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次の日の朝、忍神町の住人 葛城 恭子(42) が無残な姿で発見された。
【Interlude:CASE-Kyoko U】
[はっ、と恭子は意識を取り戻した。
自宅を出てから数分ほど歩いた場所にある公園で、ベンチに座ったまま寝ていたようだ。
どれ程の時間が経過したのか。空を見上げ、太陽の位置を確認しようとした。]
あ・・・・・
[頭上に地表が見える。
それをようやく彼女は認識し、そして意識してしまった]
いやああああああああああ
[恭子は買い物かごを捨て、あさっての方向へと走り出した。
やがて彼女は、この忍神町の地平線へとたどり着き、そして消える事になる]
現在の生存者は、アサシン シェムハザ、リリン リリーリンリン、セイバー 足利尊氏、赤竜パピー (羽鐘辰)、鴻 みちる、バーサーカー ヘイズレク、キャスター メルカトル、アルフレート ローヴァイン、ランサー ディオメデス、兄里ケイ、妹尾柊、アーチャー ミケランジェロ、「管理人」 鳴木素子、アヴェンジャー かぐや姫、望月 玲、トゥルバドール クレティアン、ブライジンガー 諒 の 17 名。
―中央ブロック―
[キャスターとは別れ、車の方へ戻り近くの定食屋へと入った。
食事をとって神社に戻ったのはその後。
大丈夫だとは言っていたが、未だ魔力が流れていく感覚に、慣れない。
それもあってか、中へ入ると倒れ込むようにケイは眠ってしまっていた]
……朝?
[差し込むひかりが明るいと気づいてケイは目を覚ました。
神社の手水舎で水をくむと、その裏手で身体を拭き始める。
背中の傷が痛むのは、傷ついた組織が5年経ってもまだ癒えていないせいかもしれない]
―南ブロック・ホテル―
[激しく咳き込む感触を覚えて、パピーは目を覚ます。
流動的に動くとは言え、金属のかたまりであるパピーに咳き込むような器官は無い。
これは辰の感触だ。]
……なあ、辰、快適な目覚めをしたのって、どのくらい前の事だったかな。
[もう随分昔な気がする。
記憶にはあるが、おそらくパピーが生み出される以前の事なのだろう。
今の辰の目覚めは、咳や体の痛みをともなうものばかりだった。]
[身を起こすとバックのふたが開き、ヘイズレクの姿が目に入った。
自分が発した昨夜の問いかけと、彼の反応を思い出し、しばし物思いにふける。]
ぼんやりしている場合じゃねぇな。
もう一度、妹尾のくれたメモに目を通しておくか。
[そうつぶやいて、バックの中のメモをくわえると、外へと這い出した。]
――昨晩/2F 廃墟ビル街――
………広いな。
[空虚の街。朽ちたコンクリートジャングルを見上げて呟く。
忍神町の一角。柊の家のある森林公園や教会、川など付近一帯を含めたのと同等くらいはあるだろうか。全く如何なる術を持って造られたのか、大掛かりなものである。]
ふむ。
[遠くで魔力のぶつかりあう気配を感じ、柊と顔を見合わせる。幸いなことに戦闘区域とは離れた場所にやってこれたようだ。戦闘はほどなくして終わったのか、それらしき気配はすぐに落ち着いた。様子を見に行きたくもあったがまずはと鉄ノミと金槌を取り出した。]
脆いな。
[崩れた落ちたビルのひとつに寄り、その壁に触れる。コンクリートは大理石と比べあまりにも質が悪く、自分が「石の声」と呼んでいるものが聞こえるようには思えなかった。]
贅沢をいうものでも、ないか。
[柊には、安全な場所で休んでいるよう言ってある。危険かも知れないがここで夜を明かそうと思ったからだ。
柱状に残されたビルの残骸にノミを当て、金槌を振るう。これまでに二度ほど彫刻を試みているが生前とは比べられぬほどその速度は速い。コンクリートの柱は瞬く間に削り彫られ、武器を振るう古代の戦士の姿へと変わっていく。]
こんなものか。
[自身の腕前を確認するように頷く。出来に納得はしたが満足はしていないのか、また別の柱を探すとノミを振るう。カツンカツンという音が夜の廃墟に響き続ける。]
[何体の兵士像を彫った後だろうか。]
――よし、そろそろいいだろう。
[本番だといって一度ぐるんと右腕を振り回す。ひときわ大きく形を残していた柱に彫ろうとしているのは、先日に刃を合わせた槍を持った英雄の姿だった。]
重く、頑丈で、逞しく。
[粗忽なコンクリートの中より、自分の見立てたギリシアの英雄の筋肉を彫り出していく。がっしりと、どっしりと、半裸で槍を振り上げる英雄像が形を現していく。それは粗いコンクリートにも関わらず血が流れているのかという脈動感のある肌を描き出した。
――が、自分の見たとおりに彫り上がりつつある彫刻に対し首を振る。]
…違うな。
[実際に槍を振るったあの英雄の動きは到底この筋肉から発せられるものではないと。彫り上げ創り上げた部分に更にノミを当て削りを入れる。あの筋肉はもっとしなやかで、強かで、荒ぶったものだとより魂を込めて金槌を振るった。]
[そうして出来上がった像は、トロイアの英雄の姿にどれだけ近づいただろうか。]
やはり、一度全裸になってもらわねばな。
[まだ満足はいかぬと真顔で呟いたのは、視界の隅に太陽が昇り始めた頃だった。
柊はちゃんと休めただろうか。こんな廃墟で一晩を明かすと提案した事を申し訳なく思いつつ、眠る主の横に腰を下ろした。**]
―南ブロック・ホテル―
うん、何だ?辰?
このランサーのマスターが気になるのか?
……そんな、ごまかされても、俺ってお前の一部なんですけど。
無駄だって、どうして解んないかなあ。
自信家で尊大で根源を目指す魔術師かあ。
まさに、魔術師の中の魔術師。
ザ・魔術師って感じだ。
おそらく体だって健康体だろ、これは。
辰の憧れる魔術師像ってこう言うのだもんな。
[遺伝なのか、あるいは呪いなのかわからないが、羽鐘の家に生まれた者には、病弱さがつきまとってきた。
よって研究する魔術の全てが、寿命の維持や不自由な体の補完にあてられる。
そのため、根源の探求といった、純粋な魔術研究からは離れがちなのだ。]
確か俺も、病弱さと無縁な金属に個人の意識や記憶と共に魔術刻印を植えつけるって研究から生まれたんだっけっか。
無茶するよなあ。
[ともあれ、そちらは失敗に終わり、金属と個人の意識を接続する方法だけが残った。
個人が死ねば、金属の意識もまた消えるため、家系の維持と言う点では意味を成さない。]
まあ、失敗から生まれたものでも使いようはあるってとこ見せてやるよ。
[パピーはそう言って、*胸を張った。*]
― 1F北・オフィス街(ホテル屋上) ―
[――陽が昇れど、街が目を覚まし始めるのは遅かった。
それは俯瞰していても気付かない程の、僅かな誤差。
しかして確実に、『彼ら』が夢より戻る時刻は遅くなっている。]
リリンのサーヴァント。アーチャー。
魅了のサーヴァント。束ねし者。
[呟くごとに、邂逅した区画の方角に視線を移す。
教会区が在る西区。
公園がある南区。
豪勢なホテルが佇む中央区。
最後に空を見上げて、ランサーは腕を組んだ。]
[昨夜からアルフレートはよく眠っていた。
魔術の行使、宝具の使用。多くの負担が積み重なったのだろうか。
ランサーは起こさず、静かに屋上で見張りについている。]
……………………ふむ。
未だアサシンらしき者と邂逅していないのは気になるが。
[聖杯戦争。それは七騎の英霊を繰る魔術師の戦い。
対して、ランサーが出会った英霊は4体。自身を入れ5体。
見張りとして立つランサーが警戒すべきは、払暁奇襲のような奇手を取る可能性のある暗殺者に他ならない。――が、リリンのサーヴァントはアサシンと呼ぶには聊か堂々としており、アーチャーは多少の疑問の余地は残るがアーチャーであり、魅了のサーヴァントは潜むとするには華やかであり、束ねし者は騎士である。]
――――よし。分からん。
クラスだの真名だのと悩んでも仕方あるまい。
向かってくる者を刺せば良い話だ。
[ランサーは思考を放棄し、覇気の薄い景色を*眺め始めた。*]
―夜更け:廃墟よりの撤退―
[ランスロを護衛に廃墟より戻りて後、
「仔猫はお気に召しましたか?」
という吟遊詩人の問いに、主は妖しく微笑んだ。
空間の断裂、面の展開。仔猫の爪とぎとは侮れない――とのこと。興が乗ればヤってしまっても愉しそう、なんて、不穏な唇。
さりとて夜も深い。
吟遊詩人の宝具のひとつ、
その真名を解放した故に魔力の消費も大きく、
主は食事もそこそこに回復を優先して眠りにつくことになる。
クレティアンもまた休息せねばならない。
編みあげた騎士が受けたダメージは語り部にそのまま伝わるのだから。主が休んだ後密やかにわき腹の傷を撫で、漸く痛みに眉を寄せていた。]
―早朝 1F:中央区 高級ホテルバルコニー―
[時は過ぎる。
金色の髪を夜明け前の風に遊ばせながら、
吟遊詩人はリュートを爪弾いていた。
眠る時間が惜しいことだと思っていた人間時代
今こうして眠る必要もなく
「聖杯戦争」という奇跡の場に仮初のクラスではなく詩人《トゥルバドール》として在れる悦びよ。無論、傷をいやすことは必要だが。]
……しかし、なぜ?
[詩人のクラスを引き寄せるには万全の準備や適性、他のクラスとの兼ね合いなどの条件が必要だ。けれど、今の主に呼び出された時、触媒もなければ彼女が歌う者というわけでもなく。]
[或いは戦争の舞台事態に
何らかの要因があるのか。
さかしまの塔――異変に気づかぬ風の住人達のいるこの場所に。地に向かって伸びる塔の扉は英霊の魂を捧げるたびに開くと謂う――聖杯の知識。]
……―― まあ、今はいいさ。
[歌えるなら。
物語を求められるのなら。
多くは追及しまい――と、餓える吟遊詩人は思うのだ。
瞼の裏に焼き付いたシリウスの蒼。
閃く白刃を持つ和国の剣士。
貴人然とした傾国の姫。
それから、未だ出会わぬままの英雄たち。
甘露を求めて
渇く咽喉を指で辿る。]
…… まるで 太陽が落ちてゆくようだ
[白んでいく空はさかしまだ。
夜明けの歌(aubade)を、くちずさむ**]
―回想― 2F・廃墟ビル街―
[コンクリートの廃墟だけが立ち並ぶ…飛び込んだ先は真っ暗の中にぼんやりと浮かぶ死んだ世界
遙か先にだが大きな魔力がぶつかり合う気配を感じ、親方の袖口を強く掴んだ。
程なくして、静寂の世界が訪れた…]
ちょっとだけ、怖い…ね。
[親方は興味深げにあちこち散策していたようだが、なにやら呟くと作業を始めたようだ。]
―回想― 2F・廃墟ビル街―
[ここで一晩過ごしたいと言う親方の希望に、僕は一度家に帰って支度をしたいと…移動は何のことはなく簡単だった。
下の家の方向に向かって一歩…夜明かし用の寝袋と食料、簡易ストーブを大型のリュックに詰め込んだ。
頭の中で、先ほどの廃墟の場所をイメージして一歩…
思ったよりも簡単だった。]
―回想― 2F・廃墟ビル街―
[寝袋があったとはいえ、下は固く冷えるコンクリート…
寒さと体の痛みに耐えながらも、
親方の軽快なノミ打つ音を子守歌に微睡んでゆく…]
―2F・廃墟ビル街―
[それは、目が覚めた途端に襲ってきた ]
……―――っ、あったま痛ーーい!!
[酷い頭痛に寒気…完璧に風邪を引いてしまったようだ…
全く自分で自分が情けない。
親方が心配そうに覗き混む顔も朧気に…僕は再び眠りに落ちた**]
―回想 2F廃墟―
引くしかないようだな。
[魔術の連続行使による自身の若干の消耗。
そしてサーヴァントの戦闘による消耗。
新たなる来訪者の気配。
総ての要素がから撤退が是と判断した。]
ふむ、相手も同じ考えか。
[>>12 騎士を護衛に引き始める相手の姿があった。
ならばと自身も遠慮なく撤退する事とした。]
―北ブロック・拠点―
私は少し休息を取る。
貴様も程々に体を休めておけ。
勝手に宝具を開放しおってこの戯けが。
必要なときに撃てぬ事態となったらどうするつもりだ。
この失態、貴様自身の働きで挽回してみせよ。
さもなくば、貴様に未来は無いぞ。
[令呪を見せ付けて断固たる姿勢を見せる。
そして一旦休息をとるために拠点の奥の居室へと向かった**]
ー回想/南ブロック、古びた洋館ー
[暫くは布団虫になっていた。
それはどれくらい時間が経ったのか。
寝返りをうったところでもぞりとひとつ大きく動く。
体の下に何か、硬いものを巻き込んだ痛みで目が覚めたらしい。
小さくうめいていると青い鳥が枕元におりてきた]
…チルチル?
[目の前にいるので、巻き込んだものがチルチルでないことはわかる。
いつの間にか首にかかっていたものに気づいて細さをたどり小さな立体に気づく。
月の灯に照らして、初めて見るそれで何かを計るかのよう]
…なにかなぁ…。
[キャスターをうっかり喚び出してしまった時に回していたアンティークににていた。
掌の上にのせて、下から覗き込んだり、上から眺めたり]
[キャスターをうっかり喚び出してしまった時に回していたアンティークににていた。
掌の上にのせて、下から覗き込んだり、上から眺めたり]
…おじさん、かなあ。
[まだ眠気と戦う子供はうつうつとしながら周りを見渡す。
時計を眺め、何だか遅い時間になっていたからその塊を手の中にぎゅーっと握ってまた布団の中に潜り込んだ。
明日の朝になったら聞いてみよう。
そんなことを考えながら**]
― 回想 南・住宅街 洋館近く ―
巡り合わせは時に残酷ですね。
[お互いがサーヴァントである以上、戦う運命なのを告げられる。>>1:573
一歩、二歩、本能的に足が後退する。]
…、マスター、…
[突然の実体化の事を告げられ、ふと、我に返る間。
三歩、下がった時、魔力が徐々に戻って来るような感覚がした。
ぱん、と身体の内で何かが爆ぜる感覚と共に、
向けられていた魅了の効果が徐々に薄れていくのが解った。]
―――… 取り乱してすみませんでした。
[かぐやの方ばかり見ていたので、兄里の方にも視線を向けて。
>>1:584兄里から戦わない事を告げられれば、安堵するけれど、
令呪、と言う単語が出れば、先刻のセイバーとの戦闘において
感じていたサーヴァントの気配は、目の前の美女だったと知る。
首の後ろに手を回す兄里を眼鏡の奥の瞳は捉えたが、何も言わず、]
見逃してくれて、感謝致します。
今度は私のマスターと共に…お会いしましょう。
[頭を下げれば、再び霊体化してその場から*消えた。*]
― 朝 南・古びた洋館にて ―
[洋館に戻ってもみちるはまだ眠っていた。
もう夜更けだ、朝まで寝かせようと自分もソファに横になり目を閉じた。
朝、目が覚めたのは、じゃが芋の香ばしい香りが鼻に届いた頃。
ちゃんと起きて、みちる専用の台にのぼって朝ご飯を作っていた。]
おはようございます、みちる。
身体や目はもう大丈夫ですか?
[マスターの体調を確認して、出来上がった朝食をテーブルに運ぶ。
今朝は、海老入のスクランブルエッグとプチトマト、ブロッコリーと人参のマリネ、豆のスープ、そしてジャガバターが机の上に並ぶ。じゃが芋は好物らしく、眼鏡の奥の瞳が未来てどこか嬉しそうな顔だ。
みちるの前の席に座り、食前の祈りを捧げれば、とりあえず芋を食べた。もうひとつ食べた。もうひとつ、と手を伸ばしたあたりで、みちるに「おいしい?」と聞かれたので、笑顔で肯定した。「よかったー。」とみちるの笑顔も返ってきたので、芋のなくなる速度だけは異常だった。]
…あ。
今日こそ、手袋を買いに行きましょう。
――…まあ、だいぶ今更かもしれませんが。
[親方に手をみられただけで何か気付かれただけではなく、既に自身がキャスターのサーヴァントであるという事が何組かには知られている現状。自分の知らない場所で既に情報が廻り廻っている事までは知らないが。]
寝ている間に、みちるにプレゼントをしたの気付きましたか?
[食事も終盤の頃、スープの皿を置いた。
みちるの首に下がったアストロノミカルリングへ視線を向けてから、ミチルの顔を見る。
そして、それがどのようなものなのかを伝えれば、指先を口元に添えて、二人だけの秘密ですよ、と言った。
―― 食事を終えれば、手袋を買う為に商店街へ向かう。
すれ違う人達を見ると、素子からの言葉を思い出し目許が僅かに嶮しくなった。**]
−深夜/南ブロック・住宅街の片隅−
この作業は慣れないな。あまり後味のいいものじゃあない。
[眼前には女性の骸。
彼女はこの塔の中という世界にある矛盾を理解してしまった。
その結果発狂し、この世界の終端を探していた。
殺すまでは一瞬だった。
ただ、その腕を前面に突き出して、魔弾を放ったのみ。
それで彼女の体には穴が空いた。]
[だが、作業はこれで終わりではない。
彼女はもはや螺旋の外側にいる。
今回の聖杯戦争が望むべき結果に達せず、また繰り返すことになれば彼女はただの不穏分子でしかない。
もはや、この螺旋の中にはあってはならないものであった]
・・・・・・・さようなら。残念だよ。
[その骸は、地面に埋もれていく。
そのまま地面に沈んでゆき、骸は塔の外へと排出された。
骸は、そのまま宙からクレーターへと自然落下を始めたが、その時間の流れの差に耐えられず。
そのまま風化し、灰となって大気に溶けた]
このまま同じ時を過ごしてくれていれば、こんな目には会わなかったのに。
[ふう、とため息をつき、彼はまた夜空へと羽ばたいた*]
― 1F北・オフィス街(ホテル) ―
マスター。
この街の長の宮殿はどこにありましょうか。
[開口一番。
扉を勢いよく開きながらランサーは告げた。
あまりの負荷に、蝶番はそれでも我が意地を見せ付けんと急激に撓みを見せたが、努力虚しく硬質な破壊音と共に扉ごと吹き飛んでしまう。巻き込まれたインテリアが幾らか破壊された。
どんがらがっしゃん。]
―朝:中央区 高級ホテル―
[朝食は当然のようにルームサービスである。
主の望むままのメニューが供されるのは、
ひとえに彼女の魔術と吟遊詩人の歌めいた囁きに依るものだ]
レイ様、――灰色の君、
彼が何者かにお心当たりは?
[主は自身の美意識にかなうもの以外への興味は薄いようだが、一応形として尋ねてみる。彼が魅せた蒼炎に「アテナ」の名を聞いていたのだろう、「ギリシアの英雄でしょうね」と素っ気なくも聞こえる答えがあった。]
……ギリシア――、
嗚呼、…遠き神代には
大いなる英雄が数多存在したと聞いた事があります。
[――だが詩人の知識だけではその程度だ。
何ゆえかケルト伝承への造詣は深いが
ギリシア文学については世相もあって少々疎い。
西ヨーロッパへのギリシャ古典の本格的流入は東ローマ帝国の滅亡後。それはやがて文芸復興《ルネッサンス》を引き起こす大きなうねりの一つとなるのだが、その頃には人間としてのクレティアンは、とうに命尽きて数百年。
――古き神代の物語。
この時代の本を読めば、分かるだろうか。]
では、剣の英霊は?
“たいがどらま”…?、と仰っていましたが。
[日本人には常識でも
吟遊詩人にはピンとこない。
さりとて望月玲も、彼が何者かを特定できるほどの情報をあの戦いで得たわけではないのだ。何せ見事な引き際だったので。]
[傾国の少女についても同様だ。
日本人のようだし、古めかしいから紫式部とか?などと言われても知識がない故考え込むばかり。
物語を求める詩人、
餓えを癒すために奇跡を望み。]
レイ様、この後はいかがしますか。
できれば、街の探索をお許しいただければ。
[そうね、と主は鷹揚に答えた。
控えるランスロが、己と語り部の女運について思いを馳せていたのは密かな秘密の話だが**]
―南ブロック・ホテル―
さてと、俺の見た武人と吟遊詩人、妹尾たち、妹尾の見た槍使い、そして女の子つきのメガネ。
それに俺たちを含め6騎、情報が無いのは1騎のみって事でよいのかね?
うーん、聖杯戦争って普通は7騎で行われるものだとは思うが、異常な塔が出てくるくらいだから、何が起こっていても不思議は無いか……。
[パピーは独り言なのか、ヘイズレクに問いかけてるのか傍目には判断つかない調子で喋っている。
この手の口に出しての整理は、パピーの癖でもあった。]
……辰、メガネと女の子って聞いて、まず思い浮かべるのが「レオン」って……お前、単純すぎないか?
まあ、メガネのサーヴァントが、ジョン・ウェインの物真似してたら笑うけどな。
[そう言いつつ、部屋に備え付けられている冷蔵庫へと向かう。]
[パピーは冷蔵庫のドアを開け、缶コーヒーや缶ジュースなどをかき出すと、両手と尻尾と口を使い、洗面台へと運んだ。
ある程度積み上げたところで、爪を刃物のように鋭く変形させ、次々と穴を開け始める。]
別に飯食ってる訳じゃねぇぞ、これはただの補給。
[そう言ってから、空っぽになった缶をがつがつと*食べ始めた。*]
― 1F北・オフィス街(ホテル)―
貴様、私の睡眠を邪魔するとは大した身分だな。
[目覚めは最悪なものだった。
ドアを破壊しながら入ってくる奴隷の声で起こされたから。]
何かと思えばこの街の長の宮殿だと?
知らぬな、お前の言う長が何を指すかは解らぬが、
政を司る場所魔では調べては折らぬ。
我々の戦争には関係がないからな。
関係ある部分での長というか管理役なら先日足を運んだ教会だ。
宗教的なものでいうなら西に寺院がある。
経済的に掌握している連中ならこの付近のビルのどこかだ。
私が把握しているのはその程度だ。
しかし、貴様何故その様な質問をしてきた。
私の眠りを妨げるからにはそれなりに理由があるのだろうな?
[不機嫌そうに理由を求める。]
ここ数日、街の様子を見てきましたが、この街はよくできている。
我が時代、我が都市では幾らかの職人が民に衣服を、食事を、住居をと提供し、それが常でありましたが、この街では一人の職人が行うものを複数の人間で行い、それぞれがそれぞれを補完しているのです。
我が領地も中々に繁栄させてきたものだと自負はありますが
この街の精巧さは群を抜いている。
果たしてこのような機構を実現させ、支配下に置いている
そんなこの街の王とはどのような人間で、
どのような手順で管理下に置いているのか知りたくなりましてな。
考えるよりも、直接対談するのが手っ取り早いであろうと。
[窓の外から街を一望する。
覇気が無いとは言え、今日も決められた時間に、決められた道筋を通り、決められた行動を繰り返す――まるで統率された軍隊のようだ。]
ううむ。しかしマスター殿も調べていないとなると
虱潰しに当たってみるしかありませんな。
阿呆、貴様の時代とは勝手が違う。
長に会いたいといって会える程都合が良くできていないのだ。
それに今の時代は一人の力で総てが出来るわけではない。
これまでの過程、それこそ貴様の時代を含めて総てを礎に作られている。
機構について説けるだけの知識を持つとは思えぬな。
気になるのであれば、大学にでも出向いて本を読む方が効率が良い。
少なくとも本だけは確実にあるだろうから虱潰しの手間は無い。
[己の従者の真意に沿っているかは解らぬが自分なりの回答を提示する。]
つまり戦のみならず
日々の労にも数の利を適用することを覚えたということですな。
偏った技術の伝播よりも、広く浅く技術の欠片を継承する――。
確かにそれならば、速く多くの人間に広めることができるだろう。
仮に幾らかの欠片が失われたとしても、損失は浅く復旧も早い。
ふうむ、――――……。
しかし、そうなると褒賞の数も足りないのでは……?
いや、そもそも王の直下ではなく、それぞれの技術を提供する者の下につけ、それぞれで管理させているのか……。
[暫し顎に手をやり、ランサーは考え込む。]
ああ、そういう事になる。
しかし、褒章については難しいところだな。
配下にいる人間から吸い上げて分配する訳だがうまく行っているとは言いがたい。
大学にいくのはかまわんが鎧はやめろ。
服だけにできるだろう?
魔力で編まれているだけなのだから。
[鎧で大学になど入れば目立ってしょうがない。
最悪、入り口で止められてしまう可能性すらありえるのだ。]
― 朝 南・古びた洋館 ―
[いつもの時間。目を覚ます。
大きく伸びをしてからベッドから降りようとして]
わっ
[布団ごと床の上に転がり落ちる。
ちょうど布団が音を吸って大きな音にはならなかったが
転がり落ちた布団の上で目を白黒させる。
天井とにらみ合う事少し、のそのそと起き上がってベッドを直し
身支度をいつもより少しゆっくり済ませて台所へと向かった。
ふあ、と、小さなあくびがひとつ。
チルチルの食事と水を取り替え、自分たちの食事の準備。
起床してきたキャスターの声にうなずいた]
おはよーおじさん、元気だよー。
[用意した食事の中で特に気に入ったらしいじゃが芋を食べる様子を見て
なんだかこちらまでうれしくなった子供はにこにこしながら朝食をとる。
問うてみればやはり好きなようで自分もじゃが芋をほおばりながら朝は過ぎていく]
[昨日とは違うパーカーを羽織り、ランドセルを背負う。
手袋と聞いて首を縦に振った]
てぶくろかうときに、未チルのてがきつねのてにならないかなぁ。
[にぎにぎと自分の手を握ったり開いたりしながら言う。
歩き出すと首に下げたものがふらふらゆれて存在をしめす。
こっそり聞いたことを思い出したのか、口元をにまにまさせながら]
どんなてぶくろにしようねぇ。
[手をつなごうと自分の手をさしだし、足は商店街へと向かいだした]
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