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…ンー。…
態度で示すのはお嫌かね?
〔バーカウンターの傍で引っくり返ったスツールを起こす。
フォアローゼスのボトルを手に、其処へ腰掛けると…青年へ片手を伸べて見せ〕
…酒と狂気の話をしていたと思う。違ったかな。
〔驚いた拍子にツ、と左肩を押える。唇を噛み締めて眉を顰め〕
…では、…私が考えていた通りなら…
ニーナはもうローズの手にかかっている、と…思う…。
…此処を離れたジーンは…キャロルを説得に
行ってくれたものと思っていたから…
〔そして、此方の思考過程は影にのみ明かされるところなのだろう。遣る瀬無い面持ちで、座ったばかりのスツールから立ち上がり――〕
─2F "Blue"floor─
[もはや巣となったフロアに、珍しくきちんと扉から現れた影の男は周囲を見回す。
床は血みどろの上、臓物や手足が散らばり、椅子の破片まで撒き散らかされている。
そして、その中心にあるは──横たわる老戦士とその傍らに立つ二人。]
…ニーナ。
…ニーナ。
…ニーナ。…
死なせてしまった…君は私なのに。
〔心の一部が、もぎ離されてしまった痛み。
彼女の魂は安らかだろうか。…ローズは其れを赦すだろうか。〕
[老戦士は、天を見上げた。]
[否、それは天ではないかもしれぬ――]
[――"Blue"を染める、*死のにおい*]
[無音の足取りで二人に歩み寄ると、抑揚のない声で話し掛ける。]
今、階段から"Platform"までが大混乱になっていた。君たちの所為か。
………
"Sledge-Hammer"は逝ったのだな。
[ダニエルの亡骸を見下ろし、静かに呟いた。]
もう飽きてしまった。
[オードリーから述べられた手をただ見つめ…それに返すものはない。ゆるりと首を傾けて笑みを見せ]
…覚えていないな。
興味のない話だったから…。
そう。LatestOpeには悪いけど其方の方が嬉しいな。
僕はExaltedAngelの獲物の方が好みだから。
[ニーナへの言葉には感情を揺らす様子を見せることもない、淡々と言葉を紡ぎ]
影は貴方と組んでいたの?よくわからないな…
そんなタイプには到底見えない。
[女の押さえられた左肩を見遣り、立ち上がる様子に目を細める]
…次は僕と遊んでくれる?
ああ、でもExaltedAngelとも約束をしているんだよね…
どちらと遊んだ方が楽しいかな?
…"君たち"の中から僕の存在を除外してくれないかな。
一緒にされちゃ困るよ…僕はここまで趣味は悪くない。
[彼と彼女だよ、と軽く顎先を揺らしてオードリーとダニエルを指し]
……、ジーン…
〔姿を見せて入ってくるらしい様子の影に、視線を向ける。
女からは、戦いの後特有の昂揚は既に過ぎ去っており〕
………ああ。…私がやったことだ。
望む礼儀は…手向けられなかったけれど。
〔ラッセルのことは口にしない。手にした侭だったボトルを影に向けて差し出す。女の眼差しへは、穏やかな笑みと凄絶なる哀しみとが混じる侭〕
[Umbre─「影」を通じて、電脳空間たる「影の領域」とリンクした影の男の知覚に、ダニエルの仮想人格─亡霊が揺らめいて立ちのぼるのが感じられる。]
[魂の収奪者によって収穫された魂が、*またひとつ加わった。*]
[ラッセルからオードリーの顔へと闇黒の瞳が移動する。
それは、麗人の告白に、ゆっくりと一度だけ瞬きをした。]
[が、己に向かって差し出されたボトルには、一瞥を落としたのみ。
オードリーを見詰める瞳は、何のことか分からない、というように、何のいろも浮かべず*沈黙している。*]
…ああ。結局私は君を退屈させずにはいられない。
互いに望むものを知っていて、与えられはしない天邪鬼なのだもの。
ローズとニーナが…まさにそうだった…ろう。
〔口数少なに応えて、青年の感情の動きを受け入れる。併し、〕
……
…ラッセル。教えた筈だ…
御託を並べている暇があったら、
望んだ時に"御前"はかかってくるべきなんだ。
〔ぴしゃりと言って、続くラッセルの言葉には応えない。
若干癪を通り越した、女にしては稀なことに憮然とした面持ち。〕
…そうでもないな。
今の貴方の表情は僕には少し楽しい。
普段見れるものではないからね。
[憮然とした面持ちにさも楽しそうに笑い声を零し、しかし伝えられる言葉には瞳の寒色を際立たせてオードリーを冷えた目で見遣り]
…それにしても貴方も本当に僕のことを解ってくれないな…
そういう意味ではやはり僕と貴方はとても似ている。
決して互いに容れることはないけれどね…。
…思い上がるな、WidowedGentleman?
先程もだが貴方に指図される謂れはどこにもない。
僕にそれが出来るのは…彼の方だけだよ。
[目元を崩すと甘える所作で首を傾けてみせ]
僕は、僕が楽しめればそれでいい…何度も言っているだろう?
そのタイミングは僕が決める。今、この時もね?
それに…乗らぬ相手を無理矢理奮い立たせるのは嫌いなんだ。
こっちの興が醒める…貴方は相手を選びそうだしその確認だよ。
左肩のハンデも加えてね…貴方の獲物はとても好みだから残念だ。
…彼女は約束を覚えていてくれているかな…天使と遊んでくるよ。
次に貴方の元へ帰ってくるのは僕か、それとも彼女か…
多分、そのどちらもが貴方の快気を願っているよ…。
…それまでは、無事でいてね?
[くすくすと、零れる声は子供が嬉しさを隠しきれない時のものと同じで。足取り軽く席を立つと指先を躍らせて手を振り、血溜りを避けながらフロアを出て行く。きっと色濃く漂う鉄の匂いを辿れば*彼女の元へと辿りつくことができるだろうか*]
〔ひととき交す眼差しのうちに、胡桃色の瞳へは多くの感情が混ざって過る。…それでも…影の試み、その意図に変わりはないのを女はよく理解している。僅かだったが、唇の動きだけで…嬉しかったよと告げた。〕
…開けよう。…
ダニエル兄と、…ニーナの痛みを忘れないために。
…全てが終わったら、…感傷に浸る私を見て
その意味が君にはわかると思う…
〔…そう。自分と同じで…彼には時間がかかるのだ。
他者と判りあうために。…女はその時間を愉しめる。〕
…アッハ、…それは良かった。
愉しませると約束したのだものね。
〔続く更なる此方の天邪鬼への反応には、全く手を焼かせて
くれると言った態で、ルージュを引いた口を引き結ぶ。〕
…笑って済ませてくれるといいのに、
本当に容赦のないやつだね…君は。
…ン。… 傍には…行くつもりだ。
出来れば手負いであろうと私がローズを迎えに行きたい。
だが君には大きすぎる借りがあるから…こればかりはね。
上手に生きていておくれよ、"StiweardShip"…
私が君を大好きなことには変わりはない。
ああ、ふむん…そういう意味でなら…
――嫌々でなく囁くこともできるのかもしれないな。
〔影に唇で伝えたのとは、また別の言葉を青年へ向ける。
声はまだお預けというかあまりにも慣れないので
声にはならないというかで躊躇いがちに唇へ乗せる。〕
〔*「…、…、…、…。」*〕
――おねがい。
お願いだからラッセル…どうか死なないで。
私が導き出す結果についての、最大の理解者。
その手段が君には気に入らないのだろうけれど、
――否、…渋々ながら認めてくれているのだよね?
私は、君から敬意を払われていることを知っている。
私たちが求めるものは対極であって同じもの。
私もいつか――君と刃を交えたい。
その時は、おそらく…先に仕掛けたほうが
間違いなく苦杯を舐めさせられるのだよ?
愉しい駆け引きを、今はまだ
想像の裡に遊んでいようじゃないかね。
大好きさ、ラッセル…私の、知的好奇心を映し出す鏡。
[オードリーとラッセルの会話には口を挟まず、黙ってその場に立っている。
そのうちに、ラッセルがローズを求めてフロアを出て行くのを見送ってから、改めてオードリーに向き直り、語り掛ける。]
痛み、か。
レディ、死人は何も感じはしない。
君はダニエルの死に苦痛を感じているのか。
それから。
ニーナが死んだと何故思う。ローズが破壊者だからか。
[瞬かぬ虚無の瞳がじっと麗人を見据えた。]
─回想 B2F・"Black"floor─
[ヒールが床を打つ硬質の音が響き渡る。
鮮赤の室内に咲いた白い妖花が近付いてくる──それにニーナの注意が向けられ集中したその瞬間。
ぼんのくぼに突き立った鋭く細い刃が、頚椎のほんの僅かな隙間を抜けて、彼女の延髄を正確に破壊する。
生命維持にかかわる脳神経を切断され、程なく彼女は絶命した。]
[滑らかな膚に、血のひとしずくもこぼさずに刃は抜き取られ……虚空へと消える。]
─回想 B2F・"Red"floor─
[生命を喪った"LatestOpe" の身体が床に崩れ落ちる。
小柄な肢体と愛らしい童顔と相まって、その姿はまるで遊戯の途中で投げ出された人形のよう。]
殺戮の円舞のパートナーを喪った"ExaltedAngel"がニーナの亡骸に歩み寄るのを後にして、姿無き影の男は立ち去る。]
『ターゲット:"LatestOpe" ニーナの死亡を確認』
[死に至るまでの数日間に渡り記録されたニーナの情報から、やがて「影の領域」にニーナの仮想人格が構築され、電子的な幽霊…ゴーストとして再生されるだろう。
影の男は、それによって彼の仕える主にどのような利益が生じるのかを知らなかったし、また知る必要も感じていなかった。
ただ彼は、忠節を捧げる主からの命に従うだけであり、たとえ任務の道程で彼自身が命を落とそうと一向に構いはしなかった。]
[何となれば、彼はそのように生きるべく作られたのだから。]
『Umbreを使用し、リストに載った"Vermillion-Jack"メンバーの戦闘経験を含む全ての情報を収集せよ』
『彼らを破壊せよ』
[オードリーを見詰め影の男は考える。]
そう、死者は何も考えない、感じない。
「影の領域」に在るのは、かつて生きていた者の残滓、単なるデータの塊に過ぎない。
君達は、死ねばその心も記憶も消える。……自由になれる。
だが自分は、死した後も開放されることは無い。
自分の記憶は次のSoul Takerへと引き継がれ、母の望む限り再生し続けるだろう。
……永遠に。
「影の領域」に存在する亡霊達と同じく。
"ShadowWalker" ジーンは、"Dowser" キャロル を投票先に選びました。
〔フォアローゼスのボトルを開けると、ふぃと芳醇な香りが立ち上る。気だるげにカウンターの内外を見遣るも、どうやらグラスの類は粉々に割れてしまっていて…女はその中から無事なものを探す気にはなれなかった。〕
〔ラッセルが立ち去った後、僅かの間思案を置くようだったが――影の声に我に返ったように眼差しを向ける。…次いで、寂しげな中にも常の影に対する興味の色合いを瞳に宿し〕
…ン。そうなんだろうと思う。
でも…魂はわからない。目には見えないだけで、
多くを感じてのたうち回っているかもしれない。
〔君はどうか、とは訊かない。酒のボトルに直に口をつける。彼の問いに、深く深く頷いて…安心したような笑みを浮かべ〕
…そうだ、ジーン…私を疑ってみせることをやめるな。
長くなるけれど…いいかね?
〔フォアローゼスのボトルを開けると、ふぃと芳醇な香りが立ち上る。気だるげにカウンターの内外を見遣るも、どうやらグラスの類は粉々に割れてしまっていて…女はその中から無事なものを探す気にはなれなかった。〕
〔ラッセルが立ち去った後、僅かの間思案を置くようだったが――影の声に我に返ったように眼差しを向ける。…次いで、寂しげな中にも常の影に対する興味の色合いを瞳に宿し〕
…ン。そうなんだろうと思う。
身体は死ねば感じる機能を止めるから。
でも…魂はわからない。目には見えないだけで、
多くを感じてのたうち回っているかもしれない。
これは多分…heartの問題じゃない。
〔君はどうか、とは訊かない。酒のボトルに直に口をつける。彼の問いに、深く深く頷いて…安心したような笑みを浮かべ〕
…そうだ、ジーン…私を疑ってみせることをやめるな。
……君は魂については何も知らないだろう。
[ふい、と顔を背け、横たわるダニエルの死体に目を移す。]
疑って欲しいのか、君は。
"ShadowWalker" ジーンは、"WidowedGentleman" オードリーを振り返り真っ直ぐに見詰めた。──何のいろも浮かばぬ闇黒の瞳。
…君に魂があることは…知ってるかな。
〔返り血に塗れた侭なのも気に留めず、ボトルを影へ再び差し向ける。彼が受取ったなら…彼と背中合わせになるように振り向いて見せ〕
…アッハ、…まさか。
でも…何となくうれしくてさ。
君が、私に人の気持ちを聴く力が
どこまであるのか…気にしてくれること。
[差し出されたボトルを何となく受け取る。
しかしそれには口を付けず、所在無げにただ手に持っているばかり。]
……君は。
何か誤解している。
…ン。私が殺した…
〔まだ血糊に粘つく感触を、手指に確かめる。〕
…ローズで終わり…そう願いたいな。
私は確信しているけれど、こわい気持ちは捨てられない。
〔毅然と胸を張ったまま弱音を吐いて、再び必要になった気の毒な清掃スタッフがフロアへ機材を運び込むのを見遣る〕
…一緒に生きていたい。
死んで終わるような興味とも…思ってない。
ただ、一緒がいいと思う…そんなところだな?
〔ころりと喉奥に鈴振る笑みを漏らした。〕
[オードリーの艶のある声を、しなやかな笑い声を聞きながら、影の男は軽く首を傾けて、考え込むような仕草を見せる。]
君は自分が破壊者であるとは思わないのか?
或いはラッセルやキャロルがそうはでないかと疑わないのか。
……いや。疑って打ち消したのか。
レディ。君は実際には誰も信じていないのではないか。
信じているふりをしているのではないか。
自分や……他の人間達に、信じていると見せたいが為に。
ダニエル兄なら…呑んでも"おかしく"はならない。
〔heartがないと言った彼の胸に、何が入っているのか…それは女の想像でしかない。ただ、常に水しか摂らない彼に何か身体に障りがあるのだろうかとは思っていた。〕
――誤解でいい。
〔重い前髪の間から覗く、闇の瞳をひたと見詰め返す。〕
…おや、…言葉が拙くて誤解させていたか。
私にカマをかけたのはラッセルさ。
私には何も、…人と接さなければ何もわからないよ。
〔此処だけは、感慨深さが滲む。深海色のフロアは戦いの疲労を癒してくれているかのよう。…背後に身じろぐ影の気配を感じてそれを容れ〕
思うのは私じゃない…接する相手さ。
話していれば自ずと解かる…嘘があっても。
…一度じゃわからないから、何度も話す。
誤解も幾つかする…反応で解かる。
――ダニエル兄の言った通りうすのろなのさ、私は。
ただ誰かといることが好きだからこうなった…それだけ。
…ジーン。…
そういう意図や思惑がないところが、
…多分私の性質のよくないところ。
〔女の瞳から、漣立つ笑みが静かに引く。
見詰める侭に其処へ映る影たる彼を揺らさぬようでもあり〕
――だから…傷つけるのも無意識で。
その罪悪感と言ったら途方もなくて…
…うまく言えない。…
これだけは…たぶんずっと。
君は一緒に生きていたいと言うが、一緒に居てどうする。生きていて何をすると言うのだ。
君は自分に何をさせたい。
[そこまで問い掛けて、急に口を噤んだ。
ハッと気が付いたような、軽い驚きにも似た雰囲気が、変わらない表情でも何となく伝わってくる。]
…………。
[沈黙になにがしかのいろが加わった。]
[それは多分してやられた、といった感覚に近いのだと思う。]
[結局彼女の思惑に乗っているのだと感じる。…それが何であるのか彼には分からないのだが。]
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