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人造妖精 エステル に 1人が投票した。
灰色翼人 ランス に 1人が投票した。
研究者 トロイ に 8人が投票した。
研究者 トロイ は村人達の手により処刑された。
次の日の朝、司祭 ドワイト が無残な姿で発見された。
現在の生存者は、毒舌家 セルマ、歌い手 ナデージュ、人造妖精 エステル、中毒 カイン、灰色翼人 ランス、小説家 エラリー、手紙狂い パース、がらくた屋さん スー の 8 名。
[わたしの左半分と、スーさんの右半分。
包帯で覆ってしまえば同じように見えるでしょう。
そういう意味で言えば、お揃いなのかもしれません。
でも、わたしは首を横に振りました。
スーさんの右半分は、赤色。
わたしの左半分は、白色。
どちらの色だって痛いけれど。
どちらの色だって辛いけれど。
けれど、決してそれは同じではありません。
だからわたしは首を横に振ります。]
……お、そろいじゃ、 なくて も
わたしは、
[うれしいです、と。
告げようとした言葉は、声にはなりませんでした。
小さくても確かに暖かいスーさんが今、此処に居る事が、嬉しいのです。
零した咳に、血の味が混ざります。
こういった出血は、灰化が広がる兆しでもあります。
わたしは唇を閉じると、尚一層強く、スーさんを抱きしめるのです。**]
[ばさりと大きく羽ばたけば、名残のようにくっついていた灰色の羽根が、すべて払われ、抜け落ちる。
視線を戻し、マイダの顔を見たならば。
彼女は、どんな表情をしているだろう**]
[猛然と、身体を起こした。
セルマが如何を尋ねる。
呆然としている男に、セルマも顔色を変えた。
容態が安定したと思っていたのだろう。
近づいてくる彼女に男はぼそりと、しかし重たく呟いた]
――亡くなられた。
―森の片隅にて―
…ハハ…
しくったなぁ・・・
[木に寄りかかり、男は笑う。
乱雑に投げ出された両足は、
膝の先から千切り取られていた。]
…ったく。
「足を取られる」って、普通こういう意味じゃないだろうに…
[…血を多く流したせいだろうか。
無性に、喉が渇いて仕方ない。
…それとも、コレは魔物化の前兆か…?]
…どっちか分からないけど…
死ぬなら、人のまま逝きたいね。
[猫背の男が突然、がばりと起き上がる。
なんだい、落ち着きのない。
アンタも司祭様を見習って、
と、
軽口を叩こうとして、違和感を覚える。]
[椅子から立ち上がる。
やっと落ち着けると思った足が、何度めかの命を受けて軋みながら動いた。]
――――――。
[助けられた、と自負したのは僅かな時間だった。]
――そう、…………そうかい。
[他に、言うべきことは浮かばなかった。
新たに増えた遺体をどう処置すれば良いのか分からない。
尋ねたい相手は、今まさに息を引き取ったところだ。]
(王子様というには、歳を取り過ぎたね)
[くすくすと、セルマに返事をしようとした。
けれど声が出なかった。瞼が重い。嗚呼、これは]
(大丈夫だよ)
[伝えたい。伝えられない。
少しでも安心させたいのに、叶わない。
…それだけが、悲しい]
(傍にいてくれる人がいる)
(私は、幸せだ)
[だからせめて、彼を見守る眼差しは、穏やかに]
(…私は、幸せだった)
[顔を撫でる様子のエラリーは、
何処か子供みたいで微笑ましい。
ずっと眺めていたいのだけど。
どうやらそれも、そろそろ、限界のようで。
目を閉じる]
(友がいた、子供たちがいた、優しい隣人がいた)
(それを幸せと言わずして、なんというのか)
(滅びゆく世界の中、少しでも、私も)
(誰かを幸せにできるように、なりたかったのだけど)
[呼びかけてくれる声を聞きながら、意識は、遠く―――]
[沈黙が支配した。
現実が受け入れられなかったのかもしれない、無力感に苛まれているのかもしれない。
男はぼうと宙を見上げ、視線の先にあるステンドグラスを眺めていた。
星空の瞬きは、男にはついぞ見ることが出来なかった]
――
[目を閉じ、大きく息を吐いた。
やがて男が動き出したのは、聖堂の方だった。
セルマに問われれば、埋葬します、と短く返したことだろう。
そう、少年の亡骸もまだ、そのままだった]
[辛うじて動く右腕で、
懐の薬を飲み下す。
…異様な苦みに食道が拒否反応を示すが、
湧きあがる物を無理矢理抑え込む。]
・・・良薬は口に苦し、とか言ったやつでて来いっての。
劇薬の方が、死ぬほど苦いわ…
[毒が回るまで、三十分。
多分、それまでに命を落とすだろうが…
もし万が一魔物と化しても、誰かを襲う前に息絶えるだろう。]
…ある意味、灰に勝ったのかね?コイツは。
それとも、負けたのか?
・・・・・・・・
まぁ、どっちでもいいさ。
地獄で、あいつらに自慢してやる…
[…自分も同僚たちも、行き先は多分そちらだろうから。
伝える武勇伝を考えながら、彼の意識は闇へと沈んだ**]
[少年の亡骸を見て、男はセルマに処置が出来るか、尋ねたことだろう。
死が身近になったといえど、エンバーミングの技術を持っているのは僅かだ。知識としてあれど、技術は別だ。出来るものがいるのならそれに任される。
司祭が行なっていたことを思うと、実感として胸が重たくなるのを感じた。
エンバーミングが行えないなら今の時期なら、灰に晒すという手段もあった。
鳥葬や風葬のように、少しずつ削っていく。
けれど、男は黙々と棺を準備し、そのまま土葬の準備を行ったことだろう。
疫病を気にしていられる余裕のあるものは、この世界には最早稀少となってしまった**]
おそろい。
…うれしく、ない?
[首を横に振るナデージュにこてんと首を傾げて問う。>>0
今の二人が“おそろい”であるという認識は揺るがない様子。
包帯の下が赤色でも、白色でも。
今のスーには目に見える赤に染まった包帯がすべてだから]
おそろい。じゃ、なくても。
わたしは……。
[繰り返す。言葉を。
告げようとした言葉が声にならずにできた空白が、こうして埋まる>>1]
おそろいはうれしいはず。
おそろいじゃないのはうれしくない、…はず。
ちがう? ――わ。
[いっそう強く抱き締められた、それが答えである気がした。
おそろいじゃないのは、嬉しくないことばかりではない、と。
教えられた気持ちになって表情が緩む。
赤に染まった手が、ナデージュの背に回された。
抱き返そうとする動きは、ぎこちなくて弱々しかったけれど。
思いだけはしっかりと、こもっていた**]
[巨きく丈夫な血色の翼。
両翼は薄く影を作りエステルを覆う。]
……………、ランス………。
[ランスがエステルに向き直る。
さんは、意識的に付けなかった。]
[暫くの間、スーさんと身を寄せ合うように抱きしめあっていましたが、そのうちに、こうしている場合ではないと気付きます。
今、暖かなスーさんと抱きしめ会う事はとても心地よいのですが、スーさんの傷を放置していいというわけではないのです。
わたしはスーさんから少しだけ身を離せば、指をそっと、赤色の右半分に伸ばします。
スーさんの包帯を摘み上げて、緩やかに首を傾げました。
交換しますか、と、声無く問います。
確か、マスターの部屋に簡単な医療用具を詰めた箱があったはずです。
マスターが忙しい時は「勝手に持って言っていい」とまで言われていたので、
その時の記憶が確かなら、ガーゼや包帯もちゃんとありました。
わたしも赤色に染まった包帯ではあまり外を出歩けませんし、スーさんが頷くようなら、道具箱を取りにマスターの部屋まで向かったでしょうか。]
[暖かで、穏やかで、心地良い時間だった。
いつまた赤が滲み出るか、分からないのも忘れるくらい。
そんな、ぼやけた思考のまま、ナデージュがつまんでいるものを見て、
最初は同じように首をかしげていたけれど、
徐々に、すまないという気持ちを顔に出して、俯きがちになってしまう]
…だい、じょうぶ。
そんな、めずらしいことじゃないし。
ひとりで、できるし。
こわく、なんか……。
[帰ってからやる、と、たどたどしく伝えようとする言葉とは裏腹に、
小さな手はナデージュのケープの裾を掴んで離そうとしない]
………ごめん、なさい。
やっぱり、こわい。
[怖いものは色々あるけれど、
今は何よりもこの暖かさを失うのが怖くて]
おねがい。
まってるから。すぐ、もどってきて。
[――ぺこり。
軽く頭を下げる。
強情に思われた手はなだめすかさなくともするりとナデージュのケープから離れ、
代わりに自分の上着の裾を握りしめた**]
[こわい、と告げるスーさんの頭をそっと撫でます。
大丈夫、大丈夫と、落ち着かせるように。
本当はスーさんと一緒にマスターの部屋まで行ければよかったのですが、スーさんの身体を無理に動かすのはあまり良い事の様には思えませんでした。
変わりにケープを脱いで、そっとスーさんの肩にかけます。
人肌の温もりにはかないませんが、それでも、無いよりはきっとマシでしょう。
わたしは立ち上がり、マスターの部屋まで真っ直ぐに向かいます。
倒れた椅子は後回しです。
マスターの部屋の入り口近くに目的の道具箱を見つけると、すぐにカウンターの方へと戻りました。
お酒を割る為の、飲料水の瓶が何本か備蓄されているのを思い出したからです。
残りの本数も、大分心許なくなっていますが。]
[タオルを一枚、道具箱を一つ、水の瓶を一本。
量としてはそれほど多くはないのですが、今のわたしにとってそれらを運ぶのはなかなかに重労働です。
それでも、何往復するかよりは一度に運んだ方が早い、と、わたしはスーさんの元に歩んでいきます。
おまたせしました、と、声無くスーさんに告げれば、また、スーさんの傍らに膝をつきます。
飲料水の瓶を開け、中身をタオルに少しだけ含ませました。
それからまた、スーさんの包帯をつまんで軽く持ちあげて、首を傾げます。
解いてもいいですか、という、問いかけでした。]
[角と耳の引っかかりに注意し、帽子を脱ぐ。
マントを剥いで、上着のボタンに手をかける。
ばさりと無造作に脱ぎ捨てて、カインは己の身体に視線をやった。]
……
[胴には、絵の具で乱雑に塗りたくったような赤黒模様に覆われていた。
変異しかけのような、腐りかけのような、気味の悪い色。
しかしそれ自体に痛みなどを見せず、面倒くさそうに、取り出した軟膏薬を背に塗りつけて。
また手早く、着ていたものを羽織る。]
[例えば、だ。
仮に私が振り返ったとして、その後、村に戻るためにズボンを脱ぐとき、見ないでくれと頼んだとき。
彼は応じてくれるだろうか?
押せばなんとかなる、という結論に至ったが。
見てどうなるんだろう、と。
根本的なとこに立ち返った。
衣擦れの音も止んでるから、タイミングを逃したようだと悟った。
沈黙が耳に染みる。
あと、考えてたことが実に下らないことだったから、なんとなく気恥ずかしくて]
……何か面白い話、ないかい?
[例えば。
仮に、カインがパースが隠しておきたいと思っているかもしれないものを、偶然でも何でも見てしまったとき。
多分、たった数秒の驚き以上のものは何も無い。
見たからどうなるとか、それは今のカインにとって些細なことでしか、ない。]
んー? 面白い話……?
[沈黙に耐えかねた質問に、そーだなー、とか適当な言葉を乗せて。]
……春に花が咲く理由、って、知ってるか?
[服を着終える。
角と耳の穴が開いた帽子を、キャスケットの上に被せた。]
[二人を別々の棺に収めた。
教会にあったはずの手押し車は、既に壊れてしまっているようだった。
顔を顰め、引きずる。
穴を掘るエラリーは、幾分か手馴れていたようにも見えた。
やがて手指にマメを作り、擦り切れさせながらも十字架を突き立てる。
簡易墓地も殆ど埋まりつつあり、小奇麗な墓を作れるほどの余裕も、既に失われている。
そっけない十字架を眺めて、略式に十字を切る。
幾分かそれをじっと見た後、男はメモを取り出し、何事かを書きだした]
『村の父ドワイト その子ギュルスタン ここに眠る』
[十字架に紙を貼り付けた。風雨に晒され、灰にも晒され。
長くも保たないだろう。
何かが足りないと思ったのか、感傷か、男の行為がどう見えたか、それに興味は無さそうだった]
[セルマは、男を手伝っただろうか。
例え司祭とギュルスタンについて訊かれたとしても、男は何も答えられなかっただろう。
何も、知らないのだから。
埋葬の作業に、傘を差す余裕はない。
セルマは男に傘を差し掛けただろうか、それとも、共に灰を被りながら作業を進めただろうか。
積もった灰を払うことも、あったかもしれない。
何れにしても――]
帰りますね。
[埋葬を終えて暫し、メモに何かを書き付けていたかと思うと、男はのそりと顔を上げて、呟いた]
春に花の……?
よしきた、ちょいと考えてみよう。
[煙草中毒の語りかけに首を傾け、腕を組んで]
うーん、日の光と地中の養分が充実するから、とかだろうか。
いや、そういうことではないか。
…………。
……………………。
……こーさん。教えてくれるかい?
[両手を軽く挙げ、眉をハの時にさげてカインに話を促す。]
[エステルの───マイダの体温を感じながら。
ふ、と。
脳裏に浮かぶ、世界。
この世界は、もう終わる。
それを何故か、今はとても素直に受け止められる。]
───マイダ。
[何度、その髪を撫でたろう。]
[紅い羽は、降り積もる灰の中にあって、なお鮮やかに。
明らかに、異なる姿。
なのに意識は、まだ己のまま。
それが意味するところは、まだ分からないけれど。]
マイダ。
教会に用があるんだろう?
……行こう。
[もう一度、額に緩く口付けて。
指先で涙を拭ってやってから。
肩を抱き寄せ、教会の中へ促すように歩き出す。]
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