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―― 地上/大会本部 ――
[黒隗はグレンを暫し見つめ、]
「紅蓮、楽しそう。」
[にっこりと笑うと、空を仰ぎ見た。]
「わ。マリンブルー・スネイルがくるくる回ってる。」
弾幕を巧く避けられる方法を、最初から分かっている参加者ばかりじゃないんだ。
「紅蓮も最初はそうだった?」
ああ、そうだよ。
弾幕の嵐を乗り越えて、ゴードンに迫った。
[その口調からは本当かどうなのか読み取れない。
だが、とても楽しげにグレンは言葉を返す。
それから暫しの間、空で行われる戦いに思う事は全て胸に秘めたまま、*見守った。*]
――北西エリア/高空――
[中央エリアの一画を取り囲んでいた緑色の“檻”が、維持限界を向かえ、消滅する。
格子状に並んで発射されていた小型弾はコントロールを失い、無秩序な動きへと変化した]
あの中は――やっぱり、大した事には、なってないか。
[機体を北辺へと大きく迂回させつつ、少女は『バードケイジ』が残した結果をチェック。
“檻”そのものに触れたならともかく、内部に生まれる小型弾にはさほどの破壊力は無い。
前チャンピオンは健在。装甲強度にもさしたる損害は無いようだった]
−会場上空・中央空域−
[ゴードンの機体が見えてくる。その途中も、多くのBFからの攻撃を受けるが、ささっと避けていく]
……まだあれを使うには早い、という事だな。
もっとも、そう余裕なばかりではいられないだろうが。
[あれ、つまりは"銀色の星"。
回避と「魅せる」事を狙った弾幕。]
そろそろゴードンに、挨拶をしないとだな。
相変わらずだな、ゴードン。
今のお前ならば、この位は余裕だろう?
[ゴードン機に向かい、矢のようなレーザーを放った。
まるで矢にくくりつけた手紙−矢文の如く。
ゴードンがその手紙を受け取っての反応を観察する構えに入る]
―中央空域最上層―
ふぅむ。佳境、といったところでありますか?
[コメットの出力を切り、フルムーンの噴射でその場に静止。ふたたび戻ってきた空域で、眼下の戦闘を眺める]
[赤い機体を取り囲む緑の檻。うねる光弾を吐き出す黒い機体と、それに呼吸を合わせるように好機を待つ水晶竜。白金の機体も今を好機と突撃するようだし…]
(…ちょっと妬けるでありますなー)
[と、場違いな思考は、黒い機体と共闘体制に入っている友人に向けて。
無論、場違いである自覚はあるし、どうこうしようとか、よしんば邪魔しようなどと考えるような類のものではなかったが]
…コード・ファストスター。
照準はこちらでつけるであります。フヅキ、補助を。
[せめて自分は補助か…あるいは保険をかけておこうと。
静かに、眼下の戦いを見守っていた]
―少し前 東空域・中層―
[相変わらずの物怖じしない、元気そうな声に安堵の溜息を付いたが、彼のBFの装備に欠けが生じた>>147と聞き僅かにバイザーの奥で眉を動かした]
あ、あの。
私は少しミスをしましたがまだ大丈夫です、ですから、少しですが援護します!
ふ、不要なら言って下さい!
[BFに乗っていてもいざ会話となると言いたい言葉の全てを伝えきれはしなかったが、援護する旨だけは伝えられたようだ]
―現在 東空域・中層―
[Rainy Dayをいつでも放てられるように展開しておく。
その照射範囲は拡散型ではなく、集中型で固定してある。]
とにかくゴードンさんの元へ向かわなきゃ。
[ロジャーへの提案の返答がどうであれ、なるだけ視界に彼の機体が入るようにしながら中央へと移動する]
―― 戦闘空域/西エリア/中高度 ――
[かっち こっち かち こちん。
メテログラフトの最外郭装甲。その内側に内臓されているのか?…無数の歯車と時計の針が光の影となって浮かび上がる。
そして…]
燃えろ燃えろ燃えろ燃えろォ!!!!
[今、メテログラフトの周囲を回るのは、約5m程の紫色の炎の球が何十も連結したもの。
ラガリアの刺塵。
その不定形な兵装は、今は何かの爬虫類の頭部の骨を思わせる形状をしている。その頭部が、約5m程の紫色の炎を思わせる光球を生み出している。
頭部は移動をしており、球が膨れ上がりきると次の球が作られ、それがまるで蛇を思わせるようにのたうっているのだ。]
[両手でしっかりと操縦桿を握りこみ、王者の回避行動の先を予測した軌跡を正確になぞる。
下方から来るチャージ弾。避けて軌道を変えては届かぬと判断し、更に出力を上げた。]
〈第六フラップ破損!〉
構わん、5番と7番に空力分散!
[文字通り、ゴードンの懐を借りる気持ちで、えぐり込むように胸元へ飛び込んだ。]
―― 北西下層 ――
[三日月形に発せられたビームの行方がどうなったか。
背後でまだ音がするので落とせてはいないのだろう。
突撃の勢いのまま、エリアぎりぎりまで滑空し、一息ついた]
『ドラゴンに牙はなくても、女には棘があるのよ』
[少し満足そうにマリアが呟く。
私は痛めたらしき直後に無理をした翼の付け根に消炎ナノマシンを集中させながらくつくつ笑った]
(彼のセンスは好きだね。ひどくいい)
『本当よ。ウィリーに直接持ちかけるところが素敵。
――ウィリーが普通の人工知能バイオノイドだったらどうする気だったのかしらね。単なるナノマシンコンピュータじゃ言外のニュアンスなんか受け取れないわ』
[上機嫌でマリアは額の血を拭う。
そのとき、ニーナからの通信が来ていることに気付いた]
『ハローハロー。
ニーナ、もう武器の調子は大丈夫?
気を使わずにいつも緊急通信でいいのに』
[マリアの瞳が上空を索敵する。
目当ての機体が空にあるのに気付くと、その目を細めた**]
――上空/観客席(南西エリア西より・中層)――
[下層から、青い球体型の機体が彗星のように尾を引きながら中央部目指して上っていく(>>141)。
機体の向かう先には――前回王者が乗る真紅の機体]
「速度だけで抗えると思うな」
[少女が「自分が戦闘空域にいたら」と仮定の話を始めたら、先ほど少女と電話をしていた、修理工場の若手の中ではリーダー格である男はきっぱりとそう言った]
「いいか? 弾幕を避けるのにも撃ち落とすのにも必要以上の速度はいらないんだよ。そもそも速度が上がれば上がるほど緻密性は失われるし、それに」
……それに?
「《Indigo Bird》は他の機体よりやや軽い。軽いということは装甲が薄いことに等しい」
ああ、装甲が薄いと守りが弱くなるから速度を犠牲にしてでも守りを固めるべきだ、ってやつでしょう? 正直聞き飽きました。
「……みなまで言わせねえ気か」
[真紅の機体を包んだ光は、まるでそのコアに向かうように収束していった。
予想外の異変。
だが一度発動させた弾幕は止める訳には行かない。
無意識に刷り込まれたかのように、少女の唇が動く]
――『レイディアントシルバーガン』!
[自機前方へと突き出した『自在剣』を砲身に、銀色の閃光が強烈なレーザーとなって発射された。それはゴードンの機体を包み込んだ赤光を掻き消すかのような、巨大な白銀の剣]
[ゴードンは、自らの攻撃も何の事は無いかのように避ける。
ゴードンの実力からすれば、目をつぶっていても避けられるような攻撃である。
しかし、そこを多くの者が狙っているとくれば、わからない。誰かのが当たるかもしれないし、予定とは違った位置に来てしまうこともある。
その一瞬の隙を付き、ゴードンを落とす。
そのような計画でいた。]
ここまで来て残っているのは相当な精鋭揃い。
そこからの攻撃を続けて避けなければいけないのは……さすがのゴードンでも疲れが無い、とは言えないだろうな。
―西エリア・低高度―
……うわ、まだあの機体落ちてないの……
流石に桁が違うね……無理だよあんなの。
[降下で乗せた速度を殺さない様に右旋回、緩やかに高度を稼いでいく。
横目で見る中央空域、数が減った事で逆にBF同士で連携し易いのも有るのだろう、各機攻撃の鋭さは現在のほうが一枚上手であるようだ。
それでも墜ちる気配を見せない赤い機体、流石は王者の面目躍如と言う事か。
こうなったら苦笑いしか出ない。]
……まぁ、活躍してる人の援護にでもなれば良いか。
『ガトラル』、徹甲モードに切り替え、『Red wolf』進行方向を予測、見越射撃でコントロールオープン。
[中央エリアを掠める様に変針。牽制でも切っ掛けにでもなれば良いと、細い三角錐形状の弾幕を吐き出す。]
…出力調整、収束率を30に…
[眼下の戦闘を注視しながら、フヅキへ微調整を伝えていく。
そこに入った、固有回線通信>>158]
ええ。おかげさまで。
そうは言っても、こちらが戦闘を抜けようというときに、そちらを邪魔してしまっては申し訳ないでありますから…
…ねっ
[と。通信しながら、無造作に光輪のトリガーとなった右手の指を引き絞る。
天から撃ち下ろされたレーザーは、収束されることなく拡散し、水晶竜へと迫っていたチャンピオンからの追撃の弾幕…わずかに残った多層式アヌージから放たれた誘導弾を撃ち落す]
ふぅむ。
しぶとさもここまで来ると驚異的でありますな。
あるいはだからこそのチャンピオン、といったところなのでしょうが…
フヅキ、コード継続、次弾チャージ開始。警戒を密に…
じゃあさ、じゃあええと
おれと一緒に行こう、避けきれない光弾は、防げる?
あのさ、もうすぐ、多分雨がくるよ。
[くるくると風に舞うように、蝸牛の近くまで旋回する。
大きさは、アルトキュムラスがすっかり隠れるくらいだ。
ロジャーは、最後に後ろの雲を指して、
顔を見合わせるみたいに機体をスネイルネンの方に一瞬傾けた。]
いくよーーーーーー
[いくつものBFが、弾幕とは違う煙を上げて下降してゆくのが見えた。ゴードンのRed WOLFに返り討ちに逢い、ピットインを余儀なくされた者たちだ。
爪を折られただけでは、未だ「王者」は、堕ちない。]
[眼下では、チャンピオンの機体がビーム刃を受けてなお稼動し、白金の白刃をもはや本当の意味での鉄塊に成り果てる寸前の鉤爪でいなそうとしている。その姿は傍目に見ても満身創痍で、もういつ落ちてもおかしくなさそうに見える。
けれど、その機動、その挙動、一つ一つが]
(―――楽しそうでありますな。ゴードン殿)
[いつだったか。もうずいぶんむかしのことに思える、本戦開始前のこと。大会を“祭り”と称したゴードンの姿が、声が、思い出された]
……落ちるそのときまでも、あなたは笑ってるんでしょうね。
[その時を見届けようとするかのように、高い高い青空を背にした青い機体は、静かに照準を赤い機体に合わせていた]
…んん?
ッッッッ!?
[その目に映った、赤い発光。始めは単なる違和感でしかなかったそれを瞳に映した瞬間、視界が揺れた。被弾したかと思った。それほどの衝撃だった。けれど、違った。
感じていたのは、圧倒的な恐怖。
それをなぎ払うように、横薙ぎのレーザー光が、赤い光を押し流していく―――]
―中央空域、下層―
[赤い機体の装甲くらいは落とせれば、と思っていたが
残った機体のほとんどが回避で出来た隙に追撃を放っている]
ふぅん。
これなら、いったん引くかね。
[男は機体を翻し様に、白鋼色の機体と赤い機体が交差するちょっと上を狙いブラスターの熱光線を発射した。
そして機体はピットへと戻っていった]
3から6の装甲を付け足せ。
わかってるな。
[ピットに着くや否や、連絡状況から動いていたGRAVEの研究員が装甲を付け足して行く。
男はその間も、中央の空へと向けられていた**]
別に装甲でガチガチに固めろとは言っていないことくらいわかっています。
ですが!
装甲強化にかまけて《Indigo Bird》を好き勝手に改造しようという魂胆が、見え見えなんですよ!
[彼らにとって遠い、それもすでに滅びた星域のBigFireは非常に興味深いものであり、ゆえに、ことあるごとに中身をいじらせてくれとか改造させてくれとか、少女は彼らに頼まれている。
彼らの頼みを聞いていたら機体性能が日替わりで全く違うものに変わりかねないので基本的に断っているが、たまーに修理・整備のついでに、防御用の装甲が増えていたり、改造者の趣味としか思えないオプション――分かりやすく言うなら〈Satellite070207〉のことである――がつけられたりしている]
[ひしゃげた狼の腕に食い込む翼の光子刃。
恐るべき力に弾き返されて軽い機体は体制を崩す。
予想していた追撃は、何故か来なかった。
赤い機体のコア部を包み込むような赤い光。
その瞬間に予備動作に入っていたらしき腕が、止まる。
おかしい。
そう思ったは、感覚的なものか。 ]
―少し前 中央空域付近・中層―
[どうやら...の申し出は受け入れられたようで、>>162明るい声が操縦席に響く]
はい、多少の弾幕なら私達は耐えられます。
あまりなものでしたらあなたを無理矢理弾いて私達も回避してしまうかも知れませんが…。
[つまり、盾になると言っている]
(いいよね、スネイルネン)
[それは、後に彼と闘いたいと何処かで思う故の行動。
だから今、此処で互いに落ちるわけにはいかないと。]
えっ、雨…?
[そこで雨の予報を告げられ、再度聞きなおす。
自分達の前で落ちてゆくBFが後を絶たず、パネルに置いた左手が瞬間震える。これの事を言っているのか?とアルトキュムラスへと視線を送る。
それでも大きく、深呼吸。王者の前で腰を引かせていては情け無い、と]
―― 北西下層 ――
『もう一度行こうか』
(遊んでいるばかりだと、ボーナスが出ないからな)
[翼の付け根は気になるが、ゴードン戦はそろそろ佳境。
私は再び中央へと向き直る]
[そのとき。
赤い光が赤い狼を包み込み、中心部へと伸びた]
『―― なっ』
[マリアの首に巻かれていた、マシンチックなチョーカーにしか見えない装飾品が突然大きくバイブした。マリアの目が、視覚的情報収集機関が、大きく見開かれ、ショートしかける]
[私は、下層で揺れた。弾幕を避ける動きが鈍くなる]
―― 地上/大会本部 ――
[ナサニエルがゴードンに銀の矢>>150が放つ所を、ホログラムBBSで見た。
苛烈さの増す、戦闘空域・中央。
その場に在り続けるナサニエルの機体。
飄々とした態度であり、隙はなく、余裕さすら滲ませる。
その搭乗者の姿が、機体にも顕れているかのようだ。
執着。
その言葉だけでは終わらない、確かな実力。
撃墜に足る決定的一打の一つは、ナサニエルの可能性が強いと事前に推測されていた。
そのゴードン機が、白銀の剣に貫かれる――]
あれは何だ。
[違和感。それに感覚がこじ開けられる。紅蓮の目が、一瞬映った異変を捉える。
大会スタッフのグレンの言葉に、ホログラムBBS周囲に居た誰かが見上げてきた。だが、大多数はおかしさを感じていないか誰かの攻撃かと思ったのか注意を引いてはいないし、観客席からはどよめきと歓声の声が上がるばかりだ。]
――北エリア/高空――
[用いた弾幕、『シルバーガン』の持続時間は、ちょうど五秒。振り回して薙ぎ払いに用いれば、相当の範囲を射程に収めることは可能。それが単体に直撃したとなれば、恐らくは撃墜できただろう、と少女は思考する。だがその代償として、発動後の消耗も大きかった]
――はぁ、はぁっ、はぁ……っ。
[通常の機体ならば、“核(コア)”の出力は安定的に供給される。だが、このNBXシリーズにおいては事情が異なっていた]
まさか――マシマさん、まで、巻き込ん、で――?
[前方に突き出した『自在剣』がだらりと垂れる。
搭乗者の精神活性度が、BFコアの出力に影響を及ぼすのだ。
三種の兵装はいずれも使用不能状態を示し、早急なピットインを少女へと要求していた]
……ダメ、だね。一度、降りなきゃ。
でも、マシマさんは――?
[北西からは、白銀のレーザー剣。
最早、ゴードンの赤い機体はなすすべなく攻撃を受けているように見える。
周囲からも開放準備された弾幕兵装が次々と迫る。
ロジャーは僅かに眉を顰めた。]
シャーロットーーーーー、もっと近づいてみるよ!!!!!
なにか、変なんだーーーーー
[スクリーンに映るRed WOLFへ向かって、すとんと落ちるような軌道。
ロジャーのアルトキュムラスは兵装を一旦停止している。
赤い機体から黒い煙がいくつもの筋を作って、西に流れていく。]
(声が、しない。)
[動きが鈍った隙に、私は右の足と尾に被弾し、腹にかすめた。
吼える。どうにか攻撃端末のマリアは損傷がないが]
(……厄介な)
[呟いた声に怯えが漏れる。
私は私の視覚内でゴードンが落ちたのを確認すると、白い血液を垂らしながら近くのピットインブースへと身を翻した**]
―――んなー!
[視界の端に見えた赤い光も、直後の大規模なレーザー光の印象に上書きされる。
機体は、様々な警告をがなり立てるが今はそれどころではない。]
タービン最大過給で駆動!最大戦速!
FLLAAAAAT OOOOUUUT!
[何よりも、直感が警告を発している。]
「だけど、もし大会の舞台を目指すなら、このままじゃ駄目だぜ」
[ふと真剣な顔になってリーダーは少女に言う]
「俺はもしダイアナが大会に出るんならできる限りサポートしたい。ここにいる他の面々もきっと同じ気持ちだぜ。
飛ぶために飛ぶなら背負うものなどない。だけど大会に出るということは飛ぶため以上の何かを背負わなければならないんだぜ」
[何だこの展開は。
少女自身としては普通にはしゃいで仮定の話をしていただけで、大会に出る気などこれっぽっちもないのだが。
訂正するべく口を開こうとしたその時]
「っおいっ、上を見ろ!」
[仲間の一人が切迫した声をあげた]
―現在 中央付近―
[アルトキュムラスの動きを殺さないよう、一度集中型に固定したRainy Dayを拡散型に戻したが周囲からの攻撃はこちらには向かず、赤い機体へと集中されていた]
……でも…うん…何かしら…。
[ロジャーから近付く旨を伝えられ、>>178同じく兵装を停止させてアルトキュムラスに付いて行く]
ロジャーくん、気を付けて…何か、ありました…?
―― 戦闘空域/西エリア/中高度 ――
[予備動作に入ってままレーザーに貫かれた「Red Wolf」の腕を、クロノの光弾の飛礫が吹き飛ばした。ついで、全方位からの集中放火が、次々に赤い狼に命中してゆく。
赤い鉤爪が弾き飛ばされる。
重いその爪は、狼の手を離れる。
ぐらり、と赤い狼だったものは機体を傾けた。]
『』
[全域強制通信は途絶えている。
赤い狼は、マシマへ腕だけ伸ばした格好で、墜ちる。墜ちてゆく――――。]
[ゴードン機の近くに一機のBFが飛び込んでいったのを確認した]
あれは……白川重工のか。
[戦闘機型のBF、それも日本の戦闘機型と知り興味を持っていたBFの一つ。それがゴードン機にぶつかっていくかのようにしていたのは目を惹くには十分な物だった]
それにしても無茶を……。
[するなぁ、と言おうとした時、収束レーザーの予告線が現れる。その先はもちろんゴードン機であり、そこには白川重工のBFがいる]
避けろ、避けろって!
[もちろんナサニエルの叫びが、白川重工の機体に届いたかどうかはわからない。というより、殆ど届かないであろう。]
至近距離からの一撃でゴードンを何とか落としたとしても、他のゴードン狙いの機体の巻き添えを食らって無駄に撃墜されるというのに……。
[あのBFの主と会話を交わし、そして戦う事無く終わってしまうのかと思ったその矢先に、巨大な白銀の剣]
……?!
「ゴードンの機体が……」
[少女と仲間達が見たのは、
動きの停まった赤き狼が、なすすべなく集中砲火を食らっている光景――]
「もう無理だ……程なくして墜ちるぞッ……!」
[一瞬の狼狽は、判断を鈍らせた。]
…くぅっ!!!!
[目の前の赤い機体諸共、白い閃光に包まれる。
ビーム兵器を拡散反射させる鏡面装甲を以てしても、損傷は軽微ではない。
コックピット内の気温が急上昇、左バーニアが安全装置によって緊急停止。
落下する機体の体制を立てなおして、慣性飛行に切り替える。]
一旦離脱します!破損箇所の交換を!
[クルーへ呼びかけて、グライダーのように滑空してピットへと逃げる。
滑空翼による慣性飛行が可能な戦闘機型だからこそ出来る芸当。
二足歩行式や不定形では、出力が止まればそのまま自由落下するしかないだろう。]
いまっ い いっ いまっのっ…は…
[視界が揺れる。歯の根が合わずに音を立てる。こわい。こわい。こわい。こわい。こわい。いやだ]
ふづきっ
とおくへっ…遠くへ!!
[もはや指示でもなんでもなく、恐慌に陥ったままに懇願する。それでもフヅキはその意思を汲んで、コメットにエネルギーを送り、その場を離脱する。
ニーナの言葉を忠実に叶えようと、もっとも機体がいない空域へ。もっともほかの機体から離れられる空域へ。通りすがった見知らぬ機体がすれ違いざまに放った弾幕が機体をかすめようと、かまうことなく、ただ真っ直ぐに]
[一瞬、何が起こったのかはわからなかった。
剣の主は、漆黒の騎士]
…………。
[ただその様子を見つめるばかり]
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