少し、部屋で落ちついて来ますわ。
[弱弱しく笑い、くるりと踵を返して部屋へと戻った**]
[いつものように、靴音を立てて、大声を上げながらやってくる…。
そう思っていた。
だから、突然のノックと声に、飛び上がるほど驚いた。]
……。
[逃げるわけには、いかない。こうなることは分かっていたから。]
………。
ユリウスさま…。
[でも、その名前を口にすると、決心が崩れかけた。]
[強いノック。静かだけれど、強い口調。…いっそ、殴ってくれたほうが、いい…。]
……。ちょっと、待ってください…。
[でも、向き合うべきだ。
セリナは立ち上がると、まずは顔を洗おうと洗面室に…行こうとして、サイドテーブルの足に躓いて大きな音を立てて転んだ。]
……っ……。
こんな時にまで、私ったら…。
[あまりの情けなさに、もうどうでも良くなってきた。
とりあえず顔を洗ってさっぱりすると、引き出しの中から、鈍い金属…鍵…を、取り出して握り締めた。]
[扉を開け、ユリウスを招き入れる。簡易な服装のセリナは、憔悴しているもののいつもと同じように見えるだろう。ただ一点を除いて。…胸が、ない。
セリナは、ユリウスが何かを言うよりも早く、手の中の鍵を差し出して…渡した。]
……勝手にお借りしました、寮内のマスターキーです。
先ほど、プルネラさまの部屋に入るために、使用しました。
[その意味するところは、説明するまでもない。努めて事務的な口調で、報告をした。]
[開かれた扉。招き入れられるまでも無く、足を踏み入れる。
セリナと向き合い、見下ろす。
その顔色は、蒼白。
そして、セリナが見るときいつも微笑か、憤りの表情をしていた顔。それは、今まで見たことがないくらい、なにも無かった。
黙って鍵を受け取った。]
セリナ。
いや。
君は、誰だ?
私は、良い隠れ蓑だったか?
[この人が向き合った相手が別の悪人か、気に食わぬ者なら、冷静な言葉どころか、既に首を掴んで床にかなぐり捨てていただろう。
そう容易に想像できる。]
[今の心は疲弊した水風船だった。
つつけば、感情がとめどなく流れ出すだろう。]
[ユリウスに見下ろされ、セリナは見上げた。視線が合う。]
…快活で、大胆で、自信に溢れて、優しくて、…ちょっとだけ、意地悪で…。
そんなユリウスさまが、大好きです…。
[驚くくらいに、するりと言葉が出た。やはり、好きだ。
でも自分の犯した罪は大きい。これからは、このユリウスからの軽蔑と罵倒とを背負って、一生を生きるのだ。]
でも、ユリウスさまがこんなお顔をされるようなことをしたのは、間違いなく私です。
好いていると言われるのも、不愉快でしょう。
…どうか、お殴りください。
気の済むまで……。
もう、二度と会うこともないでしょう…。
[静かに、言葉を紡ぐ。覚悟を決めた表情で。]
!! ……
…… …………。
[突然滔々と述べられた言葉。それを聞けば、冷たく凍った表情から、眉が僅かに動き、目は少しだけ見開かれた。]
……ッ!!
[セリナの首もと。服を、ひっつかんだ。しかしそれは、一歩くらい相手をこちらに引き寄せたに過ぎなかった。]
[表情に生が…、怒りと戸惑いの混ざった表情が浮かぶ。顔を近づけた。]
もし君が、『男』だと私だけが知ってしまった時。
私は、君の正体を隠して、逃がしてやろうと考えていた。
しかし。
…君は、行為に及んだ。
それも、誰にも明らかな……
どうか教えてくれ。
なぜ、心を抑えつけてまで……
[言葉が途切れる。
セリナの目を覗き込みながら、初めて、心から悲しそうな目をした。]
[わずかに見開かれた目を合図に、セリナは歯を食いしばり、目を閉じた。
しかしやってきたのは衝動ではなく。引き寄せられてよろめき、ユリウスの身体に手をつく。]
あっ…。
[胸に触ってしまい、慌てて手を引いた。]
も、申し訳、ありません…。
……ユリウスさま、お優しすぎます…。逃がす、だなんて。そんな…。
[また涙が出そうになるのを、必死でこらえる。]
…私は、セリナです。最初からずっとセリナでした。
……戸籍も、女になっています……。
[本当は話すつもりはなかった。しかし、ユリウスの悲しい瞳には逆らえなかった。]
私は母の死と引き換えに生まれ、母を溺愛していた父は、私を最初から女として育てました。母は女の子を欲していたからです…。
やがて成長するにつれ、私は写真で見る母と、瓜二つの姿になってきました。父は…そんな私に特殊加工を施した付け胸までつけさせて、亡き母の服を着せて。
私は負い目を感じ、父の命令に逆らえませんでした。
しかし…やがて父は、母の願いの「娘のウエディング姿」まで望むようになりました。…父は、自分の言いなりになる男性を選び、結婚を…させると…。
[ひとつ、息をついた。]
私は、さすがにそれは、嫌でした。何もかもが女だとしても、本当は男なのです。
生まれて初めて、父に逆らいました。
そんな私に、父は言いました。「お前は男として、女が抱けるのか?」と。
そして、ここでそれを証明すれば…結婚を取りやめ、男としての生活に戻してやると。
間違っていることは、分かります。
自分のために他人を踏みにじる。でも、私には、これしかなかった。他の方法は、思い浮かばなかった。そう、育てられてきたから…。
もっと早く、ユリウスさまにお会いしたかった…。
[こらえていた涙が、ぽろりと落ちた。]
[そして、結果が放送で発表されると]
『そんな』
[ほのかが退寮したことには、肩で息をついた。
しかしプルネラが襲撃されると聞くと、顔を青ざめさせた。
昼前の弁明を聞いて、セリナの方を信じていたから]
『それじゃあ、いま、セリナの部屋には』
[そう書いた直後、開け放たれた扉からユリウスの姿を見かけた。
ひどく落ち着いた足取りで、談話室を通り過ぎる]
――……
[おそらくセリナの部屋に行くのであろう。
皆で固まって行くべきだ、と提案した方がいいことは分かっていた。
それでも、あんな冷めた無表情をしているユリウスを止められるとは、思えなかった。
ついていっても、追い出されるだけだろう]
[ため息をつくと、テーブルを見やる。
昨晩セリナとユリウスが談笑していたその場所は、ひどく寂しく見えた。
しばらく見つめた後そっと立ち上がると、いずれは戻ってくるであろう彼女のために、温かいコーヒーを準備しに行った*]
[触れて謝る相手に、別に引き離そうとする様子も無かった。]
何故、謝るんだ。
今まで平気、だった、のに。
[聞こえるか聞こえないか、くらいの、小さな声で。]
[黙って、その話を聞いていた。
ただ黙って聞いていて、
聞き終えた頃には初めて、目から一筋の涙をこぼした。]
君は。
今日の投票で、退寮になる。
……そう、されてから、
[一拍置く。]
過去を消せ。
過去を消して生きろ。
『正常なもの』として……
[そう、言って、]
そして私の事を忘れろ。
絶対に思い出してはいけない。
この事件まで、思い出すから。
なぜって…なぜって!
私は、男です!今までは、ユリウスさまは女同士として、私を見てらしたはずです。
でも私は、男なのです。男、なのです。
身体の中には、欲望で一杯なのです。
ユリウスさまに触れたい。
ユリウスさまを抱きしめたい。
ユリウスさまを抱きしめて、そして、全部を自分のものにしたい。
そんな、そんな人間が…私なのです……。
[叫ぶようにして、ユリウスに言い募った。]
しかも、そのために、犠牲を出しました…。
……ユリウスさま、それは、罰ですか?
ユリウスさまを忘れることは、私に下される罰ですか?
私はユリウスさまを忘れたら、踏みにじった人の心を忘れたら、正常なものとしては生きてはいけません。
残るのは、異形と化した、欲望の塊だけです…。
[きつく唇を噛み、ユリウスをしっかりと見つめた。]
[静かに涙を流しながら、声を高くするセリナの言葉を聞いていた。
圧倒されていたわけではない。
ただその胸に、締め付けられる思いを感じていた。]
… …。
[思いとともに、何か言おうとした。その言葉は口の先まで出たが、しかし躊躇って、口から出すことは保留された。]
罰なんかじゃない。
ただ、セリナ、お前は……
この事件の記憶を持ちながら、その後、一人の『男』として…
一人の『女』を真心から愛せるのか?…
…ただひたすらに愛することだけならできます。
分からなかったたくさんのこと…今回、大きな犠牲を払って、私はやっと分かったのです。
でも、恋愛とは、互いに向き合ってこそ…。
それは、こんな私に向き合い、同じものを背負わせることです。
[軽く俯いて、言葉を切る。心を落ち着ける時間をしばしとって。]
…ユリウスさま。
昨日は、私との約束を破りましたね…?
絶対に私を守ってはだめだと、あんなに強くお願いしたのに。
私は、約束を破る人は、嫌いです。
[微笑みながら、ユリウスに、そう告げた。]
………そうか。
[『彼』の言葉を聞き終えた。
何も言葉が思い浮かばなかった。
ただそれだけ呟いてから。]
[「君が私を嫌うはずがないから、」………
………]
[踵を返した。
『彼』へ背を向けて、立ち止まって言う。]
今晩、一人で、私の部屋へ来い。
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