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[ひらひらと司会者に手を振りかえし]
[体格のいい男に向き直る]
個々の俺ねぇ・・・。つるんでも利益の無い人間に固執するつもりは無いんだけど、貴方には期待してもいいのかしら?
[手をぽんと叩いて]
ああそうだ。服だ。服のせいだ。
あの笑い方も意図的に真似してるんだ。
熱狂的ファンだったのかしら。それともこのカジノで雇われてるそっくりさん?
……でも今の人は知らんだろうに。ベンジャミンなんて。
あらあら。酔っぱらいにぶつかられちゃって。かわいそうに。
[と言いながら、別に気の毒そうな口調でもない]
はっはっはっはっは!
確かにそいつァ言えてるわ!
ここじゃシャバじゃァ飲めねえ酒が、浴びる程飲めらァ。
殺し合いの前に、せめてもの「手向け」ってヤツか!?
生きて帰れたらこれ以上の天国はありゃしねぇサ。
賞金がっぽり戴いてりゃァ、借金の5つや6つ返したって釣りが来らァ!
この世は天国!はあっはっはっはっは!!!
ナニナニ、別に一目惚れしろと言っているわけじゃない。
これっきり、暫く後にはどちらかが10カウントでも
立てないようになっちまってるかもしれないし。
[お酒が飲めないらしく、冷たいティーの入った
グラスをカラカラと回している。]
おうよ、オッサン話が分かるな。
酒さえありゃあこの世は天国だぜ。
おい、そこの兄ちゃん、このオッサンにも何か酒を。
[相変わらずのゲラゲラ笑いに同調するようにへらりと笑うと、辺りに見えた男性に誰と構わず声をかける。]
生きて帰る、ねぇ。
随分と物騒な話だなぁ。
ま、大金がかかってるんだっけ?
殺す殺さないくらいの気持ちで行った方が良いのかねぇ。
[残り少なくなったグラスをあおり、ふうと酒臭い息を吐き出した。]
殺す殺さないも……なぁ?
オッサン、飲み過ぎて頭のネジが飛んじまったかい?
これは「人殺しをして生き残った人間が勝つ」ゲームだぜ?
……おう、そこに居るオバチャンも酒飲めや。
ここはタダ酒のみ放題だぜ。
ま、殺しのギャラに比べれば安いモンだ……
……あら。カジノにいる参加者は……これだけ?
もっと人数が居たような気がするのだけれど……ねぇ?
ひぃ、ふぅ、みぃ、よぅ……あらあら。
もしかして1人足りないかしら?
若い女の子が居たはずなのだけれど。
[煙草をふかして、色のついた息を吐く。]
……ま、「出場者は全員カジノに集まれ!」だなんて一言もアナウンスした覚えは無いのだけれども。
そのうち来たくなったら来るでしょ……
ま、そりゃそうね。とりあえずは信用しましょうか。
一々疑ってたらキリがないし、死んじゃえばそれまでだわ。
・・・私はカミーラ。貴方は?
はぁ?
人殺しだぁ?
[男のゲラゲラ笑いを真似してか笑い、空になったグラスをルーレット台に置いた。]
あのなぁ、オッサン、それはもう何年も前の話だぜ。
あれだろ、伝説の人殺しゲーム……なんつったっけか、転がる……。
まあ、その番組が放送されたのはもうずっと前だ。
プロデューサーも死んだし……まあ、放送局にはなんだか金がたくさん入ったとか聞いたが……もうやってない筈だぞ。
ゴールドファル…いや。
[うっかりリングネームを名乗りそうになるも、
げふげふと咳払いをして誤魔化す。]
俺はナサニエル。まァお手柔らかに、カミーラ。
[身体的能力だけを測れば、彼が楽しめそうな『敵』は少なかった。
が、忌々しいことにこの世には銃器という文明の利器がある。
女子供でも、それを使う意志さえあれば、十二分に彼を殺し得る『敵』となるだろう。――喜ばしいことに。
そして、人を殺そうとするほどの意志の力は、年齢や性別には一切関係のないことを彼は良く知っている。]
[だが、今は不機嫌にこう言っただけだ。
テーブルの前の椅子の一つを荒々しく蹴り付け、恫喝する。]
お前ら、やる気はあるのか……
殺し合いの前に仲良しごっこか。
[年の頃は今、会話している男と同じくらいだろうか。
肉のたるみ具合も似た女性が輪に加わるのに、置いたグラスを持ち上げて歓迎した。]
ほら、こんな金もってそうなオバサンが人殺しゲームなんてやるわけないだろ。
酒に酔ってるのはオッサンの方じゃないのかぁ?
[言って、寄りかかるように相手の肩を抱く。
肩越しに、ボーイらしき男に酒をせがんだ。]
おう、オバチャンも飲めや。
美女やら何やらを囲って飲めば、それだけでこの世は天下泰平サ。
[中年女のグラスに、黒いタトゥーが「K」「I」「L」「L」と1本ずつ指の背に刻まれた右手で酒を注ぐ。膝に置いた手には、同じく1本ずつ指の背に「E」「V」「I」「L」と彫られている。]
俺ァよ……ありとあらゆるヤクの味を味わってみたがよ、結局一番なのは酒だって知ったのはつい最近のことだ。幻覚は見えねぇから、一足飛びに詞は出……
[と言いかけたところで、飲んだくれ男の言葉に眉をひそめた。]
あァー……オッサン。あの「The Rolling-Over Show #2」ってな番組よ、最近復活したらしいぜ。
何でもカジノを舞台に、一般参加者をカジノの住人に仕立て上げて、殺し合いをさせる……てな。
[そう言って後ろを指さしながら、ゲラゲラと笑った。]
[酒に緩んだ頭では、即座に事態を把握出来ず。
ぼんやりと目を瞬いて、音のした方を向いた。]
なんだぁ……?
カジノで負けたからって、八つ当たりかぁ?
……おう。
[若い男が蹴り上げた椅子の行方を視線で追いかけ、それが着地したのを確認すると、今度は若い男の方に視線をやった。]
殺し合いの前に景気付けをしとけ……ってよ。
ほら、餌は熟成するのを待ってから喰うのが美味いってこっちゃねぇのか?
ホロコーストなら3秒で作れるがよ……この番組はそれだけじゃァ足りねぇよ、って話なんじゃねぇの?ただ肉が飛び散る惨劇じゃあ、視聴者の「涙」は誘えねぇサ。
……情が移ったところで仲間同士を殺し合わせるのが、この番組の意図ってトコだろ。
!
[飛んできた椅子に眼を向けて]
やれやれ、気の早いことね。
ロンリー気取るのは向こうの自由だけど、こっちのやり方にまで口出さないで欲しいわ。
[ナサニエルにだけ聞こえるように呟いた]
[ケネスに向かって]
そうだねえ。全ては酔っぱらっている間の夢。
そういうことにしておけばいいんじゃないかね?
[ベンジャミンに酒をついでもらって、その指にふと目を止め]
あら。どうもありがと。
(……あのタトゥーまで真似して入れてるのか。本格的ねえ)
まったくだね。ああいう手合いは、真っ先にお陀仏か、
相手にされないうちに何となく最後まで生き残るか。
…俺は真っ先にお陀仏に賭けるか。
[ひそひそと。カミーラに目配せなどしつつ。]
[ギルバートの方を見て]
ああいうのは、最初にみんなで殺っといたほうがいいんじゃないのかね?絶対皆殺しで賞金独り占め狙いだろ、あれは。
[その言葉は近くにいたものに聞こえたかも知れないし、聞こえなかったかも知れない]
酔っぱらいの夢ねぇ。
その間に「殺されて」、永遠に冷めねェ夢ン中にぶち込まれるのはシャレになんねぇ気もするがな。
[中年女の視線が自分の手に向けられたことには気づかず、ベンジャミンの視線は相変わらず若い男の方に向けられている。]
……だから兄ちゃんよ。まずは落ち着きなって。
アンタがどんだけ待ってたのかは、察する程度にしかできねぇけどよ。カッカしても良いことないぜェ……
カッカしちゃァ、アンタが最初の餌になって「ジ・エンド」かもしんねぇだろ。
[すっと目を細める。]
なるほど。
賞金目当てか。
だが、莫大な額の賞金を皆で分けあうのも間抜けな話だと思ってるんだろう、お前達は。
(……懐かしいねェ。)
[男は、誰に訊かせるでもなく息を吐いた。]
(あの兄ちゃんのようなギラギラした闘志。
俺が音楽の中で描きたかった「獣」の姿を、思い出すぜェ……。)
(20年前の俺は、目先の金に目が眩んじまって、聴き心地が良くてカッコイイだけのリフに素敵な歌詞をつけて、二束三文で曲を売った……「負け犬」だが、な。)
……多少は、な。
多くの人間で分け合うなんざ、間抜けといえば間抜けな話だ。
だが、手を組む「オトモダチ」も居ないまま突っ込むのも無謀サ。人間ってのは安易な生き物だからよ、「オトモダチ」よか「オトモダチじゃない人間」の方が「捨てやすい」モンだ。
……ま、金への欲と生存欲とのせめぎあいだ。
ちょ、ちょっとまてよ……。
[上手く舌が回らないのは酔いの所為だけではない]
お前ら本気なのか?
この面子で殺し合い?
アホだろ。
このオバサンが、アンタやあのマッチョと殺し合い?
あそこでさっきから騒いでるのなんて、爺さんだぞ?
悪趣味っつーか……。こんな勝ち目の無いゲームにオバサンや爺さんが参加する意味がわからねぇぞ?
[しかしいつまでもそうやっているわけにはいかないだろう。あの金髪の女性−キャロルというらしい−が言うにはまだゲームが始まるまで時間があるという。
それまでに少しでも誰かと話しておくことは必要だとは思った。−生きて帰るために−が・・・]
どうしよう・・・
[目の前にいる人々はあまりにも 自分と接点がない。酒を飲んでいる人物に声を掛けるのは躊躇われたしかといって凶暴そうな男に声を掛けるのもまた怖い。
とはいえ話しかけないことには始まらないのだ。幸い中年の女性はこの中ではまともそうだ。彼女に話しかけよう、と座っていた椅子からゆっくりと立ち上がった。]
[ギルバートの一言に背筋がぞくり。何故ならば……ならばこの男にとっての殺人は金を得るための手段ではなく目的であることを示しているのだから……]
俺の望みは、この闘いを味わうこと、出来るだけ長引かせることだ。
それに協力するなら、生き残れた時の俺の賞金をそいつにくれてやる。
[ニィと歯を剥き出して笑った。]
[ゲラゲラと笑う男の耳に、ヤケに聴き慣れたメロディが入ってくる。]
『その手に銃を握れ そして太陽を撃ち抜くんだ
お前が祈る「天国」に神など居ない
神の居る場所は お前の鼓動の中』……
……おい、オバチャン、どうした?
随分と懐かしいナンバーを持ち出すじゃねぇか。
確か、こんな歌詞だったような気もすんだが、違ったか?
俺が今迄聞いてたゲームの説明が、全部本当に殺す、ことを前提としているの……か?
番組演出上のフリじゃないのか……?
[苛立った様子の男を半信半疑で見つめる。
いつの間にか腰を下ろしていた椅子から立ち上がり、先ほどアナウンスをしていた女のもとへ向かおうとして、躊躇った。
昔見たテレビ番組、殺人ゲームに騙されて参加した出演者を思い出す。]
ふむふむ…そういうことなら、おニイチャンが不利そうだね。
カミーラは、「お金が欲しい」人かな?
ということは、ここには生き残ればいい人と
殺したい人がいるわけだね……なるほどなるほど。
[小声で呟く。何やら分析をしているようだ。]
あのおニイチャンのような手合いには、
「最後の1人になる」という縛りが発生するわけだな。
不利だよね。ハンディキャップなのかねえ?
[一瞬だけ眉をひそめたような表情を見せたが、すぐに元の笑い声を取り戻し、酔っぱらいの男の方を見た。]
その「まさか」「悪趣味な」番組そのものだ…と言ったら?
というか、だな。お前さん、この番組に出る上で、契約書にサインをしてきたんじゃないのかい?まさか、それまで忘れちまったとなったら……その酔っぱらいは、末期、だぞ。
……っと、やっと正気に戻った、か。
[血の気が一気に引いたようにも見える酔っぱらいの男をじっと見つめて、酒をぐいと煽った。]
[ベンジャミンを見て笑った]
あんたの格好見てたら思いだしたのさ。あの頃はよかったね。音楽も、この国もさ。
今じゃぺらぺらの作り物くさい音楽と、薄気味の悪いテレビ伝道師が垂れ流す道徳のせいで最高にイカれた音楽なんてもんはなくなっちまったようにように思えるよ。
[そこでセシリアがこちらに近付いてきたことに気付き、声をかけた]
ん?どうしたねお嬢ちゃん。あんたぁ一攫千金を狙っているようにも人殺しがやってみたくてしょうがないようにも見えないんだがね。
何にせよ、積極的に関わりたい相手じゃないわ。
・・・ふぅ。ちょっと疲れたわ。
悪いけど、お先に寝かせてもらうわね。
[ナサニエルに手を振ると、寝室へと*向かった*]
[中年の女性の下に向かおうとした時に近くにいた酔っ払いの言葉が聞こえた。ほぼ同時に立ち上がったのだから余計に気を引いたかもしれない。
全部本当に殺す・・・自分としては当たり前の認識だった。思わず彼の方を向いて]
恐らく・・・そうだと思います。私もそう、聞かされましたから。
[そう初対面の男に告げる]
……なるほど、ねぇ。
「殺し合いを長引かせたい」……ってか。
兄ちゃんの望みは、そこかい。
若いミソラで人間兵器とは、よくやるねぇ。
[それだけ言うと、脂肪の塊の奥でニイと笑みを浮かべた。]
(そうそう……この刺激サ。面白いねぇ……)
あいあーい。おやすみぃ。
[軽薄な返答を返す。]
まァ、目立たないに越したことないよね。
俺も死にたかないし、ここは見とくか。
[ケネスとセシリアのやりとりに眉をひそめる]
(成る程ね…騙されて連れてこられてる者もいるのか。あたしは……破産しそうになっているところに電話がかかってきて、「今まで通りの生活ができるたった一つの手段を教えて差し上げましょう」と誘われたのだけど)
……あァ。
あの頃は「ミュージシャン」がヤクで何遍捕まろうとも、「ミュージシャン」も、そいつを追いかけていた奴らも、パトカーに火炎瓶投げつけるような不穏な輩ばっかりだった。
しかしなァ……今の時代は、大衆に火炎瓶投げつけるフリだけをして、本当はフォークギターで秘密の恋の話をする連中だけが「売れる」時代。今どきのロック野郎なんざ、へっぴり腰のヘタレ揃いサ。
[中年女の言葉に頷き、小さく笑った。]
……なあ、今どき珍しいロックな兄ちゃんよ。
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