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〔業火に焼かれた男は、相手の問いへ緩く首を傾ける。〕
――…芹菜。ボクはね…こわがりだけれど、
ここにいるみんなのことがずっと好きだよ。
…きらいじゃない、でなく…すき。
好き過ぎてこわいってヤツさ…アハハ。
〔生前の出来事を思い出すように…淡い霧のかかった空を一度見上げる。…もう誰も…ひとりじゃない。〕
〔望みの持ち主達を窺うように、耳を澄ませる。〕
だからヒューバートさんはここにいるんだろうね、それじゃ。
……すてらさんとナサニエルさんとあたし、三人だけじゃ寂しいって思ってたけど、
そうでもないって事なんだよね。
〔銀髪の青年が姿を見せると、深い目礼を馳せ…片手を伸べて招き入れる。掻い摘んでだが、芹菜へ彼との経緯を話して紹介し〕
〔続いて語られる言葉には、顎鬚を尖らせるように撫でて…安心させるように笑む〕
…そうだよ。誰にも寂しくなってほしくない…
欲張りすぎるから、それぞれがそれぞれの形で
しあわせになるのが…ボクのしあわせ。
…誰が何を諦めたかなんてね、…芹菜。
終わってみないとわからないものさ。
だからボクは…あれこれ思い詰めてしまったんだけれど。
欲張るタイミングは、難しいや。
〔相手の瞳を覗き込む。細く笑む眼差し〕
ウルズもコーネリアスも、それは同じ。
…疲れさせちまったろうなァ…
〔ごめんよ…と未だ名づけぬ青年へと眉を顰める。〕
…久しぶり、というべきだろうか?
[見つめる眼鏡の奥の視線を受け止めて、穏やかに笑む。]
君には…感謝してもしきれないな。
…君たちには、というべき?
…そうか。良い仲間と共に在るのはいいね。
補い合える相方たちを大切にしてあげると良い。
[見守る瞳には、羨望の色も含まれていたかも知れず。
ゆっくりと立ち上がり、背をかがめて芹菜を見下ろす。]
おい、わかってんじゃねーか、あの兄ちゃん。
いやー、むしろ分かってないんじゃないの?僕はともかく、他はちょっとねー
ちょい待ち、他はちょっとて、わしの事もかいな。
[芹菜の様子にくすりと笑んで。
ふと、何か思い至ることがあったらしく、袂を探る。]
礼に…ってほどでもないのだけど、
こんなのしか、持っていなくてねぇ。
[折りたたみ式の赤い携帯電話。少女の小さな手へと差し出して。]
…多分、圏外だから使えないと思うけど…持っててほしいな、絆として。
こうして出会えて、たくさんの事を知って、たくさんの事を取り戻せたのは、君のおかげだから。
/*
俺の居た時代にはあったからえーねん。
ビバ・クロスオーバー。
周りが和っぽかったりファンタジーっぽかったりしたので、
サイバー方向に突っ走る天邪鬼なわけで。
ちなみに、アンドロイドじゃなくテクノライズドなのさ。
ベースは生身ー。
〔二人の遣り取りの合間…もう一度青年の瞳を覗き見る。
携帯電話は物珍しくもあるのだが、そのバックライトを映す彼の瞳に…鏡の淵が兆しているかどうかそれを確かめたくて〕
〔未知の機器に興味は湧くものの、それは芹菜のものだから…と寄せた身を起こす。胸から下をひとつふたつ摩る仕草をし…〕
…いや…この調子で全部眺めていくと流石に、と思ってね。
〔頬をひとつ摩って、場に居る者を眺め遣る。〕
…海の名に拘ると混乱させてしまうかな。
では…"Void"…と其処へ浮かぶ者の名を呼んでもいいかい?
〔首を傾けて青年に呼びかける。携帯電話を気にしている芹菜へは、玩具でいいと思う…と静かに笑みかけて〕
…"Void"、お前は俺をそう呼ぶか。
[その名に微笑んで頷いて。]
空虚ならば、これから満たされればいい。
一度ゼロになり、そこから新しくはじめるだけだ。
[ほんの僅か、砂のように粒子がこぼれるのは、消滅の前触れで。]
…ただ、今はもう少し…この地に居たいんだ。
きちんと別れを言えてない。
[消え入るような声で、小さくつぶやく。]
[赤いケータイとやらから流れてくる歌声に一心に聴き入っている]
?
[パラパラと砂のこぼれるような音がした気がした。辺りを見回すが]
気のせいかな?
〔青年の例示には、幾つか頷いて…記憶に頼るばかりではいけないね…と納得もする。丁寧に礼を言って立ち上がる〕
…キミを受け容れられて…よかった。
魂の魅力は消えないから…輪廻の先でも
時間はかかるけれど、きっとボクにはキミが解るよ。
〔そして別れの対象を気にかけ…胸の痛みを憶える。
…深く深く、案じる眼差しを注ぎ…〕
…またこの名で呼ばせてくれるね…"Void"。
村に限らず、この国でも別の国でも…また逢いたい。
〔芹菜の様子を暫く見遣って、枯井戸の縁から腰を上げる。
彼らが携帯電話を眺めるのをやめるようなので…後は興味の侭に。〕
女好きの石動くんの心は…動かないだろうから
キミのことは彼らに任せるべきだね?芹菜。
危なっかしくてつい気にしてしまうけれど…
皆キミを放っておけないから大丈夫。
ボクの姿がなくてもキミは平気だね、…心さえ傍にいれば。
〔時の砂が零れるよ…もうお行き。促すように掌を述べる。自分には明日があるが、彼らにはわからない。芹菜と"Void"へおやすみ…と囁いて歩き出す。深い感謝と付き合わせた詫びとを*胸にして*〕
…もう少しだけ。
[芹菜に向かって、なんでもないと笑い、
ヒューバートの言葉に頷く。]
いつか逢えたら、その時は。
[踵を返す彼を見送って、
*少女が頷くならばあの洋館へと戻り、尽きぬ話と共に過ごすのだろう。*]
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