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…く、…自分のミスだ…な。
皆、申し訳ない…
係長…お辛い目に遭わないといいんだが…
〔半ば渉外担当のようになっていた紅練の抜けは大きい。
此方の埒外となる分野を得意とする上司だっただけに、
其の業務は楊課長と分担しても重く圧し掛かるだろう。
それ以外にも、気がかりはあるが――辞令の出た今は
既に本社へ異動した皆へ託すしかなかった〕
――皆…知恵を貸してほしい。
部長が本社へ働きかけて下さっているが、
此方からも、各々の立場を超えて打開に動かなくては…
〔室内の面々へと聞こえるよう、声をかけ…〕
あ。
[ふと我に返る。
別に通信機が使えないだけで、
携帯なり何なりで連絡を取ればいいじゃないか。
しかし、先に役目から逃げてしまった自分が
声を掛けるのも憚られて──]
……あ。
[ふと気付くと包みが手の中でくしゃくしゃになっていた。
そっと開いて、箱を開く。
……頬が緩むのはきっと気のせいだ]
[誰も居ない、近くにも居ないのを確認して、携帯を開く。浮かぶ文字を読むでもなく見つめ]
…もうどうにも、できない…
[登録されている中からアルファベットの”V”の欄を出すが、何かをためらっているのかそこで手が止まる]
[屋上へと出る、重い鉄の扉を開く。すると目の先には狙い違わず秋芳の姿が]
一発正解ですか。愛ですね!
[得意顔。そっと近づくと、背中から秋芳を抱きしめて]
そろそろ、お返事聞かせていただけますか?
私の可愛い秘書さん?
っひゃあ!?
[驚く時のオーバーリアクションはもうどうしようもなく]
え、えぅ、…ええと、その…
……お返事も何もこっちから言ったじゃないですか…
[真っ赤になってもごもごもご]
〔一人煩悶を抱え、給湯室へ立つ羅瀬の様子を見遣る。
暫く考え込んでいたが、穏やかに声にして〕
…この数日、皆よく頑張ってくれている…
互いの負担を減らそうと、身を削ってまで。
其処へ嘘のないことだけは、解るので…
――自分は、ここにいる全員に信を置いている。
……
〔緩く皆へと、会釈を向ける。
各々の立場で為したことについて、少なくとも
此方は責めるつもりのないことを言葉にも込めて。
扉は開け放たれた侭――給湯室の羅瀬には聞こえただろうか〕
[「こっちから言った」の言葉に、ちょっと考えて]
…なんだ、あれはプロポーズだったのか!?
そうだったのか。
秘書さんったら、ダ・イ・タ・ン!
[嬉しそうににっこり。そしてしっかりと抱きしめて]
私の返事ならば決まっているじゃないか。
こんな可愛い可愛い人を、他に取られてたまるものか!
[後ろから、耳元に軽くキス]
[羅瀬の様子は気にかかりながらも、紅練の異動の話が耳に入ると眉間を険しくさせたまま今まで考えを巡らせていたようだ。]
……。
[顔を上げて伊香保を見る。]
……発表会まで日がありません。
主催である福岡でこのまま本社への人事異動が続けられるようならば今回のショーやタイアップでVVD社に業績を全て持っていかれる事は必至。
あれほど綿密にスケジュール調整をして来たのに、直前になって受注処理やモデルの件で遅れや欠員が出てるのが証拠です。
……本社に掛け合いましょう。
那須部長も頑張って下さっているでしょうが…
此方からも。
[僅かに羽生へと目配せを送り]
…あ、…あんまりそういうこと言わないでください…
[膝から力が抜けて、ほんの少し体重を預ける。
前のように流せるようになるにはまだ時間がかかりそうだ]
その、…嬉しい、ですけど…
[小さな、聞き取れるかどうか定かではない声で呟いて]
結局、VVD社からのスパイってことになるのか?
…近所に富士紡績の工場があるってゆーか、昔父親が勤めていたからってのでBVDをもじって出した名前だったりして(笑)。
[身体の重みが自分にかかってくるのを感じながら]
なぜ?本当のことはちゃんと言わねば。
そもそも私にそんな遠慮を求めてはいかん。
[超人的地獄耳で秋芳の呟きを聞き入れると]
愛いヤツめ。
[秋芳の手の中の箱から指輪を取り出すと、左薬指にそっと嵌めようとする。入る確率94%]
[何かを決意したように、登録された番号にかける。登録名――VVD。]
…ああ、親父?
…もう――無理だよ、俺。
[小声で、携帯の向こうに話しかける]
飛躍?一緒に――…ようになったら?
[口篭るように呟く那須の言葉を拾おうと、テーブルに身を乗り出していたが、最後の二人分も三人分もとの言葉で感付いたのか。
さっと身を引き頬を僅かに赤く染めて視線を外し――]
那須さん…。それって遠回しのプロポーズみたいじゃないですか…。
じいちゃんに怒られるね。
だけどもうこれ以上居られないよ…
[つらそうに。現に、辛い。だまし続けるのが…]
…。分かってる。
じいちゃんがたとえ孫であっても失敗したら切るかもっていうのはね…
平社員 羽生 栄太郎は、任せる の辞令を出すことにした。
[するりと指に入った指輪を驚いたように見て]
…なんかやたらぴったりなんですけど。
いつサイズ調べたんですか。
[ぎゅ、と左手を握り締め、
照れ隠しなのか若干ぶっきらぼうに]
[ほぼぴったりと指に入った指輪を見て、予想外のことにちょっと驚きながらも]
調べてなど無い。……これは愛のなせる技だな!
[納得したようにうむうむと頷く]
…さあ、秋芳君。こっちを向きなさい。
誓いのキスをしようじゃないか?
[背中から回していた手を緩めて]
う。
[背後から掛けられる言葉にびくりと身を竦ませて。
暫くおろおろと戸惑った後、
恥ずかしさのあまり潤んだ瞳のままおずおずと振り向き]
[頬を染めて横を向く近藤の姿に、軽く鼓動を弾ませながら]
遠まわしと言うか――いえ、こんな定食屋で言うことではありませんでした。
申し訳ない。
これだから娘からもデリカシーが無いと言われるのです。
[間が持たず、丼を持ち上げると顔を隠すようにして口にかきこみ、物凄い勢いで食べ始める]
うーむ、そんなに私をそそらせないでおくれ。
思わずこの場で襲ってしまいたくなっちゃうよ?
[頬を染め、潤む瞳で躊躇いがちにこちらを向く姿は、そらもうラブリー。そっと秋芳の顎に指をかけると、僅かに上を向かせて口付ける]
…そう、だな。今夜は助かった…有難う、羽生くん。
〔内訳は訊ねないまでも、羽生の出した辞令について感謝をし。神部が状況を述べる声へと、PCのモニターを見詰めながら頷いて〕
…はい。既に部長が赴かれた以上…本社を動かすあと1手は、…羽生くんになると思います。
人事権を行使しながら、福岡の現況をも把握してくれているので。
その前に、他社へ籍を置くという者の処分だが…。
混乱を助長されはしましたが、…当社へ取り込む方向で。
一度、本部で機密漏洩チェックを受けることに
なるとは思いますが…
警察沙汰等にまではせずにおきたいのです。
〔数日とは言え、大事な部下には違いないのだ。
確認を求めるような面持ちで、神部を見上げ…〕
…――…甘いでしょうか…自分は。
[照れ隠しに、お汁が染み込んだ割り箸の先を齧っていたが]
いえ、デリカシーは兎も角…。
その…結局どういう意味だったのですか?その…さっきの言葉は――
[勢いよくかき込む姿を、何処か心配そうに見つめて。
しかしきちんとした言葉を待つように。]
――うん?
…そう。早いね…
[どうやらここ数日間何も連絡がなかったことで瑠兎が失敗したであろうことが予測でき、すでに祖父――森 寿美夫に切ることを決定されていたらしい。]
そっか…
[孫として、最後の情けに会社の方で手配した部屋などはそのまま使えるようにしておいてくれたようだが。しかし、すっぱりと己の孫を切れるとは…]
…少しさびしいかな。
ん、なんでもないよ。じゃあね。
[逃げずにきちんと受け入れてくれる秘書さんを可愛いと思い、深くは求めずに顔を離す]
ヤバい。ヤバヤバ。
これ以上してしまうと、止まらなくなっちゃいますよ。
ちょっぴり震えてる感じなんか、もうきゅんきゅん来ちゃいますよ。
[再び抱きしめ、耳元に囁く]
襲っちゃダメ?
[近藤の言葉に、ぴたりと箸を止める。口の中に入ったものをもぐもぐと咀嚼して飲み込み、唇を軽く舐めて汁を払い、ついでにお冷の水も一気飲みして]
――い、一緒に暮らしませんか?
[何とか喉の奥から搾り出す]
あ、いや、すぐとは言いません。
まずは美優に紹介して、仲良くなってもらって、そのうち一緒に住んではどうかと切り出して――。
[慌てて言い繕うように言葉を足す]
[ぱたりと携帯を閉じて給湯室をでる。...我慢しようとしても、じわじわと目から涙がにじんでくる。]
…。
[立ち止まって袖でぐっとぬぐう。ぬぐってもまたあふれてきて。ぽろぽろと涙があふれた。
ワーキングルームに入ってすぐに見えた羽生、伊香保、神部に思わず泣きついた。おそらく、黙っている必要がなくなった...は*全てを話すだろう*]
[囁かれる言葉にびくりとして]
だ、だから…っ
[抱き締められたまま、亜久の服の胸元をぎゅぅと掴み。
そのままきょろきょろと辺りを見回して]
…こ…ここで…ですか?
[困ったように眉尻を下げて]
[それなりに高いメロ水本社のビルの屋上だが、更に高いビルも林立するこの地域。どこかの誰かに見られないとも限らない。
秋芳の「ここで?」の疑問に、思わず噴き出す]
しゅ、秋芳君……。
もしかしてそういう趣味だったのか?
だったら私も努力して付き合おう!
[真顔で]
……頼めるか…?
[詳しい事情までは解らないが、羽生の先程の言葉と伊香保の説明から本社に直接取り次げるのは羽生なのだろう、其方へと目を向けて。]
……いえ。
私も同じ事を考えていました。
[伊香保へ首を振ると、戻ってきた羅瀬に瞠目し]
……甘い考えだとは思いますが……
[涙を流すその姿に緩く羅瀬の頭を撫でながら伊香保を見て]
…私は、彼を…信じたいと思います。
無理矢理押えつけたくはないので…
本人の意向にも寄りますけれども。
ち、違います流石にそれは!!
というか明らかに困ってる雰囲気を察して下さいよ!
[微妙にノリが戻ってきたようだ]
妙な努力はいらないですから普通にやってください普通に!
[でも自爆してるのは気付いていないのか]
[那須の一連の動作を、瞬きもせず見守っていたが、思いの外あっさりと告げられた言葉に]
一緒にですか、それも良いですねって〜って……
………あの…今、一緒に暮らしませんかって言いました?
[初めはのんびりと聞き流すように頷いていたが。その言葉が持つ意味をようやく理解して。ポカンと口を開く。
箸がテーブルに転がるのも気付かないまま。]
それに…娘さんに紹介って…一体何と…ってあー…嫌じゃないです!嫌じゃないんですけどー…言っている意味、判ってますよね?
それともルームシェアの意味で仰ってますか?
私の可愛い秘書さんはツンデレさんだからなぁ、意図を先読みする必要があるかと思ったんだよ。
[よく分からない言い訳]
普通にならオッケーなのか。
ほほう。
[にんまりとして、何事か考える]
では、あのホテルにでも移動しますか?
[指を差した先、ほど近くにある立派な建物。日本でも上位五本の指に入る有名ホテルだ]
言いました――。
[近藤の顔をなかなか見られないのか、なぜか丼の内壁に残ったご飯粒を目で追い、頭の中で数えていたりする]
娘には、大切なお友達と説明するしかありません。
その、私たちの関係が理解できるとは思えませんし――。
表向きは、ルームシェアということで。
[では裏向きは何なのかとは言わないまま口篭り]
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