情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[メモ記入/メモ履歴] / 発言欄へ
次の日の朝、国王 オズワルド三世 が無残な姿で発見された。
次の日の朝、傭兵 ブレイク が無残な姿で発見された。
家庭教師 オーリ は立ち去りました。
咎人 アルヴィン は立ち去りました。
貿易商 ドアン は立ち去りました。
照坊主の下駄が、どこからともなく 捨て子 リリアーヌ の頭に飛んできました。
からんころ〜ん♪…明日は… 雨 かなぁ?
町中――いや、国中が静まり返っている。あなたたちは眠りにつく王や国民たちを見て、ようやく自分たちが置かれている状況を理解するでしょう。
この中に、《マザー・クロック》を盗んだ人間がいる。国民たちは、疑わしい者を排除するため、投票を行うことにしました。
無実の犠牲者が出るのも止むを得ない、この国が全滅するよりは。
《マザー・クロック》を取り返して、祭りを無事に成功させましょう。
現在の生存者は、死病診 エルス、新聞屋見習い アイリーン、貴族 サラ、手紙配達人 レーヴ、捨て子 リリアーヌ、代弁者 ルーツ、人嫌い ダズリー、蒸気機関技師 テルミット、薬師 ジュラム、少女 トッティ、箱入り娘 ヘンリエッタ、地主の娘 セレナ、貿易商 アーネスト、観測者 オブゼビオ、物書き ルクレース、浮浪者 グレゴリオ の 16 名。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*――――
リリアーヌは、夢を見ました。
それは、過去の再現。今から、二年前の夢でした。
「今日は『家族』でお出かけなの。貴方はお家でお留守番できますね?」
冷たい声がしました。リリアーヌはそんな声に顔を上げました。
「でも、お継母さま」
「何? その反抗的な目は。ちゃんと返事も出来ないなんて、キャンベル家の恥晒しだわ」
「ごめんなさい、お継母さま」
リリアーヌは顔を伏せました。「でも……」という言葉は再び出ることはありません。ぎゅっと飲み込んで、言えなかった言葉は胃の中に落ちてしまいます。
(でも、今日はリリーの誕生日なのに)
飲み込んだ言葉に満足したのか、継母は薄い唇を満足そうに笑ませました。
「いいこと、リリアーヌ。これはお前のためでもあるんですからね」
彼女は、母親によく似たリリアーヌが憎くてたまらないのです。嗜虐心に満ちた声が、少女のつむじに浴びせられます。
「お前のような子が外を歩いていては、みんなに迷惑をかけてしまう。そんなお前の面倒を見て、外に出ないように見張ってやっているんだから」
リリアーヌはぐっと、唇を噛みました。思えば、リリアーヌが家からこっそり抜け出すことをすっかり辞めてしまったのは、この日からでした。
「ありがとうございます、お継母さま」
リリアーヌが頭を下げると、継母はふんと鼻を鳴らします。
「それじゃあ、行ってきますからね」そんな声を最後に、扉がバタンと閉まります。扉の外からは、兄のはしゃぐ声が、父親の嗜めるような甘やかな声が、聞こえていました。
*☼*―――――*☼*―――――*☼*――――
はっ、とリリアーヌは飛び起きます。そこは、しんと静かなキャンベル家の自室でした。昨日、お手伝いを終えて、家に帰ったのです。
懐かしい夢でした。
「……お継母さまは、わたしのことを思ってくれてるんだわ」
ぽつりと呟きます。それでもどうしてかリリアーヌの頬には、涙が伝っていました。だれにも忘れられた誕生日の思い出。
そんな悪夢に浸っていると、ふと、枕元に見慣れないものが落ちていることに気づきます。
「…………靴?」
首を傾げます。そうしているうち、ようやくリリアーヌは昨日のことを思い出しました。マザークロックが盗まれてしまったこと。それから、サラのこと。
サラは大丈夫でしょうか。リリアーヌを抱きしめてくれた少女や、レーヴにも、お礼を言わなければなりません。やることは沢山あるのです。
リリアーヌは涙をふいて起き上がります。
「沢山泣いたから、涙もそろそろ無くなっちゃうわ」
なんて冗談をひとつ口にして。靴を拾い上げると、リリアーヌは机から折り紙を取り出すのでした。
>>1:524 リリアーヌ
手を繋ぎ、静まり返った街の中を歩く。人々が眠り、死んだように動かない光景は、ただただ不気味で。そんな世界を幼い少女と共に歩くという今すらも夢のような気がしてくる。
しかし、小さく強く握られた手によってレーヴは現実へと引き戻された。
「……そうだな。びっくり、したな。」
少女のなりの気遣い、いや、きっとこの状況を飲み込むための言葉なのだろう。あの短時間で、あまりにも多くの事が起こりすぎた。
幼い彼女が全てを理解するには難しく、しかしそれでも明るく振る舞う為にその言葉を選んだのだろうと思えば、なんとも言えない気持ちになる。
だからレーヴも同じように言葉を返せば、握られた手を少しだけ強く握り返した。
リリアーヌを安心させるように、そっと。
「サラ……?…あぁ、あのお嬢さんなら大丈夫だ。
医者も命に別状はないと言ってたし、傍には頼れる人達がいたのを嬢ちゃんも見ただろう?……だから、絶対に大丈夫だ。」
最後の言葉は強く、少女にも自分にも言い聞かせるようにそう言って。
「……あ、ほら、見えたぞ。あそこだ。」
レーヴの指さす先には、緑と白の縞模様のオーニングテントが張られた商店があった。中に入ると、店主と思しき男性が椅子に座ったまま眠っている。彼もまた、他の国民と同じようにあの黒い煙に巻かれたのだろう。
その横を通り過ぎれば、目的のものをすぐに見つけることができた。冷えた水の入ったボトルを1つ持てば、リリアーヌには皮袋を差し出す。
「嬢ちゃんはこれを持ってくれ。必要になるだろうからな。」
柔く微笑み、それを持たせれば商店を後にした。
片手でボトルを持ち、もう片方の手で少女の手を取って歩き出す。
リリアーヌと共に歩いた道を戻ってみれば、先程までの喧騒はそこになく。そして、サラの姿すらもないだろう。
国王と医者に連れられ、城内へと連れていかれたはずの彼女は、きっと今頃きちんとした治療を受けられているはずだ。
誰もいなくなった広場を見て、少女は何を思うのか。
騙して連れ出してしまったような後ろめたさを感じつつ、しかし、例え彼女がどのような反応であったとしても、レーヴは彼女の目線に合うようにしゃがみ込めば、
「きっと、王様がお嬢さんを気遣ってお城の中へ連れて行ってくれたんだ。あそこならちゃんとした治療も受けられるし、きっともう心配はいらねぇ。
……明日、見舞いに行こう。そうした方が、サラも喜んでくれるさ。」
そう言って、頭をまたひとつ撫でれば優しく微笑む。そうして真っ直ぐに少女の瞳を見つめ、彼女の言葉を待った。
昨日の夜のことでした。
>>3 レーヴ
リリアーヌは、レーヴの言葉にこっくり頷きました。
「……うん!」
大きな手に握りしめられていると、なぜだか安心して、また泣きそうになってしまうのでした。そんな気持ちを隠して、リリアーヌはちょっぴり大股で歩きます。
リリアーヌは渡された皮袋をしっかりと左手で抱えました。レーヴに手を繋いでもらっていたせいでしょうか。リリアーヌの不安はいつの間にか、随分小さくなっていました。
そうして戻ってきた広場には、サラはいませんでした。リリアーヌはきょとんと魔法でも見た顔で辺りを見回します。
「あ! そうだったんだね!」
役に立てなかったことを残念に思いますが、リリアーヌはサラが安全な場所にいるのならいいのだ、と思い直します。
「わかった! あの、レーヴさん。……一緒にお見舞してくれる?」
少しだけ、サラが元気か怖くなってしまったリリアーヌは、そう聞きます。この大きな手が一緒なら大丈夫と、無意識に思ってしまったのです。
>>6 リリアーヌ
「………あぁ、もちろん。嬢ちゃんがそう望むなら俺は何処だってついて行くよ。
俺達は友達、だからな。」
少女の願いには強く頷いて返す。サラの容態はレーヴも気になっていた所だったし、もしもの事があれば直ぐにリリアーヌを守ってあげられる位置にいた方がいいだろう。
約束だ、と彼女の頬を撫でれば立ち上がり、仕事用の腕時計に視線を落とす。
「…さ、今日はもう遅い、そろそろ帰ろう。
家まで送るから、今日はゆっくり休むんだぞ。」
手を取れば、歩き出す。酷く静寂な街に響く二つの足音。そんな不気味な音をかき消すように他愛ない話をしながら、帰路へつく。
月明かりの下、少女を家まで送り届ければ、手を振って。リリアーヌの元を後にした。
──昨晩の帰り道。いつもの様に屋根へと登って、空を見上げた。
一度戻った会社に居たのは、椅子に座ったまま眠っている親友の姿で。手元の書類を見るに、レーヴの整理した資料をチェックしているようだった。小言の書き連ねられたメモまで発見してしまえば、なんだか少し腹が立って、彼の顔にペンでラクガキをしておいた。
「………あれ、油性だからなかなか落ちねぇんだぞ。」
ぽつりと零した言葉は誰に聞かれるわけでもなく、ただ静かな街の中へ消えていく。夜独特の賑わう喧騒もなければ、街に灯りがともることも無い。国民の時が止まってしまったのだから、当たり前なのだけれど。
「……………。」
腰に提げたポーチから命の時計を取り出した。カチコチと、正確にレーヴの命を刻む音を聞きながら、そっと裏蓋を開ける。そこに刻まれた文字を悲しい瞳で見つめれば、ため息を吐いた。そして再びそれをポーチの中にしまい込めば、前を向いて走り出した。
いつもと違う夜の街の空を駆けながら、レーヴは静寂が支配する闇の中へ消えていった。
「…………………せん、せい?」
目を覚ます。
何故だろうか。また一人、サラの大切な時が止められてしまったような気がして、涙が一つ零れた
「……おや、もう朝かね。」
東の空が白み始め、時計の国に朝が訪れる。
殆どの人が眠ってしまっているからだろうか、空は煙も薄れ、普段からは比べ物にならないほどの青空が覗いていた。
「まったく晴れやかな気分になどはならないのだがね。」
テルミットは珍しく皮肉を口にした。
夜半広場に戻ってからは、一晩中《クロノス》の整備に当たっていた。
一段落着いたところで、城内の、昨夜サラを寝かせた部屋へ足を運ぶ。
部屋の前に辿り着き、辺りを見回す。
「はて、用心深い傭兵のがそこらに寝ていたはずだが。用でも足しにいったかな?」
ブレイクの姿が見当たらない。
さほど気にもとめず、部屋の中を見る。
ベッドの上ではサラが変わらず寝ており、その脇には椅子に腰掛け俯いているマスクの医師エルスがいた。
まだ寝ているようなので声は掛けなかったが、ベッドのサイドボードにひとつ、時計を置いた。
「…完全に元通りとはいかなかったがね。」
置かれた時計は、昨夜竜によって砕かれたサラの時計だった。殆ど元に戻ってはいるものの、違和感はあるだろう。
「アンティークなんてものは、多かれ少なかれ人の手によって直され続けて今に至るのだ。今回はたまたま腕の悪い職人につかまっただけだ。悪く思ってくれるなよ。」
そう言い残すと、部屋を出た。
「.......マザークロック♪マザークロック♪.......」
[少し冷えた朝の空気の中、少女は小さな声で歌いながら、誰かいるであろう広場に向かっていた。
昨夜は、誰かに夜が越せるところまで送ってもらったのだろう。サラがシルヴィに襲いかかるところからの記憶が曖昧だった。
サラはどうなったんだっただろう。少女はあまり考えないようにして、ぼうっと夜を越した]
「けーんけーん.......ぱっ」
やりたかったことをやりきってしまうと、リリアーヌは立ち上がりました。
居間にはいると、兄と妹を守るように覆いかぶさって眠る、父と継母の姿がありました。
「おはよう、おとうさま」
リリアーヌはそう言って、父親の手をこわごわと握りました。リリアーヌよりも大きくて硬い手です。リリアーヌは久しぶりに触れた父の温もりに目を瞑りました。
「おはよう、ルシアンおにいさま、お継母さま、メリリース」
それから、にこっと笑顔を作って、家族みんなに挨拶をします。挨拶をすると、きゅうっと腹の底から心細さが這い上がってきます。
「……みんなと協力して、すぐに助けてあげるからね」
そうしたら、きっと、リリアーヌも立派なキャンベル家の一員だと、みんな分かってくれるはずです。
挨拶を終えると、リリアーヌは広場に駆け出していきました。
昨日の事件から、幾許か時間が経ち、朝を迎える。
普段なら空は煙で覆われていて、青空を眺める事は少ないが、今日ばかりは青空の方が占める面積が多い。
昨晩の事を思い出しながら本に記していく。
魔女が現れた事、勇猛果敢に飛び出した女性が、いとも容易く跳ね返されてしまったこと。
加護を受けたもの達が必死に応戦しようとしていることも。
加護を受けた。
この事態を真近で見る事が出来る。本に記せる。それだけで良かったのに。
この胸の締め付けられるような痛みはなんだ。
/*お前は優しすぎる。
この仕事に就きたいなら余計な私情は挟むな。感情は極力無くせ。そんな事では観測者など名乗れぬ*/
「...ええ、わかっています。
私達は見届ける者、ですから」
[ぎゅっと強く本を握り締める。
事を把握する為に私は歩く。]
朝。大きく欠伸をすれば、変わらずクマを携えたままレーヴは家を出た。
昨日の出来事が夢だったのではないかと疑うが、家の扉を開けた先、変わらずそこで眠る人々を目にして現実なのだと再確認する。
集荷した配達物を入れているリュックを今日は家に置いてきた。こんな中で配達することもないはずだろうからと、今日は腰に提げたポーチだけを持っている。命の時計も勿論その中に仕舞われていた。
腕に着けた時計のリューズを回せば、カチカチジジジとゼンマイが巻かれる音がする。変わらずその時計が時を刻む音を確認する。朝の日課を忘れないように、心を落ち着けるように。
「…………行くか。」
そう零して、前を見る。しかし、何となく空を飛ぶ気にはならず。ローラースニーカーを転がしながらゆっくり広場へと向かった。
聞くべきことを一通り聞き回った後、リーンは一人帰路へと着く。
ただいまの声に返ってくる言葉はなく、あんなにうるさく聞こえてきた家族や従業員の声すら何もない。しぃんと静まり返った空間に。
印刷機だけが、スイッチを入れられていたのか。幾つもの歯車を忙しなく回しながら、印刷口からはインクの匂いのしない真白な紙を無意味にただ吐き出し続けていた。
眠る家族たちにブランケットをかけたあと、リーンは一人作業机に向かう合う。
これは、私がみんなに伝えるべきこと。
自分の書いた新聞を受け取ってくれたたくさんの笑顔や言葉たちを握りしめながら、一心不乱にペンを走らせた。
[ふと周りを見渡すと、昨日自分が目を閉じる時には部屋の隅に座っていた傭兵の姿が見当たらなかった。用でも足しに行ったのか、と思う]
[続いてベッドのサイドテーブルに、昨日破壊されたサラの時計が殆ど元通りの姿で置いてあることに気が付く。違和感はあれど、動いている。
あのやたらめったら便利なロボの奴が直したのだろうか。此方も一晩の内にやるなんて正気の沙汰では無いな、と思った]
>>サラ
[目の前の少女の手のひらにその時計を置く。小さく、それでも確かに時を刻む鼓動は感じ取ることが出来るだろうか]
あの技師が直したんだろうな。
[思いやり、掛けるべき言葉など知らない。ただの事実を述べた]
店の2階、自室で目を覚ます。
あの勇敢で無謀な少女の命を繋ぐことに手を貸して、一般的な消毒液ぐらいは持ち合わせていただろう。
とはいえ、診断の術を持つわけではない。もし明日も状況が変わらなければ、ベッドの番を代わろう。そう告げて、店に戻ったのだ。
[──時は少し、遡る。
広間での騒動を、彼女はただただ見つけることしかできないでいた。
勇敢に動く人達の群れを抜け、自分の家へとふらふら帰っていった。
倒れゆく人々に反して、いつまでも意識のある自分。
選ばれた。選ばれたという重圧に、押し潰されそうだった。]
……おまつり、
[楽しい時間が終わる。
自分の手からすり抜けていくそれを止める術はなく、そんな夜を呪った。]
[昨日の国王と魔女の言葉が本当であれば、このボロボロの少女にも何かしらの役目が与えられたことになる。
この先ゲームを続けていくことになるのならば、彼女が役目を果たすのはきっと今の状態では厳しい。
ジュラムの薬は怪しいが、効能が真実であれば恐らくこれ以上のものは無い。怪しいが]
[頭の隅には、サラが魔女の眷属で昨日のアレは茶番だったのではないかと。そんな可能性もよぎるが。
だが今はそんなことは些末なもので、捨て置いて構わなかった。]
>>25 エルス
「使用方法は同封しましたがねェ、マ、分かりました。このレディの体重は?なにか病気をしているかご存知ですカ?」
望む答えを得られなければ、体重ぐらいはすぐ調べられるだろう。抱き上げてみる、という形だが。
見合う量の水薬を計り、ガラス容器に移す。
「痛みを失う薬、麻酔として使うにハ患者の親指の爪ほどでよろしいでしょウ。静脈注射してくださイ。
次に骨生え薬、正しい形にしないとグチャグチャに繋がりまス。中が見えていないのなら切って正しい位置に置いてあげてくださいナ。
最後に傷薬、これがありますから、失血死しなければ先程の切開跡も閉じなくてよろしイ。」
手際よく指示を出しながらも、麻酔によって深い呼吸になったところで無理矢理に薬を飲ませてゆく。グズグズと嫌な音を出して、骨が、肉が増殖していくのをじっと観察していた。
目を覚ませば、昨日の出来後が夢ではなかったことを思い知らされる。街はまだ眠ったままかのように静寂に包まれている。
むしろあの祭りが、平穏な日々が、惨めな人生が夢幻であったかのようにまで感じる。
自分の時計は──今日も正確なシンオンを刻んでいる。こうして目が覚めている時点で疑いようはないのだが。
一つ伸びをすれば、時の魔女が言っていたことをもう一度、ゆっくりと、思い出しながらマザークロックに選ばれた人物を探しに行くことだろう。
昨日閉ざされていた城門は、再び開け放たれていた。サラ・クロノスティスの一件によってオズワルド三世が開放したのだろう。
ホールの中央には、台座があった。しかしそこに、あるべきものは──《マザー・クロック》はない。
また、城内には鼠銀色の月と鮮黄色の太陽が重なった丸い時計が転がっていた。夜空を表す群青色の文字盤には、罅が入って砕けている。
その時計の持ち主と、一国の王がホールで眠りについているのを発見するのも時間の問題だろう。
「暫くは起こさないほうがよろしい。まだ柔いですからネ。4時間後に先程の半分の量、『痛み止め』として静脈注射しまス」
椅子を持ってきて、ベッドの傍らに座る。
ここまでの重症例では実績はない。他にも薬は持ってきている。城に入るなら、と小さなトランクに詰めた薬をちらりと見た。
リーンは静寂に包まれた城下町を歩く。
人々の喧騒も、往来も、全くなく、忙しなく走る蒸気機関車からもそのもくもくとした蒸気は上がることなく。
まるで眠ってしまった世界に一人取り残されてしまったような、そんな感覚に、持っていた新聞の束を落としそうになる。
「そうだ、サラお姉さんは……」
彼女のことが気になったリーンは、城下の広場の掲示板に新聞を一部貼り出したあと、その側に小箱を置いて人形を設置し、
再び開かれたその重厚な城門を、口の端をきゅっと結び、緊張な面持ちで潜る。
その時。鞄の中に大切に仕舞われた筈の手紙が、ぐしゃりと歪んだ音がした。
[1]
[2]
[3]
[4]
[5]
[6]
[7]
[8]
[9]
[10]
[メモ記入/メモ履歴] / 発言欄へ
情報 プロローグ 1日目 2日目 3日目 4日目 5日目 6日目 エピローグ 終了 / 最新